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終章
あのあと、入樹は逮捕された。
でも、それだけだ。
最終的には、彼女が殺された、という事実しかない。
事件なんてそんなもんだ。
結局、探偵なんて職業は、終わったものをさらに終わらせる空虚な仕事だ。
僕のやっていることには、意味なんてないのかもしれない。
でも、それでも僕は、事件を終わらせ続ける。
愛とか憎しみとかいうくだらないことで殺された人たちが、少しでも報われるように。
その日、僕は先輩のうちにまた泊まりに行った。
相棒である彼女。なんでもない、普通な彼女。
その存在が、僕にはいい安定剤になるのだ。
こういう、普通な人たちを救えるように、頑張ろうって。
間違ってるかもしれないけど。
自己満足かもしれないけれど。
僕は、探偵を、続けていこう、と。
そう、思える。
彼女は死んでしまった。
そして。
僕は、少しだけ、泣いた。