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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第肆章 誰もが知る戦争と、誰も知らない最終決戦
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078 『戯蝕圏』vs『魔軍勢』?

 この時、レクシュー=フィンドルグが考えていたことは、何が何でも生き残りたい、ということだった。


仮の仲間(他のSランク)を売ってでも、這いつくばってでも、生き延びねばならない。なぜなら、ボクの死は……ボクだけのものではなくなってしまうのだから)


 その時、レクシューの前に、1人の少年が現れた。

 彼は緑色の上着を着ていて、フードを深く被って顔を隠していた。


「……勧告です。……一応言っておくだけですが。……直ちに降伏してください」


 その少年の勧告を聞いて、レクシューは少し考える。


(この場で最良の選択肢としては、投降することだろうか? いや、一概にそうとは言えない。投降した場合どうなるのかを、まず一応聞いておくべきだろうか)


「投降したとしても皆殺し、とか嫌なんでー、一応聞かせて貰うよー。投降したら命の保証はしてくれるんだよねー?」


 レクシューは、警戒しながらもふざけたような口調で言う。


「……命の保証はします。俺達の仲間として働いていただくだけです」


 冷徹な口調で、謎の少年は返答した。


「えー、まさか、ブラック企業みたいに働かされる的な感じー? あっ、そうか、ブラック企業って言ってもわかんないかー。じゃあ、なんて言えばイイのかなー」


 すると、少年は、フードの端から覗いている口に若干の笑みを浮かべて言った。


「……大丈夫です、この世界に労働基本法(・・・・・)はありません」


 その瞬間、レクシューの顔色が変わった。


(労働基本法? この世界で聞くはずのない言葉だ。なぜ知っているのか、それは、こいつが僕と同じ、転生者だと言うことか!)


「……あなたの考えは、だいたい予想がつきます。俺はあなたと同じく元日本人。そして、転移者(・・・)です」


 それを言うと同時に、少年はフードを外した。

 フードの中にある日本人としての、この世界では特徴的な顔が露わになる。


(転移者、つまり、『魔剣王(マギソードマスター)』と同じ。でも、何故今まで表舞台に出て来ていない? そして、何故、邪神なんかに協力しているんだ!)


「……転生者も転移者も、そこまで珍しいものではありませんよ。Sランク最強の方も転移者です。また、こちら側で把握している転生者と転移者は、あなたを含めて8人もいます」


 見透かしたように、転移者を名乗る少年は言った。


「へえぇ、そうなんだー。じゃあ、何であんなのに協力してんのさー」


 虚勢、と言うほどではないが、若干の怯えを隠しながらレクシューは質問する。


「……契約と賛同、とだけ言っておきましょう」


 冷徹なように、少年は返答する。


「じゃあ、ボクが君たちの下についた時のメリットは何ー? 新入会員サービスとかはあるの?」


 あくまでも戯けたように、レクシューは質問する。


「……あると思っているとしたら相当なバカですね」


 若干の嘲笑を交えた返答には、空気を凍らせそうなほど冷たい感情が篭っているようだ。


「じゃあ、君たちの言うボクの降伏した時のメリットは、ボクの現在(イマ)の命の保証。デメリットは、ボクはボクの意思に沿って動くことができなくなる、これでイイかなー?」


 見た目だけの少年は、道化のように言い放つ。


「……概ね間違ってはいません……いささか不愉快ですが」


 それよりも見た目だけの少年は、不愉快と言いながらもそこまで不愉快ではないように言う。


「でもそれは間違ってるよねー。だって、君たちが必ず勝つという保証がどこにあるのー?」


 その言葉を聞いた瞬間、少年が嗤った。


「ええ、その保証だけはあります。俺たちが負ける理由は、何処にもありません。現に、俺は今すぐあなたを無抵抗のまま抹殺することができます」


 その言葉と同時に、少年を中心として白い空間が展開された。

 何物をも包むような純白の真ん中に立って、少年はもう一度笑った。


「どうしますか、この俺と、『戯蝕圏(ゲームマスター)可愛川(エノカワ)秀夫(ヒデオ)と、戦いますか?」


(どうする、戦えば勝てるか? いや、相手の戦力が未知数な上で戦うのは危険すぎる。それに加え、さっきのセリフからすると、十中八九こいつは俺のことを知っている)


「戦った場合に俺が保証するものは一つしかありません。それは、あなたの死、それだけです」


(先ずはデネブを呼んで様子を見るか、いや、喚べない! [広域な(マイワールド)る私庭(・ガーデン)]に繋げない!)


「どうしますか、降参するか戦うか早く決めてください」


(何かの方法でスキルが無効化されている! 雑魚相手ならまだしも、未知数の転移者を相手にサジタリウスだけで戦うのは無理に近い)


「待った待った待った、戦うのは拒否するよー、ボクはそこまで強くないからねー」


 あくまでもその人を食ったような態度だけは崩さずに、レクシューは言う。


「何だ、残念です。折角面白い遊びができると思ったのに」


 それと同時に、白い空間が薄れて消えた。


(白い空間がなければ、スキルは使えるか。でも、だからと言って、他に何かがないとは限らないし、あの空間だけでも脅威だ)


「……ということで、降参、ということでいいんですね?」


 確認するように、少年、可愛川秀夫は言った。


「いえいえいえ。状況はあなた方が有利そうだけれど、ボクは100%以外には賭け(ベットし)ない主義なんですよー」


「……成る程」


 殺気が放たれるのと同時に、白い空間が再び展開され始める。


「だから、ボクは、向こうで(邪神対Sランク2人)の勝負に勝った方に着きますよー」


「つまりは、ここで死ぬことを希望するのですね?」


 その言葉と同時に、トランプや賽子の絵柄のついた武器が現れ、白い結界内を回り始めた。


「でも、あの邪神の方の勝利を確信している、ということはつまり、そっちにとってはボクは無条件で仲間になる、ってことじゃない? つまり、ボクはもう実質降参が約束されたようなもの、だから殺す理由もない、よね?」


 あくまでも強気な言葉だが、レクシューの内心は冷や汗の洪水で溺れてしまいそうなほどのものだった。


「……いささか不本意ですが、あなたの言葉もあながち間違っている、というわけではありません。……どうぞご自由になさってください」


 それだけ言うと、何も起こさずに武器と結界は消えた。


 こうして、最大戦力に対する最悪の無双は、始まることなく幕を閉じた。

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