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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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お食事

最近は絵とか勉強とか雪とかで遅くなりました。

まぁ、一週間に一回以上の更新をするという目標は達成できたので、よかったなと思いました。

「うん、これは美味いな」


「そうですか?ありがとうございます」


僕たちは静かに時間が流れているような感覚を受けながら、木の根に座りパンを頬張っていた。

なんとも静かで、美しい森なのだろうか。

随分と忙しなく動いていたせいで、中々この森の景色を深く見ることは無かった。

鬱蒼とした森とこういう開けた空間ではどうも感覚が違ってくる。

例えば、鬱蒼として森にも関わらず同じものが存在する光景をどう思うだろうか。

それは、光景としてもデザインとしても駄作であり人々を飽きさせるのであり、僕もその例外ではない。

それに対して、この開けた場所はなんと良い場所だろうか。

程よく開けた空間は気分を密度の高い場所から低い場所へと移行し、すっきりとした気分を感じることができる。

この木漏れ日も美しい風景の一つである。

もしも僕の手元にデジタルカメラとか撮影ができる機械があるば迷わず取り出しただろう。

しかし、そういう機械、いや、僕が生前いた世界のものはこちらには一つたりとも手持ちにはない


なんとも残念である。


「どうしました?もしかしたら、本当はお口に会いませんでしたか?」


すると、相変わらずの無表情と上下の抑揚のない感情の良く分からない声で問い掛けてくるレイさん。

もしかしたら、僕が悩んでいるのは料理が口に合わないと勘違いしていたらしい。


それは何とも悪い気分になる。


「別の考え事をしていただけだから大丈夫だよ。あんたの飯は美味いから安心しな。そこまで舌が肥えてる訳じゃないから自信を持って言えるわけじゃないけどな」


「そうですか。味覚というのは人それぞれなので、賛否両論に分かれると思いますが、あなたが美味しいと感じるのならば結構です」


ふむ、礼儀正しく謙虚である態度にはとても好感が持てる。

しかし、こんな美味しい料理をそこまで謙虚に評価するのは勿体無い。


今僕が食べているのは、パンに真っ青でシャキシャキとした食感を持つレタスのような野菜に、何の肉かは分からないのだが冷めても脂がしつこくない肉。

シンプルにこれだけなのだが、パンのいい感じに外が焦げ、サクッとしら食感から、美味しい肉の風味とそれに加えて肉の味を邪魔しないようにレタスのような青い野菜の食感が口内に程よい刺激を与えている。

simple is best とはまさにこれを表現した言葉ではないのだろうかと錯覚するぐらいだ。


なんとも美味である。


「いや、レイさんの料理は万人受けする素晴らしい料理だ。美味いね。美味だね。素晴らしいねこれってなんていう料理なんだ?」


形的にはサンドイッチに共通するような点が多々あるが、やはり異世界なのでサンドイッチという名前ではないだろうと容易に想像できる。


「はい。これは人間の世界での一般的な朝食として普及している『サンドイッチ』なるものです。最近では私たちの種族にも手軽で美味しく出来ると言って普及していますよ。基本的な土台を作ることが簡単なので、色んな創作料理にも応用できると」


まさかサンドイッチという言葉が出てくるとは思わなかったのだが、『サンドイッチ』という言葉を聞いた瞬間に何処か違和感を感じた。

そして、数旬だけ考えてその違和感の正体がわかった。


『サンドイッチ』は生前の世界の『サンドイッチ』なるものではない。

どちらかというと、こちらの言葉を都合よく解釈するために脳内で解釈したのだろう。


ふむ、便利であって都合よく解釈してくれるんは嬉しい。


しかし、疑問が1つ解消されたもう一つ疑問が浮かんでくる。


「へー、人間から食文化を輸入してきたんだ」


そう、レイさんの話を聞いた限り、このサンドイッチは人間から食文化を輸入してきたようだが、そこまで人間とエルフの関係は有効なのだろうか。


「はい。ごく最近、私がまだ生まれていないころですか。一番この森から近く、この大陸で一番の影響力を持つとされている『レイルド王国』がありまして、約20年前に前王『レイルド·ルイド』が処刑されました。まぁ、暴君としても名を馳せていた王様らしかったですよ。ちなみに現在即位している王の名前は『リイル・レイド』です。前に即位していた王の一族は皆処刑されたらしいです」


歴史と言うのは、どこも同じなのだろうか。

世界史を習ったときにはどこでも聞くようなワードの『処刑』なんて言葉を耳にするとは思わなかった。

やはり、この世界の秩序は『なかなか』のものであるらしい。


しかし、大体は理解できた。


「つまりは、あれか。現在の王がエルフとの有効な関係を築くために何かしらの政策をしているのか」


「そうですね。しかし、私達エルフだけではなく全ての亜人との有効な関係を築きたがっているようですけど」


どうやら、当たりらしいが、その後の言葉には少しだけ棘あるようだった。

やはり迫害されたことがあるからであろう。

加害者を信用出来ないのかもしれない。


「それじゃあ、前の暴君と言われていた王様は亜人に対してどんな政策を行っていたんだ?」


「それはもう、迫害ですよ。しかも、亜人だけではなくて他国民も迫害するような王様ですからね。詳しいことはよくわかりませんが、色々なことが積み重なって国民の反感を買い、そして最終的には処刑されたらしいです」


他国民を迫害するというのは歴史上よくある事なのだが、どうやらエルフには理解できないらしい。

それとも、それは幼さ故の見解であろうか。


生前の世界では、暴君と言われればローマ帝国のネロが思い浮かぶ人がいるかもしれない。

多分だとお思うのだが、彼の悪いことしか教えられない昨今なのだが、彼も彼で素晴らしい実績を持っているのだ。

まぁ、最終的には民よりも娯楽を優先したせいで、元老院のから難癖つけられたり軍に見捨てられたりで散々なのだが、芸術という面を尊重したその姿はすばらしいとはなんとなく思う。


しかし、国民からの反感というには早計な判断ではないのだろうか。

流石に聞き耳にした噂を信じるほど馬鹿ではない。

マスメディアが情報を改竄して都合の良い情報しか流さいないというのと一緒だ。

現在の王の評判を上げるために、前の王を貶めることは基本的であり、情報戦でもある。


まぁ、聞いた噂を信じるのは馬鹿のすることであり、百聞は一見にしかずというやつである。


「今の王が玉座に付いたことで、この里にも人間の手で作られた新しい文化が入るようになりました。今、外交官が二国間でどんな条約を結ぶのかを、向こうの国の外交官と模索しているようです」


ふむ、条約を結ぶと言うのは簡単に言ってしまえば、お互いに手を繋ぐ仲になると言っても過言ではない。

そう考えると、本気なのかもしれない


「へー、サンドイッチの他にはどんな文化が入ってきたんだ?」


僕は話を転換する。

人間の文化がどのくらい輸入されているかを知りたかったからだ。


「この森には人間の立ち入りは許可されていません。それで、芸術などはこちらにあまり輸入されていませんでしたが、人間の学術を習いに行った人がいましてね」


「つまりは、留学みたいなものか?」


「そうですね。その人がこの里に帰省した際に、様々な画期的な知恵がもたらされました。その一つに本に多大なる影響を与えた技術があったんです」


ふと、そのまま沈黙が続く。

どうやら、考えてみろ、という感じらしい。

しかし、そこまで知識の無い僕に対して、そんなことを言うなんて酷だな。

だがしかし、逆に考えてみれば僕がいろんなことを知っているような博識な男に見えるかもしれないということだ。


僕はしばらく考える。

本の革命と言うが、そこらへんはどうなのだろう。

やはり、表現技法的な抽象的な何かだろうか。

いや、それを言ってしまえば好き嫌いに分かれてしまうし、そもそも輸入するほどでもないだろう。

人間とエルフでは、文章的な表現は違うかもしれない。

いや、確実に違うだろう。

文章的な表現は歴史に関わってくるから、他国しかも種族でさえ違うエルフ、いや、『亜人』と人間の感性が一緒のはずがない。


ふむ、ならば抽象的ではない技術で、本に関係するようなものとはなんだろうか?


僕はふと『活版印刷』という言葉が頭に思い浮かんだ。


「活版印刷のことか?」


すると、少しだけ眉毛を動かした。

どうやら、そこまでするぐらいには驚いたらしい。


「記憶喪失なのによくそれをご存知ですね」


‥‥‥しまったなぁ。


「私は上司から――、正確に言ってしまえば『ヒューゼ』様から記憶喪失であり、怒らせると手がつけられないことになりそうだから丁寧に扱え、ということしか教えてもらっていません」


これは僕の認識不足である。

エルフの里に入れたのは『人間ではない記憶喪失である』からである。

最初から仕事をさせるつもりだったヒューゼさんには看破されてもまずいことは何も無いのだが、それ以外のエルフに看破されてしまっては、非常にまずいことになるかもしれない。


「さっきから妙に、私たちの文化について言及してきたり、そもそも常識的なことも聞いてきましたよね?その割には、妙に勘が冴えていて活版印刷なんて言葉をご存知でいる。怪しまれない要素がどこにあるんですか」


すると一旦、間を置くレイさん。

その言葉の間に、手の平に汗を掻いていることが自覚できた。


「あぁ、そんな深刻な表情しなくても大丈夫ですよ」


どうやら、また顔に出ていたらしい。


「私は、周りの子から知識欲が深いとよく言われるんです」


「そうか。で、要求はなんだ。ちなみに金と名誉とか仕事とかなんもないぞ」


「いえいえ。別にそんなものには興味なんてありませんよ。私はただ教えて欲しいのです」


「教えて欲しいだって?何を?」


この子の表情と声のトーンからはまったく心情が読み取れなく、不安になる。

ポーカーフェイスというよりは、その表情が石のように動かない様は仮面だ。

口だけが動いている、まるで不気味で恐怖心を煽るような仮面だ。

背中にまで嫌な汗を掻いてきた。


「私の質問することに、できる限り教えてください。ただ、それだけでいいんですよ」


そして、そのままレイさんと僕の長い質問タイムに突入する。


暴君ネロのwiki見てください。

案外、面白いですよ。

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