第2章 ~日常と苦悩~
口の中に残った不快感に驚き目を覚ます。夕食の後、俺とライクは倒れる形で寝床へ着いた。
「気持ち悪い・・・」
少しの吐き気と共に食卓へと向かう。
やっとの思いで椅子に座ると、キッチンからうまそうな匂いが漂っているのを感じる。
「昨日は大変だったね、カムイ兄さん・・」
マツリだ。家族の中では最年少だが、最も常識をわかっている唯一の良心。
「もうヘルスに夕飯は任せられないな」
「僕が、ヘルス姉さんに夕飯を頼んだのが失敗だったね」
そう言い苦笑いする。
「朝飯は?」
「あと三十分待ってくれないかな?」
「珍しいな。待つことなんてなかったのに」
「兄さん今何時だか知ってる?」
時計を指差しそんなことを言う。振り向くと、時計は午前5時を指していた。
「お前何時から起きてんだ」
「ほんのさっきだよ。まったく、そんな早く準備が終わるわけないじゃない」
「ソウダゾ 全く カムイ君は俺様なんだから」
「お前・・・起きてたのか」
ライクがキッチンから顔を出す。
「あんなまずいもん食って眠れるわけねーだろ」
「そんなこと言っちゃだめだよ、ライク兄さん」
あまりにストレートに言うので、マツリがフォローを入れる。
階段から足音が聞こえる。ヘルスに聞かれたのかと皆が焦る。ドアが開く。
「みんなおはよー、昨日の肉じゃが美味しかった?」
元気な声と共に現れ、皆の予想は外れた。ライクが安堵の溜息をつく。
「あれ、肉じゃがだったのか・・・」
「馬鹿が、黙れ殺されるぞ」
急いでマツリの口を押える。
「なんかあったの?」
不思議そうな顔でこちらをのぞいてくる。
「早く飯にしようぜ」
「そ、そうだよね」
「ヘルス、は、早く座れよ」
ライクにより難を逃れることができた。
「今日のカムイ兄ィ変よ、何か悪いものでも食べたの?」
お前のせいだよ。とカムイは感じたが口には出さない。
朝食は無害なカレーだった。
「マツリがいて助かった」
そんなことをライクが溢す。
「今なんて?」
「何でもないです」
ライクとヘルスのやり取りを横目で見ながら、時間を確認する。
「午前8時か」
8時半から生き残った人間たちにより集会が始まる。
復讐の為に、天使から世界の覇権を取り戻すために。しかし、世界は取り戻せるのか、1週間に一度の話し合い程度で何ができるのか、たぶん何もできない。
だが、そうするしかないのだ。圧倒的な力の前では何もできない。だれも救えない。自分の力のなさを呪い、それでも少しずつ前進する。
これは始まりの物語 天使の支配から、少年たちが救った世界の物語。
後にGOD FATHERとして語り継がれる1人の男の記録である。
次回からやっと、本格的に物語が進行していきます。少年が如何にして伝説になるのか。ゆっくりと解明されていく真実。
皆さんよろしくお願いします。