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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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争い

一日ずつ更新していきましたが、二日ごとにってかんじになるかもしれません。

虫の鳴き声だけが響き渡る、夜の森の中には珍しく怒声が混じっている。


「寝ていて気付かなかった我にも問題はあるのだが、其方は全く‥‥‥」


可愛らしい擬音が付き添うな感じで怒っているアルジェントヴォルフだが、その表情には少しだけ安堵の感情が混じっているようだ。


そして、一方の怒られている青井は、相手の表情を見る余裕もなく俯いている。


少女相手にしゅんとしている大の大人というのもシュールな絵面だが、猛烈に反省していることが見てとれる。


「しかし、厄介なことになるかもしれないな‥‥‥」


「‥‥‥厄介なことってどんなことですか?」


流石に反省しているので、敬悟を使った青井だが明らかにアルジェントヴォルフに嫌な顔をされたので敬悟を使うのを止める。


「それで、厄介なことってなんだ?」


すると、又もや嫌な顔をするが、これは話さなければいけないと思ったらしく、嫌々ながら言った。


「この森には、我以外の種族も多く居住しておるから‥‥‥」


「え?マジで?」


素で驚く青井。



「え?わかっとらんかったのか?」


それを素で返すアルジェントヴォルフ。


素直に縦に頷く青井を見て、アルジェントヴォルフは額に手を当てて唸るが、説明していない自分が悪いと割りきる。

普通考えればわかることなのだが、と思わなくもないアルジェントヴォルフなのだが、そんなことを気にしていると話が進まないので無視をする。


「‥‥‥それで、この森に居住している種族は大体は我に肯定的なのだが、一つだけ勘違い甚だしい種族が我に時たまッ」



「この狼風情が調子に乗りおって!!この大木は貴様のせいだろう!!」



すると、いきなり後方のほうから怒鳴り声が聞こえたかと思うと、アルジェントヴォルフは更に深刻そうに、又は露骨に嫌な顔をする。


「はぁ、来たか。エルフの癖に癪に障る」


「エルフだと!?」


エルフと名前を聞いた瞬間に後方に振り向く青井。

やはりというか、その顔には気持ち悪い笑みが張り付いている。


そして、青井の視界に入る、美男美女。

全ての男女に共通していたのは、金髪のサラサラそうな髪に、長く特徴的な耳。

そして、やけに高慢そうな態度。



「エルフだ!!」



失礼にも指を指しながら思いっきり驚く。


そして、相手方も青井同様に驚く。


「に、人間だ!!」


だが、次に物騒な言葉が続く。


「何でこの聖域に人間が入ってきておるのだ!!撃ち殺せ!!」


「え、ちょっ!!おま!!」


静止の言葉も虚しく、数人のエルフの男女は背中に背負った弓を手馴れたように手前に持ってきて、そのまま構える。

すると、弓矢を放つ瞬間に鏃の先端に魔方陣が展開される。

魔方陣に、どんな効果が付加されているのかは分からないのだが、油断しきっている青井には避ける術がない。


そのまま弓は魔法の効果を付加されて青井に放たれる。


当然の如く、矢は青井に吸い込まれていくように全ての矢を全身に受ける。

そして、そのまま刺さった矢が爆発・・した。


そして、ばらばらの肉片と化す青井。


「ふぅ、これで話し合いが出来るなぁ。狼」


少しだけ怒気を孕んだ声で言った。


「黙っとけ、耳が長いハエのような集団が我に口を出せる立場だと思えるのか?」


そして、それに対応するかのように罵詈雑言を繰り出すアルジェントヴォルフ。


「そちらこそ。貴様の母親は脅威に値するが、貴様自体には微塵たりとも恐怖を感じたりしないぞ」


「‥‥‥貴様はどうやら、殺されたいらしいな?」


「やれるものならやればいいじゃないか?七光り風情が我らに口を出してよいと思うなよ?」


そんな今にも殺し合いが始まりそうな雰囲気であり、あたりには殺気が撒き散らされ容易に近付こうものならば失神してしまうほどの高レベルな空間である。


「あのぉ、失礼ですけれども‥‥‥」


だが、そんな空間に気の抜けた声が間に入る。

それは、エルフ側の女弓兵が放った言葉だった。

アルジェントヴォルフと話していた男の鋭い視線がその女弓兵を貫くが、そんなこと気にしないかのように言う。


「なんか、生き返っていますよぉ?」


そして、その気の抜けた声の女弓兵は青いの肉片があった場所を指していた。

そこには肉片はなく、芸術とでも言っても良い程よく鍛え抜かれている全裸の男性の姿がそこにはあった。


青井である。


一同、アルジェントヴォルフと先程の気が抜ける声の女弓兵以外、驚きを禁じ得ない。


確かに、ばらばらに爆散四散したはずである。

肉片がそこらじゅうに飛び散り、血が地面にこびり付き汚らしい汚物へと変貌したはずである。

それなのに、何故この人間は生きているのだろうか。

そういう思考が頭を支配している。


「おい、そこの人間。何故貴様は生きている」


エルフの中でリーダーらしき人物が混乱から立ち上がり話し掛けてくる。

が、やはりその目には自分より下等な生物に話し掛けているような目である。


「どうしてかと、言われましても‥‥‥」


しかし、本人自身もどうしてこうなったのかは分からないので、必然的に曖昧な返事になる。

しかも、手で股間を覆い隠そうと四苦八苦しながら応えて、まるで相手を馬鹿にしているかのような返事の仕方だ。

当然、エルフの男は青井の曖昧な返しに怒りを露にする。


「人間風情が我ら誇り高いエルフを貶したな!!全員、弓を構えよ。もう一度、肉片にしてしまえ!!」


「短気過ぎだろ!!」


すると、もう一度弓兵達が矢を引こうとするが‥‥‥。


「貴様らいい加減にせんか!!」


アルジェントヴォルフの一喝によって数旬だけ、静寂に包まれる。


「落ちぶれた貴族風情が何を偉そうに威張っておるのだ。貴様らなんか亜人の復興にすら手を貸さずにその凝り固まったプライドだけで過ごしてきたおちこぼれじゃないか?」


「我らエルフを愚弄するか!!」


「本当のことを史実のまま口に出しただけだが?貴様らなんか人間にしか需要のない性奴隷だって巷で噂だぞ?」


「貴様!!」


そして、また殺し合いが始まりそうな雰囲気が充たされる。


青井は胃が痛いと素直に思った。


「帰っていいか?」


何とも無責任な発言をせるが、アルジェントヴォルフが許すはずもない。


「其方が蒔いた火種だろう」


(その火に油をつけて炎にしたのはあんただろ)


青井はそう思ったのだが不思議なことに気付く。

アルジェントヴォルフの少々頬が赤く青井を直視していないのだ。

チラリと見て、頬を紅潮させている。


(あぁ、僕が裸だからか)


青井は気付いたが、衣服が無いのでどうしうようもないのだ。

爆散四散した際に服も汚い花火と化しているのでどうしようもない。


取り敢えず、手で恥部を隠す。


一方で、エルフ側の雰囲気は更に滅法悪くなる。


「貴様らふざけているのか!!」


すると、本当に面倒臭そうに汚物のようなものを見る視線でエルフたちを見るアルジェントヴォルフ。


「双方、一旦落ち着きなさい」


そして、エルフ側のリーダーらしき男が出てきた。一旦深呼吸をして冷静になる。


「取り敢えず、この大木はどうしてくれるのだ?」


どうやら相手方もある程度頭が冷えたらしく、挑発合戦から本題に入るようだ。


「狼。貴様がこの大木を生やしたのだろう?」


どうやら、エルフ達はこの大木は狼、つまりはアルジェントヴォルフのせいだと思い乗り込んできたらしい。

自信ありげに言っている姿にアルジェントヴォルフは癪に障る。


「我ではないぞ」


本当に面倒臭そうに言った。


一瞬、目が点になるエルフたちであるがざわざわと後ろの弓兵がざわついている。


「こやつがやったのだ。我ではないぞ?そもそもなんで我がこんな大木を生やさねばならぬのだ」


アルジェントヴォルフが指を差したのは、当然の如く青井の方である。


「そ、そんなことあるわけなかろうが!!」


狼狽しながら、まるで有り得ないことを目前としたような表情をする。

周りのエルフ一同も同じような顔をしていた。


一同の考えは一致して、人間にそんなことができるわけがない、というものであるからである。


そんな思考に至ったのは何せエルフだからというわけでもない。

人間自身だってそう思うだろう。


何せ人間の魔力の量『魔力保有量』が圧倒的に少ないのである。


その少なさは折り紙つきで、エルフ達の平均の魔力保有量と比べても十分の一であり、碌な魔法さえも使えない人間が多いからである。

しかし、魔法の才があるものには神から愛されているおかげなのだろうか、魔力保有量が多い。


故に、エルフはアルジェントヴォルフがやったのではないかという、一般的に正しい見解を示したのである。


ついでに言っておくと、こんな大きな大木を生やすのにはエルフでも魔力保有量ギリギリなのだ。


しかし、リーダーらしき男は思案顔になっている。

そのことに青井は少々訝しむとリーダーらしき人物はこう問いだたしてきた。


「貴様。本当に人間なのか?」


なぜそんなこともわからんのだ、とでも言いたげな表情でエルフのリーダーらしき人物を見下すアルジェントヴォルフ。


「いやぁー、自分でもわからないんだなこれが」


アルジェントヴォルフにしたような返事をする。


「こやつにそんなことを聞いても無駄だぞ。何せ記憶喪失だからな」


初めて聞く設定に、驚愕の表情を浮かべながらアルジェントヴォルフに体を振り返らせる。

そして、こんなこと聞いていないぞ、と言いたげな視線をアルジェントヴォルフに送る。

アルジェントヴォルフも、話を合わせろと視線で送る。

それを理解し戸惑いつつも納得した青井は話を合わせようと決意する。


「‥‥‥本当なのか」


リーダーらしき男が聞いてくるので、記憶喪失設定に便乗する。


「あぁ、気付いたらここで寝ていたんだ。名前以外に思い出せるものはないし、自分がどんな種族なのかもわからない。容姿が一番近いという意味で『人間』を名乗っているが多分違うんだろうな」


視線だけアルジェントヴォルフの方に向け、どういう反応をしているのか確認する。

青いの裸を見ないように視線をずらしながらも、満足そうに頷いていた。


だが、リーダーらしき男は眉間に皺を寄せて思案顔になっていた。

ばれてしまったかと思い内心おっかなびっくりである。

リーダらしき男は考える。


まずは、青井の姿そのものについてだ。

姿はどこからどう見ても人間である。

そして、先ほどの弓矢を放った瞬間を思い出す。

ちゃんと、弓矢は対象物に当たり、目の前の男は肉片と化したはずである。

生き返る姿は見ていないのだが、死んでいる姿ははっきりとこの目に焼き付けた。

彼は、驚くべきことに『不死性』があるのかもしれない。

もう一つはこの大木を生やす多大なる魔力。

人間の魔力では到底、生やせるはずのない大木である。

これに関しては信憑性が低いので何とも言えない。


リーダーらしき男は考える。


そして、暫く考えた末に結論を出した。


「‥‥‥そうか。いや、すまないな。いきなり見た目だけで手を出してしまって申し訳ないと思っている。謝っただけでは許されないだろう」


青井はこんなことは予想できていなかった。

なんだか、エルフの偏見で頑なに自分の主張を曲げないと頑固者であるといものがあったからだ。

だが、予想外は予想外だが、良い意味で予想外である。


「そーだ、そーだ」


途中で茶化すアルジェントヴォルフ。

リーダーらしき男は軽く舌打ちをするが、青井に向き合う。


「謝礼に、とはなんだが我らエルフの里に招待しよう」


「え?」


「我も行くぞ」


「ッチ、狼。暴れるなよ?」


「ふ、我は貴様らと違いいきなり矢を放ったりしないからな。しかも、我は仕方なく、心細い青井の為に仕方なく行くだけだぞ?」


アルジェントヴォルフの尾が激しく左右に振っているのだが、誰もが注意はしない。


「え?」


とんとん拍子で青井の意思関係なしでエルフの里に行くことに決定したらしい。


「ちょっと!!僕まだ裸なんだが!!」



アルジェントヴォルフは、好みのヒロインにしていきたいと思います。


感想もよろしくお願いしまう

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