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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
38/50

余計なお世話

今回も少しだけ下世話な話です。

side:青井 翔


心地よい風が頬を撫で、太陽が明るく僕の顔を照らしている。布団はいつも被っている安価な羽毛布よりも温かく肌触りが心地よく布団から出たくないという脳信号が僕の体を思わず二度寝の世界へ連れて行こうとする‥‥‥が。


「おきろーい!!」


布団に頭を埋めていたところに急に誰かが大声で僕の上にダイブした。


「うえっ」


運の悪いことに乗ってきた人の肘か膝かは認識できないのだが、硬い部分が鳩尾に入り思わず呻く。そして、そのまま思わず蹲ってしまう。


「だ、大丈夫か!?」


そして、僕がうめき声を上げているのが聞こえたのだろうか、僕が被っていた布団を捲って体が露になる。それと同時に僕に致命的な一撃を加えた犯人も理解した。


「オラァ!!」


勢いでベットの上から跳ねて起きる。身体能力が軒並み上昇した僕だからこそできる技であって、前世の僕は出来たかどうか怪しい。そして、その末にベットの上にいた人物が床に転げ落ちる大きな音が聞こえた。


「痛いぞ!!いきなり体を起こすのではない!!」


「ンダゴラァ!!テメェ僕の体の急所をご丁寧に固い場所で打ちやがって!!」


思いの外自分でも思っていたよりも中々に怒りを感じていたらしく、大きな声で怒鳴ってしまった。


その声に鳩尾に攻撃を打ち込んだ当の本人‥‥‥アルジェントヴィルフが思いっきりビクってしまっており尻餅を着いている。


「い、いきなりなんなのだ? 我が悪い事をしたならば謝るのだが‥‥‥」


「あ、いや、僕もいきなり怒鳴ってゴメンな」


僕は手を頭に当てながら謝る。正直に言ってしまえば謝って欲しいのだが 、それは流石に大人げないというものだろう。しかも、どことなく少しだけアルジェントヴィルフは涙目になっているのだ。多分、その原因は彼女が驚いたということよりも彼女が僕に悪い事をしてしまったという罪悪感によるものだからだろう。


「そ、そうか‥‥‥。それならば良いのだが」


「あ、でも」


「な、なんじゃ!?」


「次回からはもう少し優しく起こしてくれると有り難いかな?」


「わ、分かったぞ!! 今度からは優しく起こしてやろう!!」


そう言って意気揚々と部屋を飛び出すアルジェントヴォルフ。


数百年と言う長い時を生きていると言うことを感じさせないアルジェントヴォルフなのだが、気遣いというかそういうものを感じさせてほしい。これせは僕の身が持たない。まぁ、もしも崩壊したとしても再生するから別にいいのだが‥‥‥。


僕はそう思っている自分に苦笑してしまう。痛いのは嫌なのだが、だがそれよりも重要ななにかを見つけた気がするのだ。


朝陽が差し込んでいる窓を開け放ち頬を撫でる。


さぁ、一日の始まりだ!!



========



取り合えず、階段を下りヒューゼさんの書斎の扉をノックする。日の位置で時間を把握できない僕としては今は何時かを聞きたいのだが、アルジェントヴォルフが僕を起こしにきてくれたのだから早朝というわけでもないのだろう。


そして数回ノックした後にヒューゼさんの声が聞こえた。


「どうぞ入っておくれ」


僕はそのまま扉を開けて入る。書斎に入ると先日どおりの位置でヒューゼさんが足を組んで座っていた。


「昨晩はお楽しみだったかな?」


そんなまるで下世話な質問を、エルフの美しさという言葉を表したような顔なのに、それを台無しにするような嫌らしい笑みを浮かべながら僕にそんなことを質問した。この言葉に一瞬何を言っているのか分からなかったのだが、言葉の意味を咀嚼して昨晩のとあることを思いだす。


「もしかして、あのジェアさんが風呂場に居たのってアンタのせいか!!」


思わず先ほどのアルジェントヴォルフのように怒鳴ってしまった。だが、アルジェントヴォルフは悪意のない害であったのに対して、ヒューゼさんの場合はジェアさんを風呂場に仕向けたという悪意ある害であるのでこれはいたし方が無い。


「まぁまぁ。落ち着きたまえよ。ジェアの裸見れて良かったろ?」


「いや‥‥‥まぁ。嬉しくないと言ってしまえば僕は聖人になれるほどの欲が無い人物ということになるんだろうけどな」


否定はしない。というか、美人が裸で背中流してくれるとかどんな美人局なのかと普通に疑うのだが、やはり美人局だったか。そのことを口にすると、


「いや、あれは今回の君の活躍を聞いて労ってあげようという目的もあったんだが、それは悪魔でついで目的さ」


「‥‥‥ついで? 」


彼が『ついで』というからには他にメインの目的があるのだろうけれども、考え付かない。そもそも年頃の女の子がおっさんに裸を晒して果たせる目的なんてないだろう。


‥‥‥あ、今の僕の姿はnナウいヤングだったか。


しかし、目的が見当もつかない。


「一体どういう事だ?」


僕は素直に尋ねることにした。


「君は私達エルフの姿を見てどう感じている?」


いきなりの質問に少しだけ躊躇ってしまう。意図が全く読めないのだが、話す内に質問の意図が分かるだろうと判断した僕は質問に答えた。


「それは、言うのは少しだけ恥ずかしいですけど、見たこともない美貌で、まるで絵画でも見ているかのような印象を受けましたね」


すると頷きながら腕を組んでいるヒューゼさん。


「あの‥‥‥この質問にはどんな意図があるんですか?」


「あぁ、別に人間や君たちの容姿を愚弄するような言い方になってしまうにだけれども、許しておくれ。君が言うように私達エルフは人間よりも『容姿』は遥かに上回っている。これは覆しようのなう事実だ」


まるで、自分の種族が一番だと言わんばかりの主張なのだが、『容姿』という言葉を強調する辺り、ヒューゼさん自身妥協点なのだろう。しかし、ヒューゼさんは何が言いたいんだ?


「しかし、知性や理性を持っている者ならば少なからず自分よりも優秀なものには劣等感を感じるんだ。君は感じたことはないかい? 人間の場合だったら『自分と同じ年なのにあんな偉業を成し遂げられたのに、それに比べて自分は‥‥‥ 』と言ったようにね」


‥‥‥なんと なくヒューゼさんが言いたいことが理解できてきた。


「つまり、ジェアさんは自分の容姿に劣等感を抱いている、ということですか?」


すると無言でヒューゼさんは頷いた。


なるほど、確かにこれほどまでに美しい人々に囲まれて生活をしていれば自分の容姿にコンプレックスを抱くのも致し方のないことだろう。そして、1つや2つのコンプレックスを抱くことによって自分がプライドは徐々に陰りを見せる。


しかし、ジェアさんは自分の計りだとかなり美人の部類だ、いや、美人というより小動物の類いの『可愛い』と言った方が正しいだろう。


「でも、そんなこと言ったとしても僕と一緒に風呂に入ることがどのように彼女が自分の容姿に自信を持てるようになるんですか?」


「まぁ、君にとっては少々不思議かもしれない。だが、言葉より体の反応の方がわかりやすいと思ってね。ジェアは

謙虚でとても健気な少女だ。出会って数日の人に『可愛い、綺麗』等の言葉を言われてもお世辞にしか聞こえないだろう」


そのことは彼女の昨日の様子を見てみれば何となく苦労しているんだろうということはわかる。


「彼女にとっては言葉なんかには意味がない。しかし、それならば実際に男の心情が分かりやすい部位を見せることによって魅力的な女性であると理解するのではないか、と考えたのさ」


‥‥‥なんとまぁ、唖然とすることを考えているのだろうか。ヒューゼさんは男の正直な部分、つまり僕の勃起している男性器を見せることによってジェアさんが男にとってそういう対象に成りうり、女性として魅力的であるとおうことを証明しようとしていたのだ。なんとも直感的で暴力的な提案なのだろうか。


しかし、1つだ疑問が残る。


「‥‥‥なんでそんなに大切にしているジェアさんを僕が入っている風呂に入れたんですか。もしかしたら、僕がジェアさんを押し倒していたかもしれないんですよ」


何処の馬の骨かも知れない男が入っている風呂に大切にしている女性を入れるだろうか?なんとも疑い深い。


「私は人を見る目はあると自負しているよ。それに別にあの子が望むなら君に抱かせてもいいと思っているしね」


話している内容は信じられないモノだったが、ヒューゼさんの目は温かく穏やかで娘のためと思っているかのような目であった。


しかし、ジェアさんがたった数日で人に体を許すのだろうか。彼女と吊り橋効果が適用されるような場面にあったこともないし、そもそも少ししか言葉を交わしていないのだ。もしも、これで彼女が僕に好意を持っているとしたら、チョロインどころの話ではない。


しかし、ヒューゼさんの仕組んだハプニングの結果を聞けば大体は把握できるだろう。


「まぁ、それは置いといてどうだったんですか?結果は」


ため息を付きながら僕は尋ねる。どうせ、僕に裸を見られた恥辱しか残っていないはずだ。‥‥‥そうだったら、僕としては背後を常に気にしなければいけないかもしれない。


だが、一向に下世話な笑みが張り付いたまま結果を告げた。


「いや、結果は出たさ。風呂から出たジェアの顔がいつも以上に艶があったからね」


「‥‥‥」


本当の意味で言葉が出ないと感じたのは初めてだ。


「‥‥‥まぁ、ジェアさんのお力になれて嬉しいですよ」


そう言いながら僕は立ち上がる。


「機会があればまた頼むよ 」


「‥‥‥大歓迎ですよ」


そういってヒューゼさんの書斎扉に手を掛ける。この部屋にいたら僕まで下ネタを言いかねない。僕だって男であり下ネタを酒の肴として使うことだってある。男は正直に言ってしまえばエロで始まりエロで終わるエロティックな存在であり、高校生で友達を作るのに必要なのは適度な話術と適度なエロの話だ。


というか、表向きはなんとも呆れているように見せ掛けていたのだが、おもいっきし色んな意味で深い話をしたいのだ。


そういう気持ちを奥底に閉まっているのを見透かしていたからこそ、あんな笑みを張り付けながら僕に話しかけたのだ。エルフは性欲が無いとか言われているけれども、下ネタは好きなのだろうか。


まぁ、無いだろうけれど風、どうせならば風呂で背中を洗ってもらうほうよりもどっちかっていうと若い女性のきめこまかい柔肌を感じるために洗いたい。確かに背中にあたった2つの大きくたわわに実った果実はなんとも素晴らしい感触であったが、あれは危ない。理性という盾を貫く槍だ。肌を触るだけならば理性は崩壊しないだろう。


そんなことを考えながら扉を開けると、そこにはジェアさんが顔を少しだけ紅潮させて立っていた。


一瞬だけフリーズする時間。


そして、それを打ち破ったのは意外にもジェアさんの方であった。


「あ、あの」


「は、はい。何でしょうか?」


「そ、その‥‥‥あのぉ‥‥‥」


どんどんと言葉がしりすぼみになっていくジェアさん。


そんなふうなジェアさんに困っていると階段からアルジェントヴォルフが降りてきており、玄関からは丁度レイさんが帰ってきたらしい。


だが、そんな暢気なことを思っていると縮まっていた背中をシャキッと伸ばし僕の目を見ながら大きな声で言い放った。


「今度ッ!!一緒にお風呂に入るときにはッ!!私の背中をお流し頂けないでしょうか!!」






空気が凍った。



ハーレム的展開を回避できない主人公。なんとも羨ましいですけど、このあとの展開をどうしようか迷ってしまいますね。


いつも読んで頂きありがとうございます。宜しければ御感想と御意見を頂ければ嬉しいです。

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