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住民課へようこそ①

「佐伯様の担当となりました、白山(シラヤマ)菊理(ククリ)と申します。よろしくお願いしますね」

 おや、またまた美人さん。

 昨日の美人職員さんと違って日本的な美人ってやつですね。

 しかしここには美形しかいないのかね?

 まぁ、天使とか神様とかなら美形で当然なのかもしれない。


「佐伯様のご希望の転居地は天界ですね」

 今度はちゃんと事前に書類を書いておきました。

 って言っても希望の転居地にチェックを入れるだけだったけどね。

「はい。……というより他を選ぶ人っているんですか?」

 天界以外の選択肢は、修羅界、餓鬼界、畜生界、地獄界である。

 自分からそっち選ぶってどんなどMなのかと。

「あぁ、成程、それでは六界の説明をしておいたほうが良さそうですね」

 ん? 何故わざわざそんな手間を?

 ここはお役所仕事的に即受領しちゃっていいのに。


「まず佐伯様のご希望の天界から説明させて頂きます。

 天界は温泉街等が主体となっている、保養地のような場所です。

 お年を召された方がのんびり過ごすには良いところかもしれませんが、佐伯様のようなお若い方ですと少し退屈かもしれません」

「退屈、ですか?」

 なんか天国とかのイメージと違うなぁ。

 天国って言ったらもっと……あれ? よく考えて見ればほとんどイメージないな。

 なんか白くてふわふわして天使とか飛んでそうなイメージしかない。

「ええ、基本的に「何も無い」がある所ですね。骨休めには最適です。

 私もよく友人と遊びに行くんです。仕事の疲れを癒やすにはここ以上はないかと」

 白山さんってひょっとして結構なお年?

 おっと、口には出しませんよ。女性に年齢の話はご法度です。

「温泉や宿泊施設以外の施設ですと、博物館、美術館、図書館、教育機関、公園、植物園等があります。

 ベッドタウンとしても機能はしていますが、やはりアクセスを考えると自分の興味のある施設がある界を選ぶ方が後の手間は少なくなりますね」


「修羅界はエンターテイメント業が盛んな界になります」

 ここは明らかにイメージが違う。

 年がら年中みんなで殺し合いをしている所じゃないの?

「概ねそれで合っていますね。要は争いの方向性の問題です」

 おっと、口に出てたか。

 ……年齢の話は口に出してなかったよね? 大丈夫だよね?

「コロシアムや総合武道場等は勿論、野球場、サッカー場等のスポーツ施設や大規模なゲームセンター、賭博場等々、勝負事に関する施設はほぼすべて修羅界にございます。

 若年層には間違いなく一番人気ですね」


「賭場ですか。ということはここにも通貨はあるんですね」

 宿泊費も食費も無かったから、てっきり通貨自体が存在しないのかと思っていたが、金がなければギャンブルは成り立たない。

 まさか賭場で皆で持ち寄った農産物を賭けて勝負をしているわけでもあるまい。それはそれでちょっと見てみたいが。

「通貨それ自体はないのですが『ポイント』と呼ばれるものが存在しております。

 基本的に衣食住は無料で完全に保証されておりますが、それ以外に関してはこのポイントを消費して入手することになります。

 飲食物以外の嗜好品の購入や遊興費に使うのが主ですね」

「ポイントの入手方法は?」

「何かしらの仕事をしていただくか、修羅界での賞品として受け取るかになります」

 なるほど、共産主義や社会主義的な要素が基本で、そこに資本主義のテイストを破綻しない程度に混ぜているわけね。

 贅沢したい場合は死んでもなお働かないといけないわけか。

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