052 それでも俺は勇者である
World view
神の持っている世界の管理権は『神権』
神の性質は『神威』
だが、俺は何もできなかった。
今ここに藍澤がいるのならば、一体何をするのだろうか?
俺とは違って、このクラスを率いることぐらい簡単にできるのだろう、そう確信している。
けれど、それだからといって、俺が諦める理由にはならない。
何故なら俺は……俺だからだ。
勇者「様」と呼ばれるだけあって、俺達はかなり歓迎されているようである。
料理は、言葉に表せないほど美味しい、と表現しても過言ではない。
その時点で言葉に表せているので俺的にはあまり好きな表現ではないのだが、とりあえずそれ以外に適切な言葉が見当たらなかった。
全員に個室が与えられ、全員に個別のメイドがつけられた。
メイドは男のロマンだと騒いでいる奴らもいるが、俺は決してそうは思わない派だ。
だって、このクラスにはメイド以上に可愛い女子が少なくとも一人はいる。
就寝時間になり、ほとんどの生徒が寝静まったような頃、俺はずっと寝付けなかった。
俺は何ができるのだろう、と。
昼間は、内心であのような決意をしたものの、本当に俺はクラスをまとめられるのだろうか、あの藍澤のように。
一人を除いてクラス全員を完全に纏め上げていたいた藍澤の実力は、悔しいけれど本物だった。
だが、俺は藍澤ほどの実力があるのだろうか。
これだけは認めたくはないが、はっきりと認めざるを得ない、「俺にはない」と。
だけれども、それでも、何としてでも、、俺は負けるわけにはいかない。
次の日、俺たちクラスメイトは中庭のようなところに集められた。
何が起こるのか不安そうにしている者が多い、当たり前のことだ。
俺たちの前に整列しているのは、十中八九騎士団という感じの集団だ。
その中から、一人だけ少し豪華な鎧を着た、いかにも重役という感じのガタイのいい男は一歩俺たちの方向に進み出て、言った。
「私は君たちの訓練を任された、騎士団長のルインだ。よろしく頼む」
結構厳しそうな感じの人だ。
多分、誰もサボったり手を抜いたりはしないだろう。
「はじめに言っておくが、はっきり言って私は君たちのことが嫌いだ」
はっきり言いすぎですよ。
「お前達は、私が今まで積み重ねてきた努力を簡単に覆してしまえるような力を持っている。ただの戦う覚悟すらないガキ供のくせに、だ」
本当にはっきり言いすぎです。
「だが、私には魔王を倒すことは不可能であり、お前達に託すことしかできない。だから、鍛えるからには……」
そう言って、ルイン団長はニヤリと口角を吊り上げ、言った。
「喜べ、君達を私を含めた騎士団総出で死ぬ気で鍛えてやる」
クラスメイト全員が、軽く恐怖を覚える。
恐怖の発信源は、さらに続ける。
「もし、君達の中に戦いを拒むものがいるとしても……」
さらに笑みを浮かべ、続けた。
「身を守る手段ぐらいは身につけさせてやる。しっかりと訓練を受けて貰おうか」
駄目だこの人、そういう感想が浮かぶような気がした。
「とはいえ、訓練を受ける前にお前達が持っている力がどのようなものか判らなければ、効率が悪いだろう。なので、これを使う」
騎士団長は中庭の片隅にある石板と水晶玉が繋がったようなオブジェクトを指差した。
「あれは、勇者の石板というものだ。私自身もどのような仕組みなのかはよく知らないが、召喚されたもののみにステータスを表示する道具を出してくれる。だが、あのようにそれ以外のものが触れると」
ルインさんは、一番近くにいる騎士に触れるように仕草で命じた。
騎士は、おっかなびっくり水晶玉に人差し指だけで触れる。
その瞬間、雷鳴のような音が鳴り響き、騎士の触れたところの周りに稲光がほど走った。
哀れな騎士は、物理的に数メートル吹っ飛び、そして気絶した。
軽く怯えているクラスメイト達を気に止めることもなく、また、部下の心配をすることもなく、騎士団長は続けた。
「と、ああなるわけだ。だが安心しろ、お前達は勇者らしいから、多分大丈夫だ。じゃあ、最初に試したい奴はいるか?」
完全なる沈黙が訪れた。
当たり前だ、あんな光景を見たら誰だって尻込みするだろう。
俺は、このクラスを導くのだから、その仕事を引き受ける義務がある。
だが、俺もすぐに決心できるわけではない。
深呼吸をして、気分を落ち着かせ、意を決して、声を上げようとした瞬間に、
「あ、じゃあ、俺がやりますよ」
桐尾誠二に先を越された。
そう言って、奴は水晶玉に躊躇いもせずに触れた。
直後、水晶玉は一瞬だけ光を発した。
次に石板が輝き、光が中心の方へと集まってゆく。
光が消える頃には、そこには名刺大ぐらいのサイズの薄い板があった。
「それが、勇者のみに授けられる『ブレイブカード』というものだ。そして、その表面にあるのがステータスだ」
クラスの大半が桐尾の周りに集まり、そのカードを興味深そうに覗き込んだ。
名前 セイジ=キリオ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 なし
適正 なし
魔力 10/10
体力 10
筋力 10
俊敏 10
精神 10
気力 10/10
スキル
[アイテムボックスlv1][料理lv2]
固有スキル
称号
[異世界人]
これは、一体どうなのだろうか。
基準はよく判らないが、多分そこまで高い方ではないだろう。
騎士団長も、それを覗き込んでから、言いづらそうに言った。
「うーんと、えーっと、そうだなー、言いにくいんだが、」
「これって、普通に高いんですよね?」
しかし、団長は、そんな桐尾をバッサリと斬り捨てるような一言を放った。
「一般人の基準、そのものだ」
クラスメイトの中から失笑が起こる。
桐尾君は、しんでしまった(メンタル的に)。
「それじゃあ、次は誰だ?」
次こそは、先を越される訳にはいかない。
一念発起して、手を挙げようとした、がしかし、
「はいはいはーい、俺がやりまーす」
市谷陽之助、できれば死んで欲しい。
順番奪い野郎もまた、躊躇いなく水晶玉に手を乗せる。
そして、そのステータスは、、
名前 ヨウノスケ=イチタニ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 なし
適正 なし
魔力 10/10
体力 10
筋力 10
俊敏 10
精神 10
気力 10/10
スキル
[アイテムボックスlv1]
固有スキル
称号
[異世界人]
こうして、早くも二人目の死者が出た。
絶望感に打ちひしがれる二人の様子が何となくワザとらしく感じられたが、それは多分俺の気のせいだろう。
その次になって、ようやく俺の番が回ってきた。
前の二人と同じように、水晶玉に手を乗せる。
光が集まり、俺のカードが構成されてゆく。
心の中で祈りながら、俺は真っ直ぐにその光を見つめ続けた。
そして、光は収束し、俺のカードが形成される。
そこに写ったものに、俺は一瞬目を疑った。
名前 コウキ=タカムロ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 勇者(固定)
適正 【光】【火】
魔力 513/513
体力 612
筋力 423
俊敏 491
精神 582
気力 582/582
スキル
[剣術lv1][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1]
武技
聖剣:
固有スキル
[勇気の誓い]
称号
[勇者][異世界人]
心の中で、歓声をあげた。
さっきの彼が一般人のステータス位なのだから、これはかなり高いはずだ。
覗き込んだクラスメイトが、次々に驚きの声を上げる。
けれど、俺の[勇者]という称号を見て、若干怪訝そうな反応をしている。
やっぱり、俺のことを藍澤と比べているのだろう。
もし、ここに藍澤がいれば、確実に俺の代わりに[勇者]になっているだろうに、と。
俺はどうせ、紛い物なのに、と。
何も知らない騎士団長は、俺のステータスを見て、今までで一番機嫌が良さそうな声で言った。
「さすが、勇者の称号があるだけあってステータスも高いし、固有スキルもあるな。これからの成長にかなり期待できる」
その後、クラスメイト達は俺の後に続いてどんどんブレイブカードを作成した。
ほとんど全員に固有スキルがあることに団長さんは少し驚いていた。
というか、結局、最初の2人以外は全員固有スキルがあり、ステータスも高かった。
例えば、中学時代からの親友の、日暮快斗。
名前 カイト=ヒグレ
年齢 15
種族 普人族
レベル 0
職業 なし
適正 【風】
魔力 113/113
体力 241
筋力 341
俊敏 162
精神 451
気力 451/451
スキル
[アイテムボックスlv1]
固有スキル
[盾の極意]
称号
[英雄][異世界人]
俺ほどは高くないが、どれもかなり高い水準である。
[英雄]の場合もステータスが高めだ、と言っていた。
俺の幼馴染である、|名塩さつきの場合はこれだ。
名前 サツキ=ナシオ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 なし
適正 【火】【風】
魔力 613/613
体力 29
筋力 38
俊敏 31
精神 412
気力 412/412
スキル
[アイテムボックスlv1]
固有スキル
[魔法の極意]
称号
[異世界人]
ほとんどのステータスは俺よりも低いが、魔力だけは俺よりも上だ。
この世界にある、魔法とかいうものに特化した感じなのだろうか?
そして、八十島さん。
名前 セレネ=ヤソシマ
年齢 15
種族 普人族
レベル 0
職業 聖女(固定)
適正 【神聖】
魔力 301/301
体力 241
筋力 353
俊敏 125
精神 401
気力 401/401
スキル
[剣技lv3][並列思考lv2][アイテムボックスlv1]
固有スキル
[限外新化]
称号
[聖女][異世界人]
[聖女]とあるからには、[勇者]同様に何か特別なものなのだろうか?
とりあえず、今もまだ落ち込んでいるように思える八十島さんには元気になって欲しい。
後、できれば俺と付き合ってくれることを密かに願っている。
誰よりも生き生きしている物理教師、上越伸晃先生は、こんな感じだ。
名前 ノブアキ=ジョウエツ
年齢 41
種族 普人族
レベル 0
職業 なし
適正 【土】
魔力 51/51
体力 101
筋力 34
俊敏 91
精神 30
気力 30/30
スキル
[教導lv2][アイテムボックスlv1]
固有スキル
[機械神]
称号
[異世界人]
[機械神]、何だかカッコいい名前である。
もし俺が厨二だったら、今すぐ不公平だと抗議に行くだろう。
全員がブレイブカードを作り終わると、ルイン団長は再び口を開いた。
「ブレイブカードは、勇者としての身分を証明するものにもなるので、無くすと困ったことになるため、気をつけたまえ。後、ブレイブカードを使わずともステータスを見る方法を教えよう。心の中で、『ステータス』と唱えてくれ」
(ステータス)
そう唱えた瞬間、頭の中にステータスについての情報が流れ込んできた。
というか、ブレイブカードを作る必要はないんじゃないか、と少し思った。
名前 コウキ=タカムロ
年齢 16
種族 普人族
レベル 0
職業 勇者(固定)
適正 【光】【火】
魔力 513/513
体力 612
筋力 423
俊敏 491
精神 582
気力 582/582
スキル
[剣術lv1][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1]
武技
聖剣:
固有スキル
[勇気の誓い]
称号
[勇者][異世界人]




