053 俺が勇者でいいのだろうか
World view
内部搭乗式魔像兵士①
特殊形状のゴーレムの内部に人間を乗せて、人魔一体とした兵器。
人間が判断している分通常のゴーレムと比べて、状況判断能力がかなり高い。
鈍重なゴーレムが扱いやすいように軽量化されていて、本家本元とは比べ物にならない速度を誇る。
ただし、コストが高めな上、『魔像使い』しか生産することができない。
どっかの誰かさんに物凄い量を一気にぶっ壊されたため、ラノリア王国は破産寸前。
ステータス画面中の、[勇気の誓い]というところに注目してみる。
すると、頭の中に見えているものが変わった。
[勇気の誓い]
自分に対する期待に応じて、全てのステータスが上昇する。
なるほど、俺は期待される必要がある、ということか。
ならばいっそう、期待されるような人物にならなければならない。
俺は、心の中でもう一度誓った。
「それでは、訓練を始めようか」
騎士団長は邪悪な微笑をたたえながらながら言う。
すると、桐尾が手を挙げた。
「何だね、少年?」
騎士団長さんは、何だか元気が良いようだ。
口調が弾んでいるように聞こえる。
「すみません、俺は訓練を辞退したいのですが」
「何故かね?」
「俺のステータスはとても低いので、皆の足を引っ張りたくないんです」
「ほう、そうか。確かに君のステータスは低い、それは認めよう。だが、君も生き抜くためには少しでも訓練をした方がいいと思うのだが?」
「それでも、俺はもし仲間の足を引っ張るぐらいなら、その前に抜けたいんです」
実際俺はそんなに桐尾について良く知っているわけではないが、少なくともそんなことを言うような奴ではなかったはずだ。
違和感がありすぎて限界突破しそうなほどだ。
でも、もしかしたら、内心ではすごく悩んでいたのかもしれない。
だったら、それを導くのが俺の役目だろう。
「ダメだ、君はそこまで強くないんだろう! だから、もし出て行くとしても、せめてここは団長さんの言う通り、少しでも訓練を受けておくべきだ!」
「でも、そうは言っても、俺は本当に怖いんだ。皆は今は対等に接してくれる。でも、俺が皆んなの足を引っ張ることは目に見えている、いや、目に見えすぎているんだ。そうなったら、俺のことを対等に扱ってくれるのか? そんなことがあるわけあるのか?」
「大丈夫だ!俺たちのクラスの絆は「それぐらいにしておけ」」
後ろから、親友が俺の肩に手を置き、俺の言葉を遮って言った。
「何で止めるんだ? 俺は、桐尾を助けないとダメなのに、」
当然のごとく、俺は親友に反論する。
「それでもだ。本人が決めたことだ。他の人が突っ込むのは間違っていると思う」
「でも、」
「やめろ、これ以上はお前が口を出すことじゃないし、口を出しても何も変わらないだろう」
俺は、今まで、宥めるような感じになったこいつに舌戦で勝ったことはない。
ここは大人しく、矛をおさめるしかないのだろうか。
でも、それでも、俺は納得したわけではない。
結局、桐尾は少なくとも1週間後には城を出ることになってしまった。
いくら勇者であるとしても、国の沽券にかかわるため、訓練をしない怠けものを城に置いておくことはできない、と言われて。
それでも、勝手に呼び出して勝手に放り出すのは忍びないということで、金貨数枚と、ある程度上質な剣を授けられる、はずだ。
本人的にはそれで納得しているようなのだが、俺はそう簡単に認めることはできない。
非力なクラスメイトが一人異界の地に放り出されるのをみすみす見過ごすことができようか、いや、できるわけがない。
けれど、俺にクラスメイト一人を止める力すらなかった。
それと同時に、桐尾を除いたクラスメイト全員での訓練が始まった。
ただし、俺は少しばかり訓練というものを甘く見過ぎていた。
「それでは、ステータスも確認できたところで、改めて訓練を始めようか」
騎士団長は言う、相変わらずの笑みをたたえながら。
「ではまず、ここから武器を選んでくれ。まあ、訓練用の武器だがな」
そう言うと、騎士団員らしい人達が色々な武器の入った大きめの手押し車的なものを押してきた。
中には、木製の剣、斧、槍、弓、盾、杖など様々な武器が載っている。
皆が、武器を目がけて殺到する。
「とりあえず、無理をせずにスキルにある武器を選択しろよ」
ルイン団長の忠告に耳を傾けたものは果たしてどれぐらいだったのだろうか、そう思うほど、ほとんど全員が熱狂していた。
俺は、無難に木製の大剣を選ぶことにした。
[聖剣適正]とあるので、剣を使うのが一番だと思ったからだ。
取り回しのしやすい片手剣にするかそれとも大剣を使うか迷っていたが、横から日暮が口を出してきて何やかんやで大剣を使うことを半強制的に決めさせられた。
日暮曰く、聖剣は普通大剣だ、とのことだ。
日暮自身は、もちろん盾を選んでいた。
全員が武器を選び終わり、ついに訓練が始まった。
その内容は、騎士団の人とのマンツーマンだ。
俺は、勇者だからと言う理由でルイン団長が直々に教育してくれるそうだ。
喜ぶべきか、怖気付くべきか、どう反応すべきか俺は迷った。
「それじゃあ、その剣を使って私を攻撃してみせろ」
団長は、始まるや否やそう言った。
剣を抜いてすらいないのに、だ。
「えっと、どう言うことですか?」
「どうもこうもない。その剣で私に切りかかってこい。無論、殺すつもりでかかってきて構わない」
いくら木剣とはいえ当たれば怪我をするだろうし、当たりどころが悪ければ死ぬ可能性すらある。
召喚されてから、身体能力が上がったようで、うまく加減できる自信も全くない。
殺すつもりでかかってこい、と言われても、躊躇してしまう。
「大丈夫なんですか?」
「もちろん大丈夫だ。いくら勇者とはいえども、今は負けてやるつもりなど一切ない」
自信に満ちた様子で、騎士団長は言い切った。
「わかりました。では、行きます!」
そして、大きく踏み込んで、少し躊躇しながらも、騎士団長を目がけて大剣を振り下ろした。
が、その瞬間、手に雷で打たれたかのような強い痛みが走り、持っていた大剣が遥か後方へと吹っ飛ばされた。
どうやら、騎士団長は俺が踏み込んだ瞬間に、横に避けてそのまま俺の両手に蹴りを放った、ようだ。
「遅いぞ、そんな動きで勝てると思っているのか? 早く剣を取ってきて構え直せ。そして、何度でも掛かってこい」
騎士団長は、また邪悪な笑みを浮かべた。
「踏み込みがなっていない。もっと速く」
「その程度で剣を手放すのか? それじゃあ、戦場に立った次の日には死んでいるぞ」
「話にならないな。私が剣を持っていて殺すつもりならば、今、少なくとも10回は死んでいる」
「構えが適当すぎる。そんなもので何を切るつもりだ?」
その後、俺はひたすら団長にあしらわれ続けた。
最後の方は、なりふり構わずに全力で剣を当てに行った。
もはや、最初の頃の躊躇など彼方へと投げ捨てて。
しかし、俺の剣は一度も当たらず、その度に蹴り飛ばされ、殴り飛ばされ、もはや訓練というよりは虐待といってもいいのかもしれない、と思った。
それと同時に、この訓練を受けなくて済む桐尾に若干嫉妬した。
訓練、という名前の一方的に嬲られるだけのものは、俺が疲弊や痛みで動けなくなったところで、騎士団長が終了を告げた。
……剣の訓練の、終わりを。
「まさかこれだけで終わると思っているのか? 物足りないだろう? 次は、簡単な簡単な魔法の訓練だ」
絶望の2ラウンド目が、始まった。
その日、俺はずっと魔力を感知する訓練を行なわされたが、特に何も成果はなかった。
騎士団長曰く、それが普通なのだそうだが、結構頑張ったのになんだか報われない気分になった。
その後の夕食でクラスメイトと顔を合わせたが、全員ものすごい疲れた顔をしていた。
やはり、徹底的にしごかれたのは俺だけではないようだ。
物凄い空腹感を満たすために誰も彼もガツガツ食事をしているのだが、その中でも疲労が過ぎて眠りに落ちてしまっているクラスメイトもいる。
クラスの中での話題は、この世界に来たことに対する不安などではなく、訓練の理不尽すぎる内容だったり、固有スキルについてだったりと、結構楽しそうにしている。
ほとんど全員があまり悲観していないで一致団結しているのは、多分ではあるが、認めたくはないが、藍澤の影響も大きかったに違いない。
八十島さんはかなり元気になって訓練に励んでいるらしく、クラスメイトの中で唯一、八十島さんだけは初日から魔法を使えるようになったらしい。
素直に流石だと思う。
それと同時に、騎士団の人に剣を当てたのも彼女だけだとか。
俺は[勇者]なのに特に何の成果も出せていないことに、かなりの焦燥感を覚えた。
八十島さんの心を射止めるのなら、絶対に負けるわけにはいかない。
蘇生魔法なんてものがあるとは思えないので、その元気な状態を保っていられるのも長くはないだろう。
それより前に俺が強くなり、彼女の希望になれたら、と思ってしまう。
せめても、明日には何か成果が出るようにと願いつつ、明日は訓練において全力を尽くすと誓いつつ、俺は死んだように眠りに落ちた。
翌日、俺は昨日の誓いをズタボロに引き裂かれるほどの訓練を受けた。
ボロ雑巾のように吹き飛ばされ、罵倒された、相手は武器を持っていないのにも関わらず。
また、俺は桐尾の説得を諦めていなかった。
訓練の前の朝だったり、昼に一回だけある休憩だったり、俺は毎回桐尾に遭遇するたびに、城を出ることを考え直してくれと頼み込んだ。
けれど、毎回毎回桐尾は首を縦に振らなかった。
そして、そうこうしているうちに俺が日暮に止められる、というパターンを繰り返すだけだった。
何故なのか、何でなのか、これは俺の力不足なのか。
俺のせいで、クラスメイトのうちの一人が危険な目に遭いかけている。
どうして、どうして、どうして、俺に説得する力がないのか。
[勇者]という称号はあれど、俺は決して勇者ではなかった。
日暮は、これは俺の力不足ではなくて、仕方がないことだと言ってくれる。
けれど、そんなことを言われても慰めにすらならない。
さつきは、大丈夫だと励ましてくれる。
けれど、励まされるたびに俺は堕ちてゆく。
励まされるような人間でしかないのだ、と。
結局、覚悟はしていたことだが、俺の必死の説得も虚しく、桐尾は城から出て行ってしまった。
結局、俺はクラスメイトを救えなかった。
結局、俺は勇者になれていない、ちっとも。
訓練の成果がある程度実り、自分の上達を少しながらも実感し始めた頃、騎士団長は俺たちを集めて言った。
「では、君たちには今日から実戦訓練を行ってもらう。具体的に言うと、ダンジョンに潜ってもらうつもりだ」
名前 コウキ=タカムロ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 勇者(固定)
適正 【光】【火】
魔力 513/513
体力 612
筋力 423
俊敏 491
精神 582
気力 582/582
スキル
[剣術lv3][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1][魔力操作lv2][火属性魔法lv2][光属性魔法lv1]
武技
聖剣:
固有スキル
[勇気の誓い]
称号
[勇者][異世界人]
ブックマークが減るあたり、王道勇者は嫌われているということで間違いない、きっと。
重要なキャラなのでこれからもある程度頑張ってもらいますが。




