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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第肆章 誰もが知る戦争と、誰も知らない最終決戦
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070 覚醒の刻

 何で、俺はこんなことをしたのだろう。


 俺は浮かれていた。


 俺は甘えていた。


 世界の中心は俺なんかじゃない。


 かと言って、他の誰かでもない。


 誰も知らない所で、世界は勝手に廻り続ける。





 異世界召喚、そんな非現実的なことを俺は信じていた訳がない。

 けれど、夢見ていなかったかと言われると、それだけは断じて否だと言える。


 中学生までの間、オタクだということ、それだけを理由にして、俺は軽い虐めに遭っていた。

 顔は悪くない方だと思う、いわゆる平均。

 勉強はできないわけではない、いわゆる平均。

 けれど、それらの要素は理不尽な待遇を改善するだけの能力を持ち合わせていなかった。

 その頃、俺は何度も願った。

 異世界召喚、つまり、俺が主人公となれる世界を。

 そして、俺はますます非現実の世界にのめり込んだ。


 その頃は、俺の願いは叶わなかった。


 一旦は俺は諦めて、一念発起して心を入れ替え、勉強に励んだ。

 アニメを見る筈だった時間も、ラノベを読む筈だった時間も、全てを捧げて勉強に励んだ。

 県内一とも謳われる進学校に合格することができた。

 俺は主人公になれる筈だった。


 けれど、現実は残酷だった。

 虐めは皆無だったものの、俺は主人公ではなかった。

 完全無欠の主人公(藍沢白哉)の取り巻きのうちのたった一人、それが俺。

 ラブコメやら何やらが起こっても、その中心に俺はいなかった。

 いつの間にか消えるキャラではないものの、主役になんてなれやしなかった。

 今の立場は決して悪くはなかった、けれど、俺が望んでいたものではなかった。

 そんな日々を、ただ曖昧な思いを抱えつつ、それなりに現実を、非現実を、謳歌していた。


 そんな日々の中、主人公(藍沢白哉)が消えた。

 当然、とても悲しかった、掛け替えのない友人達のうちの一人だった。

 だが、最低な俺は、ある意味チャンスだと思った、思ってしまった、思っただけだった。

 けれど、俺に行動力はなく、ただ現状を受け入れるだけの力しかなかった。

 高室何某が勝手に主人公の立場を狙い始め、クラスメイトの皆は悲しみの海を必死で渡り、八十島さんだけはその海に沈み、俺は何もせずに、ただ皆に同調するだけ。

 主人公がいなくなってもそうだった、俺の立場は落ちてゆくだけだった。

 気づかされてしまった、俺には何の力も、覚悟も、意志もないんだ、と。

 無意識のうちに、俺は中学時代と同じことを望んでしまった。

 


 召喚された、そのことが明らかになった瞬間、俺は誰よりも喜んだ。

 俺の時代が来た、俺が主人公だ。


 ステータスが明らかに貧弱そうなものだった時、さらに喜んだ。

 これは明らかに主人公型のステータスであり、将来覚醒するステータスだ、と確信した。

 最弱からの逆転劇、最強へと至れる可能性、白紙に懸けられた未来、全てが俺の望んだとおりだった。


 王道勇者なんて求めていなかった、俺が求めていたのは邪道、それでもカッコいい主人公。

 俺だけのチート能力を手に入れるためには、ダンジョンに落ちることか、それとも一人だけで城を出ることか、どちらなのかはわからなかった。


 一つだけ不満な点を挙げるとすれば、俺がクラス内で虐められていなかったことぐらいだった。

 完全なる最底辺でなければ、完全なる逆転劇にならない、と思った。


 その後、城内にダンジョンがあるようなことを皇帝様がほのめかしていたので、ダンジョンに落ちる方が正解だろうと当たりをつけた。


 桐尾と熊切の二人と話し、桐尾も俺と同じくステータスが低いことがわかった。

 ダンジョンに誘ったが、桐尾は城を抜け出すパターンを選ぶと言っていた。

 俺と別のルートで主人公なのかもしれないが、城外のどこかで出遭う可能性はあるかもしれない、と思った。


 翌日から始まった訓練は大変だった。

 俺だけステータスが低く、スキルもアイテムボックスしかない状態。

 桐尾は訓練をサボっているため、俺だけが抜きん出て弱く、他の誰よりも劣る状態だ。

 けれど、決して苦痛ではなかった。

 真面目に訓練した分は、必ずどこかで役に立つと信じていたから。

 いつか最強になるためには、必要な苦労だと考えていたから。


 「勇者」の称号を持っているらしい高室とか、ほぼ全てで藍沢に次いで優秀だった八十島さんとかが、活躍しているという話をよく耳にした。

 その話を聞きつつ、いつか俺が主人公になる予定なんだ、と心の中でせせら笑った。

 そして、いつの間にかそんな思考回路になっている自分を若干嫌悪した。


 ダンジョンに行くことになったのは、召喚されてから約二週間程度の日だった。

 城の敷地内にダンジョンがあるというパターンは珍しかったが、そんなことは問題ではなかった。

 唯一気にしていたことは、ダンジョン内に崖があるかどうかだ。

 もしどこかに落ちることができる場所がなければ、俺はどうすればいいのかわからなかった。

 後で、その不安は杞憂だったと判明するのだが。


 途中で、何回か戦闘を経験した。

 かなり危うい場面もあったが、回避を中心とした戦闘を続けて、何とか魔物を倒すことができた。

 俺が武器にしていたのは黒い鈍器のような何かだったが、これがかなり役に立つ。

 一見すると重くて取り回しがキツそうに見えるが、何故かとても軽かった。

 まさにその日宝物庫で出逢ったばかりなのに、長年使ってきた相棒のように思えた。

 見た目はお世辞にも良いとは言えないが、ふと手に取ったその瞬間に、何故かこの武器を選ばなければならないような気がしたため、そのまま選んできてしまった。

 クラスメイト達がカッコいい武器を選び続けるのを見て心が揺れなかったわけではなかったが、何となく、俺の武器はこれだとしっくりきていた。

 実際に使ってみて、本当に正解だと思った。


 そんなこんなで、俺たちは10階層のボス部屋らしき所まで辿り着いた。

 噂に聞いていたが、高室はさすが「勇者」とでも言うべきか、他の生徒とは一線を画した実力を持っていて、ここまで危険はほとんど犯さずに戦闘を進めてきていた。

 誰よりも速く、誰よりも強く、皆の先頭に立って聖剣を振るっていた。

 いつかは俺が追い越す予定だが、その時は俺は勇者に全く敵わないとわかった。

 だが、俺はまだ真の力に目覚める前だ、だから、そんなことは全く気にしなかった。

 レベルは3まで上がったが、ステータスは全く上昇していなかった。

 さらに不遇だったと知って、さらに心が躍ったのは言うまでもなかった。


 「勇者」が扉を開き、それに続いて俺たちはボス部屋へなだれ込んだ。

 部屋の両側は崖になっていて、事故を装って落ちるのには丁度良すぎると思えた。

 あわよくば、この部屋のボスが強くあってくれることを望んだ。


 部屋の中心に、三つの頭を持った巨大な犬が出現した。

 所謂、ケルベロス、見るからに強敵だ。

 クラスメイトのほとんどは恐怖に震えているが、ここでも立ち向かうものがいた

 「勇者」を始めとしたクラスメイト数人、騎士団長を始めとした騎士達。

 当然、俺もその数人の中に含まれていた。

 理由は単純、主人公は逃げ惑って落ちるなどといったカッコ悪いことはしないから、だった。


 そして、適度なところでケルベロスの蹴りをごく自然に喰らい、崖から落ちた。

 全身が引き裂かれるような痛みに、蹴られて落ちるという選択肢を選んだ一瞬前の自分を恨みながら、俺は意識を手放した。


 次に俺が目を開けた時、目の前には知らない空間が広がっていた。

 成功した、俺の予想通りだ、ここから俺の時代が始まる、そう、思っていた。

 この時までは。



 とりあえず、ステータス画面を確認した。

 しかし、何も変わっていなかった。

 若干期待していたのだが、そこまで都合の良い話ではなかった。

 とりあえずは、階層内を探索することにした。


 俺が最初に見つけたのは、一つの宝箱だった。

 恐る恐るそれを開き、中に見つけたのは、豪華な瓶に入った液体だった。

 ポーションのようなものかな、と見当をつけたその瞬間、右足に恐ろしい痛みを感じた。

 振り返ると、右足にナニカが噛みついていた。


 蛇ノヨウナナニカハ、ソノ毒々シイ瞳デ、俺ヲ見据エ、牙ヲ立テ、


「ギィャアアアアアア!」


 痛イ、何デ、気ヅカナカッタノカ、ドウシテ、シヌ、


 必死の行動だったのは理解できる。

 今となっては、その判断が本当に正解だったのかはわからない。

 けれど、そのせいで生きながらえているのだから、その点では正解だった。

 無限に続くかのような苦しみを味わうようなことになるのだから、その点では大失敗だった。


 俺は、咄嗟に右手に持っていた瓶を開き、口に流し込んだ。




 それからのことは、よく覚えていない。

 わかるのは、あのポーションは規格外の代物だったこと。

 手足がなくなる程度の怪我を余裕で何回も再生できるものだったこと。

 五体満足のまま残っている身体が纏っている傷だらけの服だけが、辺りを染め上げた俺のs血だけが、何があったかを物語っている。

 ちなみに、あの蛇はいつのまにか居なくなっていた。

 決して倒したわけではない、俺に興味がなくなっていなくなったのだろうか、と思った。


 けれど、これは単なる始まりでしかなかった。


 あの後、俺は何度も例のポーション、いや、もはやエリクサーとかアムリタとでも呼ぶべき代物を、何度も発見した。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、もはや数えるのが不可能になる程度、俺は死にかけ、甦らされた。



 どうして、俺がこんな理不尽な目に。


 俺は主人公の筈ではなかったのか。


 なんで、俺がただひたすらに弄ばれているのか。


 エリクサー(仮)を飲むことをやめれば、この繰り返す苦しみから逃れられるとはわかっている。


 けれど、飲むのをやめることはできない。


 頭を、上半身を丸ごと持って行かれても、心臓を貫かれても、俺は死ななかった、死ねなかった。


 最近、痛いとすら思わなくなってきた。


 瓶の増減に、一息をつき、心を擦り減らす。


 もう嫌だ、これを繰り返すのは。


 力が、力が欲しい。


 この現状を打開できる力が。


 そのためなら、俺は主人公なんかでなくてもいい。


 ああ、そのためなら、俺は過去の自分など、捨ててもいい。


 いや、むしろ捨てるべきだろう。


 過去の俺など、脆弱で、主人公盲信者で、自分勝手で、弱気で。



 ああ、だから俺は、過去の俺と共に、全てを、世界を、喰ラッテヤル。












<精神汚染度が一定値以上に到達しました。固有(ユニーク)スキル、[暴食(ベルゼブブ)]の封印を解除(アンロック)します>


名前 ヨウノスケ=イチタニ

年齢 16

種族 普人族

レベル 3

職業 なし

適正 なし

魔力 10/10

体力 10

筋力 10

俊敏 10

精神 10

気力 10/10

スキル

[アイテムボックスlv3][痛覚耐性lv10]

固有(ユニーク)スキル

[暴食(ベルゼブブ)]

称号

[異世界人]


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