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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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しゅらば

ジェアさんの言葉を聞いた瞬間に凍る空気とフリーズするレイさんとアルジェントヴォルフ。レイさんに限っては靴紐を解いている状態でフリーズしてしまっている。そんななかで一番に正気を取り戻したのはアルジェントヴォルフであった。


そして、次の瞬間に顔を真っ赤に紅潮させて動揺していた。


「どどど、どういうこうだ!?」


僕は思わず頭を抱えてしまう。なんという状況なのだろうか。


「アルジェントヴォルフ、勘違いするんじゃねーぞ」


「今の小娘の発言の何処に勘違いをする要素があったというのだ!!」


まぁ、確かにそうだ。ジェアさんの発言を何処からどう解釈しようと『そういう意味』でしか解釈出来ないだろう。しかし、それは会話の断片を聞いていたからに過ぎないのだ。きっと‥‥‥そう、きっとちゃんと説明すれば人の使用人に手を出した節操のない男というレッテルを付けられずに済む。


落ち着け、クールになるんだ。この状況を理路整然と説き伏すには冷静になることが必要だ。


「だ、大丈夫だ。お前らはきっと勘違いをしているに決まっている」


しかし、次の言葉が一切思い付かない。何と言うことなのだろうか。僕がどう説明しても『同意の下で背中を流してもらった』という事実は覆しようがない。


法螺を吹くのは簡単だ。僕が望んだことでは無く仕方がなくやったんだ、なんて言い訳をすることは本当に簡単だ。目の前にジェアさんがいなければの話なのだが。


なんてこった!!


「み、皆様!!勘違いしないでください!!」


動揺している僕を見かねたのかジェアさんが前に出た。その姿に一瞬だけ頼れる背中に見えたのだが、顔がアルジェントヴォルフと同様かそれ以上に顔を真っ赤に紅潮させているところが台無しである。


「わ、私達は体を洗っただけであって、や、やましいことなんてしてません!!」


男が言ったら説得力の欠ける言葉なのだが、女性が言うことによって真価は発揮させる。


「でも、一緒にお風呂に入った事実は認めるんですね?」


するといつの間にか距離を詰めていたレイさんがいきなり質問をしてきた。


「うおぉ!?」


いきなりのことで驚愕し仰け反ってしまう。


「どうなんですか?」


だが、僕が仰け反ったとしても勢いは止まらずに怒涛の勢いで尋問してくるレイさん。顔をよくよく見てみると火が噴出しそうなくらいに顔が真っ赤だ。


「そ、そうだけど‥‥‥だからって、不純な行為をしていたわけでは無い訳だし!!」


もう既に僕自身半ばやけくそ気味である。いや、僕もわかっているのだ。ジェアさんと風呂場で何をしたか云々よりも、僕の同意の下で背中を洗わせたというのが問題なのだ。しかし、だとしてもあんなに自分の恥を偲んで顔を真っ赤にしながらお願いをしてきたら好意云々、可愛そうではないか。


「でも、その、裸で? お互いの体を恋人でも無いのに? 洗い合ったんですよ? そ、それは不純なんじゃないでしょうか‥‥‥?」


と、そんな純情乙女のようなことを恥ずかしげに言うレイさん。これは少しだけ意外だ。しかし、そういえばレイさんは自分でロマンチストであると言っていたことを思い出す。


そうだ、まだまだ16歳の少女なのだから仕方がない。数百年間生きている幼女なのに乙女のようにしているのもいるのだが、あれは例外なので置いておくとする。


しかし、乙女心から裸同士の付き合いというのを不純として捉えるのは仕方がないだろう。


でも、それは間違いなのだ。


「‥‥‥そう、不純なんかじゃないさ」


僕はうつ向きながら言う。その言葉を聞いたのであろうか少しだけ怪訝な表情をするレイさん。しかし、苦し紛れの言い訳にしか聞こえないらしく反論をしてくる。


「どこが不純では無いんですか?」


どうやら自分の主張が正しいと思いたいようだが、そうはいかないのだ。不純なんてものは人の主張でどうにでもなるものなのである。感じる人の匙加減なのだ。だから、僕らのような現実を知っている大人は、こういう乙女チックなことを言っている子供を微笑ましく感じるのであろう。そして、同時にその純情さに渇望を見出だすのだ。


だけど、僕は敢えて言おう。


「風呂に一緒に入っただけで不純か? はっ、笑わせるじゃねぇか。不純って言うのは人の匙加減一つで様変わりするんだ。確かにお風呂を一緒に入るのはある程度のモラル・倫理感が許さないかもしれない。だが、不純っていうのはもっと激しいもんだ」


「な、何を言っているんですか? もしかして、開き直っているんですか?」


「あぁ、ジェアさんと一緒に風呂に入って背中を流していたことは認めよう。邪な気持ちが少しだけ芽生えてしまったことも認めようじゃないか。だがな、僕は僕の基準とした『不純』な行為をしないためにその場から逃げたんだよ」


「あ、あなたは何を言って‥‥‥」


だが、僕はレイさんの言葉を遮って大声で言い放つ。


「あぁ!? 不純っていうのはな『不適切な表現』でな『卑猥な表現』というのでよぉ!? 」


「お、落ち着いて下さい!!あなたは今、何を言っているか分かっているんですか!?」


「そ、そうだぞ。青井。少し気分を落ち着かせるんだ」


レイさんは混乱しながら、アルジェントヴォルフは宥めるように僕の気分の高揚を押さえつけようとする。僕の自重なしの発言に顔は真っ赤だ。しかし、ほとばしるパトスを遮るには少々、蓋の重みが足りない。僕を押さえきれるものはもうないのだ。


というか、もういっそここまで暴走しているのだ。二人に嫌われているかもしれないが、もういっそうのこと突き進めるまで突き進もう。止める壁はもうない!!


「あとジェアさん!!」


僕はそう言って思いっきりジェアさんの肩を掴む。その様子に真っ赤な顔が更に紅潮して、動揺を隠しきれていない。


「君はきっと純情だから気付いていないだろうけど、僕は君の裸を見たときに欲情をしていたんだ!!」


「えぇ!?」


「君の胸が僕の背中に当たる度に頭が真っ白になって、でも使用人だし乙女だから頑張って我慢したんだ。我慢出来たんだ。でも僕はそこまで我慢強い性格はしていないんだ!!前回は理性が崩壊するまえに逃げることで君を押し倒さずに済んだけど、今度は確実に押し倒す自信がある」


「ふぇえ!?」


そして、一拍置いて告げる。


「僕とお風呂に一緒に入るということは『そういうこと』だと理解しておいてくれ。君が僕のことを本当に好きではない感じたときには、この誘いを無かったことにしておいてくれ。僕は君を滅茶苦茶にする可能性があるんだ!!」


僕は黙る。ジェアさんの返事を待つためである。だが、僕の顔は真っ赤で熱いし、ジェアさんの顔も真っ赤だ。純情を壊すような言葉をしてしまって申し訳ないと思うのだが、だからといってこれは言っておかなければいけない。いや、このやけくそな心理状態での勢いでしか気恥ずかしさで言えなかっただろう。そしたら、一夜に過ちは起こってしまうかもしれなかったのだ。


ジェアさんはぼくを見つめている。僕もジェアさんを見つめている。横の二人は弱冠着いていけていないようなのだが、無視だ。


すると、若干視線を逸らすジェアさん。


どうやら、僕が思ったとおりに断る雰囲気が出来つつあるようだ。それもそうだろう。人が軽く引くような下ネタ発言を連発して、なおかつまるで脅迫のような雰囲気を纏いながら『君を襲うかもしれない』と言っているのだ。これはきらわれていてもおかしくはないだろう。


でも、これでいいのだ。純情な乙女は、その純情な感情を否定している大人とつるむと碌な性格になるはずがないのだ。


だが、今度は睨みつけるように目を合わせて来たジェアさん。


そして、次の瞬間僕とジェアさんの顔が近付き‥‥‥


――キスをした。


「ッ!?」


いきなりのことで硬直する体。しかし、そんなこと構わないかのように口の中に舌まで入れてくるジェアさん。思わず突き放してしまった。


「一体、何をするん「「一体何をしているんですか!?(だ!?)」」


僕が疑問を口にする前にレイさんとアルジェントヴォルフ。なんとも言いがたい。


「お、お主は何をしたかわかっておるのか!? 」


「そうですよ!!なにをしているんですか!!恋人でも無いのにせ、接吻をするなんてはしたないです!!」


「な、なんで僕にキスなんてしたんだ? 」


アルジェントヴォルフたちが質問しているのに便乗させてもらい僕も質問する。


すると、もじもじと恥ずかしそうな態度で僕を上目使いで見るジェアさん。


「‥‥‥私はアオイ様が少し勘違いしている節を見付けてしまいました」


「それは‥‥‥なんだ? 」


僕は恐らくキスされる原因となったそれをおそるおそる尋ねた。


すると、凛とした姿勢になり目は真剣そのものになった。顔は少しだけ赤みをさしているのだが、可愛らしいとはまた違う凛々しく美しい雰囲気を纏った。


急な変化に戸惑う僕に構わず話を進めていくジェアさん。


「私はヒューゼ樣からある程度の自由を頂いております。命令にも私が嫌だと言えば考慮してくださるお優しい御方です。ですから、今回も私の意見を尊重して下さいました」


そして、息を吸って


「自分の意思で、アオイ様のお背中をお流ししたいと思い自らやったまでのこと」


彼女の言葉は凛々しかった。少々恥ずかしがっているのだが、そこに嘘は混ざっていないというのをそういう素人の僕でも分かるぐらいだ。


「私は元々は盗賊としてそれなりに名を馳せていました。殺人に人拐い。賭博に強盗等世の中の悪とすることは一通りやってきました。しかし、私には理解できなかったものが一つだけありました。『恋』という感情です。だから、それを理解できなかった私は恥ずかしながら男性との情事を交わしたことがありませんでした。そして、そのまま私はここに捉えられたんです。エルフを最初に見たときには、私が今まで見てきた男性の中には存在しない気品を纏っていましたが、それでも私は『恋』という感情が分かりませんでした。けれども、アオイ様を見た瞬間に胸が苦しくなったんです。今までに感じたことのない類いの管状が私の中に燻っているんです。そして、ヒューゼ様の助言で私はそれを『恋』だと認識することが出来ました」


そして、僕の腰に手を回して抱きついた。キツく深く離さないように。


「もう、ここに私が死ぬまであなた様のような素敵な殿方に出会うことはないでしょう。きっとこれが最後なんです。最高の『恋』と『アオイ』様に出会うことは最後なんです」


僕はなにも言えなかった。彼女の言葉は重いと感じたこともある。


「‥‥‥返事は今すぐにとは言いません。今夜、私の部屋に来て頂けませんか?」


僕は静かに頷く。すると、それに満足したようでジェアさんは一礼をしてしんと静まったこの場所を後にする。


そして、残るのは気まずい空気と二人のまだ弱冠納得のいっていない少女二人。


「あ、あのなんかすみませんでした。なんていうか、そうですよね。お風呂に男女一緒に入って不純なんて少しだけ子供のような考え方だったかもしれませんね‥‥‥。そうですよ。エッチなことをしていないのだから不純じゃないのよ」


顔が真っ赤なまま僕に謝ってくるレイさん。純情な乙女心に少しだけヒビを入れてしまったのかもしれない。後半は自分にまるで言い聞かせているかのような感じになっていたし。


「いや、僕も大人気なかったよ。すまんな」


お互いに謝り、軽く謝り合戦をしているとアルジェントヴォルフがいきなり僕の手を掴んできた。


「‥‥今日は魔法に着いて教えてやる。つきっきりで教えてやる」


顔を真っ赤にさせながらいきなりそんなこと言い出すアルジェントヴォルフに苦笑してしまう。この子も僕のことを好んでくれていることはわかるが外見のせいでどうもそういう対象には見えない。


僕はそのままアルジェントヴォルフ強く手を引かれる。当然、あらがうようことは一切しない。理由は簡単で、もしもいじけてしまったら面倒であるということもあるのだが、それ以上に照れ隠しで強くひっぱている彼女を微笑ましく見られずにはいられないのだ。


後ろを見るとレイさんがなんとも言えない雰囲気で立ち尽くしていた。僕たちの姿をみて少しだけ羨ましいのだろうか。


そんなことを呆然と思っていてもどんどいと距離が離れていく。


今日はなんとも忙しい1日になりそうである。











やっと継ぎの場面にとつにゅう出来ます。


いつも読んで頂きありがとうございます。よろしければ感想をよろしくおねがいします。

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