054 旅立つ元勇者
World view
内部搭乗式魔像兵士②
一般的に使用されている型は、二種類ある。
まず、一般兵卒用量産型、銀の歩兵
中型の魔物の魔石を核として、主に鉄と銅で造られている。
生産コストは、比較的安め(安いとは一言も言っていない)。
手に持った槍で、敵を串刺しにする戦い方を主とする。
戦力としては、Cランク冒険者(そこそこの腕利き)一人に匹敵する。
そして、騎士専用準量産型、黒の騎士
大型の魔物の魔石を核として、主にミスリル、一部オリハルコンでできている。
生産コストは、かなり高い。
近づいた敵には黒い大剣で、少し離れた敵には剣の先端に仕込まれた爆炎魔導具で攻撃する。
戦力としては、Bランク冒険者上位(半人外クラス)一人に匹敵する。
勇者の石板の件がうまく行ってくれて、本当に良かった。
そのおかげで俺は、どうやら、うまく堂々と城を出ることができそうだ。
帝国のお偉いさんを説得するのに苦労するだろう、とか、もしうまく行かなかったら最悪隠密とかのスキルを上げて逃げ出そう、とか考えていたが、杞憂になってくれて本当に良かった。
隠密のスキルは何かと使えるスキルでかなりレベルを上げているが、これ以上あげる必要はあまり感じていないため、スキルポイントの無駄遣いを省けた形になる。
というか、逆にあっさりと行き過ぎていて何だか怖いぐらいだ。
めんどくさかったのは、勇者さんの涙ぐましい毎日の説得だ。
毎日毎日、というか、会うたびに毎度毎度、訓練に参加して城を出るのをやめろ、と鬱陶しいと言ったらありゃしない。
自分の能力の無さに絶望する無能者、という設定で話すのも楽ではない。
いつボロが出てしまうかヒヤヒヤさせられ、もういっそ演技のスキルを取ってしまおうか、とさえ考えた。
結局何とかボロを出さずに済んだが、これは迷惑勇者を毎回止めてくれた、勇者の親友君の力が大きい。
もし次会うときに勇者とこいつがピンチになっていたら、助ける順番において、迷わずに勇者は後回しにしよう、と決めた。
もっとも、そんな状況になっているのは稀だと思うが。
というか、勇者は騎士団長の特別訓練で特にボロボロになっている筈なのに、俺に話しかける時間をわざわざ取るとは、ある意味頭がおかしい。
こっちにとっても迷惑な上、勇者にとっても休憩を取るべき時間なのに、話しかけてくるのは愚の骨頂でしかない。
そもそもとして、何を言われても俺は決心を変えるつもりはないので、どう転んでも時間の無駄にしかならない。
それなのに俺を全心全力で説得しようとする勇者は、ある意味滑稽でもあった。
ただ、騙している罪悪感が全くないわけではないが、それはそれで仕方がないと思っている。
もし俺のことを心配してくれているクラスメイトがいたならば、次に会ったときに謝ればいい。
なお、オタク仲間の二人だけは、俺のことを微塵も心配しないであろうことを確信している。
城を出るまでの一週間、俺は何もしていなかったわけではない。
まず、この一週間で、俺はほとんどの生徒の固有スキルの内容について把握し終えた。
[盾の極意]などの極意シリーズは、武器などの扱いがとてもうまくなる、というものだ。
[霊装召喚:剣]を始めとした霊装召喚シリーズは、心に応じた武器を召喚する、というものだ。
[勇気の誓い]は、自分に向けられる期待に応じてステータスがアップするというものらしい。
本人は勇者として問題がありそうな気もするが、固有だけは勇者に相応しい。
[絵描創造]は、絵に描いたものを実体化する能力だ。
正確なものであればあるほど、実体化されるものは強力になるらしい。
まさに美術部員に相応しい能力だ。
[限外新化]は、成長速度が大幅に増加する能力だと言っていた。
これのせいもあってか、八十島は騎士団員を相手に、余裕を残して勝てるようになったらしい。
[切札殺し]、敵として認知している相手が今までに発動していなかったスキルを発動させた瞬間に、そのスキルの詳細がわかる、というものだそうだ。
結構微妙な性能だが、相手が一撃必殺の切り札を持っていた場合だけはかなり有効、かもしれない。
[魑魅魍魎]は、妖怪などの異形を召喚する能力らしい。
まだ試したことがないらしいので、詳細はよく分からない。
[魔法図書館]は、魔法をストックして、そのストックから魔法を放つことができる、というものらしい。
ストックを放つときには、詠唱や魔力の消費なしで一瞬のうちに放てる、と言っていた。
不意打ちにも有効、かつ、擬似的に魔力をストックできるので、かなり強力な分類だろう。
[暴帝]は、相手を恐喝したりと言った類のものらしい。
圧倒的にらしいスキルだ、と思ったが、本人の前で言うつもりはない。
そんなことを言ったら、暴れるに違いないからだ。
[法則支配]は、自分の周囲1メートルにおける物理、魔法の法則を書き換える、と言うものだ。
とても強力そうだが、曖昧な定義で発動すると、いろいろと危険なことになる、と本人が言っていた。
[機械神]は、機械の製造とその稼働、などに補正がかかるものらしい。
先生、世界観を間違えていませんか、と言いたくなった。
[千変万化]は、自分の姿を変化させるものだ。
他の人間の姿はもちろんのこと、スライムのような魔物、ネズミのような小動物にも変化することができるらしい。
変化するときに、相手から見るステータスは変化するのだが、実際のステータスは変化しないらしい。
あと、自分より大きいものは無理だと言っていた。
[取り寄せ]、字面通り、日本からいろいろなものを取り寄せることができるらしい。
対価としては、この世界における金貨や銅貨などの貨幣を支払う、と言っている。
銃などを取り寄せて、世界観を壊しかねないお人である。
[正体不明]、これについては不明。
本人はほとんど誰とも話さないし、周りはそれをさぞ当たり前のように受け入れている。
友達との話から盗み聞きして情報を得ていた俺には、全く情報を得る手段がなかった。
そのため、直接話しかけてみようとしたのだが、気づくと目の前からいなくなっている。
予想としては、転移系のまたは隠密系だと思っている。
ただ、名前からすると隠密系の可能性が高い。
よって、特に注意するべきものは、まず[勇気の誓い]。
期待に応じて無限に強くなるこのスキルは、使い勝手が良いとは言えないが、かなり強力だ。
次に、[法則支配]。
これを使いこなされると、多分手も足も出なくなる、そんな気がする。
先生の[機械神]。
この人にだけは渡してはいけないものだった、と思う。
マシンガンだったり、巨大ロボットだったり、そんなものを作っていてもおかしくはない。
[正体不明]も、警戒する必要はあるかもしれない。
固有の効果がわかっていないのは、こいつだけだからだ。
ステータスも全て1だったりと、余りにも怪しすぎる。
こいつらとは、なるべく敵対するのを避けることにしよう、と決めた。
それ以外に俺がしたことは、書庫で情報を集めることだった。
俺の情報が残っていればそれを知るために。
過去と現在の違いなどを知るために。
まず、俺についての情報は全くなかった。
勇者の名前については、最古のもので10代前までが残っていた。
勇者は200年ごとに召喚されるらしいから、前回から少なくとも2000年は経過していると見るべきか。
世界自体はあまり変わっておらず、と言うか、ほとんど変わっていない。
国家の入れ替わりも特に起こっていない、これだけの時間があればほとんどの国が入れ替わっていてもおかしくはないのに。
というか、一国も変わっていないという点は、地球基準からすると明らかにおかしすぎる。
まあ、魔法があったりステータスがあったりと、地球とは色々と違っている部分があるので、地球の基準は参考になるとははっきり言えるかどうかは微妙だが。
色々とやるべきことを済ませた頃に、やっと俺の待ち望んでいた日がやってきた。
そう、城を出る予定の、一週間後の日だ。
勇者だと証明されると困るらしいということなので、ブレイブカードは渡さなければならないらしい。
このカードさえなければ、ただの騙り勇者としてしか見られない、と言っていた。
こっちとしても、勇者だなんて言うつもりもない。
余計なトラブルを引き寄せることは目に見えているのに、わざわざ言う理由もない。
俺は、ブレイブカードと引き換えに、鉄製の大剣と金貨5枚を渡された。
もしかしたら、クラスメイトに対してはああ言っていたものの、何も持たされずにそのまま追い出されるのでは、と心配していたが、そのようなことはなかった。
無一文のまま追い出すとか、追い出すふりをして殺すなどではなく、少しだけだとしてもケアしてくれている分、十分良心的と言えよう。
とはいえ、金貨5枚と剣だけで生活を立てるのは普通だったら厳しい。
そう、普通だったら。
幸いなことに、俺は冒険者としていくらでも稼ぐことができる。
聖剣がなくとも、勇者時代にあげたステータスとスキルの数々さえあれば、無双するには十分だろう。
幸運なことに大剣を貰うことができたので、しばらくは武器の心配をする必要はない。
冒険者としての生活を始める上で唯一残念なことといえば、前回のアイテムボックスの内容物が完全になくなってしまっていたことだ。
高価なポーションや、聖剣には劣るものの強力な武器だったりと言ったものが入っていたのだが、どれ一つとして残っていない。
ただし、どれもこれも掛け替えのないものというわけでは無かったので、もう一度集める楽しみが増えたと取ってもいいかもしれない。
全ての城での用事を済ませ、俺はヒラ兵士一人に見送りされ、ひっそりと帝城を旅立った。
で、数日前に頭に叩き込んだ地図を頼りにして、音速とまではいかないものの、すぐさま冒険者ギルドにやってきた。
実際に出そうと思えば音速を出すこともできるが、そんなことをしたら街への被害が大きすぎる。
冒険者になる前に犯罪者になるのはさすがに勘弁してほしい。
こうして、俺はある程度年季が入った木製の扉を開けた。
登録は意外と早く済んだ。
適当な受付のところに行き、銀貨2枚を支払い、魔力を流してギルドカードを発行するだけだ。
前回、実際にお忍びで登録したこともあったのだが、その時と全く変わっていない。
その当時にギルドカードに[改竄]は効くことも証明済みだ。
それどころか、ギルドカードの場合はステータスを見せなくても大丈夫なのだ。
そろそろ絡まれるイベントが起こるかな、と思いつつ、ギルド内を見回そうとした。
次の瞬間、[危険察知]が作動した。
このスキルには、俺が弱い頃は何度もお世話になったスキルだが、今更になって発動するはずがない。
じゃあ何か、考えられることは二つある。
一つは、スキルの誤作動。
もう一つは、スキルは正常で、その対象自体がおかしいことだ。
すると、扉が軋む音を立てながら開き、黒髪の少年が入ってきた。
着ているローブはなかなかの上物、背負っている片手剣はかなりの代物。
そして当の本人は、俺の[絶対鑑定]を弾くほどの「化物」。
化物は、蒼と紫の瞳で俺を一瞥した後、ギルドの受付の方へ向かって行った。
紫の左目、それについては昔、耳に挟んだ気がする。
ソレ持つものは、決まって、保有者だという、不確かな話を。
名前 セイジ=キリオ
年齢 16
種族 普人族
レベル 243
職業 勇者(固定)
適正 【光】【風】【雷】
魔力 33021/33021
体力 42591
筋力 29912
俊敏 58235
精神 38123
気力 38123/38123
スキル
[上級剣術lv6][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv10][魔力制御lv4][光属性魔法lv7][風属性魔法lv10][気配察知lv8][魔力回復上昇lv10][雷属性魔法lv4][魔力隠蔽lv3][改竄lv5][危険感知lv10][料理lv2][隠密lv7][毒耐性lv4][精神耐性lv4][記憶力lv1]
武技
聖剣:セイントクロス スラッシュレイ ブレイブアップ
固有スキル
[技能取得]
称号
[勇者][異世界人][雷の到達者]




