表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

全ての始まり

どうもこんにちは、相当久しぶりの投稿になります。爽です。

修行してきました!……なんて事は全然ないです。

とりあえず自分のダメさ加減が分かっただけ。

ファンタジー初挑戦です。拙い文章でまだまだですが、読んでくださると嬉しいです。

誤字脱字、感想などがありましたらどうかよろしくお願いします。

 昔々、まだ魔法が一部の人間には使えていた時代。

 ある一人の魔法使いがいました。

 その魔法使いは、他の誰にも使えない魔法が使えました。

 魔法使いの能力は「物質に意識を持たせる」という能力でした。そのあたりに咲く花、道端の石ころ、料理に使う鍋、日常生活の周りにある、ありとあらゆるものに意思を持たせ人と会話する事ができる。そういうものでした。

 しかし珍しいとはいえ必要な能力かどうかといえば、微妙な力でした。

 例えば落とし物があったら、その物自体に落とし主を尋ねるとか。物騒な話でいうのなら、人が殺されたら凶器に使われたナイフに犯人を尋ねるとか。そういった使い道はあるにはあったのですが、あまりその魔法の使いどころはありませんでした。


 そんな能力があったからでしょう。魔法使いはとても優しい人でした。物を大切にし、勿論人にも優しく接する。決して目立つことはなくとも地道に生きる。そんな性格でした。


 ある日、その魔法使いは政府の機関に勤めている知り合いに妙な事を言われました。


「その能力で、憲法に意思を持たせるとかできないのか?」


 何故、知り合いがそのような話を持ち出してきたのか。魔法使いは疑問に思いました。尋ねてみると、知り合いは只の好奇心で言ってみたようでした。

 憲法のような、ハッキリとした形がないものにも、意思を持たせることができるのか。もし意思を持ったとしたら、どんな事を言うのか。

 ただの、思い付きだったのです。

 魔法使いも少し興味が湧き「じゃあ、やってみよう」と言ってしまいました。


 憲法は、分厚い一冊の本に記されていました。ある日、知り合いがその本を魔法使いの前へ持って来ました。魔法使いが本に手を触れてブツブツと呪文を唱えると、青い光が本を包みました。

 そこまではいつも通りです。ですが次の瞬間、本が勢いよく開き中から光に包まれた女の子が一人出てきました。水色の綺麗な髪、白いワンピース、女の子は眠っているかのように瞼を閉じていました。

 魔法使いもその友達も驚き、その話に興味を持って周りから様子を見守っていた数人も戸惑っているようでした。

 その女の子は、只の女の子ではありませんでした。憲法に書かれている事なら忠実に従う、まさに『憲法』そのものでした。魔法使いは、どういう訳かその時憲法にただ「意識を与える」のではなく「人という器」も与えてしまったのです。

 とりあえず眠ったままの少女を部屋に寝かせ、どうするか話し合うことになりました。ほんの、ちょっとした実験のようなものだったのに。こんな事になるとは誰も思いもしなかったのです。

 魔法使いは、倒れてしまいました。理由は分かりませんが、魔法使いの本来ある能力以上の魔力を消費してしまい、自らの体力を削ってしまったのです。


 そして、偉い人たちは気付いたのです。憲法とは国の動きの大本を決めるもの。当時、その国は軍国主義でした。もちろん、憲法の内容もそれに沿ったもの。魔法によって人の形を得た憲法はそういった戦闘向きの思想を持つ者なのではないかと。

 早速調べてみたところ憲法は、憲法に記されたものと同じ思想を持ち尚且つ高い戦闘能力を有しているという事が分かりました。


 そこからのその国の行動は、破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊。破壊行動のみ。


 憲法は、意思を持っても感情を持ったわけではなく、何をするにも何の躊躇もしませんでした。小柄で幼い少女の姿で、自分の何倍もある大きさの兵器を相手にし、何百もの魔法使いを相手にし、大勢の人を存在ごと消し去り、苦戦していたその国の状況は一気に変化しました。

 止めれる事など、できませんでした。人を消し、街を滅ぼし、国を滅ぼし、何も感じない。憲法は只の「破壊兵器」とさえ称されました。

 唯一、憲法を止められる可能性だった魔法使いは、殺されました。自らの魔法によって人と化した憲法の手で。


 しかし、結局戦争はその国の敗北によって幕を閉じます。

 憲法が、破壊行動を止めてしまったからです。憲法は『感情』を持ってしまいました。多くの人を相手にし、多くの人を殺していくうちに、歪んだ形とはいえ人と関わるうちに、憲法は自分の行動がどういうものなのか知ってしまい、心を持ってしまい、破壊行動ができなくなりました。


 憲法の力に頼り、兵力や兵器の開発といったものが後退していた国。要であった憲法が戦えなくなった事により、すぐに攻め落とされました。そして、その破壊の国の頂点に立ったのは憲法を使うことに反対し、革命を起こした人々でした。

 何かを見失った国にも、そういう人々はいたのです。憲法の行動をよしとしない人が。

 憲法から人という器を取り除く方法は、魔法をかけた魔法使いが死んでしまい分からず仕舞い。そこで、その国は他国と約束をしました。「軍国主義の憲法はつくらない」と。

 そうすることで、今回のような事態を防ごうという事になったのです。


 それ以来、その国は平和主義となり、平穏で落ち着いた生活を国民は送っています。 


***


 小さな狭い書庫室のような所にいる一人の青年が、古ぼけた薄い本を閉じた。その本は、この国の童話が幾つか記されたものである。しかし、数ある童話のうち一つだけ明らかに童話とも小説ともいえない、なんとも微妙な短い話があった。

 青年は溜息をつきながら本を本棚へ戻す。

 ポケットに手をつっこみ、だらしないスーツ姿の青年はしばらくじっと本棚を見つめていたが、やがてゆったりとした動作で書庫室を後にした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ