-プロローグ-
――西暦2051年1月21日(土)
ハワイ島マウナ・ケア山の山頂に日本の天文台が存在する。
そこにある大型光学赤外線望遠鏡が通称「プレアデス」だ。
国立天文台の職員「野辺史郎」は、その日、観測データの整理を行っていた。
昨日、懇意にしている海外の研究者から面白い情報が電子メールで寄せられた。
現在、太陽方向にある深宇宙から強い電磁波を観測したそうだ。
太陽風――太陽から吹き出すプラズマ――に紛れて見落とすところだったが、明らかに違う波長のパターンだったようだ。
野辺は、興味を惹かれて、その座標を観測対象にピックアップした。
そして、どんなデータが得られたか久しぶりにワクワクしながら、観測データのチェックを行っていた。
「こっ……これは……!?」
地球から見て現在の太陽方向にある準惑星と重なった位置にそれは映っていた。
「――重力レンズ現象!?……あり得ない……」
野辺は慌てて電話を取った。
まずは他の天文台にも確認してもらう必要がある。
野辺の体は、恐怖でガタガタと震えだした。
『事実だとしたら、人類は滅亡するかもしれない……』
この日、太陽系に接近するブラックホールが初めて観測された――。