運命の選択
昨日教えてもらった食堂で朝食を食べる。
役所に併設されたこの食堂、宿泊施設の隣にあった。
何で気付かなかったんだろうね? 昨日夕飯食えたじゃん……。
しかも食堂と宿泊施設は24時間営業らしい。
まぁ、どっちもボタン押すだけだし営業時間も何も関係ないね。管理者らしき人さえいないし。
そしてどうせ無料なら贅沢してしまえと頼んだこのうな重。うまい。
なんか他に言葉が出てこないくらいうまい。
思考が単純化して、語彙が……うま、うま。
気付けば重箱には米粒一粒残っていなかった。
朝からこんなに食えるかちょっと不安だったが、全く問題なかったようだ。
肝吸いも既に無い。飲んだ記憶が無いんだけど?
なんかちょっと勿体無いな。おかわりしようか?
いや、やめよう。どうせ同じことを繰り返すだけだ。
「天上の美味」とよく言うが、そんなものを感じている余裕さえなかった。
本当にうまいものはうまいと感じる思考さえも奪ってしまうようだ。
それにしても黄泉戸喫か。これで俺も復活の目はなくなったな。
元々そんなもんはなかったろうが。
食堂においてあった本を適当に読んでいたら受付開始のアナウンスが流れた。
ちなみに「本当は面白い旧約聖書」はなかった。
何故だ? 焚書でもされたか?
いや、時代や地域によっては冗談抜きで焚書にでもされそうな内容だったけどさ。
本を焼く国はいつか人も焼くようになっちゃうんですよ?
あ、実際毎日焼いてはいるのか。ここには地獄もあるんだった。
役所に入り発券機の前に立った。
受付にいたのは昨日の美人職員さんではなく、男性職員だった。
イケメンであった。殴りたくなるほどのイケメンである。
こちらを見てニコニコと笑っている。
昨日の美人職員さんと違って心から微笑んでいるような暖かな笑み。
……あれ? 何故だろう? 妙な寒気が。
謎の恐怖感に駆られ、話しかけられる前に急いで発券機に手を伸ばす。
そして俺は、
白のカードを手に取った → 住民課へようこそ
黒のカードを手に取った → 転生課へようこそ




