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ザ・ブラックホール  作者: 久我島謙治
第一章 ―内閣情報調査室―
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 ――西暦2051年2月3日(金)09:17 【東京都千代田区永田町・内閣府庁舎内】


「失礼します」


 秀雄は、南部課長の部屋を訪れていた。


「おう、どうだった?」

「報告書は、こちらです」


 昨日の匿名掲示板とくめいけいじばんのログを添付てんぷした報告書の入った外部メモリを渡す。

 南部は、受け取って端末に差し、ファイルをコピーして開いたようだ。

 外部メモリを秀雄に返した。


「数日前に例のブラックホールの都市伝説が日本に上陸しました。そして、一昨日の夜に大手の匿名掲示板で話題になったことから、一気に広まったようです」

「なるほどなぁ……それで、怪しい奴は書き込んでいたか?」

「はい、一人だけ。天文台の職員を名乗る人物がブラックホールが地球に接近した場合の影響を細かく書き込んでおりました」

「……これか」


 南部は、書き込みのログを確認しているようだ。


「武田、お前はどう思う?」

「その書き込んでいる者が本当に天文台の職員かどうかということでしょうか?」

「まぁ、そうだな」

「その可能性はあると思います。何となく匿名掲示板に慣れていない雰囲気ですし、仮にブラックホールが地球に接近した場合どうなるのか学術的な立場で回答しているだけかもしれません」

「で、その掲示板では、ブラックホールの都市伝説が沈静化ちんせいかしたと思うか?」

「ログを見てもらえば分かりますが、肯定派の人間も心底信じている風ではありません。それ以前の問題なような気がします」

「確かにな……」


 誰も扇動せんどうされていないのに工作しても意味がないだろう。


「とりあえず、このネタも含めて他に動きがないか注意していてくれ。インターネットだけではなく、テレビや雑誌もチェックしてくれ。新聞は、まぁ大丈夫だろう」


 新聞で都市伝説が取り上げられることはないだろう。雑誌は、この手のマニアが買うようなものなら記事が載る可能性が高い。テレビは、世間で話題になれば紹介される可能性がある。テレビの影響力は大きいので一番注意が必要だろう。しかし、それを見た視聴者が信用して扇動されるとは思えないのだが……。


「では、失礼いたします」

「おう、頼んだぞ」


 秀雄は、南部課長の部屋から退出した――。


―――――――――――――――――――――――――――――


 ――西暦2051年2月6日(月)08:31 【東京都千代田区永田町・内閣府庁舎内】


野辺史郎のべしろうですか?」


 眼鏡を掛けた50がらみの男が問い返す。


 小さな会議室には、全部で5人の男たちが居る。内調の国内部門の人間だ。


「国立天文台の職員で、最初にブラックホールを観測した男だ」

「その人が何か?」

「匿名掲示板でブラックホールが地球に接近した場合にどうなるのか書き込んでいやがった」

「不用意なことをしないよう注意すべきだと?」

「いや、それは逆効果だろう。ただ、監視はつけておくべきだな」

「では、公安に手配しておいてくれ」

「分かった。チヨダに申請しておく」


 40代半ばくらいのせた男が発言する。


「それよりも、首相への報告はどうなっているんだ?」

「この情報が、欺瞞ぎまんという可能性は捨てきれない」

「何処の国がそのような工作をしてくるというのだね?」

「科学者がグルになるとは思えないしな」

「現実から目をらしたいだけだろう?」

「なんだとっ!?」

「まぁまぁ、喧嘩けんかは止めたまえ。非常時なのだぞ」

「しかし、俺達にはどうすることもできない……」

「我々の力が及ばなかったことなど、過去にいくらでもある」

「しかし、今回は、全ての人間が死ぬかもしれないんだぞ!!」


 会議室に沈黙が流れた――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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