ななしでいら
それは七月も半ばを過ぎた蒸し暑い夜のことだった
ふと、秋でも冬でもなく春の吹きすさぶ春一番を思い描いたとき
僕の夜が目覚めた
それはどこまでも透き通った僕の心を揺さぶる事件だったと言っても良い
僕の携帯電話に着信が鳴った
そこで僕が起き出したことから考えたとき
その妄想に耽っていた自分は夢の中の人物だったんだと思った
僕は受話器を耳に当てた
ちなみに電話の呼び出し音は「ゴジラSOS」のテーマ曲である
僕が電話も耳に当てたとき
そのときになってよく見ないで当てたのに気がついたがここまできた僕は
そのまま電話に耳を投げやりに傾けていた
「もしもし、今からメールします」
続けてメールの着信音以外の物が聞こえてきた
「のいちのいちいちいち・・・・・・・・以上」
それはそれだけ異常な雰囲気を残して切れた
(間違い電話か)
そう思う反面意味側から無すぎる
これはいったいどういう異常だろうか
嫌今どういう異常事態について論議している時間はない
別段時間がないわけではないが
夜中の三時残りの時間は有意義に眠りたい
しかしなんなんだ今のは
「のいちのいちいちいち・・・・・」
全く分からん
試しに寝てみるも頭の中出先ほどの言葉がよみがえる
(のいちのいちいちいち)
全く分からん、僕はなんとも嫌な気分になってきたので試しに字に書き起こしてみることにする
「の いち の いち いち いち」・・・・・わからん
なら
「野市 の 一市位置」・・・・・何となく分かりそうな言葉の配列ではあるがそんな地名知らん・・為にググって見るも分からん
それならと
「ノイチノイチイチイチイチ」・・・・・・
なら
「の位置の位置の一々位置」
「ノいちノいちいちいち」
「の1のー1位置」うんん・・・
「ノ1ノ一1」・・・・・・・分からん
僕は結局布団に突っ伏した
そしてしばらくたってまた書き始めるも無駄に夜が明けていくのであった
「よおどうしたそんな目に墨を塗りたくって」
別段面白くも何ともないことを言いながら僕の横に突然現れた野蛮人
その名を左党十絵は僕の眠気を吹きとばさんがするように横にいた
「よおどうしたんだ本当に」
それは急にしおらしく言うがだからといって眠気が覚めるわけでも元気が出るわけでもない
「嫌昨日妙な電話がかかってきた」
そこまで考えて僕はあることに思い至った
(着信履歴という物があるではないか)
自分という人間はどうも無頓着でとりあえず電話が鳴れば出てしまうが
どうも世の中の人間は一度見るらしい・・・めんどくさい
「何々私に何かくれるわけ」
正直この蠅に昨日の残りまくった宿題でもくわえさせてやろうかとも思ったが、携帯を探している途中でその途中の残りさえも家に残している
ことに気が付き何とも出来ないことに怒りを覚えながら携帯電話を取り出した
「何恋人に電話」
こいつはどこかのラブコメのノリをしているが全くそんなことを考えていないのが怖いことである
僕はその言葉を完全に華麗にスルーして、携帯電話の中からようやくその着信履歴なる何に使うかよく分からない物を探し出してみることに成功した
「何々」
無理矢理みようとする隣の人間を押しとどめながら昨夜の所ではなく
今朝の一覧をみた
・・・・・間違えたか
僕は昨夜の一覧を見た
「あっそれ私がつくってやった奴じゃん」
確か名前を入れて貰ったような気がするが、それ以後誰の名前も入れていないことから、履歴のほとんどが名無しであり、唯一こいつの履歴が僅かに無秩序な数字の中で異様な存在と化していた
「・・・・・でもこんな物私に見せてどうしようってわけ」
それは不振の声を僕に浴びせたが正直みろなんて一言も言ってさえいない
「見てなんて言ってないしみるな」
「そう言われると見たくなるけどなんにも何感じだよね」
「・・・分かるのか」
「嫌分からないからそう言っているわけで」
「・・・・実は昨日」
「誰かに襲われたとか」なぜだか目をキラ付かせてそんなことを言う幼なじみをわき目に
「嫌そんなことではない」
「ちぇ」
「何がチェだ何が」
こいつは自分の中にもう一人の悪魔を飼っている、そいつは無限に増殖して、もはやこいつの悪を最大限まで溢れさせようとしている
しかしこいつの恐ろしいことは完璧にそれを表に出さず
分かってこのキャラを演じていることにある
これは猫をかぶるなんて物ではない
地球を被ったブラックホールくらいの異常事態である
「でなんなのさ」
「嫌実は寝ていたら三時ぐらいに電話がかかってきたんだ」
「うらめしやぁあーーて」
「・・・いや、違う」
「なら、のいちのいちいちいちってやつ」
「何で知っているというかおまえの所にも」
「嫌これ言いにくいんだけど」
「珍しいなおまえが言いにくいなんて、鉄頭でも一刀両断するおまえの暴言の数々、それを放つお前が言いにくいとは、もはやお前別人なのか」
「嫌そういんじゃないけど」
「ならなんなのだ」
「実は都市伝説なんだけど」
「・・・・・どういう内容なんだ」
「その言葉をメールされた物は死ぬ」
「ならセーフだ」
「なんで」
「だって、電話だったから」
「・・・・確かにそうだけど」
「何でお前が知っているようなことを言う・・まさか」
「嫌違うから、履歴がメールじゃなかったじゃん」
「・・うむ、しかしそれはどういう都市伝説なんだ」
「うん、そのまんま」
「っえ」
「いやだから、その言葉が贈られてくると死ぬの」
「・・・俺には関係ない」
「どんな内容だったの」
「たしか、メールを送信します、って言った後その言葉だった
所でそれはどんな意味があるんだ」
「何でも財宝が眠っているとか」
「嘘くさいな」
「嫌それも色々と噂があって」
「そうか、しかしこれはただのイタ電だと思うか」
「・・・まあその可能性が無くはないかも知れないけど」
「・・・・けど」
「うん、もし万が一に死んだときどうやって泣いて欲しい」
「・・・・君夜道に来お付けるんだな」
「うん」
「・・・・・・・・・・・ふざけているのか」
「いやしかし本当に大丈夫かね」
「・・・・大丈夫だろ・・」
「しかし案外」
「お前がビビるようなことか」
「それは私ならどうにかできてもあんたは少しねー」
「なんだそれは俺に対する人権差別化」
「嫌そこに関してあんたは馬鹿だから」
「・・・・余計酷くなっている・・・泣くぞ」
「・・・・・所で他には、他には何か言って無かったのそれは
たとえばどんな声だったとか」
「うーーーん、何となく機械音だったような」
「それってヘリウムガスみたいな」
「嫌そんな奇っ怪な感じではないような、明るいロボットみたいな」
「・・余計怖いな」
「・・・あっそうそう」
「なに」
「そう言えば」
「そう言えば」
「・・・被すな」
「・・・・・・・・株」
「履歴がおかしんだよ」
「どう」
「たしかに午前三時に電話が鳴ったんだけど、履歴が昨日の夜九時になってるんだよね」
「寝ぼけてんじゃないの、あんたいつも眠そうにしてるし」
「俺のどこが・・・」そこで思い当たる節が何本も見つかり黙るが
「しかし時計は・・」
「それこそ見間違いなんじゃない、それとも何、わざわざあんたの携帯にハッキングして履歴を昨日に書き換えたとでも言うの」
「・・そうじゃないのか」
「そんな面倒なことするくらいならもっと面白いことするでしょう」
「・・たとえば」
「あんたのアダルト類をばらまくとか」
「なんたるテロだ、っと言うかそう言うことは言わない方が身のためだぞ」
「それは単純に女子による幻想破壊者の私を止めることによって自らの理想の幻想を築きたいがための・・」
「ハイハイそんなこと言ってると警察に精神病棟に連れて行かれるぞ」
「行かれないもん、連れてなんて、健全な女子高校生の会話だもん」
人間的悪魔な人間
全く感情がないのにそんなことを言っている人間
それはロボットよりも恐ろしい
嫌ロボットに悪意を持たせさらにはそんなことが世界中で勃発している最中に、核爆弾を落としまくり悪魔との契約で魔界を繋げるくらいの悪夢をこいつは含んでいないことを願う
そうこいつは全く思ってなんかいないのである
「所で、その女子高校生にお聞きしたいのだが」
「ヤラピー」
殴り飛ばしてやろうかと思う
どこがピーーなのかは分からないがどうせ奴の気持ち悪い思考回路の中にあった女子高校生と言う単語がヒットしたのだろう
「人格破壊者」
逆に殴られた
「酷い酷すぎるよー」
「・・・・・それなら・」
なぜかまた殴られた、ここは黙っていた方が良いだろう
「なんか言えよ」
どうすればいいと良いというのだ
かくして僕は黒岩第一高校の門をくぐることになった
そして明日から夏休み
しかし僕が夏休みにすることと言えば眠ることである
即ち朝寝に昼寝夜寝の眠りざんまい
僕はその眠気のそのにはいる心持ちで早くも机の上で昼寝を開始しようとしていたのを
「まだ朝ですよー」と何とも無邪気に僕を地獄に舞い戻らせる声がしたのである
そして言うまでもなくそれは今朝のあいつなのであった
「さて映画にでも行きますか」
僕は帰り道をあいつと歩いていた
奴は帰宅部である
そして僕は読書部というなの帰宅部に所属している
それは即ち市民図書館に寄生することを意味して
僕は学校よりもここで過ごす時間即ち起きている時間が長い
僕の人生は眠りにより動かされているともいえなくもない
しかしあえて言うなれば図書館は僕にとっての夢なのかもしれない
それは別段良いことを言おうとしたわけではない
ただ起きる人生ではなく眠る人生を謳歌したい僕にとって
眠りよりも嫌それと同じくらい大事だということである
「やあいらっしゃい」
僕は市民図書館の桜庭さんに挨拶された
「こんにちは」
「こんにちは」
ちなみにこれは山彦がこの本の山で響いたのでは断じて無く
単純に後ろという場所からあいつが挨拶したに過ぎない
ちなみにどうしてそこまで挨拶されるような中になったかというと
別段だれ隔てなく挨拶はしているのではあるが
僕がいつもいつもここに来て本を送っていた若かりし少年時代
ある日、本の山と登ることを夢見すぎて、改訂二万マイルを読破中
僕は不覚にも深い眠りについてしまった
さすがに前36巻を一気に読破するのは至難の業だっあたようだ
僕は無念の中それでも本に埋もれるように眠りに付いた
そんなときである
あたりは暗くなり閉館が過ぎていたことに気がつくもしかしそれを気がつかせたのは、僕が起きたわけではなく、いつも、目にするが挨拶程度だった司書の人であった
かなりご年輩のはずだが、それは老人のそれとは違い、またなんというか生き生きした人間と言う感じがした
それは決して大人の荒々しさは無くとも
しっかりとした筋があるように子供ながらに見えていた
そんな人間が僕の前にいた
「こんな時間まで読むなんて偉いわね」
果たして偉いとは思わなかったがそう言われるとどこか嬉いきがしなくもな
「あの今何時ですか」
「えーーと六時だけど」
「っう」それは閉館時間を一時間ばかり過ぎていた、しかしどうしてここまで暗いのだろうと考えたとき、僕は周りの窓を覆っているシャッターに気がついた、それは子供ながらになにやら危険を察知はしたが
「もしよかったら紙芝居見ていく」そう彼女は言った
そう言うと一つの台を出してくると、その上に観音扉が付いた薄い箱をおいた
「あの何をしてるんですか」それが紙芝居だと分かっていてもどうしてこんな時間に、そう言う思いが彼女にそう言うことを告げずにいられなかった
しかし彼女はそれに答えることはなかった
いきなり木がぶつかる音が館内に響く、それは昔保育園のころにやった拍子日の音にもまた、落語の時に出てくる終わりの合図にも似ている
僕はその音に圧巻していた
明かりはその台の下に蛍光灯が一本のみ箱を照らしている以外は暗やみが包んでいた
そしてその暗闇の奥へとまるで吸い込まれるようにその音が通り過ぎた
「はじまり、はじまり」
彼女はそう言って僕の目の前で僕だけに紙芝居を上演した
しかしその紙芝居は一般の物とは違い
かなりリアルに作られており
絵の一つ一つもどこかその木の扉だけが別世界から覗いてるように本当に思わせる
そしてその軽い映画を見たような内容の話は、こぎ見よくまとめられ
さらに言うなれば彼女のそのどこまでも自然でありながら情熱の渦が巻きちるようなそんないままで見たことのないそれも見てただ僕はポケーーーーと拍手をしていたのだった
「ありがとね」そう言った彼女は紙芝居の観音扉を閉めて裏から現れた
そのときに気がついたのだが彼女は読むときだけめがねを外していた
それが何とも別人のような気がしてかっこよかった
それからなのだ
「もしよかったら図書館際手伝ってみない」
それは本当に大人でも子供でもなくてまた何でもない存在に思われた
そう言われて僕は
はい
と言ったのである
それからなのである、僕の図書館通いの本命が閉館後に周一で行われる紙芝居の訓練場になったのは
それこそお願いすると彼女は
「それでは帰りは私が運転してあなたを送りましょう」そう言った
しかしそこには条件があり、もしお家の人が良いのであればだった
かくしてそんな条件も何とかかいくぐって僕は毎週訓練にいそしむことになるが、その日以来彼女が紙芝居をしている風景を見たことはない
それこそ図書館祭りでさえそれを見たことはない
果たしていつやるのか聞きたい気もするがそれを聞くとなんかもう会えないような気がしてならない
で、今日もいつもの通りそれを読んでいた
それは声に出さずとにかく読む
読んで読んで読みまくる
それどころか彼女曰く別段訓練など必要ないという
普通に生きてそれで思ったことを感じるままに言う
その普通が難しいことや、どうしても力んでしまうと言うこと
とにかく結局の所僕はふだんと変わらず辺り構わず本に読みふける毎日を送っていたわけだ
そんなときだ、僕の幸福と同時にそれに反比例するかのごとくある悪魔が生まれた
僕がいつものように本の海に溺れていると
「ねえそれ読む」突然なにかが聞こえた
「それ読むの」
僕が前で見るときれいな白い服を着た僕と同年代風の少女が僕の方を見ていた、そして彼女が机の上から一冊の本を手に取っていた
「うんん」僕は読み終わった本なのでそう言うと
「そう」彼女はそう言って本を読むのかと思いきやそれをおいてしまった
・・・・なにしてるんだろう、遊び相手が居なくて僕に話しかけて来たのかな
しかし僕はそれにかまうのがめんどくてまた本に飛び込む
しばらくしてふと僕は目を本からそらした
トイレに行きたくなったのだ
そのトイレは出口のすぐそばにあり今いる場所から二十メートルぐらい先になる
そして僕は驚くことになる、必死だったのか余りにだったのか、僕は幸い図書館で大声を出さずにすんだが、僕が目をそらして前、即ち僕らにはいささか大きい机の向こうに彼女がいた
しかしただいたのではなくこちらを見ていたのだ
(なんなんだ)僕は変な奴に目を付けられたとそのまま帰ろうとも考えたが、このまま本を戻さずに行くのはいくら怒られることはないとは言え
僕の良心、特に司書のあの人に面目が立たない
僕は必死に何かを考えようとしたが結局
「何してんの」と言っていた
「見てるんです」
それは明らかにあからさまにませた言葉を言っていた
わざとだ
それはわざと覚えた手の言葉を僕に言っている
気持ち悪い
それが全くかっこよくない
合わない
「酷い」
それは突然言った
まだ何も言っていないのに、もしかしてしかめっ面でもしていたのか
しかしそれだけで泣く・・泣いているのか・・ことはないだろう
「何で泣くんだよ」
「だって私のこと気持ち悪いって、合ってない言葉を喋るって」
「・・・ふざけているのか」それは何で声にも出していないことを言っているよく分からない物に対して僕としてはそれを言うしかなくなっていた
「わたし怖い」彼女は泣きながら聞く
果たして本当に泣いているのか、本の中では女性は泣かす物ではなく床で泣かすなどと言う言葉があるが、しかし司書さんの名言
「本はしょせんは偽物、あなたはあなたの人生を居きるのです」
から考えるに、すべてを鵜呑みにせず、自分は自分、本は本
それはすべて全く別と考えるべきだと思う・・からすると
単純にこの歳の人間は本当に泣いているのか分からない
正直嘘泣きの方が多く、また本当に泣いていたとしてもその程度が浅い
その考えさえの何かから得た知識で本心ではないのかもしれない
しかしそれは僕が直感的に知っていた数少ない事実である
「君は怖くはないが君の行動が怖い」
それからだろう、彼女の行動がどこかなにかをかいつまんだ物に変色していった物は、まるでどこまでも演劇を見ているようなものなのである
それは受け答えは出来る、しかし何か違う、それこそ正しいからと言ってそれが正しいのか、人を殺していないからと言ってそれは良い人なのか
心のないロボットはいくら壊しても良いのか
ルールは正しいのか
ルールを守れば正義か
それらをかなり理不尽にしたのが彼女であろう
僕はいつも彼女を見ると、挽き肉か何か得体の知れない物を詰められた綺麗なマネキンに見える、そのつぎはぎの間から何か肉片が蠢き
しかしそれはマネキンだとみんなは認めてしまっている感じ
マネキンだからと中身も知らずに形がマネキンだからと服を掛ける
しかし彼女が何かをしていることを僕は見たことがない
それは生きていないとかそう言う生活的な動作ではなく
悪い、世間一般的な悪さを見たことはない
強いて言うなれば天真爛漫を装った切れたナイフのような暴言の雨あられ
果たしてそれは許さざるべき事項なのか
とにかくその日から僕と彼女は図書館で同じ席を有することになった
御歳小学三年生の出来事である
かくして僕は日々の訓練にいそしんでいたがそれは忘れもしない中学三年の冬
彼女、つまり司書の人が転勤になったのだ
しかし問題は彼女が置き手紙一つ残してくれずに出て行ったことにある
そう言えば久しぶりに本当に六年ぶりかに紙芝居をしてくれた
それはこの前、と言っても六年前ではなるがありありと思い出せるその内容とは違い、どこか神々しくもある話でもあった
話の内容は実に泥臭く残酷なのではなるが
しかしそれだけではない、イヤだからこそ最終的にはすべてが全く違う物に変換されてしまうような
それを最後に彼女とは会っていない
次の週に行っても欠かさず来てくれていた彼女がこない
いつまでたっも
僕はついに次の日彼女の同僚に聞いて見ることにした
そこで驚くべきことを聞いた
「そんな人は知らない」
それがどうゆうことか僕は一瞬、訳が分かる分からない以前にもう一度彼女に聞いた
しかし首を横に振って知らないと言ったのだった
それから僕は毎日この図書館に通った
元々毎日居るのでそんな特別という感じではないのかもしれないが
しかし生まれて初めて本を読んでいるというのに集中できない日が続く
来ないというのは分かっている
しかし毎回そのカウンターにいる人たちをみる度にその落胆は大きくなっていく、そんなある日、僕は司書の人に呼ばれた
そろそろ図書館祭りの日程も近い、その日空いてるかどうかを聞きに来たのかもしれない、そんなことを思ったが彼女が渡してきたものはそれではなかった、その証拠にその封筒の宛先には僕の名前があるのだが問題は
それが誰が送ってきたかということだった
そしてそこにはあの紙芝居の司書さんの名前がしっかりとあった
実に綺麗とはいいずらくともそれは別段汚いわけではない
それは独特のどこか達筆ともまた何とも形容しできにくい
僕はそれをここで開けるかどうかの前にこれはと聞くと
何でも今朝送られてきたらしい
僕は結局ここでは開けずに家に持ち帰ってから開けることにした
丁寧にハサミで上の部分を切ると
中には真っ赤な便せんが一枚入っていた、試しに中を覗くとなにやら小さなものが入っている、それも見てみようかと思ったがそれよりも先にこの赤い紙を見よう
僕はそれを緊張の面もちで読んだ
「まずこれえをお読みになって江いると言うことは今日も欠かさず図書館に通っていることですね、わたしが突然言なくなったのにはいささか訳があります、それはこの世の存在から消えてしまう可能性についてあなたに話したことがありましたね、どうやらわたしは別の次元にはまってしまう本を読んだばっかりにその次元に飛んでしまったらしいのです
この手紙はようやく一枚最後に書き上げることができました
わたしが居なくなっても本を嫌いにならないでいただけるとありがたいです」
それは実に意味不なものであった
しかし彼女との話の中でその話とは別に全く持ってえ突拍子もない話を聞いたことがある、それはこの世の中には言葉ですべてを変えてしまう所謂
「カタリベ」という人間達が居るという、それが全くの創作ではないように語るので僕はそれが本当なのかと思ったのを覚えているが
果たしてこの手紙が本物かどうか
僕はそういえばと思い出したように封筒の中からなにやらあったことを思い出して、それを逆さにして手に落とした
そこにあったものは、小さなそれこそ爪楊枝を二分の1くらいに折り曲げて少し厚くしたような、濃い色の木がにほん白いいとのようなもので繋がれているキーホルダーだった
「・・・拍子木キーホルダー」
僕はそう呟いてたがむしょうにそれを叩きたくなって何とか掴むと
それを打ち合わした
「コーーーーーン」
それは甲高い音を合わせてあたりをまるで凄まじい風のように突き抜けた
それは絶対にあり得ない、こんなもの叫んでもそんなことはできない
それこそ別の次元に穴を開けてしまうのではないかと思ったほどのものであった
それが豆粒ほどの物体に出せるとはとうてい思えない
「なんじゃこりゃ」
もう一度鳴らしたとき、空間が歪んだせいなのか窓ガラスが割れて雲がなだれ込んできた
いや実際そう思ったがきが付くと僕は朝日のなかめを覚ました
そしてパジャマを着ていないことから昨日そのまま寝てしまったことが伺い知ることができるが
僕は急いでその拍子木やあの手紙を探したが見つからなかった
あれは一体
唯一残っているものがあるとしたら
それは部屋の窓ガラスがぽっかりと穴を開けていたことである
それからというもの僕は毎日のように言葉を調べ始めた
いや実際は言いつけ通り本を読みまくったにすぎずそれは普段と代わりのないものだっただろう
しかし読んでいるうちに言葉、いや音の本来の目的とはという考えが浮かんだ
それはつまりなぜえ音が鳴る必要があり
またその音をどう使ったのか
僕はそこでまず音とは物事を伝えるためにあるものであるというものを考えた
それはそうだろう
しかし今考えているカタリベ成るものの存在はどのようなものなのだろう
始めこそそれは催眠術の一種ではないかと考えたがどうも違う気がする
それでは音による破壊工作か
これは信じられないが昔は、音による殺人行為をする集団があり
その名を「さ行」というらしい
にわかには信じられないが、彼らは振動でコップを割るように肉体を振動させて殺したと言うがそれも
話が増長された
または後から人々に恐怖を与えるために作られたほらに違いないと思う
またそれに類する資料も多々発見できた
さしてそれではカタリベとは何か
ただ伝えるだけの存在なのか
それとも異形な人間が話す全く別のそれえこそテレパシーに通じるものなのか、僕は色々考えた、しかしそれはどうしても認められない
そんなものが最後に残った
それは言霊と言う存在である
こんなことが本に書いてあったことがある
人に良いことをするとかならず良いことが帰ってくる
それの実験データには確かにそれが明確に記録されていた
ただその内容というものが子供同士で貸した子供におもちゃが返ってくる
というものである
しかし言うなればそのような心理がこの世には回っているのかもしれないがそれでも自分の信念は曲げないで貰いたいものである
特に僕のような気の弱い人間には
しかしそれだけで判断するのはもってのほか
しかし言うなれば言霊がそす存在するのかというとことまで疑問視しなければいけない、その上で僕が思いつく限りだした末にある古文書に行き着いた
それは限りある本を読みふけった僕が何かと何かが結びついたのかもしれない、それは、多重世界構造
もしも言葉のみがこの世のものではなく
音としてこの世を飛び回っているものが全く別のもの
この世の存在ではないとしたら
そしてその力を十分出せる異人がカタリベなのではないか
それは多重構造から引き出す言葉
この世の言葉ではない思想
いや生き物と言うべきか
それは時間と空間が入れ替わった時間ともいえる
空間と言葉が入れ替わった世界
そんなものが果たして存在しうるのか
しかしその古文書には異成る物を異成る世界から言霊にして喋るもの
其れの事語り部なりと書かれていた
其れはあの消えてしまった赤い紙にどこか類似するのではないだろうか
しかし言うなれば其れは消えた紙自体ではなく彼女が話した話であり
そして彼女はとある本を読んだといった
とある本とはなんだろう
まさか禁術のような・・・・全く想像がつかない
大体こんな田舎で・・
しかしそこまでだった
僕はその日からしゃべりの練習と読みの練習に邁進したのだった
かくして日々は矢のごとくダラダラと過ぎていった
どうやら僕の矢はストローで固定されて糸をとうされてされているらしい
しかも其れを引っ張るのはあいつなのだだらだらだらだら
「おいきみ」
其れは鬼太郎のような声を出してそういった
・・いや親父ではあるが
「誰がおいきみだ」
「・・・・そろそろ試験した方がいいんじゃない」
僕たちは今クーラーがきいている図書館で読書に読みふけっていた
しかしあいつはどうも言うに忍びない種類の体育の体についての物である
其れは死体を筋肉だけ残した一種のミイラのようなもので
それだけならまだ僕としても研究書なのだと思えるのだが
奴はそれを気味の悪い顔で見ているのだ
「・・・・・」
僕はさわらぬ神は感染しないとばかりにそれを無視して読書に溺れた
「そういえばと都市伝説なんだけど」
「なんだいきなり」
「そういえばあんたもまえよく分かんないこと言っていたじゃん」
「・・・・なんのことだ」
「ほら、であって三年目くらい」
「ああ、あれ、それがどうしたの」
「もしも、もしもだよ、今回の事件と同じ事なら」
「それはないだろ」
「なんでよ」
「だって、今回は都市伝説であくまで噂じゃないか」
「でも、本当かもしれないよ、火のないところから煙なんかは出ないって言うし」
「・・・・その根拠は」
「無い、女の勘というよりもこの私の勘がそう訴えかける」
「それは実に良くない勘のようだな」
「でっしょー私もぞくぞくしちゃうくらいだから危険だと思う」
「お前の方が危険だって言うかお前は何者だ」
「私は私以外の何者でもないよ、それとも」
いきなり奴は近づくと同時に僕の手に指を絡めた
「やめろ」
「嘘じゃないよ」
「お前はすべてが嘘だ」
「・・・・・嫌い」
「だからお前が何かをまねている場合それすべてが嘘なんだ、お前の本心じゃない」
「でもお前がそれはだめだって言ったから」
「それを覆すのが他人からの反発であり会話だろ」
「でもそれだときっとあんた死んじゃうよ」
「・・・お前まさかやっぱり」
「・・・・なんのこと」
それはこう言っている
(そうだよと)
「お前カタリベだな」
「何で分かったの」
(おせーよ)
まるでもう一つの声が聞こえるかのごとく揺れ動く陰が
うごめく肉片がミシミシとおとを立てて聞こえるように
その声は聞こえた
「お前は俺を殺す気か」
「さあ、あのときならまだ知らず今はもう分からない」
「お前は何者だ」
「人だよ」
「嘘だ」
「人の定義なんてあやふやだよ」
「お前は人じゃないんだな」
「それなら君は人なのかい」
「俺は人だ」
「なぜ」
「俺がそう思っているからに他ならない」
「ならそれを変えてやろうか」
次の瞬間彼女は口を開いた
いや開くというか外れると言った方が正しい
まるで鰐の口のように
「お前何もんなんだ」
しかしそれは声に出さない言葉を発した
(痛い)僕の右腕に痛みを感じた
次の瞬間には服が細切れに着れていた
「お前はなんで俺を」
「あんたは世界を滅ぼしかねない」
「意味が分からない」
「そのまんまさ、あんたはカタリベの存在を知ってそしてそのちからはプロ級になった」
「それじゃあ俺はお前に殺されるのか」
「知らない、あんたが素直に死ねばすべて終わるけど」
「それは嫌だ」
「なら戦う」それは首をかしげてまたしても口を動かした
その人形のような人間は僕のところに一歩も動くこともなくどんどんとあたりを傷つけて行った
「やめろよ」
「なんでやめなくてはいけないんですか」
「俺のために」
「あんたに生きる資格はない」
「俺があると思うのだからあるだろう」
「あんたが思っても世界が認めない」
「世界って何だ、お前は別の世界の住人なのか」
「・・・・何で話さなくてはいけないわけ」
「知りたいからさ」
「知ってもあなたはいつも通り言葉をはっするでしょう」
「それは聞いてみなくては分からない」
「私達は言葉から出来ている、この世に毎日のように数万種類の仲間が召還され死んでいくわ」
「・・・しかしお前は」
「私は文字だから大丈夫、その本すべてがなくなるまで死ぬことはない
読まれるだけ私は増え、言葉に出される度に世界のどこかに現れる
その私が死んでも本体達が死なない限り消えることはない」
「お前は俺がお前達を殺すというのか」
「いえ、あなたは全人類を殺して、私達の存在を抹殺しようとする」
「どう言うことだ物体が残ればお前達は死なないんじゃないのか」
「私達はあなた方に寄生しているといっても過言ではない」
「・・なに」
「あなたが出す言葉の意味を私達は食べそして口から錬成されて相手のところまで行きそこで寄生する、だから死んだ人間が私達のゴールであり死なの」
「しかし、俺はそんな大それた面白そうなことは出来ない」
「あなたは好きでやるのではない、言葉の王に操られてさせられるの」
「言葉の王」
「そう、すべての感情の根元、私達はすべてそこから生まれたといっても良い」
「なら何でその王様って言うのは」
「もう飽きたのよ、どんな言葉でも永遠はない、それでも永遠に生き続けるうちに飽きてしまったの」
「そんなバカな」
「あなた達が生み出す暴力的な言葉は王の前では何にもならないわ、でも」
「でもなんなんだ」
「王様は飽きたの」
「・・・それはもう聞いたが」
「・・・つまり王様は飽きたの」
「・・・どうした大丈夫か」
その顔は明らかに青く驚いている
彼女は次の瞬間自分の喉に指をつっこんで血をあふれ出した
しかしその血は皆真っ黒だった
そして彼女は賢明に机に文字を書いた
「「いま世界では飽きたが全ての言葉を飲み込もうとしている
全ても飲み込み誰も飽たしか言えない世界にしようとしている
その最初の感染者が言葉の王なの
そして、それに飲まれた言葉は二度と戻らない」」
次の瞬間彼女が消えた
それは血の文字も含めてだ
「おっおい、十絵」
僕はそれを中りに叫んでみた物の
いっこうに返事はない
僕は仕方なく歩き出した
果たして彼女はなぜに小さいころから僕に付きまとっていたのだろう
もしかしたら別の何かがあるのかもしれない
しかし今の僕に出来ることが分からない
そこで今の僕が唯一何かを探す手がかりを見つけた
そういえば都市伝説だっけ、えーーと、のいちのいちいちいちいちだっけ
はつぃてこれは何を意味するのか
僕はその日から本も読まずにそれが何なのか判明するまで没頭して考えてみることにした
果たしてこれは何なのか
僕はひたすらこの良くも分からない物を眺め書き言葉に出した
しかしそれを眺め初めて二日後のこと
僕はふと机の山をみた
それはたまりにたまったかきだめてある落書きとも言えるしろものであるがそろそろ片づけなけらば成るまい
僕はその紙をごっそりと持とうとしたときどこかから一枚だけ床に落ちた
それはどうやらそれは始めに書いた物らしく、学校の宿題プリントである
・・・こんなところにあったのか
僕はそれを拾い上げてふと気がつく
ノ1ノ11ー1
そこにはそう書かれていた
ちょっ、ちょっと待て
僕は紙の山から一枚紙を抜き取るとしわを伸ばしてそこに鉛筆で文字を書いた
「イム」
ノ+1+ノ+1+ー+1
「仏」
どう言うことだ
この近所の話であればこれは実に簡単な話である
この近所に仏寺という何ともそれっぽいが故にいかがわしい寺がある
がしかし、ここら辺にはどちらにしてもその寺しかない
そしてさらに言うなれば、あの電話番号はこの付近の電話番号であった
・・・・まさかな
真夜中にも関わらず僕は自転車にすぐさま外に出て飛び乗った
そして強いて言うなればその公衆電話というのもが
あの十絵の家のすぐ近くであるという事だ
それがどうなのかと言えばあいつからの暗号という可能性はなくはない
それどころかそんなと都市伝説は近所はおろかネットでさえ広まっていないどころか見つかりもしなかった
僕は自宅から15分ほどのところにチャリで走った
夜が風がまだ初夏だというのにねっとりとシャツをぬらす
僕がいざその場所に着いたときにはかなり汗だくになっていた
「・・・行くか」
僕はその少し小高い場所に建っている仏寺の階段を上った
その石段一つ一つのぼる度に僕の心は跳ね上がる
・・・俺は何をしているんだ
しかしそんな考えは動くからだには全く関係ないように思われ
僕はとにもかくにも石段を駆け上った
上にあるのは一本松の下にある鐘堂とその奥にあるでかい本堂
それの横に立てられている庫裡だろう
僕はそのどこに行こうかと考えていたそんなとき
「遅かったな」といわれた
嫌聞こえた
僕が振り返るとそこにはあの司書さんがいた
「なっ、何で」
「嫌ここ私の実家だから」
「・・え」
「いや、書いたよね手紙」
「ええ貰いましたけどそういうことは一切」
「・・嫌正直今の仏教の経典なんて正直私みたいなバカには意味が分からんわけよ、まさにいせかい」
「・・・そんな馬鹿な」
「どうしたの惚けて」
「・・・・それじゃああの変なキーホルダーは」
「っあ、あれ、あれ最新鋭の防犯グッツ」
「え」
「あの中には人間の視覚聴覚なんかを狂わす信号が流れるようになっていてね」
「嫌ちょっと待って下さい確かに、あれは窓ガラスを」
「・・・・ちょっちょっと待って」
「なんです」
「そう言えば、いつも君にくっついている女の子は今日は付いてこないの」
「それなんですよ、師匠」
「・・久しぶりだな、もう司書でさえないけれど」
「いいえ、そんな冗談を言っている場合ではないんです師匠」
「ほう、つまり彼女が消えたと」
「何で知ってるんですか」
「単純に今日来ていないなんて物はおかしいだろう、こんない枠ありげなイベントに出てこないなんて死んだか動けないか消えてしまったかのどちらかだろう」
「・・ええ、最後の消えたが正解何ですが」
「彼女は実は催眠術氏だったのかもしれないぞ」
「嘘でしょ」
「君はなんて言われたんだ」
「カタリベの王とか何とか」
「そうか、それは口噤み別名小声の会」
「なんなんですかそれ」
「うむ、言葉を信じるに値しないとする、言霊反対論者でな、彼らは自分の口を縫いつけて、胃から直接砕いた物を食べるんだ」
「・・・・本当にいるんですか」
「ああ、奴らは言葉を超越した心をも操る能力を持っていると言うぞ」
「ほんとーですか」
「あれ、信じてない」とこちらを真顔で言う師匠
「あなたは何か知っているんですか」
「嫌私は何も知らん、ただ彼女が幻術使いなのかもしれないと思っているだけだ」
「・・・・その証拠は」
「君にずーーーと幻術を私は見せ続けてきた」
「何を言ってるんですか」
「君は私に幻術の中で私を崇拝してさらには、心の中であの子、たしか十絵を思い描いたんだ」
「・・それも嘘なんですか」
「・・・・・・・・・」
「何とか言って下さい」
「君は世界の秩序も乱そうとした」
「そんなことは」
「君は世界の海に飛び込もうとした」
「なにを・・」
「君は文字の世界に入り込もうとしたんだ、そして全ての文字を独り占めしようとした、その結果君は知らず知らずのうちにプロテクターの彼女を破壊した」
「ならなんでしょうはここに呼んだんですか」
「呼んだのではない、君はここに自分出来たんだ」
「それならあのメールは」
「君の気持ちを封じ込めた彼女の力も君の力に勝てなくなってしまった
そして漏れ出した君自身が君に知らせたんだ、ここに邪魔者がいるぞと」
「そんな嘘でしょ」
「君に言葉の大切さを知って貰うために、まるでスポーツ部のごとく鍛えたが・・・無駄だったようだ」
それはそう言ったそのとき
右手を天高く突き上げた
まるで空に突き刺すかのように人差し指を一本伸ばして
「君は言葉の世界に招待しよう」
「ちょっちょっと待って下さい」
「何かな今更怖じ気付いたのかい」
「あなたは阻止しようと」
「さあどうだろう、君にまだ恐怖心なんて物があるなら君は今なら逃げられる、言葉の海に自殺して全ての言葉になるなんてしなくなるかもしれない」
その言葉を言われたとき僕は全てがつながった
そうだ、僕は自殺しようとしていたんだ
大好きな本に埋もれるようにして
あの図書館で
そして、そして
僕は戦慄した
この世界を怖そうとしていただと
しかし今の僕はなぜそれえをする意味がある
言葉の限りなさからこれでは一生かかってもその先端にもふれられないと悟ったそのとき
僕はその言葉自体になろうとした
それが世界を壊すことも何となくではなく予想できた
物理の法則の無視
それは即ち巨大な城をそのものの地盤を抜き取るに等しい出来事
嫌それ以前にその存在全ての否定につながる
しかし今僕は全てを思い出してしまった
それは止めることが出来るとは出来無いことを瞬時に悟らせた
「師匠無理です」
「そうか、なら死んで貰おう」
そして僕は究極の紙芝居を聞くことになった
それは人生で三度目であり、そして最後の紙芝居だった
それは絶望だけが支配して
それだからこそ逆に絶望が希望に見えてしまう
そんな恐ろしい話だった
僕はまるで嵐の海にほおり出されたようにそれを聞いていた
まるで言葉が喉を伝い、咽せ吐かせ、沈んでいくようだった
「欲を征する物は恐怖でしかない」
「しかしその欲を征するのも欲でしかない」
「この夜には征する物はただ一つも存在しない、ただ理不尽が素直に生きるだけなんだよ」
彼女の声が紙の中に吸い込まれようとする僕の心に聞こえていた気がした
「君は紙の中、ただしこの紙の中の王様になれ、そうすれば少しは文字の世界に見せられるなんて事はなくなるかもしれん」
僕はそう言われて、又しても十絵の中に詰め込まれてしまうのであった