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定時です

 売店はないらしい。

 「食堂だったらあります」と言われたが俺がほしいのは食料じゃないんだ。

 仕方がない、ホールに戻って続きを読もう。

 と、思ったのに「本当は面白い旧約聖書」がない。

 誰か読んでるのか? くそう、読みたい!

 なんだこのファッション誌みたいなの。

 「今話題の獄卒ファッション」とか本当にどうでもいい。

 受付に戻ろう。


 受付に戻った俺を待っていたのは無慈悲な現実であった。

「本日の受付時間は終了しました」

 ご丁寧にラミネート加工されたA3版のコピー用紙が神経を逆撫でする。

 はあああああああああああああああっ!?

 え? 何それ? 今日はもう終わり?

 もう戻る家もない俺は一体どこで一晩過ごせばいいの? 野宿?

 怒りをあっという間に上書きした脱力感。

 俺はその場にへなへなと座り込んだ。


「どうされました? ご気分でも悪いのですか?」

 デジャヴを感じて顔を上げるとさっきの美人職員さんがいた。

 地獄に仏だ! いや、どう見てもアジア系じゃないから仏や菩薩の類ではないだろうが。

 よく見たら首から名札らしきものを下げている。

 えっと名前は……ってなんだこれ!? なんて読むの?

 何だこの文字は? アルファベットですらない。

「えっと……、実は泊まるところがなくて……」

 まあ今は職員さんの名前より切実な問題がある。

 そちらを何とかしなければ。


 聞いてみれば付設の宿泊施設があって、無料で寝泊まりが出来るらしい。

 しかもなんと美人職員さんがわざわざ送ってくれるらしい!

 「こちらの方をお送りして、そのまま直帰しますね」と笑顔でおっしゃっておりました。

 定時より少し早く帰れて嬉しいんですね。分かります。

 しかも着いた途端に「それでは私はこれで」とあっという間にどこかへ飛んでいってしまった。

 比喩ではなく、物理的に飛行して。

 翼もないのに普通に飛べるんですね。


 宿泊施設に入ってみると、受付も何もなかった。

 部屋番号が書かれたプレートとその下にボタン。

 どうやらボタンを押すと下の取出口から鍵が出てくるらしい。

 ボタンが光っていない部屋は使用中なのか押しても反応がなかった。

 俺、似たような作りの宿泊施設知ってるなぁ……。


 部屋は意外と広かった。

 ベッド2つと机、ドリンクが入った冷蔵庫。

 そして驚くことにトイレと風呂が別だった。

 残念なことにルームサービスはやっていないらしい。

 今更だが食堂で何か食ってくればよかったな。

 今日はもう風呂に入って休むとしよう。

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