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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第参章 歪んだ勇者達へ、
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056 「勇者の試練」

World view

固有(ユニーク)スキルの中でも極めて異質なものは、大罪スキル。

他のものと比べて、効果もかなり破格である。

「では、君たちには今日から実戦訓練を行ってもらう。具体的に言うと、ダンジョンに潜ってもらうつもりだ」


 騎士団長は、そう言った。


 これまでの訓練中などのちょっとした話から、ダンジョンというものについて聞いたことは何度かある。

 曰く、その中は外の世界と異なる。

 曰く、その中には魔物が発生するが、外に出てくることはない。

 曰く、奥に進めば進むほど魔物が強くなる。

 曰く、発生原因は完全に不明。

 曰く、宝箱があったりもする。

 つまり、不思議空間というわけだ。


「だが、そんな訓練用の武器では、物足りなかろう。今から実践用の武器を与えてやる。私についてこい」


 そう言い放ち、ルイン団長は一人勝手に歩き出した。

 慌てて、俺たちもその後を追った。



 豪華絢爛な、金の竜の装飾がなされた扉の前に、俺たちたどり着いた。

 団長は鍵をどこからともなく取り出し、宝物庫の鍵を開けて、扉を開け放った。


「ここは、一応宝物庫だ。好きな武器を選んでくれて構わない」


 けれど誰もが、勿論俺も、その言葉をあまり聞いていなかった。

 それは、その部屋の中の光景に釘付けになっていたから。

 金銀財宝、様々な武器、鈍く輝く鎧、光る宝石、などなど、宝物庫内の宝の山の数々に。


「あの、お前ら、一つだけだからな」


 そんな騎士団長の言葉は、また無視される運命にあった。


 夢中になって自分に合う武器を、誰も彼も探している。

 俺もクラスメイトと一緒になって武器を選び始めようとしたところに、団長は肩に手を置いて言った。


「ああ、そうだ。勇者は専用の武器があるから、ここで選ばないでおいてくれ」


 と、酷い扱いを受けた。



 30分、1時間、1時間30分、どんどん時間は経過してゆく。

 それに伴って、宝物庫から満足そうな顔で、未だ悩んでいるような顔で、クラスメイトが一人ずつ出てくる。

 それぞれの手に、何かしらのものが握られている。

 俺は、騎士団長と一緒にクラスメイトを待つだけだ。

 なんだか、勇者なのに不遇な気分がしてきた。


 ほとんどが、自分に合うような武器を持って出てきている。

 例えば、日暮は盾を。

 名塩は杖を。

 八十島さんは……なぜが日本刀っぽいものを手に持っている。

 なんでこんな世界に日本刀があるのかはわからないが、日本刀のようなものがある。


 それ以上に変わったものを持っている奴もいる。

 市谷は……何やらよくわからない黒い鈍器のようなものを所持している。

 上越先生は……これは本格的にダメだ、インゴットのようなものを持っている。

 これでどうやって戦うのだろう、本当に気になる。



 そんなこんなで、俺を除いた全員の武器の選定が終わった。

 そして、俺の武器が渡される時間がやってきた。



 城の中庭の真ん中に、光り輝く剣がある。

 土台に深く突き刺さった、見るからに重そうな大剣が。

 

「これが、遥か太古の昔からあるという聖剣だ。勇者でなければ抜くことを許されない。というわけで、適当に抜いてくれ」


 伝説の聖剣の扱い、軽すぎませんか?


「大丈夫だ。一応勇者なのだから簡単に抜けるはずだ。めんどくさいから、早く抜いてくれ」


 ……これで聖剣がきちんと抜けなかったらどうしよう、そう思った。


 結局、聖剣はとても軽く引き抜けた。

 驚くことに、訓練用の武器とさえ比べてかなり軽く、例えるのならばプラスチック製の玩具の剣並みで、不安になった。

 これ自体も聖剣の力と言っていたのだが、それでも不安になるのは避けられない。 

 それでも、軽いと感じているからこそ大丈夫とはっきり騎士団長が言っていたので、大丈夫だと信じることにしよう、一応は。



 なんとなく頼りにならない聖剣を手に入れた後、俺たちはまた中庭に集められた。

 けれど、そこは、今まで行ったことにない場所である。

 中庭、と言っても一番の端。

 白く輝く壁で囲われた中庭の荘厳な風景に、全く持って似つかわしくないソレは、中庭の端にポッカリと口を開けていた。

 其れは、一言で言い表すのならば、洞窟のようなモノ。

 其れこそが、俺たちが今日侵入するダンジョン、「勇者の試練」である。


「それでは、武器も用意できたところで、君たちにはここに入ってもらう。だが、決して無理をすることにないように。君たちが死んでも私自身は構わないが、勇者の一人が死んだとなると大いに士気が下がる。そして、私の責任問題にもなる」


 相変わらず、騎士団長は酷い。

 

「だから、もし危険な場合は、なりふり構わず、騎士団員に後ろを頼んで逃げ出せ。私の部下たちは、それぐらいでくたばるような弱者ではない」


 けれど、とっても頼りになる。


 

 俺たちはまるで遠足に行くような気分で、ダンジョンの中に侵入した。

 実際のところ、ほとんど誰もがそう感じていた。

 そう、誰もが……


 「勇者の試練」の中は、うす暗いけれど前が十分に見える程度の明るさだった。

 入り口から差し込んでいると言っても限度がある。

 どこにも光源らしきものは見当たらないのに、なぜ光があるのだろうか。

 もしかしたら魔法のようなものなのだろうか、とは思ったが、説明を求めるだけ無駄だと思い、何も聞かずに進むことにした。

 

 

 少し進んだところで、四つん這いのナニカの集団が、まるで湧き出すように現れた。

 そいつらは、蟻をとても大きくしたような姿をしている。

 まるで、ルーぺで拡大されたような蟻を見ているような気分だ。

 ただし、決定的に違うところは、その凶暴に輝く赤い目。

 もう一つの違いは、こいつらはただの蟻とは違って、俺たちの命を害する危険性があるということだ。


 クラスメイトの女子たちが驚き、グロテスクなその容貌を怖がっているところ、それをかばうように騎士団長を筆頭とした騎士4人が飛び出した。

 騎士団長は剣を構えると、大声で叫んだ。

 


「お前たちはまずは下がっていろ。ここは私たち騎士団が見本を見せる。行くぞ!」


 騎士団長は、部下3人と共に巨大な蟻達に立ち向かっていった。



 騎士団長達の動きは圧巻の一言に尽きた。

 巧みな連携で、蟻達を全く寄せ付けずに一匹ずつ確実に葬っていった。

 かなりの数いたはずの蟻が、数十秒程度で一匹残らず片付いてしまった。

 本当に勇者が必要なのか、俺がそんな疑問を持つのは初めてではない。



 その後、騎士団の人たちが見せてくれたように俺たちも頑張って戦った。

 騎士団のようにうまくはいかないが、なんとか魔物を相手に奮闘して、勝利を挙げることができた。

 途中で危ない感じになっている生徒もいたが、そこには騎士が助けに入っているので、大怪我をする様なことにはなっていない。


 ただし俺は、結構楽に相手をすることができた。 

 プラスチックの様に軽い聖剣を縦に、横に振るだけで、魔物が簡単に切れてゆく。

 俺以外に苦戦をしていないのは、たったの3人。

 何故か拳銃らしきものを手に持っている天城。

 魔物相手に目を輝かせながら手に持ったインゴットで撲殺しまくっている上越先生(白衣)。

 そして、何故か、熊切も慣れた様子で無双していた。

 理由は不明である。



 なんやかんやあって、俺たちは無事に10階までたどり着いた。

 10階の最奥には、えらく豪華に装飾された巨大な扉が佇んでいた。

 騎士団長はその前で立ち止まると俺たちの方に向き直り、大声を出して言った。

 

「それでは、今日はこの先にいるであろうボスを倒すまでで終了にする。各自警戒する様に。では、行くぞ!」



 俺たち全員は、扉を開けて入った騎士団長の後に続く。

 そこは、狭っ苦しいダンジョン内には相応しくない、かなり開けた空間だった。

 正面には、今俺たちが入ってきたのとよく似た扉が口を閉じて待ち構えている。

 けれど、左右は崖の様になっており、落ちたら最後、飛行魔法が使えない俺たちでは助かりそうにない。

 部屋の中心からは、なんとなくだが、何か得体のしれないものが渦巻いている様な気がする。

 そんなことを思っていると、俺たちが入ってきた扉が閉じる音が聞こえた。


「来るぞ、全員、戦闘準備をしろ!」


 騎士団長が叫ぶとほぼ同時に、部屋の中心のモヤモヤは実体化した。


 其れは、黒き狗。

 其れは、巨大な狗。

 其れは、三つ首を持った狗。

 10メートル以上の巨体を持つ三頭犬(ケルベロス)が、そこに降臨した。


 俺たちは誰もが戦慄していた。

 その巨体に、存在感に、威圧感に。

 その雰囲気に、飢える獣の如く輝く紅い双眼に。


 騎士団長は、全く違う意味で、同じ様に戦慄していた。


「ありえない、なんで、こんな階層に……こんな化け物がいるんだよ!」



 俺はすぐさま[絶対鑑定]を発動させた。

 この能力は、相手のステータスを丸裸にする能力。

 騎士団長から、失礼だから人に対しては無闇矢鱈と使うなと言われている能力。

 例えば、見た相手が騎士団長だったらこの様に見えた。



名前 ルイン=ウェストファリア

年齢 48

種族 普人族

レベル 117

職業 剣聖lv12

職業履歴 見習い剣士 剣士 剣豪

適正 【水】

魔力 713/713

体力 3014

筋力 2895

俊敏 3001

精神 945

気力 945/945

スキル

[超越剣術lv3][魔力制御lv6]

武技(アーツ)

剣:スラッシュ クロスレイ スペクタル オーバードラッシュ 

固有(ユニーク)スキル

[剣聖(ソードマスター)]

称号

[剣聖][騎士団長]


 特に何も説明されなくてもわかる、明らかな強者だ。


 だが、ケルベロスはその明らかに上だった。



名前 なし

種族 三頭犬(ケルベロス)

レベル 166

適正 【闇】

魔力 194713/194713

体力 178845

筋力 241012

俊敏 74512

精神 6712

スキル

[魔力掌握lv2][闇属性魔法lv4][顎力強化lv3]

固有(ユニーク)スキル

なし

称号

なし


 今の俺では、背伸びしても勝てる相手ではない。

 それだけが、たった一つ確実なことだった。



「全員、散開しろ! お前たちはこいつに絶対に近づかず、なんとしてでも逃げる方法を考えろ! ここは私たち騎士団が相手をする!」


 騎士団長の叫び声とともに、クラスメイトが一斉に逃げ出した。

 今しがたくぐってきた扉に取り付き、なんとしてでも開けようと力を込める。


「なんで、何で開かないのよ! こんなところで死にたくないわよ!」


 若干ヒステリックになりつつ、涙まじりに扉を叩く。

 そんな女子たちとは真逆に、騎士団長を始めとした騎士たちは何としてでもケルベロスにとり付いている。

 けれど、一人、また一人と凶悪な前足の犠牲となってゆく。


 その中で一人、騎士団長だけは何とか戦い抜いていた。

 圧倒的な戦力差を前にしながらも、長年の経験と努力の結晶である、巧みな技で何とか凌いでいる。

 その姿は、俺なんかよりも遥かに勇者に相応しい。



 クラスメイトの男子の数人は、何とか勇気を出してケルベロスと戦っている。

 ポーションや爆薬などを使いこなし、ケルベロスの動きの妨害に努める熊切。

 クラス1弱いのに、果敢に立ち向かっていこうとする市谷。

 盾で仲間を守る日暮。

 そして、もう一人は、この俺だ。


 雑魚相手には溢れんばかりの笑みを浮かべて参戦していた白衣も、今回は逃げに回っている。

 今回ばかりは、逃げていても責められるなどといったことはないのだが。

 むしろ、逃げる方が当たり前だ。


 俺たちは、騎士団とともに、何とかしてケルベロスを討伐しようと剣を振るった。


 

名前 コウキ=タカムロ

年齢 16

種族 普人族

レベル 6

職業 勇者(固定)

適正 【光】【火】

魔力 2013/2013

体力 1714

筋力 1934

俊敏 1223

精神 945

気力 945/945

スキル

[剣術lv3][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1][魔力操作lv2][火属性魔法lv2][光属性魔法lv1]

武技(アーツ)

聖剣:

固有(ユニーク)スキル

[勇気の誓い(ブレイブハート)]

称号

[勇者][異世界人]


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