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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第壱章 神をも超え得る可能性
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007

目がさめると、そこには50代ぐらいの男が座っていた。

その男は背中に剣を背負い、見るからに筋肉質な体つきをしていた。

そして、その男の頭から犬のような耳がはえていた。

おそらく獣人の集落の戦士だろう、僕はそんな判断を下した。


「やっと目を覚ましたか。獣王様がお待ちだ。こっちへ来い」


男は立ち上がり、部屋のドアの方向に向かった。僕もそれを追って立ち上がろうとしたが、立ち上がれない。

というか、体が殆ど動かない。どうやら先日の無茶な身体行使のツケが来たようだ。


「おい、早くしろ。いつまで寝てる気だ」


戦士らしき男は不機嫌そうにまくし立てた。


「すみません。体が殆ど動かないんです」


「あぁ、なんだそりゃ。それでよくヴィンド様に勝てたなんてほざけたな。無理矢理でもいいから来い」


「そんなことを言われても動かないものは動かないんです」


そんな言い合いをしていると、ドアが開いてもう一人が入ってきた。

立派なたてがみに立派な服を着た獣人。

かなり歳をとっているように思われたが、その立ち振る舞いは年齢を感じさせないものがあった。

背中に剣を背負っていたが、その剣は戦士の男が持っている剣より明らかに立派な剣で微弱ながら魔力も感じられた。

おそらくこの集落の中で偉い方の人だろう。


「これこれ、客人にあまり無理をさせるな。それに、ヴィントは我等が集落の盟友。そのヴィントが力を認められたものならば、いかに子供といえど乱雑に扱ってはならん」


偉そうな人は言った。

この言い方からして、この集落の長とでも言う立場なのだろうか。


「じゅっ、獣王様。すみません」


戦士らしき男は明らかに取り乱して言った。

そして、どうやら僕の推測はあたっていたようだ。

けれど、集落のトップがこんなところに来ていいんだろうか。


「エドヴァルドよ」


獣王様は威厳のある口調で言った。

そして、この戦士の名前はエドヴァルドと言うらしい。


「はっ、はい」


「儂はこの客人と二人で話がしたい」


「でも、この得体の知れないやつと二人きりでは危な」


獣王はエドヴァルドの言葉を遮って言った。


「儂は話がしたいと言っておるのだ。そして、こやつはあのヴィントすらも破ったらしいではないか。殺すつもりならお主もとっくに死んでいるわい」


「でっ、でも」


「くどい。儂はこの客人と話がしたいと言っておるのだ。聞こえんか?」


「わかりました。お気をつけください、獣王様」


獣人の戦士、エドヴァルドは僕を睨むようにして退室して行った。


「すまない。あいつは仕事熱心で悪い奴ではないんだが、普人族を嫌っておってな。他の者達も殆どあんな感じだが」


「いいですよ、気にしません。ここの獣人達は普人族による迫害から逃げてきたって聞きました」


「ヴィンドに聞いたか」


「はい」


「まあいい。本題に入ろう。TKタワーの高さは?」


「333メートル」


反射的に答えてハッと気がつく。

異世界にTKタワーがあるはずがない。

そのことを知っているということはこの人も転生者かもしれない。

いや、確実にそうだろう。


「はっはっは。何か気づいた様な顔だな。そうだ。儂もお主と同じじゃ」


「では、あなたも元日本人というわけですか?」


「そういうことだ。この世界には転生者がそこまで多くはないがある程度いる。儂はお主で転生者に遭うのは四人目じゃ」


「どうして僕が転生者だとわかったんですか?」


「その歳でそこまでの強さを持つ者は転生者以外にありえんからじゃよ。お主、転生者の共通点を知っているか?」


「いいえ」


「まず、全員が生まれながらにして固有(ユニーク)スキルを1つづつ持っている。そして、生まれた時から日本人だった頃の記憶を持っている。そして、前世の経験がスキルとして生まれた時からある。そして、称号に転生者という物がある」


少し違和感を覚えた。

まず、僕は固有(ユニーク)スキルが3つもある。

それ以前に、僕のあった神は僕以外を記憶を持ったままこの世界に送ったなんてことは言っていない。

そして、この人が神にあったようには思えない。

しかし、一番の違いは僕の称号に転生者という物は存在していないということだ。


「変なことを聞きますが、転生前に神様にあったりしませんでしたか?」


「いや、そんなことはないぞ。トラックに轢かれて死んだと思ったらいきなり赤ん坊になっていたんじゃ。儂以外にもそんな奴は聞いたことがない」


神様にあったのは、僕だけのようだ。

このことはもしかしたら秘密にしておいたほうが良いのかもしれない。

そして、ここからは僕の推測だが、この世界に僕を呼んだ神と、他の転生者を呼んだ神は違う神なのかもしれない。


「そんなことより、転生者同士、情報交換をせんか?」


「情報交換?僕に提供できる情報がそんなにたくさんあるんですか?」


「まあ、言っちゃなんじゃが、お主の固有(ユニーク)スキルに興味があるんじゃ」


「なるほど。生まれて間もないのに龍をも倒せるその理由が知りたい、というわけですか」


「そうじゃ。お主が教えてくれるというのなら、儂も儂の歩んできた道のりや固有(ユニーク)スキルについて教えよう」


「わかりました。では、」


しかし、獣王様はそれを遮っていた。


「こっちが言い出したことだ。こっちから先に語る義務がある。まず、儂の固有(ユニーク)スキルは、[覇王の気概(キングオブキング)]だ。どんなスキルかというと、王たるものとしての覇気、立ち振る舞い、カリスマなどが身につく、と言う物だ。儂は20年前に、この固有(ユニーク)スキルを活かして迫害される獣人たちを束ね、ここに獣人たちの集落を作ったのじゃ。そして、ヴィントにこの集落を守ってもらうという契約をしてもらい、この集落は安泰を保たれている、というわけだ。と言うわけで、お主の固有(ユニーク)スキルを教えてくれんか?」


ここで全部教えるのもありだけれど、3つも持っているというのは隠しておくべきなのかもしれない。

なので、一番危険度が低そうな物を教えることにした。


「僕の固有(ユニーク)スキルは、[時間凍結(フローズンタイム)]です。自分の周り100メートルの時間を自分を除いて停止させる、と言う物です」


「強力じゃな。そんな物があったらさすがの龍王も勝てるわけがないかもしれんな」


「でも、一ヶ月に一回という制限があるんです」


「それでも有り余って凶悪すぎるぞ。あと、そのスキルはできるだけ隠しておいたほうがよい。嫉妬で無駄な敵を増やしかねん」


心の中で、もっと問題になりそうなスキルはあるんだけどね、と言いながら「はい」と答えた。


「それで、お主はこの集落に住むつもりなのだな?」


「はい」


「お主も知っている通り、この集落の獣人達の多くは普人族にあまりいい感情を持っておらん。それでも暮らしていく覚悟はあるか?よい関係を築くことができる覚悟があるか?」


「わかりません。けれどできるだけ頑張ってみようと思います」


「そうか。なら儂はお主にできる限り力を貸そう。そういえば、お互い名乗っていなかったな。儂はヴィルヘルム。けれど、この集落の中で儂をこの名で呼んでくれるものはおらん。獣王、と呼ばれている。ちなみに、日本にいた頃は今利 龍弥(いまり りゅうや)という名前だったわい。懐かしい」


「僕は、藍澤 白哉(あいざわ はくや)です。日本でもこの世界でもこの名前です」


「この世界の親からもらった名前はどうしたんじゃ?」


「親に捨てられた時に捨てました。もう、関わる気はありません」


「そうか。それは、、、まあいい。過ぎたことを気にしてもなんにもならん。儂はお主がいる間はお主の生活をサポートする。そして、お主がここにいる間は、もしこの集落が危険に晒されたらお主は獣人達を守ることに尽力する。それでいいな」


「はい。こちらこそ宜しくお願いします」




その後、獣王ヴィルヘルム様は、僕を集落の全員を集めて紹介してくれた。

如何に獣人達が普人族を嫌っていたとしても、獣王の求心力は絶大らしく、僕に表立って敵対したりしてくることはなかった。

しかし、当たり前ながら、獣人達と僕の関係は最初は冷え込んでいた。

集落の獣人達は誰も僕に話しかけてこない。

もし、話すことがあったとしても最低限のことだけで、話相手は獣王様だけだった。

獣王様とは、地球の文明の再現方法について語り合ったり、獣王様の転生後の苦労についての愚痴を聞いたりした。

地球のことを知っている話し相手と言うのはとても安心できるらしく、獣王様は楽しげに話し、僕も会話を楽しんだ。

けれども、たとえ小さな集落であっても統治者の仕事はとても忙しいらしい。

僕は一人孤独な日々を魔法と剣の鍛錬、スキルの取得に費やした。






獣人と普人族の間の確執はとても大きかった。

最もそれを作り出したのは普人族なのだが。

そして、それは生半可な時間や努力で埋まるものではない、はずだった。


しかし、それを変えたのは、未来を背負う者たちだった。

最初は僕を恐ろしいものを見るような目で見ていた子供たちは次第に、僕を観察するようになった。

一人で森の中で剣を振り、光や闇の魔法を使っている僕は子供達にとって好奇心の的だったのだろう。

子供たちは僕に隠れて観察しているつもりだったのだろうが、僕は時空属性魔法の空間感知で手に取るように場所がわかっていた。

なんとなく恥ずかしい気もしたが、僕はなんにも気づかないふりをした。


最初に僕に話しかけてきたのは、猫人族の少年、ダニエレだった。

少年は、少しおどおどした様子で言った。


「俺にも魔法が使えると思う?」


僕はダニエレに、アカレコ先生から言われた通りに魔法を教えた。

彼は僕ほど魔法を覚えるのは早くなかった。

むしろ、僕が異常なだけだ。

ダニエレ君は優秀な生徒と言えるものではなかったが、少しずつ努力を重ねていった。


9ヶ月後、彼は指先に小さいながらも火の玉を生み出すことに成功した。

その時の笑顔には、確執も、差別への反感も、僕への怖れも全くなく、ただの屈託のない満面の笑みだった。

獣人達はあまり魔法に適した種族ではなく、この集落においてはダニエレ君の魔法はまさに魔法だったようだ。


彼は子供達の中でヒーローとまで呼べるような存在になり、そして僕の周りにもやってくる子供達も増えた。

僕はいつの間にか、子供達の輪の中に加えられていった。

一緒に剣を振ったり、アカレコ先生の受け売りだけれども魔法を教えたり、一緒に森の中に冒険に行って低級の魔物とおっかなびっくり対峙したりし(もちろん身体強化(フィジカルブースト)は最小限である)、いつの間にか僕は、最年長でなくとも、いや、僕より年上の子供の方が明らかに多いのにいつの間にか子供達のリーダー的存在になっていた。

自分一人でできる鍛錬の時間は大幅に減ったが、それを有り余って超えるほど有意義で楽しい時間をすごしていた。

子供達が変わると、少しずつ大人達も変わっていった。

一人、また一人と僕に話しかけてくれる大人が増え、僕は次第に集落の本当の意味での一員になっていった。


「普人族全てを信用するわけじゃないが、あんたなら信用していい」


村の大人達は、そう言ってくれた。





6歳になってあまり間もない日、僕は守護龍として崇められているヴィントと森の中で出会った。

そのとき、僕は一人で、最近新しく手に入れた属性と固有(ユニーク)スキルの使い勝手を確かめると同時に、鍛錬を行っていた。

誇り高き龍はこう言った。


「強きもの、ハクヤ殿。お主の強さを見込んで頼みがある。我を、、、







       殺してくれないか?」

名前 ハクヤ=アイザワ

年齢 6

種族 普人族

レベル 8

職業 なし

適正 【光】【闇】【時空】 seacret seacret

魔力 error

体力 51

筋力 72

俊敏 91

精神 101

気力 101/101

スキル

[剣術lv2][並列思考lv9][光属性魔法lv10][闇属性魔法lv10][時空属性魔法lv6][鑑定lv4][偽装lv4][隠蔽lv4][seacret][seacret][seacret][seacret]

固有(ユニーク)スキル

[無限の心臓(オーバーエナジー)][全知の理(アカシックレコード)][時間凍結(フローズンタイム)][seacret]

称号

[seacret][seacret]

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