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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第零章 未来を書き換える運命
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002

 そこは、白い世界だった。いや、むしろ光の世界とでも言うべきか。

 僕はそこで目を覚ました。

 確かにあの瞬間に死を覚悟したはずだった。しかし、電車に轢かれたはずなのに、体には傷ひとつない。困惑しつつも、辺りの様子を探ろうとする。しかし、そこには光の世界が続くばかり。ひょっとしたら死後の世界か、と考えた瞬間のことだった。


「そう、その通り。ここは死後の世界だよ。」


 クリアなトーンの声が響く。驚いて声の方に振り向くと、そこには、黒い髪の青年が立っていた。

 黒い髪に黒い目、世の中の男子の多くが嫉妬しても疑問を覚えないような整った顔立ち。

 身長は180センチぐらい。年齢は20代ぐらいに見える。

 あなたは誰ですか、という前に口を開いてきた。


「所謂君たちが神、と呼ぶ存在かな。正式名称だと第35番世界統括神だ。あと、君の思考を読んで話しているだけなので、驚かなくてもいいよ」


 神の存在は死んでから証明されたようだ。

 神に会えるのは死んだあとだけなら、誰も神の存在を証明できないわけだ。


「いやいや、普通は死んだ後に神に会うなんてケースはないよ。君が特別なだけだよ。普通は記憶を消して転生させるだけ。あと、地球の管理神はサボ、いや不干渉型だから地球人に神に会うケースなんてさらさらないよ。他の管理神は神託を出したり加護を与えたりたまに降臨したりしてちょっかいをかけたりもするんだけどね」


 なんと、地球の神様はサボりだったらしい。

 それにしても、思考を読まれて会話するのはなんとも違和感がある。


「ごめんごめん。人間とはなすのはあまり慣れていないんだ。じゃあ、質問をしてくれ。答えられる範囲で回答するよ」


 色々と聞きたいことはあるが、まずは一番疑問に思っていたことを聞く。


「まず、僕はなんでここに呼ばれたんですか?」


「それは、君が未来改変を行ったからだよ。人は、運命の選択肢に立たされるときがある。そして、人はその選択肢をすぎてしまった運命は決して覆す事ができない。君が運命の選択肢に立ちはじめたのはあの日の朝だ。君が寝坊をした事で運命は切り替わった。これによって君と八十島三日月はあの電車に乗る事になった。そして君たちはあの男性に遭遇する事になった。あの男性はちょうど事業で大失敗を行い、全財産を失い、家族にも縁を切られ、失意のどん底そのものにいたんだ。そして仲良く話す君たちに遭遇した。そこまでなら、君はまだ運命を変える事ができた。しかし、あの男性が自らの負の感情に任せて行動した瞬間、八十島三日月の死という未来は確定したはずだった。しかし、君は八十島三日月の死という運命を改変し、その対価として自分の命を支払った。どう、理解できた?」


 なんかよくわからないがすごいことをしたらしい。と思って口を開く。


「まあまあ。わかったようなわからないような感じかな。でも、なんで僕は未来改変とかゆうのをできたんだ?不可能な筈、だったんじゃないか」


「人の身でそれができてしまったから呼んだんだよ。未来改変は実際亜神クラスの神格以上ではないと行使できない筈の力なんだ。亜神クラスでも1日に一度ぐらいが限度だよ。ちょくちょく未来改変ができるのなんて僕みたいな統括神とか力のある管理神か創造神位だよ。まあ、統括神以上は普通世界に直接手を出したりしないんだけどね」


 神様がちょくちょく口に出す統括神とか管理神とかいう言葉に少し疑問を覚えた。

 神にも色々な種類があるのだろうか。思ったことを口に出す。


「さっきから疑問に思っているんですけれど、統括神とか管理神とかって一体何ですか?」


「ああ、説明が足りなかったね。まず、創造神。全ての世界を創ったすごい神様の頂上的なあれだよ。そして、統括神。これは世界を実際に管理する立場にいる管理神達をまとめる立場だよ。今は確か79番までいた筈だよ。統括神は創造神によって世界を管理するためだけに創られたから、固有の姿を持っていないし、必要としない。だから、会う人ごとに見えかたが違う。大抵は、将来の理想の姿とか好きな人に似た姿とかで見えるらしいね。そして、管理神。これは、世界を実際に管理する神様だよ。創造神によって創られたものと亜神が働きを認められてなったものの二種類があるよ。前者は世界を管理するうちに固有の姿を身につけるらしいよ。ちなみに、僕の配下にいる管理神は49098182949382体だよ。最後に亜神。管理神サポートをする最下級の神だよ。これは、生前功績を残した人間などが管理神によって取り立てられて神になるものだよ。ちなみに、地球の管理神の下には56体の亜神がいた筈だよ」


「統括神が日本人風の男性だった理由は理解できました。神様のランク的なのも理解できました。でも、なんで僕がそんな神クラスの力を使うことができたんですか?」


「それを調べるのに苦労したんだよ。いつも怠、活動的ではない地球担当の管理神がいく十億年かぶりに取り乱しながらやってきてね、原因を調べたんだよ。そうしたら原因は君そのもの、いや、君の中にある力のせいだとわかったんだよ」


「僕の中にある力?」


「そうだよ。君は生きている時に何か違和感を感じなかったかい?」


「なんでもできたり、知らない筈のことを知っていたり、並列思考が出来たり、とかいうことですか?」


「そう、その力だ。普通の地球人にそんなことは出来ない。強力な加護を受けていたとかなら話は別だが、半ニート、いやあまり仕事に積極的ではない地球の神達がそんなことをする筈もない」


 地球の管理神は統括神公認の半ニートだったらしい。


「じゃあ、なんで僕の中の力とは一体何なんですか?」


「端的に言うとね、魔王と勇者の力だ」


 シリアスな感じだったのに、いきなり予想もしていない単語が出てきた。


「へ? あのRPG的な魔王と勇者ですか?」


「最初から説明すると、まず、ヘレナスと言う世界がある。そしてその世界の神様達は非常にゲーム好きなんだ。その世界には魔法もある。ステータスもスキルもある。スキルシステムを作るのに苦労して、何回もアドバイスを求めて僕のところに来たことは今でも覚えてるよ。ちなみに地球に魔法がないのは魔法がない方が管理が楽だから、だそうだ。で、そのヘレナスと言う世界なんだけれど、200年ごとに魔王が誕生して、勇者が召喚される。その世界に亜神は241体いるんだけど、その中で一番力を持っているのは暗黒神ハデスと聖光神アポロンという亜神なんだ。暗黒神ハデスの陣営は魔族に力を与え、聖光神アポロンの陣営は勇者とその仲間達を地球の日本から召喚して力を与える。そして、200年ごとに争わせ、どちらが勝つか見守るんだ。で、何回も召喚を繰り返すうちに地球とヘレナスの間にわずかなパスが出来てしまった。そして、56代目の魔王と勇者は過去最強と呼ばれていた。その理由はアポロン陣営もハデス陣営もしめし合わせて勇者と魔王一人だけに力を与えたからだ。お互いの力は拮抗した。死闘の末、魔王と勇者は相打ちになった。そして、主人が死んで解放された力は、大部分はロストしたものの、何の偶然か地球へとつながるパスを通って、生まれてくる直前の君に憑依したんだ。ちなみに、56代目はあまりにもあっさり終わってしまったので、今後は一人だけに力を与えるなんてことはしない、というルールが追加されたらしいよ」


「それにしても、何で毎回勇者を日本から召喚するんですか?他のところにもすればいいと思うんですが」


「地球の日本担当の亜神が一番ルーズだから、だそうだ。普通、神達は自分の世界に干渉されることをとても嫌うんだ。自分の管理区域を少し荒らしてもちゃんと後始末をするならいいよー、とか言ってる神はほとんどいないのに」


「つまるところ、僕のこの力はゲーマーな異世界の神とサボりな地球の神と偶然のせいで生まれた、ということですね」


「まあ、そんな感じだよ。そして、君の中の力は、地球という世界にいては十分な力を発揮できなかった。そして、スペックの残りが有り余る才能として発揮されたんだよ」


「では、そこまでわかっているのになぜ僕を呼んだんですか?亜神にスカウトでもするのでしょうか?」


「いいや、違う。理由は、君が未来改変を行った時に使った力だよ。どんな力だと思う?」


「火事場のバカ力のようなものでしょうか?」


「違うね。君は、君自身の時間を一瞬だけど加速させたんだよ。その力は未来改変を行うほどの強力な力だ。僕はこれを知って、君をここに呼んだんだ。君に異世界ヘレナスに行く気はないかい?と言うためにね」


 いきなりテンプレとでも言うべき転生のお誘いが飛んできた。


「へ、なぜそう繋がるのですか?」


「簡単に言うとヘレナスに僕がちょっかいを出したいんだ。向こうはずっと魔王と勇者のゲームをしているか、そのために力を蓄え続けているかのどっちかで、全く構ってくれないんだよ。それに、向こう側はガチなゲーマーなので、僕の干渉を阻むシステムを作り終えていてね、まあ上司権限(ちからわざ)で壊すこともできないわけじゃないんだけどそれじゃあ面白くないじゃん。で、君に目をつけたわけだ」


「阻むシステムとは一体どのような?」


「一つ目は最近導入された他の神がヘレナスの内部を覗くことを禁止するシステム。二つ目はヘレナスに入ってくる魂がヘレナス以外の神から力をもらっているかどうか判別するシステムだよ。あと、このシステムがあることも、加護をほとんど与えない地球から召喚を行っている理由でもあるよ。けれど、君の力はヘレナスの神がもともと与えた力だ。だから、君はこのシステムに弾かれることはない。なので、ヘレナスに行ってくれないかい?断ってくれても構わないけどさ。その場合は記憶と力を消去して普通に転生させるだけだよ」


「無理を承知で一応聞いておきますけれど、地球にもう一度生まれ変わることはできませんか?」


「無理だね。一度死んだらその世界に転生していいのは10回目以降と言うルールがある。仮に生まれ変わったとしても当然記憶は消されているよよ。もし、10回目ルールを破ったら、僕が創造神さまに消されてしまう」


 神のルールってのはかなり怖いらしい。


「いろいろとおっしゃっているのですが、なぜシンプルに記憶だけを消して力はそのままにして転生させるということをしないんですか?」


「君の力は記憶と強く繋がってしまっていてね、どちらかを消すともう片方も消えてしまうんだよ。で、どうするか決めてくれた?」


「わかりました。その条件をのみます」


「ありがとう。じゃあ、大まかにこれから行くヘレナスについて説明するね。まず、ヘレナスはゲームのような世界だ。ゲームのようにステータスが存在する。頭の中でステータスと念じればステータス画面が見られる。レベルも存在する。エルフやドワーフのような亜人もいる。獣人も竜人もいる。妖精もいれば、魔族もいる。ダンジョンもあれば、精霊もいる。冒険者のシステムんもあれば、転移者も稀ににいる。だから、日本から来た諺や言い回しも存在するよ。まさにファンタジーの定番を詰め込めるだけ詰め込んだって感じかな。僕がヘレナスを覗けなくなってからさらにカオスになっているはずだよ。いつも亜神達が新しい要素を追加するために努力しているからね。暗黒神ハデスと聖光神アポロンを筆頭とする亜神上位の神なんかは管理神になってもいいぐらいの力はあるのに、ゲームの運営の方が楽しいって勧誘を断り続けているんだよ。無茶苦茶だよね。というわけで、まあ、幸せな二度目の人生をお送りください」


 神様がそう言うと、僕の意識はブラックアウトしていった。


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