表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士団は恋が好き  作者: 葵翠
【小話】
67/79

カイヤと義兄 ~ケトラ家三兄弟~

 割り込みではありませんが変更連絡です。

 フェリクス編のカティヤの名前をカティに変更しました。

「いらっしゃい。待っていたわ」


「ただいま」


「お邪魔します」


 車いすを押してリュリュと一緒に迎え入れられたのは、リュリュの実家だった。

 王都に着いてすぐに一度来たものの、慌ただしくなってしまった上にリュリュのお兄さん達とは会えず――改めて今日やって来たのだ。

 リュリュには二人のお兄さんがいて、今日は奥さんもお子さんも連れてきてくれるっていうことだったんだけど……


「すごいわ」


 家の中のあちこちで叫び、はしゃぎ、駆けまわっている音が響いて大賑わいだった。

 子供の数は五人。全員が男の子だといってもこれほどの騒ぎにはならないくらいである。

 にもかかわらずこうなっているのは、男の子達に混ざる二人の男の人、リュリュのお兄さん達までもが子供に混じって騒いでいるからである。

 子供に両手を上げて襲いかかろうと追いかけ回したり、一人を肩車しながら別の子の腕をつかんで振り回していたりと、なんていうか、身体の大きな子供のように見える。


「相変わらず元気だなぁ」


 末っ子であるリュリュはそんな家の様子を見て苦笑していた。

 リュリュも決して物静かな性格ではないんだけど、この有様を見るとかなり大人しく感じてしまう。

 前もって元気な人達だと聞いてはいたものの、ここまでとは想像していなかっただけに思わず口が開いたままになってしまった。


「おっ、来たか!」


 びっくりしていると片方のお兄さんが気づいて、その声に子供達が群がって来た。


「リュリュだっ!」


「えー、何乗ってるのそれ!」


 子供達は口々に言ってリュリュを取り囲んで、リュリュはそんな子供達にいつもの優しい笑顔を浮かべた。


「みんな久しぶりだね」


 と声をかけるものの、子供達はリュリュの上に乗ったり車いすを押そうとしたりとやんちゃぶりを発揮して、瞬時にもみくちゃにされた。


「ちょっと、少しは人の話をね?」


 なんて言ってるけど聞く子は誰もいなくて、早くもちょっとだけ涙目になっているリュリュを見て故郷でのことを思い出す。

 水の都にいた時もリュリュは街の子供達から追いかけ回されて、悪戯されて、半泣きになりながら逃げ回ってたっけ。

 懐かしくて思わずくすりと笑うと、すぐそばにお兄さん達がやってきた。


「相っ変わらず泣き虫だなー」


「ホント変わんないな」


 体格のいいお二人はそれぞれ警備、護衛の仕事をしているらしくて、それに軍の隊長であるお父様を加えると結構な圧迫感を感じそうである。

 ちなみにリュリュだけはお母様に似たらしい。


「水の都でもよく泣いてたんじゃないか?」


 自然にそう話しかけられて、素直に頷く。

 最初は軟弱だって思っていたけど、今となっては微笑ましい光景だった。


「向こうでも子供達に追いかけ回されてて、懐かしいなって思って見てました」


 するとお兄さんが勢いよく吹きだした。


「やっぱりな!」


「嫁さんにまで言われるとか、ホント、泣き虫すぎんだろ」


 おかしそうに笑い始める二人にちょっとだけ慌てて手を振る。


「いえ、涙腺が弱いだけで街のみんなからは慕われて、頼りにされてましたよ。それに……本当はすごく、強いですし」


 するとお兄さんは少しだけ渋面になった。


「だよな。アイツ、昔っから泣き虫なくせに腕っ節だけは強くてよ」


「そうそう。身体もひょろっとしてたし、気弱そうだしでからかって遊んでたんだけど、そのうち実力行使に出られて散々な目にあったよな」


 その表情は実に面白くなさそうである。でも、二人も戦うことに関してはその筋なわけだし、


「お父様やお兄さん達に鍛えられたのではないんですか?」


 そう首を傾げるとお兄さんは手を振った。


「全然だぜ。喧嘩してたら速攻で強くなりやがってよ。こっちが負かされて年下の癖にって面白くなくて木剣で挑んでもすぐにまた泣きながら返り打ちにしてきやがってよ」


「アイツ反則だよな。最終的には俺らが二人がかりで剣で挑んでも素手で叩きのめして来たぞ。泣きながら」


 よほど悔しかったのか、二人は腕を組んだり頭をかいたりして剝れている。


「……泣きながらなんですね」


 どうしても気になったその部分は、お兄さん的にはせめてもの仕返しなのかもしれない。

 くすりと笑うと二人は目だけでにやりと笑みを返してきた。

 そうして改めてリュリュを見ると、どうやら子供達の暴動を少しだけ抑えることに成功したらしい。勢いの弱まった子供達をにこにこと相手している。


「あの泣き虫が足を失ったって聞いて心配したけど、顔見て安心した」


 ――と、お兄さんがぽつりと漏らした。


「だな。騎士になるだけのことはある」


 もう一人のお兄さんも頷いて、二人の表情に心から安心しているのを感じて微笑む。


「はい。リュリュはしっかりしてて、とても格好いいです」


 なんだか嬉しくなって肯定すると、二人からからかい混じりの視線が送られた。

 惚気ちゃったかしら。


「……泣き虫ですけどね」


 気恥ずかしくなって言葉を足すと、お兄さんが再び声を上げて笑った。


「え、なに?どうしたの?」


 私達の笑い声にリュリュがこっちを見た。


「内緒よ」


 そう答えればリュリュは不満そうに声を上げた。

 そうしてリュリュがこっちを気にかけたのをきっかけに子供達の視線もこっちに集まった。


「見たことない人!」


「リュリュの嫁さんだよきっと」


「ええーっ、リュリュ泣き虫の癖に結婚できたの!?」


「それは流石にひどくない!?」


 なんて会話にまた笑いが起こる。

 明るくて元気いっぱいのリュリュの家に、私の心は温かくなるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

年明け目標で現在、新騎士の話を書いています。

またお付き合いくださればと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ