032
今回からWorld viewとかいうよくわからない企画を始めることにしました。
World view
魔族は魔物の延長線と呼ばれ、職業に就くことができない。
倉庫の肥やしが増えていく件はさておき、上級ダンジョンに入れるようになったので、まずは「無限回廊」に挑戦する前にどこか適当な上級ダンジョンを踏破してみることにした。
僕が目をつけたのは、「雲の迷宮」である。
理由は単純、単になんとなく名前に惹かれたからである。
できれば日帰りで攻略したいが、少なくとも数日はかかるような気がする、と僕は思った。
初めての上級ダンジョンだが、あまり緊張するような要素はなかった。
長蛇の列の最後尾に並び、自分の番が回ってくるのを待つ。
二時間ほど待ち、やっと列の先頭にやってきた。
慣れた手つきでBランクのギルドカードを見せ、先に進む。
奥の魔法陣の上に立ち、僕はここ一年弱で慣れてきた転移陣の感覚に身を委ねた。
転移陣で出た先は、普通の迷宮のフロアだった。
しかし、今までのどのダンジョンよりも広い。
さすがは上級ダンジョンだな、と内心納得した。
しかし、どんなに複雑な迷路であっても、空間探知の前には無力である。
僕はこの階層でも最短経路を使って進むことができた。
途中に出現する魔物は飛行する魔物が主で、中級ダンジョンよりは強かった。
しかし、僕が苦戦する要素はどこにもない。
ただひたすらに『グリーンフライ』や『アーマードビー』などの魔物をひたすら切り続けた。
『ミストローム』という物理攻撃が無効の敵は、深淵属性の中の崩壊を付与して切り刻んだ。
そして、魔物よりも少し厄介だったのは罠である。
転移の罠や、水が流れてくる罠もあれば、落とし穴と当時に上から鉄球が落ちて来たり、いきなり床が燃え上がったり、胡椒が飛んで来たりと千差万別の罠達だ。
絶対に女性が嫌そうな罠として、黒光りするGを降らせる罠もあった、最低である。
とはいえ、転移の罠は発動するまでのタイムラグで魔法陣を壊せばいいし、万が一飛ばされても時空属性魔法で戻ってこれる。
流れてくる水や落ちてくるGは異空間に格納すればいいし、燃え上がる床は結界で強制的に押しつぶして消せばいい。
鉄球は受け止めればいいし、落とし穴は穴の上を浮遊すればいい。
少し面倒ではあるが、そこまで困難なく対処できるレベルである。
こうして、僕は第21階層まで来た。
21階層、そこには、雲の海が広がっていた。
特殊階層、雲の迷宮第21階層、この迷宮の最難関にして名前の由来である階層だ。
普通は特殊階層に潜る場合はそれなりの用意をしてから望むそうだが、僕には全く事前情報がない。
その理由としては、まず単純に事前情報の必要性を感じなかったからだ。
とりあえず、魔法を使ってゴリ押せば事前情報がなくてもなんとかなる気がする、というかしすぎる。
もし本当に危険な場合はダンジョン外まで転移すればいい話だ。
ダンジョン内からダンジョン外への転移は単なる転移ではなく、ある意味世界の扉をこじ開けて通るような行為なので多大な魔力を必要とする。
ただし、僕からすればごく微量であるので、好きな時に使用できる。
逆に、ダンジョン内への転移は難しく、座標をきっちりと定めてもダンジョン内の魔力のせいで誤差が生じてしまう。
頑張れば狙った階層に転移できるかな、ぐらいである。
まず、僕はこのダンジョンで危険な目にあうことはないだろう、多分。
また、もう一つの事前情報なしで挑む理由は、「無限回廊」の予行演習である。
当然のことながら「無限回廊」には、浅い階層についての情報はあっても、深層の情報は全くと言っていいほどない、いや、実際に全くない。
[全知の理]を使えば話は別かもしれないが、生憎使用は自主規制中だ。
全階層が特殊階層である「無限回廊」を攻略したいと思うなら、「雲の迷宮」の特殊階層どころで手間取る訳にはいかない。
というか、事前情報なしで攻略できて当たり前でなければならない。
とりあえず、僕は空間探知を特殊階層全域にまで広げることにした。
空間探知の結果、僕はこの階層の構造を理解した。
まず、この階層全域に雲の海が広がっている。
そして、雲の上には乗れるらしく、いくつかのパーティが雲の上を走って移動していた。
ただし、雲の下はおよそ900メートルの空洞であり、一番下には鋭く尖った岩が待ち構えている。
つまり、落ちたら死ぬ。
雲の海には所々島が存在し、その中心には今僕がいるスタートの建物と同じような建物が建っている。
多分このどこかにゴールの転移陣があるのだろう、と僕は推測した。
一個一個確かめていくのは結構面倒そうだが、この状況からして全部回らざるを得まい、と僕は現状を分析した。
ただし、実際は方法を選ばないのであれば早く片付けられる。
特殊階層がもう使えないほど荒れることを僕が是とするならだが。
ちなみに、どんなことをすれば特殊階層が荒れるのかというと、ただ単に膨大な魔力に任せた深淵属性魔法による侵食である。
侵食して階層そのものを僕の支配下に置き、強制的に転移陣の場所を知る、それだけだ。
ただし、一度僕が強制的に支配したものは、僕の支配から外れると自動的に崩壊する。
神聖属性魔法を使えば修復ができるかもしれないが、いや、多分ダンジョン自体は直せるだろうが、特殊階層にいる他の冒険者に多大な損害を与える、あるいは生命を脅かす恐れがある。
その場合、いかに全属性中最高の治癒能力を持ち合わせている神聖属性とはいえ、死者を復活させることはできない。
どれほど強大な力であっても、世界の理の前においては無力なのだ。
そして、人殺しは故意はもちろんのこと、過失であっても絶対にしないように心がけている。
というわけで、僕はこの階層の島を一つ一つ調べていかなければならない。
若干めんどくさいな、と思いつつ、僕は一歩目を踏み出した。
すると、次の瞬間足元が落ちた。
驚いて足を引っ込めて島の部分に戻る。
すると、沈んだはずの雲の部分が戻ってきた。
一定の間雲を踏んでいると落ちるトラップなのだろうか?
検証のため、もう一度注意しながらそっと雲の上に足を乗せる。
すると、足を乗せてから約0.5秒後に沈み始めた。
そして足を引くと、思った通り雲は浮かび始めて、元の場所に戻った。
これは、走って駆け抜けろ、的なパターンのようだ。
走って駆け抜けてもいいが、それだと少し効率が悪い。
とりあえず、雲の上には足を乗せずに飛んでいくことにした。
雲の上を歩いている、ように見せかけながら、実際は少し浮いている。
深淵属性魔法による斥力操作は本当に役にたつ。
こうして、僕は一番近いところにある島までたどり着いた。
しかし、ハズレであり、宝箱が一個だけおいてあった。
宝箱には青い色をした液体が入った瓶と、説明書が入っていた。
雲固定薬
この薬を振り掛けると、振りかけられた雲は30分の間動かなくなります。
注意:この階層でしか使えません。
完全なるハズレである。
僕にこんなものは全く必要ない。
空中を歩いているので雲を固定する必要がない、というか、雲がなくても攻略ができるほどだ。
内心で舌打ちをしながら、次にここに来る冒険者のために、僕はそっと青い瓶を置いて立ち去った。
それから、いくつかの宝箱を開けて回ったが、どこの宝箱もこの階層限定のアイテムで、ほとんど役に立たないものばかりだった。
例えば、直前にいた島に戻るアイテム、雲を逆に浮かせるアイテムなどであり、最初の青い瓶と同様に扱うだけだった。
そして、特殊階層の魔物は、階層に合わせた作りであり、かなり危険だった。
魔物は『クラウドリーパー』という雲形の鎌を持った魔物の一種類だけである。
名前 なし
種族 クラウドリーパー
レベル 5
適正 【風】
魔力 202/202
体力 105
筋力 231
俊敏 135
精神 89
スキル
[奇襲lv2][擬態:雲lv3][魔力隠蔽lv2]
固有スキル
称号
普通に相手にするぶんにはそこまで強くはなく、Fランク冒険者でも単独で余裕を持って対処できるレベルの強さである。
ただし、雲の迷宮の特殊階層限定で、凶悪な魔物と化すのだろう。
この魔物は、ダンジョン内の雲に[擬態]して足元から冒険者を[奇襲]する、この階層のみにおいては非常に危険な魔物なのだ。
雲の上を走らなければならないこの階層で、走っている途中で足元から襲い掛かられたら、普通は対処できずに一環の終わりである。
そして、[魔力隠蔽]をしているので、熟練の魔術師でもそうそう気づくことはできない。
対処法は、雲が落ちる前に急いで走りながら、足元に注意し続ける、又は、風属性などの飛行魔法を使って飛び回ること。
後者は、普通の場合は魔力量が足りないため非現実的である。
しかし、前者が現実的かというとそこまで現実的ではない。
走って疲れているのに、足元から襲って来る魔物を警戒するなどという離れ業をできる人間がいるだろうか、いや、ほとんどいないだろう。
[並列思考]があれば話は変わるかもしれないが、僕は持っている冒険者をほとんど知らない。
そのため、全力疾走しながら出会わないことを望む、それ以外には方法はないと言っても過言ではない、とても厄介な魔物である。
ただし、斥力操作による飛行魔法をずっと使用していても魔力が全く切れない僕の場合は、クラウドリーパーなどいてもいなくても大して難易度は変わらない。
足元から襲ってこられても、[多重思考]で対応できるし、雲の上を走っているわけではいので、疲れているはずもない。
それより何より、[擬態]して[魔力隠蔽]をしていても、僕の[絶対魔力圏]から逃れられるわけがない。
[奇襲]を仕掛けてきても、居場所を既に見破っているので、驚くことなく的確に処分できる。
そんなわけで、僕はこの階層をいとも簡単に歩くことができた
一晩特殊階層の島で睡眠をとり、二日目のことだ。
僕は、308個目の島になって、やっと転移陣を発見した。
大きめの宝箱を開けると、その中に転移陣が刻まれていた。
これは、空間探知では見つけられないはずだ、僕は、そう思いながら転移陣に踏み込んだ。
そしていつも通り、瞬間的にあたりは光に包まれた。
光が消え、辺りを見回すと、また同じような雲の海が広がっていた。
しかし、さっきよりは結構狭い空間だ。
そして、その中心には、竜がいた。
名前 ハクヤ=アイザワ
年齢 8
種族 普人族
レベル 126
職業 魔法剣士lv36
職業履歴 見習い魔術師 見習い剣士 魔術師 剣士
適正 【光】【闇】【時空】【神聖】【深淵】
魔力 error
体力 13998
筋力 12943
俊敏 14881
精神 29632
気力 29632/29632
スキル
[剣術lv9][多重思考lv3][光属性魔法lv10][闇属性魔法lv10][時空属性魔法lv9][鑑定lv9][偽装lv9][隠蔽lv9][隠密lv3][再生lv5][神聖属性魔法lv8][深淵属性魔法lv8]
武技
剣:
固有スキル
[無限の心臓][全知の理][時間凍結][絶対魔力圏][龍装顕現:風龍剣ヴィント]
称号
[神域に辿りつきし者][深淵に辿りつきし者][龍殺し][下克上][無謀なる挑戦者][大物喰らい][反逆の使徒][ゴブリンキラー][ゴブリンスレイヤー][コボルトキラー][スライムキラー][スライムスレイヤー][プラントキラー][ロックキラー][メタルキラー][クラストキラー][アンデッドキラー][アンデッドスレイヤー][オーガキラー]