第80話-大人なんて…-
はぁ?
理解できなかった。正義であるはずの警察が信じてくれない。そんなこと、あっていいのか。
「信士が疑われてるって、ことですか?」
表情ではよくわからないが明らかにトーンの低くなった声で聞く詩織。
「と言っても、一部だけらしいけどね。大丈夫。証拠が見つかれば、ちゃんと証明されるよ…」
「証明されたって、信士の心の傷は…」
「ぼくは、Crowの仲間じゃなかったことが証明されれば精神的なことは治せると思って…」
「それじゃ、遅いんだ!!」
急に立ち上がり、声を荒げる浩太。
「信士は今、一分…一秒も無駄に出来ないんです!それを悠長に証明されるのを待ってろなんて、無理です!!お願いです…信士に会わせて下さい!」
…どいつもこいつも腐った奴らばっかだ。
取り調べ室の椅子に座り、大人達の言う訳の分からない正義を聞き流しながら、成宮は思う。
大人なんてのはいつもそう。自分のいいように話をつくり、子供の話は聞こうともしない。馬鹿ばっかりだ。
そう、あの日オレを捨てた、あいつらと同じ。
親に捨てられた…。あの、感覚は誰にも知り得ない。恐怖。怒り。そんな言葉じゃ表すことはできないほどの感情。
だから決めた。必ず、大人達に復讐してやると。そして、同じ思いをもつ学生達を集った。同じ思いをもつ学生達はたくさんいた。
それからは勝手に増え続け、更に大人への嫌悪感は増した。増え続けたグループはそのうち、周りから『Crow』と、言われるようになった。
だが、さずかに学生だけの力では無理。だから、大型の暴力団に話をしたりして勢力をましたりもした。
そうやって、ここまでやってきたんだ。それなのに…あの男が現れたせいで…。
Eagle…。あいつはある日、急に現れ本名もケータイ番号も誰にも教えずにその高度すぎる頭脳で作戦を幾度も考え成功させ、あっという間に周りから支持を得ていった。
すべてはあいつをほうって起きすぎたオレのミス。
あいつは最初から自分のグループを造るつもりだったんだ。オレはそのための捨て石。
すべて、あいつの計算通りだったんだ。
しかし、オレはあいつのことについて喋る気はない。
『捕まっても、なにも語るな』
この決まりはCrow全員の決まり。全員、思いが強い分、だれも決まりは破らない。
Crowは終わるが、大人への復讐は終わらない。最後の最後まで苦しめてやる。あの伊達正信の息子を使って…。
それをどいつもこいつも信じ始める。
馬鹿どもが。
と、そこに。
扉を開き、入ってきたのは、
「失礼します」
…伊達正信。
「取り調べ、代わります」
「…でも、あなたは……」
「大丈夫です」
「…わ、分かった」
立ち上がり、出て行く、警官達。そして、伊達は座り、話始めた。
「やぁ」