番外編.リュリュの心労
まさかのリュリュ視点、しかも長いです。
楽しんでいただければと思います。
王都に戻って数年、僕は今日から管理部所属になった。
あんまり自覚はないんだけど、どうやら事務処理能力が高いらしくて管理部の騎士長と情報部の事務室長がトゥーレ騎士長に掛け合ったらしい。
広報部はすごく好きだけど、人数が足りてなくて僕が力になれるならと僕はその話に乗ったのだ。
どうして管理部になったかというと僕が切望したから。だってさ、情報部って癖のある人ばっかりでしょう?あの人達を捕まえて指示を出すとか、僕にはね。事務室長とか本当にすごいと思う。あのルーカス騎士長の首根っこ掴むとか、うん、僕には絶対無理そうだし。
そんなわけで今日が管理部として初めての出仕になるんだけど――
「管理部は取り扱う全ての情報が機密事項になる。職務中に見たものは全て、たとえ同胞相手であったとしても話してはならない」
「はい」
僕は今、管理部の騎士長から仕事をするにあたっての注意事項を教えてもらっていた。
管理部っていうのは人数も少なくて本当に目立たない部署なんだけど、実は副団長が――いれば団長が――指揮する厳正な部署なんだよね。
「指示の内容や情報はもちろん、騎士個人の情報も最新の注意を払う必要がある」
真剣な表情の騎士長に、僕も緊張した面持ちで頷く。
広報部も職務上得た個人情報は必要がない限りは話さない、というのが基本だからそれに似ているかもしれない。
「ちなみに管理部は広報部よりも厳しくてな。騎士個人の情報はたとえ同胞相手であっても職務内容はもちろん、所属や年齢も口外してはいけない」
……ん?
騎士長の言葉にふと固まる。ややあって反芻してみる。
騎士相手に別の騎士の情報を話してはいけない。職務内容はともかく、所属も年齢すらも?
「もちろん職務上得た情報に限るがな」
そう付け足されて、広報部でも同じようなものだったと思い返す。
慣れるまでは少し大変だけど、職務上でなく得た情報なら話してもいいってことなんだよね、これ。
それに出来るだけ話してはいけない、ってやつだったからその辺りはもの凄く気負わなくてもいいわけだし。
なんて思ってたら、騎士長は更に言った。
「ちなみに広報部では『基本的に話さないことが望ましい』だが、管理部は違う。『何があっても絶対に話してはならない』だ。その部分をよく肝に命じておくように」
まさかの厳命。
それはちょっと厄介かも。私的に知ってる情報と職務上知ってる情報を完全に切り離さないといけないってことだよね。
でも確かに管理部ならわかる。
だって情報部の騎士は身分を隠して活躍する人が殆どだしね。調査騎士もバレると危険だけど、中でもスパイ行為をしている潜入騎士なんかの情報が漏れたらそれだけで騎士団存亡の危機になりかねない。詳しくは知らないけど、確か公爵家の使用人とか軍人とかとして潜入してる人もいるんでしょ?
「しばらくは他の騎士と会話出来そうもありませんね」
思わず本音が漏れる。
「気持ちはわからないでもないが、逆に慣れるには他の騎士と話すのが一番だ」
「……頑張ります」
管理部に移ったからには管理部に従わなければ。
僕は一度深呼吸すると気持ちを切り替えるようによし、と小さく呟いた。
「これからよろしくお願いします」
「ああ。期待している」
そうして騎士長は自らの机から書類の束を手に取った。
「ではまずは一通りの騎士の情報を頭に入れることから始めてもらおうか。部署ごとにわけているが、今日は我々管理部と教育部だな」
「はい」
手渡された書類の束を手に与えられた机に腰を下ろす。
王都と水の都勤務の騎士はもちろん、元広報部として各地に散っている情報部の騎士達の名前は知っているものの、逆に管理部や王都、水の都勤務以外の広報部の騎士についてはあまり詳しくはなかった。
これから全ての名前を覚えていかなくてはいけないということだけど――よし、がんばろう。
気合を入れて一枚目をめくる。
「――え?」
めくった途端に、そこで見た文字に瞬きをする。
騎士団副団長クラウス・ローズ。
……ローズ?
副団長ってシーカヴィルタ公爵家の次男だったよね。
なんでローズ?
動揺しながら恐る恐る書類の下段へと読み進める。
親族欄にはもちろんシーカヴィルタ公爵家の事が書かれているけど、そのすぐ下には……
「え、え!?」
傭兵『赤い野薔薇』ロッティリア・ローズへ婿入り、ととりわけ新しいインクで記されていた。
「結婚してるって噂は聞いてたけど……え、婿入り?」
思わず騎士団長の顔を見ると騎士団長はさっきまでの硬い表情などどこにもなく、にやにやと笑みを浮かべていた。
「本当にですか!?」
「表向きは面倒だからとシーカヴィルタで通しているがな」
ええぇ。副団長って生まれも経歴も凄いし、本当に優秀な人なのは誰もが知ってるところだけど……そんな人がシーカヴィルタ公爵家から離れてまさかの婿入り。
「先ほども言ったが職務上得た情報は何があっても絶対に話してはいけない。――どんなに気になっても話したくても、絶対に話してはいけないぞ?」
からかい交じりの騎士長の言葉に、僕はただ目を見張った。
そんな。
あの副団長が婿入り。結婚してるけど奥さんが誰かわからないとか、本当は独身なんじゃないかとか、いろいろな憶測が騎士団内では囁かれていたけど。
どうしよう。この驚きを誰かと共感したい!
したい、のに……
「絶対に、言いません」
僕は口を引き結んでただ話したい衝動を抑えるのだった。
――結局、僕はそこからの一週間で恐ろしい情報を幾つも目の当たりにした。
まさか軍の将軍の一人が本当は騎士だったとか、広報部に所属するあの人が軍のスパイだったとか、空席だと思っていた団長の席が埋まっていたとか。
あまりの衝撃的かつ重い内容に顔が青ざめる。
ひょっとして情報部事務室の方がよかったかなぁ……?
+ + +
そうしてなんやかんやと管理部での仕事に慣れてきた頃、僕は女性騎士登用についての担当窓口になった。
そんな重要な役割に、入って日の浅い僕がなっていいんだろうかと不安になったけど、
「若い方が話しかけやすくて、意見や本音も言いやすくなるだろうからな」
とのことだった。
確かにベテラン騎士だと言いづらいこともあるかもしれない。僕も教官騎士やオスク騎士長には畏まってしまっていたからその気持ちはよくわかる。
ちなみに女性騎士の候補は三人。
一人はレーヴィの恋人であるアヤメさん。
一人は軍属のダリアさん。
そしてもう一人は傭兵『赤い野薔薇』ロッタさん。
そう。あの、副団長の奥さんだ。
騎士団からの依頼を幾度となくこなす、凄腕傭兵のロッタさん。
確実に信頼できる傭兵として騎士団では重宝していたけど、未だにそのロッタさんが副団長の奥さんであることは知られていない。
報告書や世間からの噂を総合するにすごく元気のいい人のようだけど、いったいどんな人なんだろう。
僕は当然ながら興味津々でロッタさんとの顔合わせに臨んだ。
「失礼します」
入ってすぐに目に入ったのは眩しいくらいの艶やかな赤髪だった。
少し猫のようにつり上がった丸い目は緑で、
「ご苦労」
ロッタさんに視線を向けるさ中で、副団長が視界を遮って僕の元へとやってきた。
そしてすぐさま肩に手を掛けて耳元で囁く。
「管理部規則。職務上得た情報は例え同胞であっても口外してはならない」
「え?」
なんでそれを今言うんだろうか。
瞬きをして副団長を見上げると楽しそうに歪んだ笑みが見えた。
「例えそれが親密な関係にある者だったとしても、絶対に口外してはいけない」
再度念を押すように言われて考える。
情報は親密な関係でも口外しない。
それってつまり――ロッタさんに副団長の話をしちゃいけないってこと?
「え、でも」
だって夫婦だよ?
お互いのことなんか知ってて当然じゃないか。
一体何の意味があって?
「――わかったな?」
一段と低い声で了承を促されて、一瞬びくりと震えてしまった。
副団長の恐ろしさはいろいろなところで知られている。
もしこれで僕は何か話してしまったら最悪、何かを失うことになりかねない。
僕は無言で何度も頷いた。
「あとは任せた」
そんな僕の様子に満足したのか、そう言うと副団長は部屋を後にした。
残された僕と、怪訝そうな顔をしているロッタさん。
副団長との関係は口外しない。ダメ、絶対に。
僕は自分に何度もいい聞かせると、改めてロッタさんに向き直るのだった。
+ + +
女性騎士の試験運用は順調に進んでいた。
アヤメさんは広報部の準騎士相当の能力で、ダリアさんは情報部寄りの準騎士相当。ロッタさんはすでに護衛部騎士相当。
全体的に知識が足りていないけど、そこは教育で十分補えるものであり、このままいけば半年くらいで叙任、女性騎士のお披露目になるのではと予想された。
そんな僕の目下の仕事は、長年女性兵として女性の集団生活を送っていたダリアさんや、逆にほぼ男性だけの中で女性一人で育ったアヤメさんからはとにかく助言をもらって、後続となる女性騎士入団の為の設備や仕組みを整えること。
そして彼女達のストレス発散も必要だと時折お酒や食べ物を差し入れて飲み会を開くことだった。
僕ら通常の準騎士なんかは空いている時間に遊びに出かけたり結構自由だったんだけど、三人は試験運用中でいろいろと制限がかかっているし、短期間で徹底的に詰め込むということもあってスケジュールがぎちぎちだったりするしね。
さて、そんなこんなで僕は今日飲み会を開くことにしていた。
明日は三人とも一日まるっと休みになっているからちょうどいい。
いつもは僕とレーヴィと、あとは彼女達に年が近そうな騎士や準騎士に声をかけるんだけど、たまたま王都に帰ってきたライノと行きあたって誘うことにした。
「それは是非とも参加させてもらうよ。食べ物や飲み物の手配は任せておくれ」
「うん、頼むよ」
ライノは大商会の息子だけあってそのあたりの手配は抜かりない。あっという間に高級品を集めてきてしまうのだから、今回は徹底的に任せることにしよう。
僕とレーヴィとライノ。いつもならあと一人、二人声をかけるんだけど、早速手配に取り掛かる為に背を向けたライノを見つめて今日は三人でいいかと決める。
レーヴィがいればアヤメさんとロッタさんはいいし、ダリアさんは騎士の仕事や生活などに興味があるからそういったものに詳しい人がいればって感じだからまさにライノは適任だろう。おそらく管理部を除けば騎士情報に一番詳しいと言っても過言ではないのだから。
僕?僕は管理部だから騎士情報を迂闊に漏らせないからね、まぁ、おまけだよおまけ。
そうして日が傾き始めた頃。
僕らはアヤメさん達が生活している一軒家へと上がった。
女性だけの家に上がりこむってのもなんだけど、通常であれば遺憾なことなんだけど、彼女たちへの規制がね。察してほしい。
で、僕が思った通り、ライノはいろんな話をしてくれた。いろんな街で見聞きした面白いこと、美味しいもの、変わった風習。さすがはもと大商会の跡取りだけあってその話題は尽きない。
そんな中でふとライノが珍しいことを言った。
「難航している調査があってね。これがまた、なかなか突き止められなくてね」
若手にもかかわらず既に調査の腕はトップクラスというライノはそういって肩をすくめた。
任務が思うように進まないとかであれば僕の耳にも入ってくると思うけど、そういったことはなかったから予想外だった。
「へぇ?仕事ではきれいさっぱり調査し尽くして帰ってくるってもっぱらの評判だよ。一体何の調査だい?」
「騎士団七不思議の一つさ」
七不思議。
うん、あるよね。
見習いの学舎棟で突然聞こえる笑い声とか、準騎士寮の二階角部屋は真夜中に揺れるとか。
もちろんそのほとんどはそれなりに長く王都に勤務している騎士であれば原因を知っていたりする。
だからライノが七不思議で原因のわからないことがあるのは意外なことではあった。
どの七不思議だろうかと続きを待っていると、ライノはとんでもないことを口にした。
「ほら、副団長の奥方の正体だよ」
「ぶっ」
ごめん、お酒噴いちゃった。
「わぁ、大丈夫かいリュリュ」
「大変」
びっくりして鼻とか気管にも入って激しく咳き込む。
アヤメさんが布巾を差し出してくれて、レーヴィが背をさすってくれるなかで、だけど僕は心の中で悲鳴を上げていた。
――よりにもよってそれ!?
「ぐっ、ごほっ……いや。……ら、ライノ、それは」
治まらない咳に上手く言葉が紡げない。
「副団長は既婚者だって話だけど、誰も奥方を見たことがないそうじゃないか。あれが気になって調べているのだけど、その様子だと知っているってことかな?」
僕の気を知らないライノはそんなことを言って目を輝かせているけど、無理だから!
副団長には口止めされてるし、そもそも管理部でも規制があるしね?
ていうかロッタさん。ロッタさんが言ってくれれば……
「ぼ、僕は、立場上……言えないんだけど、その……」
涙目になりながらも救いを求めるように視線を送るも、ロッタさんがライノに応えることはなかった。
それどころか、
「へぇ、アイツ結婚してたんだ」
ロッタさんはそう漏らした。
え……?
思わず目を見開いて見ると、ロッタさんは「知らなかった」とあっさりと言い放った。
どう見ても関係を隠す為とは思えない、純粋な台詞だった。
「え……?あれ……え、でも」
まるで意味がわからなかった。
一人取り残されたかのようにあたりを見回して、これまでのことを思い返す。
内密に婿入りした副団長。
ロッタさんと話をする直前の副団長の言葉。
そして今回のロッタさんの言動。
「ちょっと待って……まさか。まさか、嘘でしょう――!?」
行きあたった事実に僕は驚愕した。
ひょっとして副団長、ロッタさんの同意なしに婚姻届を偽装して提出した――!?
+ + +
婚姻届の偽装。
いやまさか副団長がそんなこと。
でも後日ロッタさんに確認したら知らなかったって言ってるし。
いやいや、まさか自分自身が結婚してることに気づかないなんてありえない。
となるとやっぱり副団長が隠してるってことになるのかな。
いや、いやいや。
「あー、もう!どうしてこんな時に副団長は出張に出てるの!?」
勤務中、耐えかねた僕は突如として頭を抱えて机に突っ伏した。
気になりすぎて夜も眠れない。
いや本当に、副団長とロッタさんはどうなってるの?
「何してるんだ?」
同じ部屋で仕事をしていた騎士長が怪訝そうな顔で僕を見た。
もし本当に偽装してたらと思うと怖くて話せなくて、まだこの話は誰にもしていなかった。
けどもういいよね?管理部として同じ秘密を共有する仲なんだし、騎士長になら話してもいいよね!?
「実は、恐ろしい事実がありそうなんです」
じわりと涙を浮かべながら僕は顔を上げて騎士長を縋るように見た。
「恐ろしい事実?」
「はい。副団長とロッタさんのことで」
そこで一度区切って深呼吸する。
言葉にするにはやっぱり覚悟が必要だった。
「この前の飲み会で判明したんですが……どうやらロッタさんは副団長の結婚のことを知らなかったみたいなんです」
「はぁ?」
「隠してるのかとも思ったんですけど、本気で知らないみたいで。ロッタさんと副団長は夫婦のはずなのに知らないなんて、そんなこと。……どうしよう、副団長が犯罪者かもしれません」
両手を机についてわなわなと震える。
あり得ないと言いたいのに、なんだか言えないこの状況が怖い。
「おちつけ。言ってる意味がわからん」
騎士長は嘆息してゆったり構えているけど、僕の恐怖は収まらずに自分の考えを語る。
「僕も混乱してるんですよ。ただ副団長からはロッタさんに副団長の個人情報を言うなって釘を刺されてて、それでロッタさんが知らないとなると、もう偽装した書類で一方的に婚姻を成立させたって考えるのが」
「人を犯罪者呼ばわりするな」
と、僕の背後から副団長の声が聞こえた。
「っ副団長!?」
がた、と思い切りイスから立ち上がって振り向けば、ごく普通に副団長が立っていた。
っていうかいつ部屋に入ったの?
「おつかれさまです」
「ああ、ご苦労」
副団長は僕の目の前を通って落ち着いた様子の騎士長に何やら書類を手渡した。
「本部に帰ってみれば何を奇想天外なことを口走っている」
くるりと振り返った副団長に、だけど僕は騎士長に話したことで抑えがなくなり本人に追求した。
「だってロッタさん、本気で副団長の結婚を知らなかったんですよ?自分の旦那の結婚を知らなかったってあり得ます?」
ない。あり得ないよね。
「ロッティリアは鈍いからな」
「説明になってません」
「ともかく書類は偽装していない。あれは正真正銘ロッティリア自身が署名した紛れもない本物の婚姻届だ。安心しろ」
「だったらどうして」
詰め寄る僕に副団長はひとつ息をついた。
「俺も不思議だ。鈍いにもほどがあるだろう」
「それ以前に求婚しなかったんですか?」
と、それまで様子を見守っていた騎士長が疑問を漏らした。
それもそうだ。
「してないな。婚姻届を突きつけて署名しろと迫っただけで」
さらりと首を振って言うようなことじゃないよね!?
僕も結婚前にカイヤのご両親にきちんと挨拶もできなかったけど、それでも籍を入れる前にちゃんと仕切り直してがんばったよ!?
「無論俺の署名済みの婚姻届に署名をさせた。――が、どうやらそれを提出していないと思ってるようだな」
あり得ない!あり得ないから!
気づいてないのも、気づいてないことに気づいたのに教えないのもないから!
「だがそうか。ロッティリアが俺の婚姻を知ったか」
内心騒ぎ立てている僕の目の前で副団長は腕を組んだ。
「何故ロッタに事実を話さないので?」
という騎士長の質問に副団長はやっぱりあっさりと言い放った。
「そのうち気づくだろうと。それまでは自由にしてやろうと思っていた」
……もうダメ。僕副団長についていけない。結婚ってそんな軽いもの?
魂を吐いてイスに座り込む。騎士長は僕の様子を気の毒そうに見つめていた。
「流石にリミットは叙任までだと決めてはいたが、そうか。そろそろつついてみてもいい頃か」
副団長はそう言ってしばらく考え込み、一つ頷いた。
「ロッティリアの元へ行くことにする。リュリュはどうする?なんなら一緒に行って確認するか?」
「……同行します」
もうこうなったらやけくそだ。
据わった目で僕は頷き席を立つのだった。
+ + +
結果?
副団長は嘘は言ってなかったよ。全部本当だった。
ロッティリアさんは副団長との婚姻届に署名をしていた。婚姻届が提出されてないと思った原因は婿入りだと思っていなかったからで、確かに公爵家にいるのに婿入りとか普通は考えられないよね。
それで副団長が結婚したってことだけを耳にして、実はちょっとショックを受けてたっぽい。
……うん、署名したどころか相思相愛だった。
物陰から隠れて二人のやり取りを見ていた僕は、訓練場でロッタさんを押し倒してキスしてる副団長を見て若干意識を飛ばした。
何このはた迷惑な二人。
二人ともおかしいでしょ!おかしいよね!?
なんて思ってたら副団長がロッタさんの服を脱がしにかかって慌てて退散した。
背後で「ふざっけんな!」というロッタさんの声と「本気でするわけがないだろう」という副団長の声が聞こえてきたけど、もはやため息すら出ない。
この僕の心労、誰かに伝えたい。
伝えたいけど規則上伝えられないわけで。
「……帰ってカイヤに癒されよう」
僕は遠い目をして帰路に着くのだった。
読んでくださりありがとうございます。
金曜日に後日談更新となります。




