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ゴールデンバット

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 体調を崩すたびに何度も禁煙しようと考えはしても、結局は回復し、そんなことは考えなくなってしまう。いつか、アルバイトで生計を立てていたときによく金欠であることをごまかして吸っていた銘柄があった。ゴールデンバットだ。

 最安価帯、いわゆる旧三級品からの出身である。明治時代から連綿とその歴史を綴っている煙草で、戦中は名前を「金鵄(きんし)」と名前を変えてまでも愛されていたものだ。よく色々な煙草の切れ端をまとめて作ったと言われているが、ソース(情報源)を確認したことはない。

 煙草は吸えればその役割を(まっと)うできる。それ以上の子細(しさい)にこだわるのは、煙草の歴史を知りたい、うんちくを語りたい人間だけに留めていればよい。喫煙者は吸えさえすればよいのだ。煙草は吸われさえすればよいのだ。

 かく言う私も、今も時折吸いたくなる。あのラム酒に漬けられた独特の香りと味はなかなかであり、旧三級とは思えない。両切りであるから、初めて買ったときは吸う側はどちらからなのか、葉を口に含まず吸える方法はないかと一々難儀した。今はそういったことも苦笑する思い出の一つに過ぎないのだが。

 現在ではシガレットホルダーを購入し、それに差し込んでいる。吸い口をトントンと叩くことはしていない。大して意味がないと感じたからだ。

 そこで大きく疑問の種とされる、なぜ煙草を吸うのか? という事に関して一つコメントを残して、適当だが〆としておこう。適当でいいのだこんなものは。随筆であり、時折物語も挿入する。そういう(てい)でやっていく。そして、むしろこれから綴ることのほうが私にとってはメインとなるだろう。字数も多くなる気がする。


 もともとは高校生時代に、あまりにもひどく「型にはめられた」学校に通っていたことが私の喫煙の始まりであった。なにも起こらない自分の身の周り、生徒に対して冷たくも暖かくもない教師等々(などなど)。

 例を挙げて話すまでもないが、飽くまでも機械的に授業を続け、人間的に充実しているともいえない教師連中が学校統率の全てであった。そういった社会構造の中に、平日の私は身を置いていた。中学まではそういった教師に囲まれたことがなく、思い出せば発狂したくなるほどの嫌なことから、幸せの中に浸っているような時間まで様々なことがあった。その時の私は非常に人間的であり、「生きている」と心の底から実感できるような世界に十分満足していたと言えよう。

 そこから卒業し、機械的な教師によって教育され始めた私は、自分が徐々に機械的になっていくのを感じていた。こうも人間が、いとも簡単に機械化され、社会の中で使いやすくなるように作り変えられてしまうのかと絶望した。

 生徒も教師と同様の人間的構造であった。波風の立たない人間であり、自分の中で何を育て、個人となしえているのか、どれだけ話しても全く分からない。深みを見いだせない。そういった生徒の中で私は孤独であった。

 そして高校時代の私は大衆の集まるものには精神的な毒素が多く含まれていると考えるようになり、常に少数派へ、という路線を走ってきた。

 その結果として、喫煙者となり、あまり見ないゴールデンバットを選んだという事である。とうにであるが故に、苦笑するほかない。


そうタイプしている青年がいた。背後には知り合いであろう女性が、彼の頭の横から顔を出してモニターを除いている。それを拒否しないあたり、青年はそれをマイナスな印象と感じていないらしい。

「章吾」

「なんだ?」

「お昼、どうする?」

「懐かしいカレー」

 二人はパソコンの前を離れ、部屋から出ていった。


拝読感謝します

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