クラウスとロッタ~旅立ち~
割り込みなどありませんが投稿です。
女性騎士三名が叙任し、半年。
アヤメは女性としてありつつも強さを誇り、ダリアは男性であるかのように突き進み、ロッティリアはただただその強靭さに周囲を圧倒させた。
三人はまるで違った方向性をもちながらもそれぞれに女性の社会進出の方向性を示し、ことは順調に進んでいた。
だからこそ、俺は次の手立てに進むこととした。
「――頼んだぞ」
旅立ちの早朝、俺は馬上にいるロッティリアを見上げ視線を交わした。
「ああ。任せときな」
その視線には甘いものはなく、目的を果たす為に研ぎ澄まされた凛としたものだった。
「王都はアヤメとダリアがいりゃ充分だしな。あたしは精々喧伝してまわるとするさ」
「大いに広めてくれ」
女性の社会進出は王都だけの問題ではなく、ロッティリアには主要な都をまわり女性騎士を広める大役を言い渡したのだ。
まずは紅い野薔薇として名を馳せていた地域で駐在騎士として勤め、定着してきたら周辺へと移る。それを繰り返し広めていくのだ。
王都への一時帰還はあれど、おそらくその九割方が王都外での活動となるだろう。
「――ヨーナスも頼んだぞ」
「承りました」
ロッティリアの相棒として選ばれたヨーナスに声をかければ、こちらも馬上で恭しく頭を下げた。
「二人ともお気をつけて」
同じく見送りに立つトゥーレの声を合図に二人は馬を繰り始める。
「――本当に良かったのですか?」
二人の背が小さく遠くなった頃、その背を見つめたままにトゥーレが尋ねた。
「元よりそのつもりだったのだから良いも悪いもない。ロッティリアは単身で様々なものを切り開く力が一番秀でているからな」
王都でだけ女性騎士が広まっても意味がなく、一人は地方へと出すことは最初から決まっていた。その役目をロッティリアに任せることも。
王都ではともかくとして、有名な傭兵であったロッティリアは地方では一番女性騎士としては受け入れやすい存在なのだ。あの赤い野薔薇であれば理解ができる、と。
更にロッティリアは心身ともに強靭だ。逆境にも強い。その上地方でも顔が広いのだからロッティリアを選ばないわけはない。適材適所は基本中の基本。
淡々と述べればトゥーレはなおも食い下がってきた。
「ですが、やっと共にいられるようになったのでは?」
嫁を罠にかけて捕らえた男としては、嫁は放したくないものなのだろう。
だが、少なくとも俺がロッティリアに求めるものはそうではない。
「もとより婚姻を結ぶだけで満足していた。ロッティリアには王都は似合わない」
広大な場所でのびのびと力を発揮するのがロッティリアというものだろう。
王都で縮こまっているなど、あり得ない。
「婚姻さえ結んでいればどこにいようとロッティリアの帰る場所は俺の元だ。多くを望まなくともそれで充分だ」
時たま帰ってきて俺の元で休息をとるだけでいい。
遠く離れていくロッティリアを見つめたまま告げると、トゥーレは俺を見てそして小さく笑った。
「帰る場所、ですか。そう考えると――クラウス副団長は案外束縛したいタイプなんですね」
どこに居ても、何かがあれば真っ先に連絡が届く。
どんなに離れていようとも、同じ姓を名乗り共に生きていると実感する。
ロッティリアが婚姻を結んでいると認識をしてからはより一層に近しく感じている。
「――そうかもしれないな」
トゥーレの言葉に薄く笑う。
胸元にしまわれた懐中時計と共に鎖に繋がれた指輪。それは一見なんの変哲もない指輪だが、その内側に赤と緑の石が嵌め込まれており、ロッティリアは身につけたリング状のピアスの内側に黒と赤の石を嵌め込んでいる。
仲の良い恋人や夫婦が行う互いの色を持ち合う行為。まさかそんなものを俺が行うとは思いもしなかった。
「……がんばれよ」
自分の耳にも聞こえるか聞こえないか。それほどに小さな声でロッティリアへと言葉を送ると、俺は踵を返し本部へと入っていくのだった。
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2/18より新騎士を投稿します。お付き合いいただけると嬉しいです。




