039
World view
冒険者ギルドを通して出された依頼がある特定の組織に極端に加担するようなものであっても構わない。
ただし、冒険者ギルド自体は基本中立を維持する。
とりあえず、この階層にいる間は[可変龍装]の力だけで戦うことに決めた。
新しい戦力の使い勝手を調べるために。
僕が使うのは、mode Abyss状態の六本の諸刃の剣。
それらを、自動制御で自分の周りに浮遊させながら回転させ、敵でも茨でも関係なく切り刻む。
絶対切断を付与しているため、刃こぼれなどは一切ない。
こうして、僕は9階層で蹂躙劇を繰り広げた、いや、茨の階層なので剪定といった方が正しいだろう。
出てくる魔物のレベルはそろそろ100越えがちらほら出てくるようになった。
とはいえ、100越えであっても、剪定マシン(偽)に敵うような敵は存在しない。
強いていえば、経験値が美味しいので感謝、だろうか。
数日かかって僕は次の階への転移陣にたどり着いた。
僕が到着したのは、一つの区切りと言えるかもしれない10階層。
まずわかることは、ここにはまだ誰も到達していないということだろう。
その階層は、闘技場のような階層であり今までとはかなり違っている。
その違いとは、階層自体の広さである。
1階層から9階層まで、階層自体はそこまで難しくはなかっったのに攻略に時間がかかってしまったのは、その理不尽すぎるほどの広さ故である。
それに対して、この闘技場の階層は、直径500メートル程の闘技場だけで完結していた。
闘技場の中心には、三つ首を持った巨大な犬、大方ケルベロスと言ったところか、が待ち構えている。
ここは、多分ボス部屋なのだろう、とは言っても中ボスだろうが。
なまじ闘技場を再現しているだけあって、空虚なままの観客席に違和感を感じながら、僕は誰にも注目されることのない舞台に上がった。
全長は10メートルを軽く超える黒犬相手に初手で看破を発動する。
しかし、それは相手の全貌を捉えることはできなかった。
名前 なし
種族 三頭犬・亜種
レベル 250
適正 【深淵】
魔力 ?
体力 ?
筋力 ?
俊敏 ?
精神 ?
スキル
?
固有スキル
?
称号
?
僕の知る限りで最大の強敵だろう、レベルも250で、属性は、深淵。
魔物にはほとんど存在しない属性がある、それは、まず神聖属性だ。
上位属性の魔物自体ほとんど存在しないのに、最上位属性ともなると、100年に一度目撃事例があるかないかだ。
そして、それらは魔物としては特異な性質を示す。
誇り高く、決して自衛以外のために戦うことはなく、聖獣などと呼ばれ敬われるものいる。
その逆に位置するのが深淵属性。
そいつらは神聖属性よりも稀であり、滅多に現れず、文献の中にのみ生きている。
その性質は残虐で、暴力と戦闘を好み、破壊の属性の元に、全てを敵にしてもなお傲慢に戦い続ける。
単純な戦闘能力ならすると、他の属性の魔物ではレベルが倍以上で同等と言われる。
つまり、こいつは、レベル500相当だ。
今僕は、伝説を前に一人立つ、まあ、負ける気はしないが。
僕は、身体強化を発動させ、ケルベロスの初撃を跳んで避けた。
僕はケルベロスの猛攻を避けつつ考える。
身体強化と龍武装で押し切ることも多分可能だろうが、それでは今までと全く変わらない。
こいつならば、アレの相手としてもってこいだろう。
僕は、切り札(候補)を一枚切ることにした。
(龍王顕現ッ!)
その瞬間に、龍の大きさなどをイメージする。
大きさは、この広さの闘技場で満足に戦えるぐらいの10メートル、そして、全距離で戦えるオールラウンダー。
膨大な力が僕の前で渦巻き、一瞬で形を作る。
そこに、龍王と呼ぶには少し小さいかもしれないが、圧倒的な力を持った存在が顕現し、咆哮を上げた。
僕の中に、龍の体の情報、そして、動かし方が流れ込んでくる。
使用可能なのは、翼による飛行、息吹だけ、そして最終手段だけ。
ただそれだけで十分だ。
翡翠色に輝く翼を広げて、小さな龍王は飛び立った。
ケルベロスは、僕よりも龍を危険だと認識したらしく、龍にターゲットを定めたようだ。
それでいい、このまま龍王を使ってケルベロスを削り切るつもりだ。
牽制としてブレスを放ち、龍をケルベロスに突撃させた。
戦闘はかなり長く続いた。
まず、ケルベロスには、毒攻撃や侵食攻撃など高火力の近接戦闘手段を持っていたが、遠距離攻撃手段がなく、空を舞う龍に対して攻撃する手段がない。
そのため、ケルベロスは龍が低空に来た時しか攻撃できない。
逆に、龍には息吹があるが、遠くから放ったのでは当たるはずがない。
近づけば、ケルベロスの強力な近距離攻撃が当たるようになる。
いくら龍に力があるとはいえ、近距離戦闘でケルベロスに勝てるとは思えない。
結局、息吹を当てたら直ぐに退避するというヒットアンドアウェイしか手段はなかった。
しかし、いかに相手の攻撃に当たらないように心掛けても、接近すればそこは相手の領域だ。
ケルベロスの動きが鈍って来た頃には、龍の全身は所々傷つき、黒く染まっていた。
このままだと、龍で戦闘を続けるのは厳しいだろう。
特に右の翼は、もうほとんど緑色の部分が残っていない。
龍の翼はそれ自体を羽ばたかせて飛んでいるのではなく、翼自体が魔導具のようなものらしいが、片翼ではバランスが悪く飛ぶことなどできない。
あと少しで、龍の飛翔能力は失われ、ケルベロスの餌食となるのがオチだろう。
神聖属性を僕が使えば多分切り抜けられるだろうが、それをしたら、龍の力だけで勝つというルールに反する。
もし本物の龍だったならば龍言語魔法が使えるので状況が変わったのかもしれないが、僕の龍は龍言語魔法を使えない。
つまり、もう最後の手段しか残されていない。
(魔転、そして、加速っ!)
龍には魔転という能力が備わっている、らしい。
体の一部を魔力そのものに変えて、その魔力を使って爆発的な瞬間火力を生み出す技だ。
龍の体は崩れながらも溢れんばかりの魔力によって光り輝く。
龍言語魔法は使えなかったのに、なぜこの技を使うことができるのかは不明だが、使えることは確かだ。
ならば、この一撃で決めるしか方法はない。
今はケルベロスも十分に弱っているため、ブレスは避けることができたとしても、
(さらに加速、そして加速!)
音速を何倍も超越して飛んでくる龍の突進を避けられるはずがない、だろう。
ケルベロスは身の危険を察知して逃げようとする、が、もう遅い。
流星の如く飛来した龍王の成れの果ては、ケルベロスに激突し、闘技場の床に穴を穿つ。
土煙が晴れた後、そこに残ったのは、グチャグチャになったケルベロスの死体と、いつの間にか現れていた転移魔法陣と、
一つの宝箱だった。
ケルベロスの死体を回収して、今回の戦闘の反省点について考える。
まず、龍王顕現には見た目ほどの強さはないらしい。
パワーもあって、飛べて、息吹という遠距離攻撃手段がある。
普通からしたら十分な恐怖の対象だが、僕からしたら、特殊攻撃の手段が足りない。
一応風属性魔法も使えるが、「限定的」風属性らしいので、あまりレパートリーがない。
相手も純粋なパワーファイターだったら殴り倒せるだろうが、今回のケルベロスの様に毒などの搦め手にめっぽう弱い。
多分、これは封印することになるだろう。
残念に思いながらも、僕はそう結論を下した。
僕は、宝箱に向かい、それを開けた。
そこには、僕がずっと欲しかったものが入っていた。
固有職に就くことができる唯一のアイテム、解放の石板である。
解放の石板
このアイテムを使用することで、固有職に就くことができる。
所有者固定(ハクヤ=アイザワ)
一度使ったら消滅する。
表面には様々な幾何学模様が刻まれており、その中には文字らしきものも見受けられるが、全く意味がわからない。
だけれど、使用方法は何となくわかる。
僕は意を決して石板の上に手を置いた。
すると、その瞬間、冒険者ギルド地下の転職の部屋の時と同様に、頭の中に転職可能な職業についての情報が流れ込んできた。
転職可能職業
『魔剣の操者』『殲剣王』『光魔導師』『闇魔導師』『視の王』『偽の王』『魂侵者』『大賢者』『刻帝』『極大魔導師』『龍装者』『神才』『龍継者』『勇者』『魔王』『龍殺し』『反逆者』
ちょっと、多すぎて困るかもしれない。
というか、固有職がこんなにたくさんあっていいのだろうか。
固有職って言っているからには一つだけだと思ったが、とりあえずは一つに決めよう。
まず、『魔王』と『勇者』、こいつらは論外。
『魂侵者』、どこから来たのかは知らないが、不気味なので論外。
『龍殺し』、『反逆者』、『光魔導師』に『闇魔導師』、出現した理由はわかるが、魅力にかける。
『魔剣の操者』、これらもどこから来たのかはわかるが、何となく物足りない。
『視の王』『偽の王』、大方[看破]と[改竄]からだろうが、今はあまりそっち方面では困っていない。
残る『殲剣王』『大賢者』『刻帝』『極大魔導師』『龍装者』『神才』『龍継者』だが、はっきり言ってどれでもいい。
とりあえず、何となくだが、『極大魔導師』を選ぶことにした。
石板は粉々に砕け散って消え、僕の職業の欄が変化した。
極大魔導師lv17
魔法の威力が上昇(特大)
魔法系スキルの取得経験値が増加(特大)
魔法使用時の魔力大幅削減(1/10)
魔法の制御能力が上昇
レベルアップ時の魔力上昇率が増加(特大)
魔力回復速度が上昇(特大)
魔法展開速度の上昇(特大)
、、、ほとんど意味がなかった様だが。
とはいえ、ここから進んでもまた解放の石板は見つかるだろう、それで転職すればいい。
何となく引っかかった気がしたが、僕は転移陣に向けて足を運び、その光に包まれた。
さて、11階層はというと、どうやら泥沼の階層の様だ。
ドロドロしていて本当に歩きにくいのだろうが、飛行魔法を使えば問題ない。
何となく上から落ちて来たマッドスライムに光属性魔法をプレゼントした。
少しだけ制御がしやすくなって、発動までの速度が速くなった、様な気がした。
極大魔導師になったことはもしかしたら完全なる無駄ではなかったのかもしれない、と思った。
名前 ハクヤ=アイザワ
年齢 8
種族 普人族
レベル 167
職業 極大魔導師lv17
職業履歴 見習い魔術師 見習い剣士 魔術師 剣士 魔法剣士
適正 【光】【闇】【時空】【神聖】【深淵】
魔力 error
体力 16783
筋力 15988
俊敏 17823
精神 32512
気力 32512/32512
スキル
[上級剣術lv3][光属性魔法lv10][闇属性魔法lv10][時空属性魔法lv9][看破lv2][改竄lv2][隠密lv3][再生lv5][神聖属性魔法lv8][深淵属性魔法lv8][料理lv1]
武技
剣:
固有スキル
[無限の心臓][全知の理][時間凍結][絶対魔力圏][可変龍装:風龍王ヴィント][超越思考][龍威]
称号
[神域に辿りつきし者][深淵に辿りつきし者][龍殺し][下克上][無謀なる挑戦者][大物喰らい][反逆の使徒][ゴブリンキラー][ゴブリンスレイヤー][コボルトキラー][スライムキラー][スライムスレイヤー][プラントキラー][ロックキラー][メタルキラー][クラストキラー][アンデッドキラー][アンデッドスレイヤー][オーガキラー][竜殺し]