第76話-帰ってきた伝説-
「今度こそ、Crowを捉える準備を…」
突然戻ってきた、伊達正信。信士が沼に落とされた時に助けた人物であり、Crowを追う上でいつでも最前線にいた。
しかし、このことにより常に危ない立場になり、ひとりで独自にCrowを追っていた。
「さっきの作戦の様子見させていただきました。なにをふざけているんですか?」
「あんなあからさまに逆をつかれて、いい加減にしてください」
「次…いや、最後のチャンス。これをものに出来ないなら警察は名だけのものです…」
その場にいた全員に向けて喋る正信。
この言葉により一人一人の顔が引き締まったように見える。
さすがだな…。
市原は感心するしかない。息子があんな状況にあったのに、やつらのあとを追い、戻ってくる冷静さ。
やはり、他のやつらとは違う。
「やつらのアジトと思われる場所は…」
頼もしい。
プルルルル…プルルルル…。ピッ!
“もしもし…Eagleです…”
「あぁ、Eagleか…公衆電話からとは相変わらず堅いな」
“伊達信士は…?”
「お前に言われたようにして生かしておいた…。本当にこれでいいんだな?」
この時、Eagleが口元に軽い笑みを浮かべたのを電話越しの成宮が知るはずがない。
“そうですか…。成宮さん。今までありがとうございました”
「……?急になんだ」
“いえ…、多分成宮さんと話すのはこれで最後だと思うので”
ガチャン!
プー…プー…
電話は突然切られた。
最後…?まさか!?
「突撃!!」
沢山の警官達に既に囲まれていたことに気づかなかった、Crow。
倉庫になだれ込んでくる警察官の前に成す術もない。
クソ…。なんでだ。何故、場所が分かった?いや、それ以前にEagel…。あいつは最初からこれが狙いで…。はめられた…。
「ちくしょおぉぉ!!」
「先生!信士は!?」
気を失った状態で救出された信士はそのまま病院に運ばれていた。
「特に傷もありませんし、大丈夫ですよ。そのうち目を覚ますと思います」
答える鈴木先生。信士の母、久美子はほっと胸をなで下ろす。
「…ありがとうございます……」
「それでは…、今日は夜遅いですから帰って下さい。信士君は大丈夫です。」
「…はい、ありがとうございます」
軽く会釈をし、帰っていく久美子。その姿を見送り、鈴木はもう一度、信士のいる病院に入ってみる。
と、信士の姿を見た鈴木は驚いた。信士は既に目を覚ましていたのだ。
「大丈夫かい?信士君」
軽く声をかけてみる。そして、鈴木が近づこうとしたそのとき、
「…こ、こないで……それ以上、近づかないで!!」
目から涙を流し、怯えるように信士は震えていた。