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深淵の神刻魔剣士(更新永久停止中)  作者: 易(カメレヲン)
第零章 未来を書き換える運命
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001

初投稿です。何卒至らない部分があったら、感想欄での指摘をどうぞよろしくお願いします

「ピピピピピピピピピピ」


 いつも通りの目覚ましが鳴る。運命の日は日常とあまり変わらない朝から始まった。

 時計に手を伸ばし、時間を確認すると7:35分だ。遅刻寸前の時間だ。

 目覚ましの仕事はどうしたんだと言いたくなるが、それは責任転嫁というものだろう。

 どう見ても起きなかった自分が悪い。

 朝食を食べる時間などない。

 ブレザーを着てカバンを持って階段を駆け下りる。

 いつもより20分遅れだ、とか考えながら扉を勢いよく開ける。


「忘れ物はない?」 「行ってらっしゃい」


 母はいつものように聞いてくる。

 妹はいつものように元気に挨拶をする。


「大丈夫、行ってきます」


 定番のように返し、ドアの外に出た。


 僕は藍澤白哉(あいざわ はくや)

 平凡とはちょと言い難い高校二年生。

 普通は自分で言う物じゃないと思うんだけれど、僕は異常な天才だ。

 どの教科でもそこまで勉強しなくても、超高得点が取れる。

 どの教科でも学年トップ10を割ったことはない。

 逆に低い点数を取る方が難しい。

 そして、明らかに覚えていなかったことのはずなのに、答えを知っているなんてことも珍しくはない。

 どのスポーツでも3日から4日練習すれば部活のレギュラーとほぼ互角に張り合える。

 また、運動している最中に息切れすることがほとんどない。

 極め付けに、僕は色々な作業を同時に行うことができる。

 例えば、二つのアニメを同時に見ながら大学入試の過去問を解きながら会話する、みたいなことが出来る。

 こんなのことできる人は僕以外には見たことがない。

 不気味がられるのは嫌なので最後の一つは本当に親しい人たち以外には秘密にしている。


 僕の所属している部活は剣道部と科学部である。

 ちなみに剣道部の方はそこそこ手を抜いて部活動を行っている。

 それでも部活の中では一番強い。


 クラスの中ではそこそこ人気がある方だと自覚している。

 ルックスも良い方だとは思っている。

 実際のところ中学時代には告白されて断った回数学年NO1だったらしい。

 それにしても誰が告白された回数なんて数えたんだろうか。

 もちろん、自己申告したわけではない。

 ただし、高校に入ってからはある理由で告白してくる人が減った。


 家族構成は父、母、中二の妹の四人家族である。

 特に大金持ちというわけではないけれど恵まれた家庭環境だとは自覚している。


「待たせてごめん」

「大丈夫。駅から走れば間に合うよ」


 僕の家の前でいつものように待っていたのは僕の幼馴染で、付き合っている振りをする契約をしている、八十島三日月(やそしま せれね)だ。

 因みに彼女の名前は所謂キラキラネームである。

 八十島三日月とは、僕が幼稚園の頃から一緒だった。

 彼女は三日月よりも太陽のほうが合っていると思えるほど明るい性格である。

 彼女は僕と同じ高校に通っている。


 そして、彼女は僕と違って紛れもない天才である。

 僕のようにチートじみたスペックに頼るわけでもなく、毎日の努力を欠かさない。

 どの教科も1日最低1時間は勉強するようだ。

 僕と同じく学年10位以内をキープする猛者である。

 因みに学年10位以内をどの教科でもキープしているのは僕と彼女の他に二人だけである。

 所属している部活は僕と同じく剣道部と科学部であり、剣道部内では僕以外の男子よりは強い。

 負けて悔しかったからとか言って素振りを夜が明けるまでやるようなやつだ。強くなるのもある意味当たり前のような気がする。

 そんな彼女と恋人の振りをする契約を結んだのは中学三年の秋のことだ。まず言っておくと、僕は三日月のことが恋愛対象として好きだ。いつからかはわからないが中学一年の頃は確実に恋愛対象として見ていた。

 そして、彼女に告白する勇気がなかった僕は、告白を断るのが面倒で精神的にも辛い、とぼやいていた彼女に恋人の振りをすることを提案した。

 もし、彼女が僕に好意を抱いていたらこのきっかけで告白してくれるだろう、と思って。しかし予想は裏切られ、彼女は恋人の振りに同意した。

 そして、今も僕は心地いいこの距離感を、いつかは無くなるものとは知りながら受け入れている。

 因みに、彼女に告白するための方法を模索して、今までに合計3冊ほどのノートを無駄にしてきたことは内緒だ。

 現在進行形で使用中の4冊目と共に机の引き出しに封印してあるはずだ。


「遅刻寸前になるなんて初めてだね」


 まだ遅刻しない確証があるわけがないのに、あたかも確証したかのように三日月は言う。


「優等生だしな。三日月こそいくら偽装恋人だからと言って遅刻しそうな時間まで待っている必要はないよ」


「お互いが待つってきめたでしょ。出てこなかったら高校が終わるまでは待つつもりだよ」


「それじゃあ待ってる意味ないと思うよ」


 苦笑しながら答える。小走りで駅へ向かう初夏の日。幸せな日常が確かにそこにはあった。


 駅のホームで電車を待つ。一番前に彼女と二人で並んだ。

 ラッシュアワーなので、どんどん後ろに列が出来ていく。

 最寄り駅から学校の近くの駅までは7駅だ。

 次の電車に乗ればギリギリ8:30には高校につけるだろう。

 希望的観測はあまり良くないと思っているが、多分電車が遅延でもしなければ大丈夫だと思っている自分がいる。


「間に合いそうだね」


 彼女はホームに進入してきた各駅停車を見ながらそう呟いた

 その瞬間、僕は猛烈な悪い予感に襲われた。

 ちなみに僕の予感は外れたことがない。

 そしてそれは今回も同じだった。


 次の瞬間、僕に左隣に立っていた三日月が、大きく前のめりになった。

 ストレートの黒い長髪がふわりと舞う。

 驚いて、左に振り向いた。すると、見るからにみすぼらしそうな茶色の服を着た男が彼女を後ろから蹴り飛ばしたとのだとわかった。

 その間にも三日月はどんどんと線路の方向へ向かって倒れてゆく。

 電車は駅に着くためにスピードを落としていたとしても、人間に当たれば即死は免れないだろう。

 戸惑っている時間も、驚いている時間も僕にはなかった。

 彼女に向けて手を伸ばし、その可憐な手を掴み、必死で死の淵から彼女を引き戻す。

 そして、彼女を引きずり戻すことには成功する。

 しかし、その反動として、その対価として、僕は線路の方へ落ちていった。


 今度は僕の方に死が迫ってくる。

 そして、それはもう避けられないものだということもはっきりわかった。

 その瞬間、世界が止まったように感じる。

 呆然とした、唖然とした、泣き出しそうな表情をした三日月を一瞬見た。

 家族 親戚 クラスメイト 部活の仲間 近所の友人 小中学校時代の友達。

 僕は何か出来たのだろうか。

 何にもしていないじゃないか。

 僕の部屋にあったパソコンはどうなるのかな。

 明るく振舞っているけれど実際には責任感が強い三日月は大丈夫かな。

 こんなことにでもなるなら三日月に今朝でも告白するべきだったのかな。

             死ニタクナイ(イキテイタイ)



 そして、世界は動き出し、












 線路上に血濡れの紅華が咲いた。















藍澤白哉 死因 出血多量と全身強打によるショック死

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