055 暗躍する世界最凶
World view
内部搭乗式魔像兵士③
前回説明したもの以外に、特注型の、世界に一体だけのものがいくつかある。
その中でもひときわ異質なのは、『魔像使い』専用個体、『極龍騎士』
性能としては、Sランク冒険者に軽く匹敵する。
最初の僕の課題は、戦力の確保だった。
僕単体としての戦力を疑うわけではないが、一人では完全に力不足である。
神を相手にするのだから、戦力も有り過ぎて困るなどといったことはない。
一対一ならば勝てる自信はあるが、相手は初回のように一人ずつバラバラになっている、などといったことはないだろう。
あれは迷宮神が特殊だっただけである。
今回だけは、神達に気づかれてはいないと思うが、次回からはそうはいかないだろう。
神を殺すものがいる、そう考えつくのならば、バラバラに別れるような愚を犯すなどといったこともすぐになくなり、戦力を結集させて僕を叩きにくるに違いない。
無限回廊の最深層に一人づつ誘い込んでから殺していくのであれば話は別だが、そんなことは現実的に不可能である。
もし仮に、万が一、それが可能だとしても、僕の限界が殲滅終了前に来る可能性は十分にある。
よって僕は、戦力確保と称し、全てのダンジョンマスターに対してスカウトという名の脅迫行為を行うことにした。
方法はいたって単純かつ簡単だ。
まず、ダンジョンを突破する。
ダンジョンマスターの喉元に剣を突きつけつつ勧誘をする。
納得してもらえたら眷属化、そうでなかったら強制隷属を使用する。
最後に、ダンジョンの最深層を神権で黒冥城の1階と接続する、無限回廊と同様に。
こうすれば、いたって平和的かつ安全かつ効率的に戦力の確保ができるというわけだ。
この方法では、相手のダンジョンの最深層に転移するのではなく、一から攻略するというところが大切である。
迷宮神の神権を奪った僕は、どこのダンジョンであっても最深層までの構造を把握することが可能である。
極論、ダンジョン内ならばどこであっても時空属性魔導で転移が可能だ。
ただし、僕はあえてこれをしないことにしている。
相手の仕掛けた全てのギミックを、魔物を、罠を突破し、そして最深層まで到達することで相手の心を完全にへし折るのだ。
この成果もあってか、僕は今まで、ほとんどのダンジョンマスターの説得に成功している。
今まで強制隷属の餌食になったのは、たったの二人だけだ。
そして、この戦力確保もほとんど完了している。
知る限り全てのダンジョンを攻略し、ダンジョンマスターがいるところは戦力として引き込み、いないところはダンジョンの管理権を奪取することに成功している。
ただし、世界五大迷宮はもともと無限回廊の最終層から分割管理していたので、攻略をしていないが。
それは同時に、現在の僕の本拠地としている黒冥城の1階からは、世界中のほぼどこにでも行けるようになったということを意味している。
現在、元ダンジョンマスター且つ現配下の全員には、ある命令を下している。
これが終了する頃には、かなり多大な数としての戦力が確保できるだろう。
それに並行して、僕が今現在目指しているのは、世界でたったひとつだけ、僕の支配下にないダンジョンである。
世界五大迷宮と同様の、神造迷宮。
五大迷宮と同じにして同じでない、6番目の五大迷宮。
どのダンジョンとも、全く違った意味を持ったダンジョン。
ほとんど知られていない、隠れたダンジョン。
転移陣ではなく、転移門によって階層が繋がっているダンジョン。
一般人の侵入は不可能なダンジョン。
その名は、「勇者の試練」。
文字通り、勇者を育成するためだけにあるダンジョンだ。
僕の現在の目標は、「勇者の試練」を僕の管理下に置くこと。
そこを管理下に置くことにより、全てのダンジョンが僕の手中に収まる。
また、「勇者の試練」は、もう一つの大きな意味も持っている。
それは、勇者という戦力の監視が簡単にできる、ということ。
ここまでで、全ての必要条件はほぼクリアされる。
目標を達成したら、次のアクションで、世界を賭けた小規模な戦争の宣戦布告を行う予定だ。
「勇者の試練」は、リンドロート帝国の城の敷地内にある。
冒険者には、ほとんど全く知られていない。
知っていたとしても、城の敷地内にダンジョンがあるけれど、騎士団が管理していて入ることができない、ということぐらい。
僕が知っている情報としては、それに加えて、迷宮神の神権による具体的な場所、そして、迷宮神リビュントラが何故か自ら管理権を放棄したダンジョンである、ということだ。
何故なのかは、大体当たりがついているが。
というわけで、僕は帝都を目指して歩いていた。
僕が転移せずに、わざわざ歩いているのにも理由がある。
まず一つは、魔力の節約。
魔力の最大値はかなり大きくとも、前のように無限ではない。
転移による消耗は結構大きいため、極力使いたくはない。
もう一つの理由は…………
前方の空間探知に、複数名の男を捉えた。
盗賊といっても差し支えのない感じの男たちだ。
とりあえず、隠れながらこっちを狙っているように感じた。
なぜ気づいているのか、とは全く不思議に思わなかった、自分に認識阻害の魔法をかけていないからだ。
今から認識阻害をかけたら、襲撃されることはないが、それでは本末転倒だ。
ここで相手の精神を乗っ取ることもできるが、先手攻撃はできれば魔物以外にはしない主義だ。
できれば出てきてくれよ、と思いつつ、この先の展開についてはすでに予想がついていた。
僕が彼らの隠れている場所を通り過ぎようとした時、後ろから全員が一気に飛びかかってきた。
まあ、これは予想通りだ。
すぐさま、無属性魔術の威圧を発動する。
ただ単に魔力を放出して相手を脅すための魔法、ただし、相手が大幅に格下の場合は、意識を奪い、最悪の場合死に至らしめる。
今回は手加減したから全員生存しているが、ほとんど全員が気絶している。
唯一何とか意識を保っている首領らしき男も正気を失って錯乱状態になっている。
目は虚ろったまま、言葉にならない何かを口走っている。
「襲ったのが僕で、本当に良かったですね。何しろ、僕は善良なので、あなたたちを殺すようなことはしません。勿論、犯罪奴隷として売るようなこともしません。あなたたちには、」
僕は未だに怯えで震えているそいつの頭の上に手のひらを乗せ……
深淵属性魔法 精神支配
「一生、僕の下僕として働いてもらいます」
僕は、無駄な殺戮はしない。
いかなる悪人であっても、殺す必要がなければ殺さない。
生かすことによって僕にメリットがあるのなら、できるだけ生かしておく。
僕は、無駄でない殺戮はする。
いかなる善人であっても、殺すことが僕にとってメリットがあるのなら、迷わず殺す。
今回のこれは前者。
いなくなっても社会から感知されないという恐ろしく都合のいい者達を、どうしてそのまま放置して置くことができようか。
そんな有能な人材を、どうして強制的にスカウトしないわけがあろうか。
「塵も積もれば山となる」と昔の人は言った。
昔の人は上手いことを言ったものだ、とは思う。
けれど、この言葉には少しだけ間違っている点がある。
正しくは、「塵も積もれば山に見える」だ。
前回の戦争は後者。
個人的な意趣返しも兼ねているが、僕がわざわざ戦争に赴いた主な理由は、Sランクに昇格することである。
予定通り、僕はSランクに昇格し、ギルド本部に入る権利を手にいれた。
それと同時に、圧倒的な脅威を振りまいた存在として認識されることで、僕に権利目的で無駄に干渉してくれるような馬鹿に対する牽制となっている。
これは、ある程度自由に活動するためには必須の条件だ。
そしてもう一つ、僕の悪印象を若干でもいいから植え付けるため。
全ては、この世界の未来のために。
全ては、僕のために。
「では、最初の命令を下します。黒冥城1階まで行き、そこで指令に従って下さい」
帝都についたのは、それからしばらくのことだった。
前ライ君達とこの門を通った時は、たくさんの盗賊を引き連れていたため大変だった。
今回は、それと比べれば楽だ。
Sランクのカードさえ見せれば、特に詮索されることもなく、簡単に通してもらえるはずだ。
冒険者ギルドは、やっぱり賑わっていた。
前回来た時とあまり変わっていない。
けれど、その中で一人だけ面白い奴を発見した。
名前 セイジ=キリオ
年齢 16
種族 普人族
レベル 243
職業 勇者(固定)
適正 【光】【風】【雷】
魔力 33021/33021
体力 42591
筋力 29912
俊敏 58235
精神 38123
気力 38123/38123
スキル
[上級剣術lv6][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv10][魔力制御lv4][光属性魔法lv7][風属性魔法lv10][気配察知lv8][魔力回復上昇lv10][雷属性魔法lv4][魔力隠蔽lv3][改竄lv5][危険感知lv10][料理lv2][隠密lv7][毒耐性lv4][精神耐性lv4][記憶力lv1]
武技
聖剣:セイントクロス スラッシュレイ ブレイブアップ
固有スキル
[技能取得]
称号
[勇者][異世界人][雷の到達者]
どうやら、今回召喚された勇者のようだ。
多分、一人だけ抜け出して来た感じだろう。
世界的には強者の分類に入るのだろうが、僕が戦った場合、僕が負ける要素はない。
相手が限界突破を使って来たとしても、僕のステータスとは未だ4桁以上の差がある。
どう考えても、敗北の可能性は限りなく0に近い。
どんな相手だとしても油断するのは禁物だが、かと言って必要以上に警戒する必要はないだろう。
とはいえ、僕自体は負けないとしても、僕がいないところで重要な計画を潰されるのは困る。
今、誰であっても、僕の計画を邪魔されるのはまずい。
第一の計画を完遂することだけを目的とするのならば、今すぐ消し去るのもアリだ。
けれど、その次の計画において、殺してしまったことを後悔するかもしれない。
特に問題がなければ、放置の方向性で行くことにした。
それにしても、この勇者には何だか見覚えがある、ような気がする。
会ったこともないし、話したこともないのに、だ。
僕が日本からの転生者だから、同じ元日本人に親近感を抱いているのかもしれない。
けれど、何か大切なものを忘れているような気がする。
これは、もしかしたら、例の副作用かもしれないな、と僕は考えた。
僕が、「勇者の試練」に入る時期は、もう決定している。
勇者達が初めてダンジョンに入る、ちょうどその日だ。
勇者たちが入ってからしばらくした後に、続いてダンジョンに入る。
だが、その日はいつもより増して堅い警備を敷いているだろう。
だから、
「ここから先は通行禁止だ。去れ」
「そうですか、僕はこういうものなんですが、」
そう言って、ギルドカードを提示する。
警備の兵士の顔がどんどん青ざめて行く中、右手に片手剣を出現させる。
軽く、ごくほんの軽く、威圧を使いつつ、僕は言った。
「僕は、血をあまり見たくないんですよ。だから……ここを通してくれませんか?」
平和的に説得すればいい。
大抵の人は善人だから、それだけでわかってくれる。
名前 ハクヤ=アイザワ
年齢 15
種族 現人神(邪神)/ダンジョンマスター
レベル 1073
職業 神奪者lv23
職業履歴 見習い魔術師 見習い剣士 魔術師 剣士 魔法剣士 極大魔導師 殲剣王 深淵魔導師 神聖魔導師 時空魔導師 視の王 偽の王 反逆者 龍継者
適正 【光】【闇】【時空】【神聖】【深淵】
魔力 6,014,789,023/6,014,789,023
体力 1,598,920,989
筋力 1,989,289,890
俊敏 1,328,034,903
精神 1,492,085,672
気力 1,492,085,672/1,492,085,672
secret




