異世界に来たなら!? 3
中々話が進みませんが、前ちがうアカウントで投稿していた小説は2ヶ月に一回の投稿でこれぐらいのペースだったんで自分にしては速いペーストなんじゃないかな?と思っています!!
上半身を噛み千切られた青井は混乱していた。
(なんでこんな危機的状況になっているんだ!!)
これは本格的に死んでしまうのかもしれない。
何せ、現在疾走している狼の口の中に居るのだ。
咀嚼されていないだけマシかもしれないが、いつ噛み砕かれるか分かったものでもない。
そう思った瞬間に、青井は噛み砕かれた。
銀色の毛は青井の血で赤く染まり、生理的嫌悪感を催すような音を出しながら喰らう。
そして、途中で口の中からポロリと『何か』が転げ落ちた。
青井の頭部である。
しかし、頭部とは言っても頭部とぎりぎり分かるぐらい損傷はしている。
片方の目玉が潰れており、顎から下が千切れている。
だが、そんなこと気にせずに銀色の狼は咀嚼していた青井の上半身を飲み込んだ。
まるで、極上の肉を頬張ったように美味しそうに飲み込んだのである。
そして、大きく遠吠えをする銀色の狼。
青井は絶命した‥‥‥かに思えたが、流石は落下死しても死なない男である。
銀色の狼が食い溢した青井の頭部から体が再生していく。
先ずは、下顎から骨が目にも止まらぬ速さで再生していく。
次に内蔵、そして筋肉。
最終的には皮膚と毛が生えてきた。
そして、意識を覚醒させる青井。
因みに、全裸である。
「ああああああぁぁぁぁあああ!!」
まるで悪夢に魘された時の起き方のように飛び起きた青井。
どうやら、銀色の狼に喰われたのは夢だと思い込んでいるようだ。
(‥‥‥流石に夢か)
夢ではないのだが、ほっと胸を撫で下ろした青井。
そして、夢だと思い込んでいる青井は、真後ろに自分を胃袋に入れた銀色の狼が佇んでいるとも知らずに、大きく木漏れ日が漏れる地面に大の字で寝転がる。
平和だなぁ、と的外れな感想を持ちながらである。
そして、地面に頭を着けたとき。
銀色の口が赤く染まった銀色の狼が青井を覗き込んでいるのが目に入る。
数瞬思考回路が停止し、そして声に出ないほどの恐怖が身を包む。
目の前にいたのは、悪夢だと思っていた銀色の狼そのものであるのだから無理もないだろう。
自分を美味しそうに咀嚼していたあの表情は脳裏に焼き付いているぐらいである。
実は、銀色の狼が咀嚼している途中に溢した頭部には、青井の意識が微かに残っており片方の目でしっかりと自分の体を美味しそうに喰らう銀色の狼を見ていたのである。
それは、さながらスプラッター映画でも見ている気分である。
被害者は自分というのがみそだ。
思わず立ち上がって逃げようとするのだが、腰が抜けてしまいへたり込んでしまう。
そのまま後退りをするが、後ろの大木が青井の行く先を遮っていて動くことができない。
そんな情けない青井を静かな瞳で見つめる銀色の狼。
『そんな演技をもう良い』
よく響くような威厳ある低音の声が聞こえた。
しかし、青井は余裕がないので自分が語りかけられた対象だというのを理解するには少々時間が掛かった。
そして、ハッとする。
自分に話し掛けられたことは理解したのだが、どこから話し掛けられているんだ。
そもそも、誰が僕に話し掛けているのだ。
青井は視線で銀色の狼を牽制するのに精一杯で、他に視線を動かす余裕はない。
故に、一回話し掛けられただけでは誰が話しかけたのかは理解できなかったのだ。
『そのような演技に我は騙されぬと言うておるのが聞こえないのか!!』
今度は怒鳴るような大きな声で青井を一括したのだが、青井は呆然としている。
別に、改めて銀色の狼の大きさに驚いているわけではない。
一括された声に驚いて呆然としているわけでもない。
青井は誰が自分に語りかけているのか理解した。
した上で唖然としているのだ。
何故ならば、青井に語りかけていたのは自分を喰らった銀色の狼であったからだ。
『は一体、何者であるのだ』
しかし、青井の精神状態なんぞ関係なしに銀色の狼は問い詰める。
これは答えなければいけないと思い、青井は正直に問に答える。
「ぼ、僕は青井翔だ」
『青井翔とな‥‥‥。種族はなんだ?』
(しゅ、種族?僕は人間‥‥‥とは言えないなぁ)
落下して体がぐちゃぐちゃになったとしても、体が元に戻り、パンチで木々を倒し道を作ることができ、そして、この銀色の狼の前で頭部から全身が元通りに『生えた』のが人間とはとても言えない。
(だとしても、答えなければ殺されそうな雰囲気だしな‥‥‥)
しょうがないので、屁理屈で貫い通すことに決めた。
深呼吸をして自分の中に冷静さを見出す。
落ち着け、大丈夫だ。
35年間どれだけ屁理屈を使ってきたと思っているんだ。
いや、別にそこまで使った覚えはないけど。
「僕が名乗ったんだから、あんたも名乗ってくれよ。一方的な質問はタブーだぜ?」
取り敢えず、相手が話せる程度の知恵ならばマナーも持っているだろうという目論見だ。
だが、マナーを持っているとして激情したらどうするんだという感じなのだが、当の本人はまた喰いちぎられるだけだと割り切った。
混乱していたら間抜けな青井だが、冷静になれば案外自分を切り捨てるような選択もできる青井なのだ。
まぁ、自分を切り捨てた時に混乱しないのかは別の話だが。
『それもそうだな』
どうやらまんまと策に乗ってくれたようで、表面上はキリッとしているが内心胸を撫で下ろしている。
割り切ったとしても、痛いのは嫌なのだ。
『だが、我は名がない』
どうやら名前が無いらしい。
『だが、この体は人間共からはアルジェントヴォルフと呼ばれているらしい。気に食わないがそれで我の仮称として呼んでくれ』
「そうか。じゃあ、あんたをそう呼ばせてもらう。僕のことは青井と呼んでくれ」
互いの呼称が決まったところで、狼に見えない狼と人間ではない人間の話し合いが始まった。
ーーーーーー
『率直に聞こう』
敵意はないが、まるで自分を貫くようなアルジェントヴォルフの視線に内心怯えながらもそれを表に出さないようにしている青井。
質問の内容を聞き逃さないように、アルジェントヴォルフの声にしっかりと意識を集中させる。
だが、質問の内容は大体予想ができる。
たぶん自分が何者であるかを聞いているのだろう。
(だけど、そう質問してきた時にはどう答えればいいんだ?)
自分がこの世界にとってどんな存在であるか理解を出来ていない青井は自分のことをどう説明しようか悩む。
正直に話そうかどうかを考えるのだが、どうせ信じてくれないのが関の山であろう。
真実でもそれを真実かどうかを判断するのは相手の方なのだ。
というか、自分ならばそんなことを言われたら馬鹿にされていると思うだろう。
自分にされて嫌なことは相手にもしない。
社会で生きていくのならば、これはまず覚えておかなければいけないだろう。
だが、それよりも大事なことで相手に嫌なことをされても我慢する、ということも覚えておかなければいけないのだ。
だが、青井の予想を裏切るような質問がアルジェントヴォルフの口から出る。
『其方は神であるか?』
「は?」
余りにも想像していた質問とは違い、生返事をしてしまったが、大丈夫だろう。
「ど、どういうことだ?」
『簡単だ。それは其方から神の味がしたからである。我は神を喰らったことがあるんでな。その際の味は我が今ままで喰らったことのあるどのモノよりも美味であった』
そして、一拍置いて言葉の重みを増すように言う。
『そして、其方からはそれ以上の至高の味であった。故に其方に尋ねたのだ』
『其方は神か?』
だが、その問に更に混乱する青井。
彼は自分で自分の事がわからないので 、そんなことを問われたところで分かるはずもないのだ。
しかし、同時にこのアルジェントヴォルフには自分が何故ここに来たのかを説明しても良いのかもしれないと思い始めていた。
このアルジェントヴォルフはどうやら神に対しての見識があるらしい。
その神があの白い少女の神とは限らないのだが、話してみる価値はあるかもしれない。
そう決心して青井はアルジェントヴォルフに話をする。
「実は‥‥‥」
~中年説明中~
自分に起こった全ての出来事を話すとアルジェントヴォルフの雰囲気は少しだけ厳しいものになっていた。
気に触ってしまったのだろうか、と内心おっかなびっくりだが確かめる術もない。
それどころか、動きが止まってしまっている。
しかし、突然動き出したかと思えば、突如青井のことを鋭い爪で凪ぎ払う。
警戒していた青井は間一髪で避けることができたが、さっきまで友好的だったアルジェントヴォルフがいきなりの攻撃行為したことに戸惑っている。
「な、何すんだ!!」
『フフフ‥‥‥』
しかし、聞こえてくるのは不気味な笑い声のみである。
(気でも狂ったか?)
すると次第に笑い声は聞こえてこなくなり、アルジェントヴォルフはこちらに顔を向ける。
そして‥‥‥
『我と戦え青井!!』
「いきなり何なんだよ!!」
『其方が我に勝ったら理由を教えてやっても良い。だが、我より弱いものに容赦する必要など一切ないわ!!』
(なんだよ、コンチクショウ!!)
いきなり攻撃した理由が分からぬまま予期せぬ戦闘が始まる。
イタリア語で銀色はアルジェント。
ドイツ語か何かの言葉で狼はヴォルフ
単純ですね!!だけど、デフォルトで素晴らしくかっこいいドイツ語は今後も使用します。かっこいいね!