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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
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魔法書

ギャップ萌えっていいっすよね。

あと、総ポイント100pt越えましたね。やった!!

約数万冊の魔道書が本棚に整頓されている空間には静寂な雰囲気が漂っている。

色とりどりのレパートリーがあり、勉学用の魔法や、生活に役立つ魔法書など、様々である。

だが、この館の持ち主ですらほとんどの本を把握出来ていない。

それ故に、現舘主のために先代館主がそれ用に察知魔法を構築したほどだ。


そして、その察知魔法で作った蔵書保管庫の地図を持った青井が梯子で四苦八苦していた。


「やべッ。本が落ちる!!」


そう言って片手を梯子から離し落ちそうになった本を片手でしっかりと掴む。

だが、その際に梯子を掴んでいた片方の手が滑り両手が離れる状態になる。

思わず声に出ない悲鳴を心の中で上げるが、瞬時的に梯子の踏面に足を絡めてぶら下がることに成功し、難を逃れる。


(これじゃあ、命がいくつあっても足りないんじゃないのか?)


と、冷や汗を掻きながらだらしなく片方の手に地図ともう片方の手に本を持った両手を万歳しながらそんなことを考える青井。

普通の図書館の梯子ならばこうは思わないが、こちらの蔵書保管室はひと味違う。

今、青井がぶら下がっている梯子の高さは床に対して約15mであり、ビルの三階に匹敵する高さである。

先程のように、青井のように頭から落ちたとすれば、大惨事は回避できないだろう。


(まぁ、落ちても死なないだろうけど‥‥‥‥)


だが、青井には驚異的な回復力があるので落ちても死なないが、痛覚は人並みだし精神力も人並みだと自負しているので、痛い目に遭いたくはないのだ。

今日中に何度か死ぬぐらいの怪我を既にしているので、もうお腹一杯であるのだ。


ふっと軽い掛け声をして反動をつけて元の体制に戻る。

木製の梯子なので、反動をつけると軋むが不安がる程には軋まない。

これが、数百年以上経っている梯子だと思うと信じれない、というのが青井の感想だ。

梯子に限ったことではなく、本の保存状態もそうだ。

紙も黄ばんでも、虫に食われているわけでもない。

本の表紙の文字や装飾だってこんな風に雑に置いてあれ、まずは表紙の金色で装飾されている部分が削れて無くなるはずだ。

なのに金文字は愚か背文字すら裸なのに劣化している様子は見られない。


(魔法って凄いな‥‥‥)


改めて感心する青井だった。


先ほどのように本や地図を落とさないように四苦八苦しながら梯子を降りる。


(これで、アルジェントヴォルフが言っていた本の全てを取りに行ったわけだが。‥‥‥ものすごい量だな)


そう思い分厚い魔法書を見る。

アルジェントヴォルフが指定した本は全て、基礎を固めるために必要なのだが、その魔法書は一冊一冊が辞書並みの分厚さなのである。

並みの人であれば、基礎を10年間学びそれから応用やら何やら手を広めていく。

しかし、この10年とは上手くいった場合の想定した時間であり、魔法のセンスのない者にはもっと多くの時間を必要とする。

アルジェントヴォルフも長期間の勝負であると自覚はしていた。


まずは、『考えるんじゃない、感じるんだ~基礎魔法編~』という如何にも現実世界でありそうなタイトルの魔法書を開く。

考えるんじゃない、と言っているが字が米粒のように小さな字である。

感じさせろよ、と内心愚痴を言う。


(取り敢えず、この本を全部読もう)


そう思い、ページを開いた。


~5時間後~


「あー!!やっと読み終わった」


そうぐたりと机に突っ伏す青井。

久々の分厚い硬派な本に精神を集中していたせいか、肩が凝っている感覚がした。

実際は凝っていないのだが、思い込みというのはそういうふうに人に解釈させる。

肩を回しながら脳内で、この本で学んだ内容を復習する。


この『考えるんじゃない、感じるんだ~基礎魔法編~』には、魔法陣の種類のことは一切書いておらず、魔力とはどういうものなのか、魔法を発動させるメカニズム、等のこの世の中での常識的なものに重点を置いており、本当のところで基礎編というのだ。


まずは、魔力。

これは魔法の他にも魔道具に必要なエネルギーである。

この世界の大気には魔力の元となる魔力粒子というのが含まれており、各人々の魂によって人が宿す魔力の量が決定するらしい。

つまりは、生まれた時点で魔力の量が決定する、ということである。

例外として、後に説明するが、その宗教の主神又は、その他を司る神々からの御加護を受けることによって、魔力が増加したりする。

魔力は、普段は目に見えぬ物体であり、術式という媒介を介することによりその姿を表す。

と、言うことが言い回しがキツめに書いてあった。


そして、宗教と術式についてだが、宗教は簡単に言ってしまえば、ゲルド教、ドゥドリア教、ベグラリア教、と三大宗教がある。

これらは先ほどの御加護の説明のように、三大宗教の中にはそれぞれ主審がいて、選ばれし信者にはご加護を受けられるらしい。

そして、その宗教を信仰することによって、宗教ごとに固定魔法というのが使えるらしい。

無宗教である青井にはあまり関心の無いものであった。


術式については、音声術式と筆記術式と二つある。

音声術式は声に出して、魔力を操る方法である。

大気に存在する魔力粒子を特定の言葉で震わせることにより、体内の魔力と共鳴を起こして魔法を起こす、というメカニズムだ。

利点は短い呪文を言うだけで、魔法を扱えることにある。

だが、難点は多くあり、まずは威力の調整ができないことだ。

簡単に言ってしまえば、安定した魔法だが、それだけで応用にも使えないということだ。

更には声に出している時に、居場所やどんな魔法を扱うのかもバレてしまう。

だが、大体の魔法使いは音声術式を使用している。


もうひとつの筆記術式は音声術式よりかはメジャーではないが、魔法使いのトップランカーの人々は多く使っている術式である。

これは、難易度が音声術式よりも遥かに高く、それ故に本当に才能があるものしか扱えない。

なぜならば、暗記力と魔力を感知する力が試されるからだ。

筆記魔法は、術式、つまりは魔法陣を暗記しなければいけない。

六芒星から元なる攻撃や防御に特化した戦闘魔法。

五芒星から元なる身体やモノに、能力を付加する補助魔法。

これらの二つに大きく分ければ分類ができる。


しかし、魔法陣はそんな単純なものではなく、魔法を包み込むという意味の円と、魔法効果を左右する六芒星か五芒星。それから、様々な文書を書き込まなければいけない。

それ故に、そのまま暗記することは難しい。


そして、もう一つの難題が、魔力描写である。

魔力描写とは、魔力で魔法陣などを描くことを言うのだが、これは完璧に才能が左右するものである。

これに対しては、魔力を感知する能力と魔力を操る能力の二つが必要なのだが、これは完璧に才能であり、故にトップランカーと言われるモノの中には天才が多い。

故に、人を選ぶタイプなのだが、それ故に有能な術式でもある。

まずは、魔法陣を一定のパターンに書き換えることで威力の調整ができる。

それに、魔力の量でも威力に差異が出てくる場合もある。

詠唱時間も省略できるし、魔法を発動する際に、魔法陣を見ても対応がしにくい等の様々な利点がある。


と、こんな感じに概要をまとめた本であった。


しかし、これらは4分の3ぐらいのページであり、残りの4分の1のページには考えるんじゃない、感じるんだと名のつくように、魔力の感知の仕方が載っていた。


読みすすめているとこんな注意書きもしてあった。


『屋内で絶対にしないでください!!』


取り敢えず試してみるかと、青井は本をもって外に出ようとする。

だが、アルジェントヴォルフに一声掛けていった方が良いのだろうか、とそんなことを思い声を掛ける。


「少しだけ外に出掛けてもいいか!!」


少し大きめの声で呼びかけたが返事がない。

何処かで、本でも読んでいるのだろうか、とそう思いアルジェントヴォルフの姿を捜す。

だが、ものの数分で見つかった。


テーブルと椅子が備え付けられているスペースに本の上に寝息を起てながら寝ている。

その姿はとても微笑ましく、子供を持ってもおかしくない年齢の青井はその姿に微笑む。

そして、興味本位で何を読んでいるのかも気になり、マナー違反だが少しだけチラ見をした。


『魔法を教える際には、感覚を研ぎ澄ませることに集中させましょう。世間話をして緊張している生徒の緊張を解しましょう』

と書いてあった。


つまりは、アルジェントヴォルフは青井がつまづいた時のために、自分自らも魔法を教える勉強をしていたのだ。

それを把握した青井はおかしくなって笑いそうになるが、堪える。


(見た目相応なのかもしれないな)


適当に見回して、丁度ブランケットらしきものが机の上に少々乱雑に置いてあったので、それをアルジェントヴォルフの肩に掛ける。


「ありがとな」


そう呟いて、青井は蔵書保管室を後にした。



多分、あと数話で森を出ます。


感想とかもよろしくお願いします。


追記:誤字を訂正しました。

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