激闘
初めてまともに戦闘シーンを書きました。どでしょうかね?
お互いに距離を牽制するアルジェントヴォルフと青井。
青井は混乱しつつも戦闘体制に入っている。
アルジェントヴォルフは鋭い殺気を青井に向けて放ち唸っている。
青井は上手く足が動かない。
初めて自分に当てられた強い殺気に怯えてしまっているのだ。
まるで、首に刃物を突き付けられた緊張感が体を硬直させる。
正に蛇に睨まれた蛙である。
ゆっくりとした時間が流れるなかで、時間は急速に流れ出す。
アルジェントヴォルフの姿がぶれて消える。
いや、アルジェントヴォルフが自分の背後に高速移動したのだ。。
青井は状況を把握できていない。
いや、そもそも出来なかった。
自分の右腕が千切れていることすらもである。
余りにも速い速度に驚く間もなく、次の瞬間に腕が千切れたことによる激痛が体を襲う。
気が遠くなりかけるが、歯を食い縛りどうにか意識を保たせる。
やはり二回即死級の重症を経験しているので腕が千切れた程度の痛みには耐えられるようになったようだ。
だからといって混乱しないわけではない。
(クソ!!どうするか。このままでは喰われるのは時間の問題だ。だからと言って、逃げられるほど僕の足が速いわけでも、あいつが遅いわけでもない)
そうして、改めて実感する。
(つまりは‥‥‥‥闘うしかないってことか)
そして、アルジェントヴォルフに向き合う。
どうやら、決心が着くまで御丁寧に待ってくれていたらしい。
アルジェントヴォルフは少しだけ見直した。
取り敢えず、千切られた右腕に意識を集中させる。
もしかして、損傷した部位に意識を集中することで、右腕が元に戻るのではないかという目論見だった。
そして、結果は成功し右腕は骨と筋肉が同時に再生した。
だが、予想外だったのは右腕が元に戻るときも激しい痛みを生じることだったが。
「ああぁぁああああああああああああ」
二回目の激痛に思わずよろける青井だったが、そんなことで気絶するわけにもいかずに叫びながらその場で踏ん張ることで耐えることに成功する。
そして、深呼吸をして気分を落ち着かせる。
『ふむ、もう始めてよろしいかな?』
「大丈夫だ」
端的に返す。
それは既に目の前の強大な敵に意識を集中させている証しでもあった。
そして、青井は一歩を思いっきり踏み込む。
それと同時に足元で爆発が起こるが、集中しきった青井には気付かない。
驚異のスピードでアルジェントヴォルフの懐に潜り込み衝撃波を起こすほどの破壊力を秘めた拳を腹に叩き込もうとする。
しかし、アルジェントヴォルフが高く跳躍することで、空振りしてしまう。
が、それを青井はよしとしない。
鳥以外の動物は基本的に宙に浮いている状態ならば、向きを変えることすら叶わない。
それを見越して、青井はそこら辺に落ちている小石を掴み、アルジェントヴォルフが跳んでいる少し前にピッチャーが投げるようなフォームをして小石を投げた。
これで運良く当たれば、と思っていたが予想外の事態が起こりアルジェントヴォルフに青井が投げた小石は命中しなかった。
青井の狙いが悪く命中しなかった訳ではない。
青井が投げた小石は空中で明るく光、塵と化した。
(‥‥‥まじかよ)
自分の力の強さに呆れるが、逆にこの力に頼もしさを見出だしたには言うまでもない。
だが、力加減をすれば自壊はしないだろうと思い、もう1つ小石を拾うが、既にアルジェントヴォルフは地面に着地していた。
仕方がないので、力加減をして小石を投げる。
先程のように自壊はしなかったが、アルジェントヴォルフには避けられてしまった。
そして、先程と同じようにぶれて姿が消えた。
次の瞬間だろうか。
目の前に大きく開かれた口があった。
鋭い牙が自分を貫こうとしている。
そして、顔にそのまま噛み千切らんとする鋭い刃。
だが、青井はほぼ紙一重で反応し、噛み付かんとする上顎と下顎を手で抑えだ。
だが、その際に上顎の牙と下顎の牙が押さえている掌を貫いていた。
掌から溢れだす血の量に驚くが、それ以上に掌を貫かれた痛みが意識を支配しそうになる。
が
(いてぇ‥‥‥けど!!)
そのままただ単に抑えていただけの手を、今度は上顎と下顎をしっかりと握るようにする。
アルジェントヴォルフの牙は更に深く青井の掌を穿つが、青井は我慢する。
叫びたいし手を離したい。
だが、その先に待っているのは地獄だ。
今感じているよりも更に痛いかもしれない。
そんな、未来の光景が見えるのだ。
(痛いのは御免だけどなぁ‥‥‥)
掴んでいる上顎と下顎を自分の方に引き寄せて、そのまま力任せに強引に上の方へ投げ飛ばす。
「死ぬほど痛いのは、もっと御免なんだよ!!」
そのまま青井は高く跳躍し、アルジェントヴォルフに対して思いっきり蹴る。
別にどこに当たっても良い。
この体には強大な力を宿っていることは分かっている。
アルジェントヴォルフも自分のパンチを避けたのは、アルジェントヴォルフ自身がこのパンチを脅威だと感じたからだ。
ならば、凶器で体のどこかを攻撃すれば必ずダメージが入る。
青井は別に、一撃必殺を目指している訳ではない。
散々殺られているので、取り敢えず青井はアルジェントヴォルフに一子報いたい、という一心なのだ。
「オォラァア!!」
そして、慣れない空中での操作に四苦八苦しながら、そのまま無我夢中で銀色の毛を赤く染めることだけに意識を集中させ、蹴りを入れる。
そして、運が良かったのかそのまま腹に蹴りが入る‥‥‥が。
「いてぇ!!」
しかし、まるで鋼鉄を蹴っている感覚を感じる。
自分の足を見てみると、衝撃に耐えきれずに、蹴った右足の脛が横から四分の三削れていた。
そして、アルジェントヴォルフの方を見ると白と六芒星を基調とした魔方陣が展開されているのを見た。
(そんなのありかよ‥‥‥)
右足が激しく損処したせいで、青井は空中でバランスをとれずに、そのまま重力にしたがい地面に落ち始める。
アルジェントヴォルフが青井をその鋭い瞳で見ているのを最後に、青井は意識を失った。
頑張りました。