表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/82

第82話-信士という名前-


“お前は成宮さんに逆らった”


“お前は、Crowの元幹部なんだからな!!”


怖い。嫌だ。ぼくは悪人だ。ぼくは今まで、みんなを裏切ってきたんだ。


ベットの端、信士は小さくなり、うずくまっていた。


もう、誰も近寄らないで欲しい。誰もぼくに関わらないで。ぼくは悪い人間。


「信士君、入るぞ」


ドアの向こう側から鈴木先生の声が聞こえた。この声に信士はいつもびくりとしてしまう。


返事をする前にドアが開く。ドアが開くとそこには最も会いたくない人達がいた。


「来ないで!!」


立ち止まる、浩太と詩織。しかし、すぐに病室に足を踏み入れてきた。


「大丈夫…大丈夫だよ。信士」


詩織はなだめるように言う。そのまま近づいてくる2人に。


「近づいちゃ駄目なんだ!!」


信士は近くにあった、枕を2人に投げつける。枕は2人のすぐ足下に強く投げつけられた。


「来るな!!ぼくは悪人なんだ。みんなと一緒にいちゃいけない人間なんだよ!!」


泣きながら激しく2人が近づくことを避ける。


そんな信士に詩織は突然走って駆け寄り、荒れる信士の肩を優しく抱きしめた。


「大丈夫って言ってんでしょ!信士はそんな人じゃない。大丈夫。私が保証する!!」


「でも…記憶の中でぼくは、逆らったって…」


その瞬間、

「鈴木先生!Crowが嘘を認めたそうです!!」

病室に息を切らして駆け込んできた、警官は喜びの声を上げた。


「伊達さんが、成宮に吐かせたって…」


その声に詩織は、

「信士!やっぱり、信士は悪人なんかじゃなかったんだよ!!」


「ぼくは…うぅっ!!」


“お前は成宮さんに逆らった”


また…記憶が…。


“お前、今までのこと見てただろ”

“…おい、選択肢を与えてやる。死にたくなければ、これからは俺達の奴隷となって働き続けろ”

『いやだ!!』

“ほう…”


“お前は成宮さんに逆らった。死ね”


そうか…ぼくは…。


「信士!大丈夫?」


ぼくは、間違ってなかったんだ。


「ありがとう…」


そのまま、信士は気を失ってしまったのだった…。




ガラッ

ドアの開く音。足跡が近づいてくる。目が霞んでよく見えない。誰だろう。


「信士。よく頑張ったな。今まで、助けてやれなくて悪かった」


この声。なんだろう。どこかで聞いたことあるような…。


「ひとつだけお前に教えておきたいことがあるんだ」


「信士っていう名前の『信』って字。これにはいろんな意味があるんだ」


「人を信じられるように。人に信じてもらえるように。そして、最後に…自分を信じることができるように」


「大丈夫。お前は正しい。だから、これからは自分のことを信じて自信をもって生きろ」


「じゃあな…」


父さん…。顔は見えなかったけど、確かに父さんだ。


足音が遠くなってく…。でも、眠いよ…。


大晦日の夜。年が明ける。そして、この年明けが新たな始まりだった―。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ