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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第参章 歪んだ勇者達へ、
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064 勇者失格

World view

潰魔師(キャンセラー)』バーナードは、魔法を消す固有(ユニーク)スキルを所持している。

故に、魔術師は彼を倒すことは不可能に近い。

ただ、剣の腕もAランク上位に匹敵する上に、バーナード自身は魔法を使えるので、近接戦闘が得意であっても倒すことは難しい。

 俺は勇者失格だ、そうに違いない。


 今までに、何度思ったことだろう。

 数えると、両手両足の指を用いても足りなくなる。


 まずは最初の日、桐尾、市谷、そして、八十島さん。

 もう少し俺がリーダーシップを持っていれば、もう少し俺が人の心を判る事ができたら、もう少し俺が強ければ、もう少し俺が頼りになれば。

 何で、何で、何で、何で、何で。


 柔らかい最高級のベッドだったのに、俺は一睡すらできなかった。



 次の日になり、訓練の時間が始まった。

 けれど、訓練に参加する生徒の数は2人しか変わらないものの、その表情は大幅に変わっていた。

 戦うことに対する恐怖、近づき過ぎた死への畏怖。

 その顔にありありと浮かんだ負の感情を、俺には消すことができない。

 俺は、誰かの希望になることはできない。



「戦闘中に考え事とは随分余裕だな、死にたいのか?」


 騎士団長は、今日も容赦なく剣を振るってくる。

 昨日ケルベロスにやられて死にかけていたのが嘘のような剣さばきだ。

 その上、なんだか今日はいつもに増して機嫌が悪いようで、いつも以上に容赦がない。

 ダンジョンに潜った御蔭で多少レベルが上がったのだが、俺はまだ全く歯が立たない。

 この分だと、ダンジョンの中でも、俺は完全に足手まといだったに違いない。

 こんなんで魔王を倒せるのだろうか、そう思ったのは1回目ではないが、今回の懸念は、今まで以上の重みを持って俺を押し潰しにかかった。




「そんなに打ちひしがれて、お前らしくもないぞ」


 親友の言葉は、俺を心配した心の底からの本音なのだろう。

 中学校時代から親友として過ごしてきたのだから、俺にはそう判る。


 でも、違うんだ。

 みっともない負け組筆頭、それが俺だ。

 それは、俺が作ってきたただの幻想、カッコつけてきただけ。

 誰かを引っ張れるような逸般人でもなく、ただの一般人。

 藍澤白哉のような完璧超人でもない、運動や勉強は多少はできても、多少のレベルに収まる範疇。

 何でそんなやつに勇者の称号が授けられるのかも分からないような、取り柄のない凡人。


 でも、それでも、俺はそんなことを決して認めるわけにはいかない。

 認めてやるものか、何があっても。


「そうだな。大丈夫、訓練で騎士団長に打ちのめされて少し凹んでいただけだ」


 偽りの笑みを浮かべ、俺は何度でも立ち上がる。

 俺にはもう、それ以外に残っているものが何もないからだ。

 歪んだプライドと、称号だけの[勇者]、それが俺を構成している大部分だ。



 その日の午後、魔法の練習の時間。

 今までは午前の訓練と同様に騎士団員に教えて貰っていたのだが、今日は騎士団長が全員を集めた。

 訓練中に全員が集められたのは、あの悪夢の迷宮探索に次いで2回目だ。

 全員の脳裏にあの日が蘇り、自然と表情が強張る。

 しかし、不快な表情を隠そうともしない騎士団長が言ったことは、俺たちの想像とは違ったことだった。


「今までは、私たち騎士団が君たちに魔法を教えていた。だが、今日からは違う」


 騎士団長は、一度言葉を切った。

 それと同時に、不安の表情が疑問の表情へと変化する。

 騎士団の教育も決して悪くはなかった。

 なのに、なぜ今更になって変わるのだろうか、と。


「これは、君たちの昨日の迷宮探索での結果と、迷宮の入り口での醜態を鑑みてのことである。私たち騎士団は君たち勇者に戦闘の訓練をつけるのに役不足である、と皇帝陛下は判断なされた。そのため、魔法の訓練の教官が変更になる」


 その瞬間、俺は団長の不快そうな表情の訳を知った。

 勇者への教職解任とは、実質的には戦力外通告とそう遠くない。


「なお、本来は個人訓練も指導役が変更になる予定だったが、適任者が見つからなかったため、個人訓練は引き続き私たち騎士団が指導する」


 騎士団の矜持はそれでギリギリ保たれたとでも言うべきか、もはや保たれる矜持もないのか、それのどちらかは分からない。

 けれど、騎士団員は皆、苦汁を舐めさせられたと言うことだけは確かだ。

 きっと、これは全て俺のせいだ。

 俺が強くなれなかったから、俺があまりにも弱いから、俺が「勇者」に相応しくないから、騎士団員にこんな思いをさせてしまっている。

 もう絶対にこんな醜態は晒さない、と心の中で固く決め、右手の拳を固く握り締めた。


「では、魔法の指導役を紹介する。私たち騎士団に変わって君たちの教官となるのは……」


 そう言うと、騎士団長は一度沈黙を挟んだ。

 そして、再び口を開いた。


「Sランクパーティー、『白の双櫃』だ」


 その瞬間、場の空気が明らかに変わった。

 Sランク、その言葉の意味を俺たちは知っている。

 直接聞いたわけではないが、騎士たちの話からその片鱗についてはわかっている。

 そして、昨日俺たちを助けたのもSランクのうちの一角を担う、『(ブラック)葬剣(クリメイション)』ハクアだと聞いている。


 一騎当千(ワンマンアーミー)の化け物。

 凡人では絶対に手の届くことのない、ヒトを辞めた者達。

 昨日、そのうちの一人の力を実際に目にした。

 「勇者」である俺が、絶対に敵わないと思った人物。

 それと同格の人外物が、今日ここに来る。


 けれど、入ってきた人物は、俺が勝手に思い描いていた人物像とは真逆だった。

 俺たちとはあまり変わらないような年ごろに見える、金髪翠眼の美形。

 着ている服は薄水色のロープで、ある程度の高級感を醸し出している。

 それに加えて、5人のタイプの違う美少女が揃っている。

 全員が金髪の少年を見ていることに気づき、若干少年に嫉妬した。


「僕が、ただいまご紹介にあずかりました『白の双櫃』のパーティーのリーダーを努めさせて頂いている、ライ=クレアーレです」


 金髪の少年は、穏やかな口調で、そう告げた。


「一応Sランクで『四色舞(ザ・カラフル)』と言う物々しい二つ名を頂戴していますが、まだまだ冒険者歴はそこまで長くなく、若輩者です」


 これがSランクで人類最強の一角なのだろうか、そう思うほど腰の低い喋り方だ。


「けれど、今回勇者様方の魔法の指導役という大任を仰せつかったからには、精一杯努力してまいります。至らないところもあると思いますが、少しの間よろしくお願いいたします」


 そう言って、Sランクは深く頭を下げた。

 今までのを見る限り、かなり穏やかそうな人だ。

 騎士団長からのスパルタに比べれば、少しは楽になるかもしれない。

 そう思い、少しだけ心が楽になった。



 その後、俺たちはいくつかのチームに分けられた。

 Sランクパーティー『白の双櫃』のメンバーは、合計で6人しかいない。

 そのため、パーティーメンバー1人当たり6人から7人を教える計算になる。


 俺を含めた、騎士団長が見込みありと判断した人物は、リーダーにして唯一のSランクであるライ=クレアーレから教わることになった。

 きっと、俺は「勇者」だからと言う理由だけで選ばれているのだろう。

 俺以外に相応しいと思える人物を騎士団長はきっとたくさん見つけているが、「勇者」を外すわけにはいかないから俺を入れているだけなのだろう。

 お飾りでも、俺は「勇者」でいたい、いつの日か本当の勇者になるために。



「では皆さん、魔法を戦闘中に使う時、一番大切なことは何か分かりますか?」


 魔法の訓練、と言うより授業に近いものは、そんな質問から始まった。

 さつきがおずおずと手を挙げて、自身のなさそうな声で答える。


「えっと、、威力ですか?」


「はい、確かに威力も大切です。けれど、それ以上に大切なものがあります」


 魔法は威力の高いものを使う、それ以外に必要なものは何だろうか。

 発動時間だろうか、魔力効率だろうか、とりあえず手を挙げる。


「発動時間、でしょうか?」


「はい、半分正解です。魔法を戦闘中に使用する際に大切なことは、極力早くその時に最適な魔法を放つことです」


 当然のことじゃないか、と心の中でツッコミを入れる。

 けれど、それを見透かしていたように、金髪の少年は続ける。


「当たり前のことだ、と思ったかもしれません。けれど、これは出来ていると思い込んでいても、出来ていない方が多いです」


 翠の瞳で俺たちを見渡して、世界最高峰の魔術師は言う。


「ではあなた、今までにどれぐらいの種類の魔法を覚えましたか?」


 いきなり質問を振られて驚くが、きちんと冷静に対応する。


身体強化(フィジカルブースト)と、光球(ライト)光矢(ライトアロー)火球(ファイアボール)火矢(ファイアアロー)の五種類です」


「成る程、魔法を習い始めたばかりのレパートリーとしては豊富ですね。では、その内で戦闘に使用したのはどれですか?」


身体強化(フィジカルブースト)だけです」


 だってそうだ、戦闘中に詠唱なんて、


「詠唱などできるわけがないから、でしょう? 当然、前衛で剣を使って打ち合いをしながら詠唱をするのは無理です。だから、詠唱をしなければいい」


 と、その瞬間、酷い理論が飛んできた。

 無詠唱、つまり詠唱を無しに発動する魔法の存在は聞いたことがある。

 けれど、それは同じ魔法でも、詠唱ありと比べて極めて多量の魔力を必要とするはずだ。


「当然無詠唱で魔術を普通に使うのは無茶です。僕でもすぐにガス欠を起こしてしまいます」


 少年は少し大げさに肩をすくめて、言う。


「だから、こうします」


 と言った瞬間、少年は指を鳴らす。

 その瞬間、俺の足元に土の塊が現れると、ボロボロと崩れ落ちた。


「この魔法は地牢(アースバインド)を極限まで小さくして、一瞬だけ硬度を高めたものです。当然、消費魔力はかなり抑えられます。けれど、相手が走るその一瞬に合わせてこの魔法を使えば、簡単に転ばせて隙を作ることができます」


 確かにこれは凶悪だ。

 走っている間に使われたら、対処できずに転ばされてしまうだろう。


「皆さんには、切り札としての無詠唱魔法を覚えてもらいます。無詠唱で強力な威力の魔法は使えませんが、一瞬で使える魔法は戦況をひっくり返すこともあります」


 そう言って、Sランクは微笑んだ。


「ああ、当然ですが、詠唱魔法の練習も継続してもらいます。そちらの方が使いやすい時の方が多いので」


 悪魔の微笑が騎士団長の不機嫌そうな顔と重なった、ような気がした。

 


名前 コウキ=タカムロ

年齢 16

種族 普人族

レベル 9

職業 勇者(固定)

適正 【光】【火】

魔力 3012/3012

体力 2513

筋力 2234

俊敏 1765

精神 1023

気力 1023/1023

スキル

[剣術lv4][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1][魔力操作lv3][火属性魔法lv2][光属性魔法lv1]

武技(アーツ)

聖剣:

固有(ユニーク)スキル

[勇気の誓い(ブレイブハート)]

称号

[勇者][異世界人]


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