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神様会議 後編

三人称視点なんかもうしない

飛び出した瞬間に、甲高い刀とアブソートスィータが打ち合っている甲高い音が聞こえている。かなり恐ろしい速度での打ち合いで甲高い音がなり響き続けている。


だが、次の瞬間に展開が動く。


「オラァ!!」


掛け声と同時にアブソートスィータを右胸に向かって恐るべきスピードで突き繰り出すアメレィストゥ。それを適当に刀を使って『青井』は軌道を逸らし、腹に向かって蹴りを放つ。だが、そのことを予想していたのか約3mバックステップすることによってその蹴りを回避するアメレィストゥ。


「同じ手は二度も通用せぬは!!」


そう威勢良く言いながら横にアブソートスィータを薙ぐ。それを『青井』は刀で受け止めようとするが『神』ゆえの怪力と遠心力が乗った一撃は重く、横に吹き飛んでしまう。そのまま並行して5m吹き飛ぶが、空中で体勢を立て直した『青井』は刀を地面に突き立てることで勢いを止め、その場に停止するが大きく隙が出てしまった。


当然その隙を見逃すほど甘くはなく、アメレィストゥは瞬時に5mの幅をジャンプし空中でそのまま突きを放つ。


そのまま眉間に刺さりそうになるが、直前のところでアブソートスィータの柄の部分を刀で強引に切りつけられたことによって軌道を逸らされてしまう。軌道を逸らしたとはいっても『青井』自身無傷という訳にもいかず頬に槍の刃の部分が掠り赤い一筋の線が出来てしまっている。


だが、そんなことに気を取られている暇が無い。そう考えた『青井』は、まだ槍を手元に戻していないアメレィストゥに槍の柄を顔に接触させながら、一歩大きく踏み込む刀で切り上げる。しかし、恐るべきことにアメレィストゥは突き出した状態で槍を神ゆえの力で強引に横に薙いだ。


さすがにこれは『青井』も反応しきれずに頭に槍の柄が激突して吹き飛んだ。その際に手元にあった刀が投げ出されてしまった。


幸いにも、元々頭部に接触していた状態で横に薙いだので、『青井』は吹き飛ぶという結果だけで済んだ。


だが、遠く吹き飛んだのは変わらずに、そのまま100m以上吹き飛び数回体をバウンドさせて停止する。頭に槍の柄が激突して無事だったからだとはいえ、その着地する時のバウンドで両手はおかしな方向に曲がり側頭部の部分が少しだけ凹んでいるのだが、意識をちゃんと保っており、静かに立つがその姿は満身創痍であった。


これで勝負は決まると思っていた神々だったが、満身創痍の彼を前にしてなんのアクションが無かったことを不思議に思いアメレィストゥの方に視線を移すと‥‥‥。


誰もが唖然とするそのアメレィストゥの姿。


白目を向いており、鼻血が出ているが倒れる様子は一切無い。


そして

アメレィストゥの頭頂部には――垂直に根本まで刀が刺さっていた。


その様子を遠目で見た『青井』は血だらけの体でニヤリとほくそ笑む。


「私の勝ちだ。これで異論は無いかな?」


そうして、一秒にも満たない攻防は『青井』の勝利という形で終わりを告げた。



======



「ガハハハハハハ!!」


そう豪快に笑っているのは頭頂部に刀が刺さっていたアメレィストゥだ。『創造』で使った酒を浴びるように飲みながらそれでいて笑っている。口からは笑いながら酒を飲んでいせいでこばれてしまっている。


「久々に骨のある輩と勝負が出来たわい。今度は新しい世界でも作ってそこで闘ってみたいな!!」


「だからここでしか闘えないと言っているだろうに‥‥‥」


どうやら『青井』のことを気に入ったらしく背中をばんばんと叩きながらアメレィストゥは言った。その様子に『青井』は少しだけ痛そうだが、どことなく嬉しそうだ。


「まさか、そなたが槍を食らうこと前提に動いていたなんて思わなかったからなぁ。槍が頭に当たった瞬間に刀が真上に飛んだのは覚えているが、それがもしや自分の頭に当たるように計算されて投げられていたなんて考えもしなかったわい!!」


そう言いながら、『青井』に向かって『創造』で作った酒が入ったビンを投げる。


「あぁ、酒は飲まないようにしているんだ」


「うむ? 禁酒でもしておるのか?」


するとばつが悪そうに頭を掻く『青井』。その姿にアメレィストゥは察しが付いたのかそれ以上酒を無闇に勧めることは無かった。


「それにしても、まさか喧嘩しか取り柄のないアメレィストゥが負けちゃうなんて驚きね」


隣でアメレィストゥが『創造』した酒をラッパのみした後にそういったのはジェンヘイトであった。酒にそこまで弱くないジェンヘイトだったが、なんせアルコール度数が限りなく高い。それ故にジェンヘイトは顔を真っ赤にさせながらアメレィストゥに凭れ掛かりそういったのだ。


因みに、この場で酒を飲んでいるのはジェンヘイトとアメレィストゥとちゃっかりテッラチェイロが酒を飲んでいた。だが、酔いが回っているのはジェンヘイトだけだ。


「それで、これである程度『私』が神の脅威になる存在だということが証明できたかな? 別に時間が余っているから他の試練を受けても構わないのだけど‥‥‥」


そういった『青井』の態度はかなり偉そうだが、既に戦闘力では随一のアメレィストゥが敗れている時点で神々の脅威となっている。


『青井』はその沈黙を肯定と受け取った。


========


そして、それから馬鹿騒ぎも終わり、アメレィストゥは先に自分の戻るべき場所へと帰っていき先ほどまで酔っていたジェンヘイトは眠っていた。ヴァイスジェスもいつの間にかいなくなっていた。


周りが静かになった頃合でテッラチェイロが珍しく口を開いた。


「一つ聞いてもよいか?」


「何かな?私に答えることの出来るものならばこたえるが?」


「なんで、そなたよりも『ライアール』に存在している青井翔の方が脅威的となるのだ? あれはまだ卵のようなものだぞ?」


「逆だ。まだ生まれていないからこその価値だ」


眉間に皺を寄せるテッラチェイロ。どうやら理解が出来ないらしい。そんな様子を見て『青井』はため息を思わずついてしまう。


「テッラチェイロさんはもしかしてガチガチの理論武装をして討論に挑む性格なのかもしれないな。まぁ、限りなく抽象的な存在の代表格が理論だてるというのはおかしな話かもしれないが」


そう言ってまるで興味を失くしたかのようにテッラチェイロから視線を外す。


「白い女神さんは『感情』を司っているんだろう?だったら私の言っていることが分かるはずだ」


いきなり白い女神に話を振る『青井』。テッラチェイロはいきなり会話から外されて少々腹立たしくなっているのだが、答えられない自分が悪いと感じ口を噤んだ。


そして、一方でいきなり話を振られて少々混乱する白い女神だったが、彼女は自分の思ったことを口にする。


「多分、数多の可能性を秘めているから‥‥‥かな?」


『青井』はその答えに満足したようで、彼女に向かって微笑む。


「そうだ。白い女神さんの言うとおりで卵には数多の可能性が秘めてある。そして、彼は転生したときに、卵から孵った雛だ。もしかしたらひよこかもしれないし、もしかしたら鷹の子かもしれない。まだまだ可能性を彼は秘めているんだ」


『青井』はそう言いながらまるで何かを思い出したかのように目を細めていた。それは我が子を思う父のような温かい視線でもあったかもしれない。


だが、その言葉にいまいち釈然としないのが運命の女神であるディッセーラだ。


「しかし、それこそ偶然の賜物であり『運命』なのではないか?それだったら我は『運命』を操ることが出来ようぞ」


そうディッセーラは告げた。だが、それに『青井』は反論する。


「じゃあ、逆に聞くけれど運命を操れない人々は操ることが出来ないだろう。『運命』を操ることが出来ないのも『運命』なんじゃないか?あんたの言っている『運命』じゃなくてその出来事を起こして人生を操るものだろ?それは『運命』じゃなくて『必然』だ。だけど、彼はあなたの『運命の糸』も効きもしなければそもそも居場所すら分からない」


『青井』は言葉をわざと区切る。


そして


「神様すら把握しきれない可能性。どこまで続いているか分からない人生の道標。それこそが私の思う『運命』というやつなんだ」


だが、後付で「私の価値観で話たから個人的な感情が混ざっているのはご理解いただきたい」と付け加えたが。


『青井』が満足そうに一息を付き、チラリとディッセーラのほうへ視線を移す。


それは運命の神であるディッセーラが怒りを感じていないか見るためでった。何故にそのようなことをしているのかというと、彼自身は今の価値観は運命の神の存在を全否定していると思っているからだ。それに加え、彼はディッセーラの『運命』の価値観を全否定したのだ。故に『青井』はディッセーラが怒っても仕方が無いと感じていたのだが‥‥‥。


ディッセーラは拳を握り締めてふるふると震えていた。


その様子を見て『青井』は少しだけ後悔する。


だが後悔先に立たず、そのまま『青井』のほうに歩み寄りそのまま――。




両肩を掴みキラキラと瞳を輝かせていた。




「そなたの考えはなんと美しい考えなのじゃ!!我自身、その考えに感服してしもうた!!危うく涙が出るところであったぞ!!我さえも把握できないものこそ『運命』‥‥‥なんとも素晴らしい言葉であろうか!!」


そうやってぶんぶんと肩を揺さぶるディッセーラ。


まさかの予想外の反応である『喜ぶ』を考えていなかった『青井』はその反応に苦笑してしまう。だが、その反面、喜んでくれたなら幸いだということを考えてもいた。


そのままされるがままになりディッセーラが正気に戻ったところで『青井』の体が光りだす。 


「あぁ、もうそろそろ時間か」


「え?何が起こってるの?」


いきなり体が光りだした『青井』に戸惑いが隠せない3名の神。


「いや、大丈夫だ。ここに長居しないために自分で掛けたタイマーだからな。心配はいらんさ」


そうこう言っている内に『青井』のつまさきから光になって消えていく。


「なぁ、白い女神さん。『僕』のこと、頼みますよ」


そう微笑み『青井』は消えていった。


========


その後、青井翔という存在に手を出さないことが9柱で決定した。

というわけで神様視点でした。


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