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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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暗い森の中

テストがあったんで長い間投稿ができませんでした。

今回からも一週間に一回以上の頻度で更新するのでお楽しみにしてください!!

僕とレイさんは現在、明るい光が着いたランプを片手にぶら下げながら目的地まで移動している。

なんで、夜でもないのにランプを着けて灯りを確保しているのかというと森の木々が一切光を通さなくなってきたからである。

視界が全く見えないわけではないのだが、非常に視界が悪いというのは否め無い。

しかも、ここには『魔物』という恐ろしい獣が見境なしに襲ってくるらしい。


『魔物』とは何か‥‥‥というと。

簡単に言ってしまえば『理性は無いに等しく本能のままに行動する生物の全般を指す』らしい。

どうも興奮状態の獣との見分けがつかなそうだが、『魔物』にはどうやら他の生物に無い『魔結晶』というもの『魔物』の体内の魔力粒子が集まって出来た宝石のようなもにが体の一部に露出しているらしく判断がしやすいらしいちなみに、レイさんの受け入れである。

ここにはそこまで強い魔物は出没しないらしいのだが、だからと言って油断大敵である。弱いといっても人なんて簡単に殺すことのできる獣だ。

戦い慣れている人ならば対処は難しくないらしいのだが、戦い慣れていない、例えば一般市民などは歯がたたないらしい。

しかも、長い経験を積んできた戦士も油断したらすぐに殺される。それ故に、辺りを照らして視界確保しいつでも魔物の襲撃に備えるためである。

僕はレイさんを頼りにしているのだが、彼女の外見上強そうにはとても見えない。

彼女が自分を賞する時には、同年代の子の数倍は強い自信があると、そこから湧き出てくるのか分からない自信に溢れていたのだが、まぁ、論理的に物事を捉えることの出来る子だ。

自分を客観的に見ることは容易いだろう。


「なぁ、だから知識はちゃんとあるけど、記憶が無いんだって」


「そんなの信じろって方がおかしいですよ。そんな都合の良い記憶喪失がありますか。しかも、先程意味有りげなことを私に言っておいてそれは流石に無いと思いますよ」


そんなこんなで、暗い森の道に差し掛かってさえでも、僕とレイさんは論争していた。



ーーーーーー



先ほどまでは、深くどんな言葉で翻弄しようかと考えていたのだが、正直に言ってしまえば案が思いつかなかった。

いや、あるにはあるのだが、それは人としての倫理的に反するような行為なので今回の穏便に抑えたい場合には論外だろう。

つまりは、八方塞なわけなのだがそこでヒューゼさんの登場だ。

レイさん曰く、ヒューゼさんはエルフの里内でも評判が高く、レイさん自身も尊敬している人らしい。

彼の評価は『何でも見抜くその眼光には誰も虚言を吐くことなど叶わず、その暖かな言葉は私たちを導いてくれる』という評価らしい。

少しだけ宗教臭いなんて思わなくもないのだが、魔法が存在する世界なのだからこのぐらいの過大解釈のような評価でも構わないのであろう。

そんな彼が僕のことを記憶喪失であると確信していると、僕が言ったらどうなるのだろう。

さすがに尊敬している人物を疑ったりはしないだろう。

彼は既に僕が記憶喪失ではないことを看破しているのだが、きっと口裏を合わせてくれるに違いない。


そう思った僕はヒューゼさんが保障してくれるという内容をさりげなく織り交ぜて、記憶喪失であるということを騙ったのだが、中々信用してくれない。


「あの人が、あなたが記憶喪失ではないなんてことを看破していないはずがありません」


と、一方に譲らない。

ならば里に戻って尋ねればいいじゃないか、と言ったのだが、どうやら僕の発言は尊敬している人物を愚弄しているかのような発言と取られたらしくぷんぷんとしていらっしゃるのだ。

まぁ、無表情なのだけれども。


「私はあの人のことを全面的に信用していますし、ある程度ですが尊敬もしています。しかし、そんな彼と私の実力差は私がとても痛感するものです。私が見通せたものを彼が見通せないはずがありません」


「そう言われてもねぇ」


僕は口を噤んでしまう。

確かに彼女の言うことは一理あるが、だからといってここで出会って一日も満たない少女に僕の真相を明けていいはずが無い。

彼女にとって僕は資料で大体のことを把握しているかもしれないが、僕にとっては彼女がエルフであり16歳という少女であることしか把握できていないのだ。

そんな彼女に真実を話すなんていうことは絶対にできない。


じゃあ、先ほどのように脚色した過去を話せばいいのではないだろうか


しかし、過去を騙るにはこの世界の情報が必要なのだ。

そして、それ以前に僕が記憶喪失から一変して『実はこうでした』といったところで信じてくれるかすらどうか怪しい。

彼女と僕の信頼は揺ぎ無いぐらい揺らいでいるのだ。

多分、それすらも怪しいと思うだろう。


ならば、どうすればいい。


どうすればこの状況を打破できるんだ‥‥‥。


いっそのこと、泣き寝入りでもしてみる価値があるかもしれない。だが、それをすれば男としての意地が無くなるように感じてしまう。

そこで僕は一つ妙案が思いついた。

名案とも思えないので妙案だ。


「なぁ、僕はこの世界のことを知らないのはレイさんも把握しているだろ?」


「はい。ですが、そのくらいはあなたが嘘を付くことが可能な範囲です」


「まぁ、そうだろうな。でも妙な常識やあんたらの言語が話せると」


「‥‥‥一体何が言いたいんですか?」


「君は『知識欲』が強いって言っていたよな? 僕はこの世界にはまだ把握できていない『知識』というのを有しているんだ」


「‥‥‥把握できて来ました。あなたが知っている『妙な知識』を餌に何か交換しようとしているんですね。口止め料も兼ねて」


どうやら、ここまで言ったらさすがに分かるようである。

そう、僕はレイさんと『情報』という不確定な媒体で取引をしようとしているのだ。

これならば、この世界で一般的な常識を持っていなくとも取引ができる媒体。

それも、ターゲットの層が限りなく狭いこの媒体を、そのターゲット層に当てはまるレイさんと交渉しようというわけである。


「レイさん。口止め料ってわけじゃないんだ。僕は本当に記憶喪失だし、ここの常識だってままならずに放り出されたら何日も持たずに餓死してしまうような『種族』なんだ。だから、もしも僕が怪しいからといって『記憶喪失ではない』なんてことは言い触らさないでくれ」


ここで僕は敢えて人間というワードを出さない。

いや、喉元にまで出掛かったのだが、それを無理やりに変更したら強調するかのようになってしまっただけなのだが。


「そして、もう一つ言っておく。 これが僕の持っている唯一の財産だということを忘れないでくれ」


そして、僕は黙った。

これ以上何も言うことが無い以上に、彼女に考える余韻を作らせるためである。

まるで仮面のように動かない彼女であるが、だからといって一人の少女。

それも16歳の僕が生きていた世界では学生で勉強に勤しんでいるような年齢だ。

大人たちのように、頭にメモを保存して整理整頓しながら交渉に興じるような土台はできていない可能性が高い。


そして、その当てが当たったのだろう。

長く長く歩きながら熟考するレイさん。


そして、顔を上げる。


きっと彼女はどうするか決めたのだろう。

思わず、手に力が入って拳を作ってしまう。

正に、緊張の一瞬である。


レイさんはゆっくりと口を開く。


失敗したら、僕の計画は破産する。

たぶん、その年齢から来る世間への甘さを見込んで土下座と泣き落としという情けないコンボでするしかないだろう。

それでも理論的にロジカルな考え方をする彼女にその手が通じる可能性はきわめて低い。


頼む、了承してくれ!!


「わかりました。その条件『今のところ』はのみましょう」

この言葉を聴いた瞬間に無意識に、拳の力は抜けてしまった。

僕が

しかし、引っかかる部分はある。


「レイさん。 『今のところは』ってどういうだ?」


「簡単です。今は交渉に時間を費やすよりも先にやることがあると言っているのです。交渉は私たちがやるべきことを遂行してからしましょう」


「‥‥‥まぁ、それもそうだな。それじゃあ、ちゃっちゃと目的地に行きましょうか」


僕は先ほどよりも軽い足取りで歩き出す。



ーーーーーー



随分と歩いたと感じた瞬間に、ふと鼻に付く臭いがした。


「もうそろそろでしょうかね」


顔をしかめながらレイさんは言った。

どうやらこの臭いにはレイさんも顔をしかめるらしい。

しかし、なんなのだろうかこの臭いは。

森を進むごとに次第に臭いが強くなっていき、思わず鼻をつまんでしまった。


そして、瞬間。


その光景が広がっていた。


青い葉が茂った森をまるで境界線で区切られたかのように、倒れている木々。

それに加えて、ヒューゼさんの報告には無かった、動物たちの腐敗した死骸もそこには転がっていた。

数は動物の種類も含めて、数十ぐらいだろう。その光景は吐き気を催すのに十分な光景で、さらに先ほどよりもひどい臭いに吐き気を催した。

とっさにレイさんから離れた木陰で吐いた。口の中にすっぱいものが広がり、更に気分が悪くなる。

思わず、胃の中のものをぶちまけてしまいそうになるが、そもそも何も食べていないので胃液が込み上げてきた。

服には胃液は付いていなかったのだが、口の周りには付いてしまっていたので『クラインウォーター』を弱い魔力を注ぐイメージをしながら発動させた。

すると、右手からどんどんと水が溢れてくる。

そのまま右手を口の吐瀉物を流し、口の中をすすいだ。

気分的にはだいぶすっきとりとしたので、レイさんの下へと戻る。


「随分とこの空気にあてがわれていたようですが、大丈夫ですか?」


ありがたいことに心配してくれたようだ。


「あぁ、大丈夫だ。ちょっと気分が悪くなったぐらいだからな」


ちょっとどころではないのだが、そこは気前の持ち様でどうにでもなるのだ。


そして、改めてその凄惨な光景に目を疑った。


腐敗した死骸の周りにはハエが飛び回っており、体液のような全ての動物が殺されていた。

胴体や頭に綺麗にぽっかりと穴が空いて死んでいる。

明らかな殺された跡である。


「少し報告しなければいけないことができましたね」


「これは殺された跡なのか?この状況からこんな死に方をする要因が思い至らないんだが」


「そうですね。私もそう思います」


木々が腐食していて倒れて下敷きになって死ぬ、というのはわかるのだが無造作に体に一つの大きな穴を開けて死んでいるとなれば、これは故意に犯行したとしか思えない。

ここで誰かが動物を殺しまわっている。

しかも、猟などの食料確保のためではなく唯単に殺すためだけに、である。

そこで僕は考えた。

考えてしまった。


「これは――まずいかも知れませんよ」


どうやらレイさんも同じことを思いついてしまったようだ。


この腐食している場所以外には死骸は無かった。


しかし、この腐食している場所にだけ死骸がある。


しかも故意に殺した跡の見える死骸だ。


これらから判断できることは一つ。


「クソッ!!急いでこの場所から逃げるぞ!!」


この腐食した領域に入った者を無差別に殺す、『何か』がいるということだ。


だが、後ろを振り返るとそこには巨大な黒い『何か』がこちらに棍棒を振りかざしている姿が視界に入った。

次回はバトル回!!

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