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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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異世界にきたなら!? 2

 青井翔は色々と考えた結果、素手で思いっきり木にパンチをすることにした。


 自傷行為をどうするか悩んだのだが、まずは切り傷の検証を考えた。

だが、生憎であるが手を軽く切り、切り傷を作る道具も現在持ち合わせていない。

 何故か、服は生前来ていたスーツ姿なのだが一回、超高高度から落下したために、服が切り刻まれたかのような惨状だ。

 摩擦熱で手で擦過傷を作ることも考えたのだが、その際にもう1つだけ試したことが出来たのだ。


 つまりは、筋力が上がっているかどうかである。


 こういう場合は、青井の読んだことのあるネット小説やライトノベルなどでは回復力と共に様々な能力が上がっていたりするものだ。

 例えば、魔法を無限に使える魔力や人の範疇を超えた筋力などがそうだ。

簡単に言えば『チート』である。


 つまりは、青井自身にそういうチートが宿っているかどうかを自分で検証するのだ。

 青井自身は、イタイ行動をしているなと感じているのだが、そう内心では思っているものの顔には満面の笑みが張り付いていた。

 それを自覚している青井は、やはり隠せないものだなと自分を嘲笑する。


 男という生き物は単純なのだ。


 「でも、痛いのはごめんだよな」


 青井は普通の感性の持ち主であるため、痛い思いをするのは嫌だ。しかし、犠牲なくして結果を得られないのは世の常というものである。

 そう決心した青井は、周辺の木々の中で一番幹の太い大木の真正面に立つ。

 木を殴って拳に傷を負ったとしてそれがすぐに完治、又は普通より早く治るのならば上上。

 木を殴って拳が傷つかずに、この幹に大きな穴や大きく穿ったならば万々歳である。


 逆に一番悪いのは、木には何も起きず更に拳が痛いまんま傷すら治らない、という感じである。


 青井は深呼吸をして気合を入れる。

 目を瞑り神経を尖らし、昔テレビで見た空手か柔道家の構えを見よう見まねで真似て構える。



「オンドリャッ!!」



 そんな掛け声と共に拳を幹に突き出す。


 そして、拳が幹に当たった瞬間に、体中に何かが回るような感覚を青井は感じた。

 それは今まで感じたことのない、快感とも不快とも思えないそんな不思議な感覚だ。


 それを感じた瞬間だろうか。


 目の前の木が吹っ飛んだ。


 それは言葉のまま、比喩なしで、大木が拳の当たった上部が吹き飛んだのだ。

 しかし、破壊の旋風は止まらない。

 木が吹き飛んだかと思いきや、次の瞬間に膨大な量の『何か』が生い茂っている木々を薙ぎ倒していく。

 そして、『何か』が過ぎ去った後には、大きな道が残っていた。その道は木々が端へと押し退けられ、地面を木々の根ごと抉り取って出来た道であった。


 そして、破壊の嵐が起こった始点で拳を突き出したまんま固まっている青井。


 個人的には木に穴が空いたら万々歳だった青井だったが、予想を遥かに超えた結果を見て開いた口が塞がらない。

 まるで隕石が落ちたような跡だと、自ら生み出した被害なのに客観的にそう判断する青井。

 先ほどのように、混乱しすぎて一周して冷静になっているのである。

 しかし混乱していることには代わり無いので、自分でやったという認識が追い付いていない。


 そうして、数秒間フリーズしたあとにやっと動くことができた。


 こういうことは漫画の主人公以外理解できない気持ちだと思っていたが、今では漫画の主人公の気持ちがわかる気がした。


 (あぁ、自分で自分が怖いってこんな感じなんだろうな)


 しかし、ハッとして自分の拳を見つめる。

 先ほどの甚大な被害を生み出した自分の拳は、やはりというか、どこにも傷一つ付いていない先程と変わらない拳であった。

 取り敢えず、自分で考えたプランで一番良い感じなのだが、内心素直に万歳が出来ない青井。


 そして、改めて自分が生み出した道を見つめた。


 青井が破壊の限りを尽くして作った道の先には、川が流れており、思わぬ幸運に気分は良くなるが、やはりここまで甚大な被害を出したことを考えるとそこまで喜べない。

 この破壊と衝撃波が入り交じっていた現場に人がいたらと思うと顔が青くなってしまう。

 それに、もしもこれが私有地であるとしたら損害賠償金とかヤバイんじゃないだろうか。


 (ま、まあ、明らかに人がやったように見えないから大丈夫だよな?)


 取り敢えず、今後はこんなことにならないように自らを自制しようと決心した。


 そして、青井は驚きの連続で喉が干上がったと感じたので、自ら作った道を歩いて川に向かう。


 自分が起こした破壊の跡を歩いて実感したことだが、木は根っこから無くなっているが、地面は数センチしか削れていない。

 普通ならば、木を根こそぎ吹き飛ばす威力を持っているならば、地面ももっと削れても良いのではないかと思うのだが、そうはいかないらしい。


不思議である。


ーーーーーー


 川についた。


 不審者のようにキョロキョロと周囲を見渡してなにもいないことを確認する。

 動物やら鳥やら見えないのだが、どうしたのだろうと思っている青井だが、先程の青井が放ったパンチで殆どの動物が逃げたのを青井は理解していなかった。


 川に流れている水を見てみる。

 透き通ったきれいな水は川底まで見ることが出来、水面は太陽の光を受け波打つ度に様々な模様の光を発している。

 とても美味しそうだ、青井は思う。

 思わず、目の前の美味しそうな水に喉を鳴らした青井は、水を手で汲んで思いっきり喉に流し込む。

 豪快に飲んだ青井は、勢いあまり蒸せてしまったが、すごく美味しい。

思わず顔を突っ込んで直接飲んでしまったほどだ。

 そして、息が苦しくなって顔を出す。

 程よく頭が痛くならない程度の冷たさの水であり、水面を見てみると魚が泳いでいる。


 これで、食料も確保できそうだと思い一安心する青井。


 ――だが、森の木々を押し倒すような轟音が森に鳴り響く。

 少しだけ興味が湧いた青井だったが好奇心は人を殺すと言う。

 それに先ほどの実験の件である程度自制をしよう決めたばかりなので、川を泳いでいる魚に意識を集中するが、段々と木を倒す豪快な音が大きくなってきているのも感じた。


 何が起こっているか理解できていない青井だったが、次の瞬間に全てを理解する。


「ガルゥルルルル‥‥‥。ガルゥラァア!!」


 自分よりも三倍以上ある体躯、銀色に輝いている美しい毛並みで蒼いく鋭い瞳をした狼にしては大きすぎる狼がこちらに向かってきたのだ。


 全てを理解したが、遅かった。


 恐るべき速さをした大きな狼は、川辺の地面を大きく抉り、川の幅約10mを大きく跳躍し青井に音速の速さで向かったのである。



 そして、余りの展開に着いていけていない青井はそのまま‥‥‥


 「え?」


 上半身を噛み千切られた。



2015/03/09 修正

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