068 緊急事態
World view
[傲慢]
通常能力:自分よりレベルの低い相手のステータスのうちの一つ選択し、その値を任意の値に変更して固定する。
一度に大多数を相手にして発動することも可能。
暴走能力:未公開
そこにあるのは、14の席のある円卓。
各々の席にはそれぞれ彫刻が施されている。
太陽、光、闇、炎、水と氷、風と雷、土と鉄、剣、迷路、時計、王冠、巨大樹、天秤、門。
円卓周りを取り囲んで座っているのは、まちまちな服装の13人の男女。
しかし、迷路の席だけは誰も座っていない。
太陽の席に座る、金の長い髪をした女性は言った。
明らかな狼狽を顔に浮かべながら。
「緊急で最高神会議を開いたのに、すぐ集まってくれたことに感謝します。皆がどれほど知っているかはわからないけれど、この世界は大きな窮地に陥っています。それだけは理解していますね?」
時計の席に座る、執事服を着用した、銀髪の老年は言う。
「勿論」
風と雷の席に座る、ギリギリセーフな服を着た、緑の髪の少女は言った。
「そんぐらい知ってるよー」
剣の席に腰掛ける、鎧をつけた大男は言った。
「トーゼンだ」
水と氷の席に座る少女は眠っている。
「ZZZ」
天秤の席に座る、金髪の美女は言った。
「それぐらい既にわかっております」
巨大樹の席に座る、やたらと露出の多い緑色の服を着た女性は言った。
「知ってるですー」
土と鉄の席に座る、むさ苦しい、髭を生やした中年は言った。
「知っているのでアール」
王冠の席に座る、やたら派手な金ピカの衣装を着た壮年は言った。
「当然知っていますが」
炎の席に座る、いかにも暑苦しい服を着た青年は言う。
「知ってるっすよー」
闇の席に座る、紫色の髪の乙女が吐き捨てるように言う。
「知っていないわけがなかろう」
門の席に座る、ヒゲのおじいさんが言う。
「全く、大変じゃのう」
光の席に座る好青年は言う。
「ヘレナス様、このような当たり前の事項の確認に時間を割く必要はないかと思われます」
女神は、全員の確認が取れたことを満足そうに辺りを見回す。
「それもそうね。じゃあ、説明を始めるわ」
そう言うと、世界神は一旦口を閉ざす。
そして、再び口を開き、真実を語り始めた。
「まず、私たちがしなければならないのは、リビュントラの行動の阻止です。皆さんもご存知の通り、彼女は巨大なダンジョンで大陸の一区画を切り取り、そこを私達の神権が干渉できない地帯としています」
女神は、冷淡に話し続ける。
「これは明らかな反逆行為であり、決して許されることではありません。当面の目標は、リビュントラを発見して、反逆行為をやめさせること。場合によっては彼女を排除しなければなりません。よろしいですね」
円卓を囲む12人が連鎖反応のように頷く。
「ですが、我々が地上に降りると、当然ですが使う力が制限されてしまいます。短時間なら神威を使用することはできますが、勇者召喚と魔王への加護でいつもより大幅に大量の神力を消費してしまったため、長時間の使用はできないでしょう」
円卓を囲む12人が、ハッとしたような顔になる。
「また、リビュントラの狙いがこの世界の掌握だとしたら、私達を下界に降ろして罠にはめるつもりでしょう。そのため、今すぐに下界へ顕現することは危険すぎます」
「ただ、私達がいつまでも後手に回るようなことも同じぐらい危険です。私達は何が何でも今すぐにリビュントラの動向を探らねばなりません」
「そのため、私達はこの少年を狙います。全知の理からのアクセスが不可になっているため、この少年は、リビュントラの眷属、それも重要な情報を握った側近であると考えていいでしょう。それと同時に、「勇者の試練」を簒奪する際に迷宮神の神権を行使していたことから、彼女が代行者として扱っている可能性も高いです」
「私達の第一の目標は、リビュントラに関して何らかの重要な情報を握っているであろう少年、『黒葬剣』ハクアの捕縛です。そこまではご理解いただけますか?」
円卓を囲む12人が、一斉に頷く。
「けれど、前述したように、私達が直接手を出すのはリビュントラの干渉を招き、危険です。なので、SランクのことはSランクに片付けて貰いましょう、戦神アレス」
剣の席に座る男は、突然話題を振られたものの、あまり取り乱さずに答えた。
「了解だ。Sランクの奴らに依頼を出して、捕獲してもらえばいいんだろ?」
「はい、そう言う認識で構いません。ただ、全知の理から情報を得られないため、相手の戦力は未知数です。失敗されると、リビュントラは更に警備を固めるかもしれません。そうなると困るので、確実に捕獲できる布陣で戦ってください」
「Sランク集会を開くのはどうだ?」
「成る程、それも悪くはないでしょうね。ただ、間違っても『黒葬剣』に参加要請を送らないようにしてください」
「俺もそんな単純な失敗をいつもするほど馬鹿じゃねーよ。まあ、偽の参加要請は一週間遅れで送るけどな」
「罠にはめる、ということですか?」
「ああ。残りの7人でキッチリと作戦を立てた後で実行すりゃあいい。そうすれば確実に捕まるはずだ。まあ、『魔剣王』の一人が居れば大抵何とかなるんだろうけどな」
「相手の実力は未知数で、仮にも神の眷属です。くれぐれも油断はしないで下さい」
「そりゃそのつもりだ。だが、万が一捕獲できねえ場合はどうすればいい? 殺しても構わねえか?」
「ええ。捕獲が最優先ですけれど、逃してしまうよりは殺してしまった方がいいでしょう。下手に情報を持ち逃げされるより、確実にリビュントラの戦力を削ぐことに繋がります。ただし、あくまでも捕獲が最優先です。わかりましたね?」
「わーったよ。目標は捕獲、最低でも討伐。それでいいんだな?」
「若干不安は残りますが、ご理解いただけたようで何よりです。この作戦が成功すれば、確実にリビュントラの手勢を減らすことができます。運が良ければ、リビュントラの所在地まで特定でき、神威を使用して急襲することも可能です。逆に、もし失敗すれば、相手は警戒心を強め、今後こちらから仕掛けることは難しくなります。つまり、あなたの采配に私達の今後が掛っているということです。もう一度言いますが、くれぐれも失敗はなさらぬように、ね?」
「わーった、わーったよ。何があっても絶対に捕まえる、これでいいんだろ?」
「ええ。ではアレス、リビュントラの件については一旦あなたに一任します。何か情報が得られたら、すぐに報告して下さい。また、他の皆さんにも協力してもらうかもしれません。地上に降りるための仮想肉体の準備だけはしておいて下さい、いいですね?」
そう言うと、女神は一旦口を閉ざす。
「そして、私たちが解決しなければならない、同程度に危険な問題はもう一つあります。多分、この件についてはほとんど誰も知らないでしょう」
円卓会議のほとんど全員が当てはまっていたようで、11人が一斉にざわめき出す。
「創造魔法の使用が、確認されました」
創造魔法、その単語を聞いた瞬間、円卓が静まり返る。
まるで、それが何かわかっているかのように。
それがどれほど危険なのかを示すように。
「使用したのは、勇者として召喚された人物のうちの一人です。アポロン、詳細な説明をお願いします」
ヘレナスの呼びかけに応え、光の席に座るイケメンは立ち上がった。
「では、私の方から説明させて頂きます。まず、創造魔法を使用したのは、勇者として召喚された少女、セレネ=ヤソシマです。使用したのは、偶然ではなく故意。そして、その原因は彼女の所持している固有スキルとみられます。固有スキルの名前は、[限外新化]。効果内容は今の所不明です」
円卓の周囲の全員が、怪訝そうな顔を浮かべる。
「不明って、一体どう言うことかしら?」
リビュントラの質問に、アポロンは答える。
「理由は全くもって不明ですが、全知の理では答えが調べられない範囲にあるということだけはわかっています。詳細な効果はわかっていませんが、ある程度の予想はついています」
「どんな効果なのですか?」
「多分ですが、世界の法則への干渉能力、と思われます」
再び、円卓の周囲は喧騒に包まれる。
それを割るように、世界神は言い放つ。
「静かにしなさい。今は、アポロンの説明を聞きましょう。対策を立てるのはその後で良いです。ではアポロン、そう判断した理由を教えて下さい」
「はい、理由としては、彼女の特殊性が挙げられます。まず、成長速度が異常に早いこと。彼女は神聖属性を所持しているのですが、1日の訓練で魔法が使用可能になっていました。神聖属性は最上位属性で、最もスキルレベルが上がりにくいはずなのに、たった1日です。これは、[異世界人]の成長補正などで説明できる範囲を大幅に超えて、まさに異常としか言いようがありません。二つ目は、彼女は[剣術]スキルを、剣を使用せずに行使していました。腕に[剣術]スキルを適用し、武器にするなどと前代未聞です。最後の理由は、創造魔法の使用です。彼女自身は[神聖属性魔法]の派生として扱っているようですが、通常では体の部位の再生程度が限界です。これらの理由から、彼女の固有スキルは世界の法則への干渉能力、つまり、私達の神威や神権に近いものだと推測できます」
「ちょっと待って、と言うことはあなたは神権に近い固有スキルが生まれるほどの神力リソースを彼女に回したの?」
「いいえ、そんなことはするはずがありません。[聖女]だから他よりは多めに神力リソースを配分されているでしょうが、その程度では神権には遠く及びません。元々何かを所持していたとしか考えられないでしょう」
「では、あなたは彼女をどうするべきだと?」
「我々神の制御下にない莫大な力は、あまりにも危険すぎます。力をつけないうちに、騙し討ちなどで早めに殺してしまった方が良いでしょう。聖なる審判を動かして、早めに処分させましょう。他の方々も、自分で手を出さない範囲での対処をお願いします」
「私はそれに同意します。では、皆さんは?」
『「異議なし」』
「では、これで一旦最高神会議は終了とします。各々準備を開始して下さい」
1000ポイント到達しました、これも皆様のお陰です、本当にありがとうございます。




