031
僕は片手剣を起点にして魔法を構築した。
深淵属性による魔力固形化、長剣型、4メートル。
片手剣の上に深淵属性の魔力でできた剣を形成する。
片手剣のあったところには、黒々とした忌々しい長剣が出来上がった。
その瞬間、僕は後悔した。
魔物というものは、人間より魔力の流れに敏感であり、強大な魔力の流れに相対するとすぐさま逃げていく傾向がある。
それでも、なぜかゴブリン達は恐れずに向かってきた。
普通の魔物はこれぐらい魔力を使ったら逃げ出していくのに、と少し不思議に思いながらも、無造作に黒剣を一閃した。
当然、ゴブリン達は得意の連携を見せることもなく、ただ理不尽なまでの一撃の前に倒れ伏すこととなった。
少しだけ気になるので鑑定をしておくべきだったかな、と思った。
しかし、もう倒してしまった魔物には鑑定結果は表示されることはない。
少し残念な気分だったが、まあ、
ゴブリン達を異空間にしまうと、部屋の奥の方に転移陣が出現した。
これはボスを倒すと進める的な感じだな、そう思って、迷わずに転移陣の中に足を踏み入れた。
転移した先は、結構狭い部屋だった。
しかし、今までと違うところは僕が転移してきたところに魔法陣がない、ということだ。
部屋の中にあるのは、ダンジョンコアらしい大きめの魔力を感じられる半透明の球体、貧相な宝箱、そして、出口らしき転移陣。
ダンジョンコアに触れてみたい気もするが、触れるのはやめた方がいいと僕は知っている。
とりあえず、ダンジョンクリアの報酬らしき、このダンジョンに相応しい貧相さを兼ね備えた、宝箱に向かった。
中身は、低級のポーションが一本。
特に要らないが、一応とっておくことにする。
僕は異空間にポーションを放り込むと、転移陣へ向かった。
転移陣の出た先はダンジョンの入り口、とは言っても、最初の転移陣とは違うもう一つの洞窟だ。
僕はさっきの推測が正しかったことを証明した。
だが、この構造は他のダンジョンでも同じなのだろうか?
そこについても十分調べる必要がある。
とはいえ、いくら低級ダンジョンが簡単とはいえ歯応えがなさすぎるにもほどがある。
これでは低級ダンジョンではあまり期待しないほうがいいだろう。
とりあえず、まずはランク上げに全力を尽くして上級ダンジョンの挑戦権を手に入れよう。
迷宮都市では、冒険者ギルドは少し特殊な体制をとっている。
どこが特殊なのかというと、報酬のない討伐依頼が存在する、ということだ。
というか、ほとんどの討伐依頼に報酬が存在しない。
理由は単純、討伐すべき魔物がいないからだ。
まず、迷宮内の魔物は基本的に外に出てくることがないため、討伐する必要がない。
ダンジョンマスターが命令を下せば魔物が外に出てくるらしいが、ダンジョンマスターのいないダンジョンの場合は、ダンジョンコアを破壊した場合以外には魔物は決して出てこない。
もし、迷宮の魔物が外に出てきた場合は、そのダンジョンのダンジョンマスターは危険だとされ、Sランク冒険者に要請して急遽ダンジョンを踏破しようと討伐隊が組織されるらしい。
そりゃあダンジョンマスターもそんな危険は犯したくはないはずだ。
逆に、街の外で発生した魔物は、討伐依頼が出る前に駆逐されてしまう。
理由は単純、迷宮都市に出入りする強者達がいるからだ。
なぜか迷宮都市の冒険者ギルドには地下14階までしかなく、転職の神殿が存在しない。
そのため、転職をするためには他の街に行くしかないのだ。
だから、ある程度以上の強さを持った冒険者が日々迷宮都市に出入りしている。
逆に、報酬のない討伐依頼は、迷宮内でモンスターを討伐するだけの冒険者がランクを上げるためだけに存在する。
稀に討伐依頼があるのは、迷宮内で強力な個体が発見されて迷宮に入るのが危険になった場合、または、都市の外部に出入りする冒険者達だけでは討伐できないような魔物が現れた時だけである。
なお、この迷宮都市には強う冒険者が集まっているが、遠くの場所から討伐依頼が持ち込まれることは決してない。
理由は簡単である、迷宮都市の冒険者は基本的にダンジョンに潜ることしか頭にないからだ。
ダンジョンに潜れば強敵と戦える、ダンジョンに潜れば魔物の素材や宝箱からのアイテムで儲かる。
それでいて、なぜわざわざ遠くまで出向いて魔物を討伐する必要があるのだろうか、いや、ないだろう。
まあ、こんな感じで迷宮都市の討伐依頼には報酬がない。
魔物の素材の売却だけで生計を立てられるから、報酬はいらない、という理由もある。
そして、僕もランクアップのためだけに討伐依頼を受けるクチである。
『甲殻の洞窟』に赴き、巨大ヤドカリ的なモンスターである『クレープス』や、巨大エビ的な『ケルブ』の集団を魔法で爆撃する。
ボスである『キラークラブ』をゴブリン同様に一刀のもとに叩き斬る。
『鏡の迷宮』に赴き、目を閉じたまま空間探知のみで進み、普通は鏡のせいで襲ってくる方向のわからない魔物でも、迷わず一撃で葬り去る。
ボス、『ノワールクリーガーズ』の分身攻撃に対して広範囲連続同時攻撃で片付ける。
『惑わしの迷宮』の幻覚攻撃を膨大な魔力で強制的に無効化しながらひたすら進む。
見えないはずのボス、『インヴィジブルストーカー』であっても一閃で斬り捨てる。
魔法が使えないダンジョン『封魔の迷宮』であっても、約400倍ほどの魔力を込めれば強制的に発動できることを発見し、物理耐性だけを高めてやってくる、『ゴースト』や『シャドウ』などの魔物を魔法の餌食にする。
魔法主体で攻撃してくる、魔法が使えない場合は厄介なはずのボス、『リッチ』を、神聖属性魔法で即殺する。
『硬質の洞窟』の、『ブロンズゴーレム』、『アイアンゴーレム』や『ミスリルゴーレム』を、魔力強化した剣で屠る。
とにかく固いだけが取り柄のボス、『オリハルコンゴーレム』を、時空属性を付与した剣で、豆腐のように切り刻む。
『不死者達の墓場』の、『リッチ』に率いられた『ゴースト』、『レイス』、『スケルトン』や『ゾンビ』を神聖属性魔法で出会って一秒で浄化する。
(一般常識からしたら)膨大な魔力を持ち、不死者を束ねる『不死王』を、取り巻きとともに召喚された直後に昇天させる。
『剛力の迷宮』の道中の魔物で、力自慢の『オーク』や『オーガ』を力ずくでねじ伏せる。
普通は一発攻撃を食らったら全身骨折でアウトなはずのボス、『ミノタウロス』の大斧を一撃目で叩き折り、二撃目でボス本体にトドメを刺す。
ひたすら罠の多い『奇術師の迷宮』で、全ての罠を解除(誘発)しながら通行する。
落とし穴は、深淵属性による斥力操作で回避し、飛んでくる矢は全て時空結界で受け止め、毒ガスは神聖属性で浄化する。
落ちてくる天井、転がってくる岩や降り注ぐ槍も結界で片付け、閉じ込めるようなトラップの場合は壁を物理的に通路へと変換する。
ボス部屋もトラップずくめだったが、トラップを発動される前にボスである『ガーゴイル』を撃ち落とした。
ちなみに、『封魔の迷宮』だけは、まだ未攻略ダンジョンだった。
ただし、ダンジョンマスターを倒したわけではなく、ダンジョンマスターは自殺した姿で発見された。
多分、永遠の年月に耐えることができなかったのだろう。
攻略したと報告してもいいが、攻略したのがまだ登録して半年も経っていない駆け出し冒険者だと知られると、何かと問題があると僕は思った。
そのため、報告はせずに、次に少し簡単になったダンジョンを攻略した誰かにダンジョン初攻略者の名誉は譲ることに決めた。
余談だが、それから数週間後にBランク6人のパーティー、『白龍の牙』が『封魔の迷宮』の初攻略者として名を知られることとなったとか。
こうして、僕はひたすら中級ダンジョンを回ってランクを上げた。
ちなみに、中級になると宝箱の中身もたまに美味しくなってくるので、開けて回ることにした。
普通は低級から中級までのポーションや魔力回復薬、発火布、粒魔石などの倉庫の肥やしにしかならないものが主だが、稀に宝石、魔道具、武器、防具、金属インゴットなども出現する。
ただし、金属インゴットはゴーレムを潰して回っている間にも結構溜まったので、宝箱で出たぶんよりもたくさん集まった。
しかし、貯めておくことで何か問題が起こるいうわけではないため、僕の異空間にはものすごい量の金属が貯蓄されていった。
それから11ヶ月、僕はBランク冒険者になった。
ここまでの迷宮通いで溜まったものの数を記しておく。
所持金、王金貨12枚と、白金貨4枚、金貨7枚、銀貨1枚と細かいのがいくらか。
低級ポーション、514瓶。
中級ポーション、213瓶。
上級ポーション、3瓶。
低級魔力回復薬、334瓶。
中級魔力回復薬、93瓶。
上級魔力回復薬、1瓶。
毒薬、72瓶。
毒消し、45瓶。
怪力の薬、3瓶。
俊速の薬、5瓶。
剛健の薬、2瓶。
超気の薬、7瓶。
発火布、51枚。
大きすぎて、または小さすぎて売れない魔石、計578個。
宝石、32個。
用途不明なものも含め様々な魔道具、計51個。
剣、5本。
槍、7本。
手甲、4対。
斧、3本。
弓、6丁。
盾、2個。
槌、7個。
杖、9本。
トンファー、1組。
フレイル、1本。
棒、2本。
大鎌、1個。
なんかよくわからないけれど武器的なやつ、3個。
鎧、7着。
ローブ的なの、2着。
テント的な何か、1セット。
マジックバッグ、1個。
毛布、7枚。
縄、32本。
ランプ、12個。
銅、12トン弱。
鉄、11トン。
銀、3トン強。
金、27キロ。
ダマスカス、6トン。
ミスリル、2トン。
アダマンタイト、13キロ.
オリハルコン、6キロ。
ギルドで売れなかった魔物の素材、3トン。
それ以外の何かよくわからない色々なやつ、19トン強。
以上である、そして、異常でもある。
というか、これほどの量の武器や素材を使いきれるとは思えない。
剣とかなら使うかもしれないが、今持っている剣と比べて特に品質がいいというわけでもない。
ただ単に、持っていても収納場所に困ることはないので持っているだけだ。
そして、ここまで大量になると、ある意味売る気が起きなくなる。
金属は将来どこかで役に立つかもしれないが、それ以外は役に立つような出来事が思い浮かばない。
名前 ハクヤ=アイザワ
年齢 8
種族 普人族
レベル 125
職業 魔法剣士lv35
職業履歴 見習い魔術師 見習い剣士 魔術師 剣士
適正 【光】【闇】【時空】【神聖】【深淵】
魔力 error
体力 13948
筋力 12894
俊敏 14829
精神 29567
気力 29567/29567
スキル
[剣術lv9][多重思考lv3][光属性魔法lv10][闇属性魔法lv10][時空属性魔法lv9][鑑定lv9][偽装lv9][隠蔽lv9][隠密lv3][再生lv5][神聖属性魔法lv8][深淵属性魔法lv8]
武技
剣:
固有スキル
[無限の心臓][全知の理][時間凍結][絶対魔力圏][龍装顕現:風龍剣ヴィント]
称号
[神域に辿りつきし者][深淵に辿りつきし者][龍殺し][下克上][無謀なる挑戦者][大物喰らい][反逆の使徒][ゴブリンキラー][ゴブリンスレイヤー][コボルトキラー][スライムキラー][スライムスレイヤー][プラントキラー][ロックキラー][メタルキラー][クラストキラー][アンデッドキラー][アンデッドスレイヤー][オーガキラー]