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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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頼みごと 2

なんていうか、狼の過去3 が投げやりすぎたんですかね?

そのまま沈黙を貫き通し歩く僕とヒューゼさん。

先ほどの会話から一切、言葉を交わしていない。

前もそうなのだが、一緒に同行している人と何か話さないと不安になるというのが最近の日本人である。

思わず、緊張して拳に力が入ることを自覚した。


決してコミュニティ能力が無いわけではないのだが、先ほどの話をして世間話をする度胸や肝は据わっていないのだ。

どうせ、転生するのならば性格も変えて欲しかった。

もっと、こう、なんていうか、図太く気が利くイケメン性格にして欲しかった。

なんで中途半端なのだろうか。

やはり中途半端なのだろう。


すると、後ろの眠っていたアルジェントヴォルフが動いた。


なんと、救いの女神の登場であろうか。

この場で彼女が起きることによって、この沈黙している場の気まずい空気を打破してくれる希望の女神なのだ。

なんとも頼もしい。


起きてくれっ、と念を後ろで眠っている幼女に送る。


しかし、どうやら位置を調整したらしくそのまままた眠ってしまった。

心の中で舌打ちをする僕。

なんとも役に立たない幼女なのだろうか。

このまま落としてしまおうか、なんて考えるが当然そんなことをすれば後が知れないのでしない。



すると、ヒューゼさんの歩く速度が心なしか早くなっているのに気が付いた。

どうしたのだろうと、疑問を持ちながら先導しているヒューゼさんと速度を合わせ歩く。


そして、暗い森の道はいきなり途切れ、広く青々しい草原地帯に出た。

草の匂いと、土の香りが鼻に着く。

風も程よく吹いていて、前髪を揺らす。

とても気持ちの良い風だ。


そして、僕の視線は草原地帯の奥にある街のような場所にシフトする。


円形の目測数十メートルの柵に囲まれた場所が見えた。

どうやら、ここは高原になっているらしく普段ならば見上げそうな柵の中が見えた。

柵の中は遠目から見た感じでは円形グラフのように色が分かれている感じなのだが、よくよく目を細めて見てみると区画ごとに分かれているようだ。


そして、その円形の中央には大きな雲を突きつける程の大樹が聳えたっている。

これが、先程のヒューゼさんの一人語りにも出てきたこの得体の知れない森を象徴するモノ。

即ち、『神樹』であろうことは簡単に予測ができる。


その神樹はまさに圧巻の一言であり、何も言うことができない。

初めてこれ程の大きさのモノに出会ったことが無いというのも理由なのだが、それ以外にも好奇心というものを内心で押え付けている自分がいるのだ。


異世界と言えば、エルフというのも定番だが、森の象徴である『神樹』が限りなく大きいというのも定番中の定番だ。

そして、想像を巡らす。

こんな大きな木というものは、どういうメカニズムをしてここまで大きくなったのだろうか、ということや、もしかして、神樹の中にはエルフの幹部的な人達の会議室的な部屋がいるのではないか等の想像とも言えない妄想が捗る。

こういうモノは大好きだ。


早くエルフの里に入っていろんなところを見学したいと心底思う。


すると、横でくすりと笑う吐息が耳についた。

どうやら、いつもの如く顔に出ていたらしくヒューゼさんが顔に苦笑いを浮かべていた。


「済まないね。客人なのにこんなに長く歩かせてしまって」


そして、一区切りして――。


「ようこそ、エルフの里へ」


ーーーーーー


もうそろそろフードを被らなければいけないだろうと、そう考え僕は後ろに眠っているアルジェントヴォルフを起こすことにした。

適当に放り出して、起こそうかと思ったのがそれは流石にアルジェントヴォルフも見た目だけだが女の子なので寸前のところで思い止まった。

ゆっくりと地面に起き、軽くペシペシと頬を叩く。


すると、小動物のような仕草で体を伸ばし、そしてそのまま身をよじり体を起こした。


「うー。なんだ。人が気持ちよく眠っているのを無理矢理起こしよって」


とてもご不満そうな様子だが、そんな僕にとっては関係ない。


アルジェントヴォルフにもフードを着てもらわなければいけないのだ。

人間の姿をした僕と異様に嫌われているアルジェントヴォルフがそのままエルフの里に入ったら、大体は想像ができるほど嫌なことが起きるに違いない。


「ほら、このフードはヒューゼさんが息を切らしながら持ってきてくれたんだぞ。それに無用な争いごとを起こすのも不本意だろ?」


そう言って優しく諭す。


しかし、


「フンッ!!そんな暑苦そうな物を我が着ろというのか。もしも、争いごとが起きればその度に対処でもすればよかろうが。雑魚が何人も掛かってきても雑魚は雑魚だ」


なんともムカつく幼女なのだろう、とある意味感心する。

そもそも、そんなに暑そうに見えないのだが、この少女はただ単にエルフの言いなりになりになるのが嫌なのだろうと判断する。


しかし、近くにはその雑魚と呼ばわれている当の種族であるエルフの人がいるのだ。

恐る恐るヒューゼさんの方を見てみると、苦笑いをしていた。

少し、安堵するが、それとこれとは別だ。

フードは絶対に着なければいけない。


「どうしてもこれを着ないというのか?」


「そうだ」


「そうか」


「本当にいいのか? 僕は本気を出したら何でもする男とわかってそれを言っているのか?」


「フッ。私に無理矢理そのフードを着せようとするのだな。いいだろう。本気でかかってくるが良い」


「もしも僕が『何をして』も殴りかかったり、消し飛ばしたりするなよ?」


「しないと言うとおろうだろうが。しつこい男は嫌われるぞ」


まるで僕がどんな行動をしても、目的の行動をさせないという感じの自信満々な様子であるアルジェントヴォルフ。

風に靡く髪は綺麗で、手を腰に当てて堂々としているその姿はとても美しいのだが、意地を張っている内容が稚拙過ぎるのだ。


しかし、きっとアルジェントヴォルフは僕の秘策に気が付いていないだろう。


きっと彼女は僕が無理矢理押え付けてこのフードを着せるか、そういう方向で行動すると思っているのだろう。

だが、それは僕にとっては好ましくない。

それは簡単で彼女に勝つビジョンは正直にいって見えないし、そもそもこんなエルフの里の近くで僕とアルジェントヴォルフが本気を出して闘ってしまえば尋常ではない被害が出るのは目に見えている。


ならば、どうやって彼女にフードを着せるかだ。


いや、着せるという無理矢理な感じなのがいけないのだ。

無理矢理なニュアンスを含んだ言葉だと、反抗したくなるのが、『子供』の性格である。

その『子供』とは、当然、アルジェントヴォルフである。


逆に考えるんだ。


脱がしちゃえばいいさと。



そして、僕はそのまま服を『引き裂いて』下着以外の素肌が空気中に晒される。


「ひ!?」


あまりの事態に飲み込めないのか、そのまま呆然と立ち尽くすアルジェントヴォルフ。

無い胸が地平線だった。


そして、事態を把握できたのであろう。

顔を真っ赤にしたと思った瞬間に、アルジェントヴォルフの体がぶれた。

次の瞬間に、僕の目の前に迫る拳を認識した時には既に遅く、眉間にパンチがクリティーンヒットした。

しかし、それは普通のパンチではなくアルジェントヴォルフという強力な力を持った拳である。

僕の頭は拳に触れた瞬間に、血肉さえも出ないほどの強烈な衝撃で頭が無くなった。

だが、それで僕が死ぬはずもなく一瞬だけ意識を失ったが、瞬時に頭が生え、意識を回復し一歩後ず去っただけの被害であった。


しかし、そのままでは気が済まないらしく、比喩ではなく目にも止まらない早さで細い足で上段蹴りをしてきた。

そして、その足が胸に当たる瞬間に手を交差さしてガードする。

だが、衝撃はやはり抑えきれずにそのまま数メートル後方に吹き飛ばされる。

腕も蹴りを受けた所から折れて、先端の部分がプランとぶら下がっている。


折れた部分からは、火が飛び出すような感覚に襲われ、それと同時に気が遠くなる程の痛みが襲ってきた。

しかし、それを自分自身に抑えつけ、そして腕の部分に意識を集中させる。

その瞬間に骨が再生し、筋肉が構成され、そのまま皮膚が再生し完璧に回復している。


だが、やはりというべきなのだろうか、再生は非常に激しい痛みを伴い、先程の回復を逆にしたような痛みであった。


どうにか、その痛みを押さえつけるが、眉間に皺がよっている感覚が分かった。


「其方、なななななななっ、何をするのだ!!」


顔を真っ赤にしながら手で恥部を必死に隠しながら問い詰めてきた幼女。

とても可愛い仕草だが、性的指向が刺激されるはずもない。

頭を吹き飛ばされたり、手を折られたりしたならば尚更だ。

そもそも、幼女な時点で論外だ。

僕はロリコンでは無いからな。


「あんたの裸なんて見たって誰も得なんかしねーよ」


投げやりに面倒くさそうに言った。


「人の服を引き裂いておいてその態度か!?」


すると、急に内股になったかと思いきや、そのまま黙ってしまった。

いや、これは僕の計画通りである。


すると、少しだけ沈黙した後にやっとのこと喋り出した。


「そ、そのフードを渡してくれるか?」


僕はアルジェントヴォルフにフードを渡す。

その時のアルジェントヴォルフの顔は屈辱に満ちていたのだけれども、仕方がない。

僕が悪いのではなく、目の前で着慣れないフードを着る強情な少女がいけないのである。


そして、涙目になりながらも渋々とそれを着るアルジェントヴォルフ。

少しだけ苛めすぎたというか、辱しめ過ぎたというかそんな感じがするのだが、それに対し、僕は顔と腕が犠牲になったのできっとドローだろう。


フードの大きさは丁度、膝が隠れるぐらいなので全てが隠れた。


しかし、思いの外上手くいった作戦であった。


正直に言ってしまえば、成功するかは五分五分だったのだ。

何故なら、この作戦は服を破るときにアルジェントヴォルフが僕の魔の手をよけてしまえばそれで失敗だ。

しかも、この作戦は『羞恥心があるから』成功するのであって、裸でも大丈夫であるとか、例の狼の姿のままでも良いと言われてしまえばそれでおしまいだったのである。


ふぅ、と溜息を深くつく。


なんか、色々と難しい風のことを考えてはいるのだが、それを幼女の服を脱がすという卑劣極まりない行動の思考だと考えると自分が人としてやってはいけない行動をしているのではないかと思ってしまう。


と、いうか、人としてのプライドがなんか粉々に消え去った感じがした。


しかし、過ぎたことは気にしても仕方が無いので、僕は歩みを進める。



やっぱ主人公視点おもしろいですね。

過去からだと、新しい言葉出てきたとしても説明したらネタばれていうかおかしくなるっていうか、そこらへんは文章能力なんだろうけどですね

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