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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第参章 歪んだ勇者達へ、
51/86

051 だから俺は勇者になる

World view

ヘレナスにおいて、敵対してはならないもの。

それは、教会、ギルド、Sランク冒険者である。

  


 俺は奴に一度も敵わなかった。

 奴が生きている間も、奴が死んでからも。




 俺は今までの人生を順風満帆に生きて来た、と言ってもよかった。

 サッカー部のエースとして女子から黄色い声援を贈られた。

 クラスの中でも俺は中心で、誰もが俺を慕ってくれた。

 俺が声をかけた女子で俺になびかない奴はいなかった。

 気に入らない奴がいれば、自分の手を汚すことなく貶めることさえもできた。

 

 しかし、それは中学までのことだった。

 高校に入り、中学と同じことを繰り返すだけでいいと思っていた俺の予想は大きく外れた。

 俺と同じクラスに藍澤白哉がいた、それが俺の最大の誤算だった。

 

 話術、スポーツ、勉強、ルックス、芸術、etc。

 どの分野においても、俺は藍澤に敵わなかった。

 藍澤は人望もあり、ほとんど誰からも好かれた。

 俺が入学式の日に一目惚れした黒髪の女子は、藍澤の彼女だった。

 藍澤の性格、というか性質は”善”そのもので、困っている人がいたら本人の成長を促す形で助け、衝突が起こったら双方のために仲裁案を考えさせる。

 一度も失敗することなく、周りを笑顔に変えていった。


 俺のそばには中学の同じように、沢山の人が集まるなどといったことは、万に一つもなかった。

 俺はクラスの中心ではなく、その他大勢のうちの一人でしかなかった。

 俺の周りに集まったのは、幼馴染の名塩(ナシオ)さつき、そして、中学時代からの親友である日暮快斗だけだった。



 

 藍澤白哉が死んだと聞いた時、俺はとても嬉しかった。

 これで俺の時代が来たのだ、と。

 そんな考えを持つ俺は、俺自身のことを嫌いになった。



 その日から、俺はクラスのために全力を尽くした。

 クラスをまとめ、導いていくことのできる、素晴らしいリーダを目指して。

 俺は中学時代の栄光を取り戻せると本気で信じていた。



 けれど、何をやっても、その比較対象には、いつも死んだ元リーダがいた。

 

「本人としては頑張っているのかもしれないけれど、あれに比べたらね」


 と、影では誰もが口を揃えて言っていたということを、俺は知っている。


 それでも、これこそが俺の使命なんだと自分に言い聞かせ、クラスの中心に立とうと努めた。




 そんな中、教室に突如魔法陣が現れて光を放つ。

 光が収まると、クラスの全員が見知らぬ王城らしきところにいた。




 


「ようこそ、勇者様方。どうか、この世界をお救いください」


 玉座に座っている立派な服を着た男が、そう言った。

 クラスメイトの全員は、完全に不安定な心境に違いない。

 いつもクラスをまとめることが出来た藍澤は、もうどこにもいない。

 その代わりが俺の使命ならば、俺がするべきことはただ一つ、それは、ここにおいて、皆の希望となることだろう。

 騒ぎ出そうとするクラスメイトに先んじて、俺は大声で叫んだ。

 

「みんな、落ち着け! この人たちは俺たちに、多分害意はないはずだ。だから、まずは話を聞くべきだと思う!」


 何故ならば、これだけしかできることはないのだから。



 その後、玉座に座った男は説明を始めた。


 その内容を15文字以内で簡潔にまとめるとこうなる。


 「魔王誕生ヤバイ、勇者召喚した」以上だ。



 ある程度情報を残しつつ簡潔にまとめるとこうなる。


「新たな魔王が誕生したとの神託が降った。このままでは人族存亡の危機である。それを防ぐために、神の力を借りて勇者召喚を行なった」以上だ。



 

 結構詳しくまとめるとこうなる。


 この世界をお護りになられている聖なる神、聖光神アポロン様から、「魔王が誕生した」と神託が下された。

 魔王とは、邪悪と暴力の塊が具現化したようなものであり、魔族を率いて世界を滅ぼそうと企んでいる。

 主神様が直接手を下すと、世界に影響が大きすぎる。

 この世界の者に加護を授けるのでも、世界への悪影響がある。

 そのため、神は加護を授けた勇者を異世界から召喚した。

 俺たちの役目は、魔王を倒して世界を救うことである。



 この世界の名前はヘレナスというらしく、5つの大陸に様々な種族が住んでいるらしい。

 『魔大陸』エディンバラ大陸に、魔物から生まれた邪悪なる種族である魔族が。

 『精霊大陸』ベルントソン大陸に、劣った知性を持つ亜人、つまり獣人族やエルフ、ドワーフが。

 『龍大陸』アールベック大陸に、竜、龍、竜人族が。

 そして、リンドロート大陸とレンダール大陸に、神から祝福された種族である人族が住んでいる、らしい。

 リンドロート大陸とレンダール大陸に一部亜人が紛れ込んでいたりもする。

 レンダール大陸の一部には機人族が住んでいたり、天人族と呼ばれる文献上にしかない種族もいたり、精霊大陸にはごく稀に妖精族がいたり、少数種族というものもいるらしい。


 

 魔物、それは全ての命あるものを脅かそうとする災害の具象化したようなものである。

 一部には、大気中の魔力から発生すると言っている者もいるが、未だ発生原因は不明である。

 血を持たず、魔力があれば生きていくことができるらしい。

 魔物の中でも強力なものは、単独で街一つを滅ぼすことすらもできるとか。

 また、魔族と龍とは魔物が成長の果てに知性を得たものであり、かなり厄介な相手である。



 それまでの話を聞いて、俺は決心した。

 俺が中心となってこのクラスを率い、魔王を倒すことを。

 そうすれば、俺は藍澤を超えたと証明できる。

 俺はまた、世界の中心になれる。

 だから俺は、、

 

 

「それでは、何か聞きたいことなどはあるか?」


 俺は、真っ先に口を開いた。


「俺たちは元の世界に戻ることはできますか?」


「現状では不可能、というのが答えじゃ。神が手を貸してくださればできる可能性はあるかもしれんが、今すぐには不可能だな」


 それを聞いて、クラスメイト達がまた騒ぎ始ようとする。

 だが、それに先んじて俺は言い放った。


「みんな、こんなところで騒いでも解決にはならない。だから落ち着いて考えよう!」


 けれど、俺のそんな声も虚しくかき消され、クラスメイトは騒ぎ始めた。


「ちょっと、そんなの無責任すぎるわよ!」


「帰れないって何だよ、巫山戯んなよ!」


「これって誘拐じゃね?」


「私が? そんな、戦えるわけないでしょう!」


「すいません、今期のアニメだけは最後まで見させてもらえませんか?」


「大丈夫、大丈夫。だから、本当に落ち着いて」


「何で、何で、何で、何で私が先輩と離れ離れに、」


「ちょっと、みんな、落ち着いて!!」


 俺が何を叫んでも、パニックになっている皆の声の前にただかき消されるだけで、誰の耳にも届かない。

 女子の中には、高校生なのに泣き出してしまっている子もいる。

 ああ、やっぱり、俺は何にもできやしないんだ、藍澤とは違って。

 けれど、俺はクラスを導かなくてはならない。

 そのためには、喉が擦り切れそうなほど全力で声を張り上げて、


「みんなー落ちつ「全員っ、静粛にィーーー!!」」


 俺の声も、クラスメイトの声も、みんなまとめて上越先生の図太い大声でかき消された。

 突然の大声に身を竦ませている生徒もいる前で、先生は言った。


「お前ら、そんなことをして騒いだってカッコ悪いだけだろ! だから、俺が一言だけお前らを代表としてガツンと言ってやるよ!」


 先生は皇帝の方に向き直り、息を大きく吸い込んで、


「どうか、私めに、魔法を教えていただけないでしょうか!!」


 生徒達全員が予想だにしていなかったことを、言い放った。

 生徒のうちのほぼ全員が、ある意味戦慄していた。


「私に魔法の使い方を、やり方を、どうか教えてください! どうか、どうかっ!」


 皇帝にそうやって迫る白衣の先生に、俺たちは冷たい目線を浴びせていた。

 科学者ゆえに未知のことに興味を持つのは当たり前なのかもしれないが、それにしても限度というものがある。

 というか、科学者として行きすぎている以前に教師としては絶対に間違っている。

 そういえば、上越先生は技量や優秀な研究者だったけれど、やるべき研究をすっぽかし、超常現象の研究ばかりに取り組んでいて、幾つもの研究所をクビになったという噂があったような気がする。

 今、その噂が真実に近いものだと確証させられた。



 先生が近衛兵に取り押さえられている。

 未だ暴れ続ける先生から目をそらすと、皇帝はまた口を開いた。


「それでは勇者様方、今すぐに決心なさるのは無理だとは思うので、少し考えてから答えを頼む。できれば、勇者様方が戦ってくれることを望む。では、それ以外に何か聞きたいことなどはあるか?」


 だが、生徒達の間にはさっきの先生の行動によって微妙な空気が漂っているため、誰も口を開こうとしない。


「質問がないのならば、食堂の方に案内させて「すみません、一つ質問させていただいてもよろしいですか?」」


 八十島さんが皇帝の言葉を遮って言い放った。


「どうぞ、何なりと」


 皇帝は、その質問を許した。


「では、」


 八十島さんは、一息ついてから、その言葉を綴った。


「この世界には魔法があると聞きましたが、蘇生魔法というものはありますか?」


 その言葉はあまりに美しく、あまりに残酷に俺の耳に届いた。

 そう、藍澤白哉は、死んだ後になってもいつまでも、俺の邪魔をするのか、と。


「伝説の勇者が使ったという伝承はあるが、詳しいことはわからぬ」


「そうですか。ありがとうございます」


 俺は、ここまでに歪んだ希望の言葉を聞いたことがあっただろうか。

 表面上は丁寧な口調。

 けれど、一歩間違えれば世界を滅ぼしそうなほどの狂気を秘めている、ような気がする。

 誰よりも落ち着いているように見えるが、その分誰よりも危険な香りがする。



 今この現状で落ち着いているのは、クラス内には数人しかいない。

 勇者として召喚されたから、俺たちには大きな力が備わっているらしい。

 そんな力を持っている生徒が、正気をなくして暴れたら、きっと酷いことになる、かもしれない。

 だけれども、だからこそ、俺がこのクラスを導かなくてはならない。

 

 だから、俺は『勇者』になる。

 

名前 コウキ=タカムロ

年齢 16

種族 普人族

レベル 0

職業 勇者(固定)

適正 【光】【火】

魔力 513/513

体力 612

筋力 423

俊敏 491

精神 582

気力 582/582

スキル

[剣術lv1][聖剣適正lv--][絶対鑑定lv--][限界突破lv--][アイテムボックスlv1]

武技(アーツ)

聖剣:

固有(ユニーク)スキル

[勇気の誓い(ブレイブハート)]

称号

[勇者][異世界人]




藍澤白哉君によるある意味での被害者(主要登場人物中二人目)

約半年で圧倒的な敗北感を植え付けられた人。


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