021
何かしら伏線を入れてみたいが入れてところで後で活用できるかわかったもんじゃない、と考える今この頃。
僕が冒険者になってから、三ヶ月がたった。
僕はほとんど毎日、討伐依頼をこなす日々を送った。
そして、毎日のように絶叫していた受付嬢さんも、普通に対応してくれるようになった。
「これで今日からあなたはDランクです。Dランクからは護衛依頼を受けられるようになります。Dランクに恥じない活躍を期待します。って言っても今もBランク以上の働きをしているような気もしますが」
「はい、ありがとうございます」
こうして、僕は晴れてDランクになった。
この場所にに来るまでにたくさんの困難を乗り越えてきたと言いたいところだが、特に苦労したわけではない。
強いていえば、Eランクになって常駐依頼に加わったスライムの討伐がめんどくさかったことぐらいか。
スライムは、弱いモンスターの代名詞のようなモンスターだが、意外に厄介だ。
その理由は簡単だ、核を潰さない限り無限に再生し続けるからだ。
そして、スライムは核の位置を移動して核を破壊されないようにするので、前衛の場合は核を簡単に破壊することができない。
魔法で一掃すると言う手もあるが、魔術師はスライムに弱い、特にソロの場合は。
顔にスライムに取り付かれると詠唱が出来なくなってしまい窒息死することがあるからだ。
というかほとんどの魔術師の場合、取り付かれると自分では対処できない。
しかし、どれも僕を苦しめる要素のならなかった。
剣を使う場合は核を移動する前に破壊すればいいし、取り付かれても無詠唱で吹き飛ばせる。
僕が苦労したのは、スライムの逃げ足だ。
こいつらは、弱い相手には結構好戦的なくせに、強力な危険察知スキルを持っているのだ。
僕が近づくと、ひたすら逃げまくる。
逃げまくって、逃げまくるのである。
三日目に転移魔法を使ってやりすぎてしまったため、転移魔法を使うのは避けていたのだが、あまりにも効率が悪すぎて使ってしまおうか、と思ったほどだ。
結局、イラついて遠距離から魔力暴走を引き起こさせて始末する方針に切り替えた。
なお、転移魔法並みに自重していないことに気がついたのはスライムが全滅した後だったりする。
こうして僕は、なんやかんやあったものの、Dランクになった。
そして、僕はこれからの行動は決めてある。
王都、いや、ここは帝国だから帝都に向かう。
そして、ただ向かうつもりはなく、できれば帝都行きの護衛依頼を見つけるのだ。
数日の間、朝早くから依頼板を見張っていたが、いい依頼がなかったため、Dランクの討伐依頼をこなしていた。
Dランクになると、常駐依頼も賑やかになってくる、オーク、トレントなどだ。
報酬もいいし、素材も高く売れるので、Dランクになってよかった、と思えた。
そして、良さそうな護衛依頼が見つかった。
帝都までの護衛
依頼主:フィボリオ商会
条件:Dランク以上が合計5人以上
報酬:一日あたり銀貨3枚
内容:7/4の朝5時までにフィボリオ商会前に集合してください
帝都までの護衛
途中で討伐した魔物の素材は冒険者たちで話し合って決めてください。
一日朝夕の二食提供します。
報酬はそこまでいいというわけではない。
しかし、帝都まで行ければそれでいいし、お金に困ってはいない。
ムーンラビットを大人気なく狩りまくったことで、結構お金が溜まったのである。
受付ですぐに依頼を受注することにした。
「この依頼を受注します」
「はい、帝都までの護衛ですね。了解しました。時間に遅れないようにご注意ください。そういえば、ハクアさんはまたここに戻って来ますよね?」
「いいえ、多分帝都にとどまることになると思いますね。もしかしたら戻って来ることになるかもしれませんが」
「そうですか。ここも寂しくなりますね。では、お気をつけて」
「こちらこそ、三ヶ月の間いろいろ迷惑をかけましたが、ありがとうございました」
「いいえ、冒険者の無茶振りに対応するのがギルドの職員に勤めですから」
そう言って、受付嬢さんは微笑んだ。
僕は、その次の朝の4時半にフィボリオ商会の店舗前に到着していた。
そこには、もうすでに3人の冒険者が集まっていた。
直接話したことはないが、僕はその3人の名前を知っていた。
この3人は、確か、Dランクパーティー『白の双櫃』とかいう感じだった気がする。
全員がルオノヴァーラ魔法学園の最年少卒業者で、若手のパーティーとしては相当の実力だと言って話題になっていたはずだ。
全員が魔術師でありながら、一応近接戦闘もこなせるらしく、いろいろなパーティーから勧誘を受けているとか。
茶髪の少年と赤髪の少女と水色の髪の少女の3人組で、全員杖を所持している。
パーティー構成は男女比1:2と、ハーレムパーティーと定義できるかどうかはギリギリのラインだ。
「数日間、よろしくお願いします」
リーダー格の少年が挨拶してきた。
「こちらこそ、もしかしたら迷惑をかけるかもしれないけれどよろしくお願いします」
挨拶にはこちらも挨拶をし返す。
「ちょっとちょっと、絶対に足手まといになったりしてライ君に迷惑をかけるんじゃないよ」
赤髪の少女が慇懃無礼な態度で突っかかってきた。
けれど、僕が何か言おうとする前に、少年がそれを咎めて言った。
「エルミ、失礼じゃないか。他の人に失礼だよ」
「エルミ、あなたはライ君に迷惑をかけるのね」
水色の髪の少女もそれに乗って冷めた口調でエルミを批判する。
「違うわよリリイ。あたしはライ君のためを思って言っただけよ」
「違わない。ライ君の仲間がこんなバカだなんて思われたらライ君の評判まで下がる」
「ちょっと何それ。あたしがバカだって言いたいの?」
「そう、そう言っているの。あなたはいつの直情的すぎる。私はライ君のことを思っているから、いくら護衛時の仲間が頼りなさそうでもそんなことは言わない。仲間がいくら護衛対象になりそうでも口に出しては言わない。どれだけライ君以外が劣って見えてもそれを口に出したりしない」
君も十分失礼だと思うよ、と内心で突っ込む。
「ちょっと二人とも、人前で喧嘩するなんてみっともないからやめなよ」
「わかった。ライ君がそういうのなら私はやめる」
「わかったわ。人前では喧嘩するのはやめる。これでいいんでしょう?」
「後、ここにいるハクアさんは年齢的には僕たちより下だけれど、実力的には僕たち以上かもしれない。失礼なことを言っちゃダメ。もしかしたら迷惑をかけるかもしれないのは僕たちの方かもしれないんだよ」
「わかった。ライ君が望むのなら私はなんだって従う。よろしく」
「わかったわ。私もそう言えばいいんでしょう。よろしくお願いします」
ライ君の言葉は絶大だ。
これは確実に、ハーレムパーティー(仮)ではなくハーレムパーティーだな。
「こちらの仲間が迷惑をかけてすみません」
「いえ、大丈夫です」
そんな会話をしていると、最後の一人がやってきた。
斧を持った中年ぐらいの男だ、ギルドでたまに見るので知らない顔ではないが、よく知っているというわけではない。
「ああ?護衛依頼ってのはガキどものお守りなのかぁ?」
せっかく平和になったのに爆弾を投下しないでください。そんなことを言ったら、、
「ちょっと、それはライ君が足手まといだっていうこと?」
「さすがの私でもその発言は許せない。ライ君はあなたよりずっと強い」
「ちょっと二人とも、やめようよ」
「ほう。俺よりもそのガキンチョの方が強いと。で、そう言えばそこにいるそのもっと小さなガキはなんだ?依頼主の子供か?」
、、、まあそう言われるのも仕方ないかなあ。
「いいえ、あなたと同じくこの依頼を受けた冒険者です」
「ははっ、それで冒険者ってか。笑えるぜ」
、、、こいつ、めちゃくちゃ腹がたつ。
少しだけ言い返してやろうか、という気になった。
「いえ、あなたに負けないぐらい強い自信はありますよ」
「そうかそうか。そりゃあ素敵なこった。依頼中頑張ってくれや」
「それにしてもあなた、失礼すぎじゃあありませんか?」
赤髪の、確かエルミだったっけか、が男の冒険者に突っかかった。
「なんだ、事実を言っただけじゃないか。足手まといにならないようせいぜい頑張れ、ってな」
本当にムカつく。
「それが失礼だと言っているんです。あなたはライ君よりあなたが強いと証明できますか?」
「そりゃあ当たり前だろう。俺の方が長く冒険者をやっているしな。いくら同じDランクと言っても経験がちげえんだよ、経験が」
「エルミ、ちょっと、」
ライ君の言葉にも耳を傾けずに、エルミはまくし立てる。
「それは、あなたが今まで冒険者を長いことやってきたのに実力不足でDランクから上がれなかった、ということですね。それに比べてライ君は、世界一と言われるルオノヴァーラ魔法学園を最年少で首席卒業した天才。あなたとなんて比べものになんかなりません」
「ガキが。俺に勝てると思ってんのかぁ?」
「はい、その通りです。ライ君はすごいんです。あなたなんて一瞬で倒せますよ。そうだよね、ライ君」
「ええ、ちょっとその、」
ほら、ライ君も困っているじゃないか。
「ライ君はすごい人で。強い人」
ライ君ハーレムメンバーのNO2のリリイ、お前も参戦するのか。
「私が皆さんに依頼をした、ってこの状況は一体なんでしょうか」
斧使いの男とライ君の取り巻き二人が睨み合っている。
そして、ライ君はそれを見てオロオロし、僕は少し距離をとってそれを眺めている。
「「「なんでもありません(ねえよ)」」」
3人が声を揃えて言った。
こうして、この不毛な罵り合いは依頼主であるフィボリオ商会の店主が出てくるまで続いたのであった。
「それでは気を取り直して、私が皆さんに依頼をしたフィボリオ商会の店主、フィボリオです。本日から五日間で帝都まで行く予定です。五日間どうぞよろしくお願いします」
「俺はトハルマー、Dランクで見ての通り斧使いだ。よろしく」
「僕は、ハクアです。Dランクで剣士です。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、五日間どうぞよろしくお願いします」
「僕はライ=クレアーレ、見ての通り魔術師です。この二人とはパーティーを組んでいます。よろしくお願いします」
「私はエルミ、見ての通り魔術師よ。まあ、ライ君の足手まといにならないように頑張ってくださいね」
「私リリイ、魔術師、よろしく」
こうして、穏便に自己紹介が終わり、僕たちは帝都への旅路についた。
穏便と言っても、クレアのセリフにトルハマーが青筋を立てていたが。
名前 ハクヤ=アイザワ
年齢 7
種族 普人族
レベル 95
職業 魔法剣士lv5
職業履歴 見習い魔術師 見習い剣士 魔術師 剣士
適正 【光】【闇】【時空】【神聖】【深淵】
魔力 error
体力 11451
筋力 10023
俊敏 11302
精神 21983
気力 21983/21983
スキル
[剣術lv7][多重思考lv2][光属性魔法lv10][闇属性魔法lv10][時空属性魔法lv8][鑑定lv6][偽装lv6][隠蔽lv6][隠密lv3][再生lv3][神聖属性魔法lv6][深淵属性魔法lv6]
武技
剣:
固有スキル
[無限の心臓][全知の理][時間凍結][絶対魔力圏][龍装顕現:風龍剣ヴィント]
称号
[神域に辿りつきし者][深淵に辿りつきし者][龍殺し][下克上][無謀なる挑戦者][大物喰らい][反逆の使徒][ゴブリンキラー][ゴブリンスレイヤー][コボルトキラー][スライムキラー][スライムスレイヤー]