第75話-嘘だ-
「どうなってるんだ…」
ここは警察署。この警察署では慌ただしく警察官が出入りしていた。
公園でCrowを一網打尽にする、はずだった今回の作戦。
しかし、その作戦は公園に送る途中の車を人気のない道で人数のほとんどを使って襲うという大胆な作戦によって…。
人数が少なかった護送部隊は、伊達信士はさらわれてしまった上に…伊達信士を守ろうとした永井刑事は意識不明の重体…。
最悪の結果だった。
警察署の中で一番、頭を痛くしていたのは警察署所長の市原。
まさか、学生どもにこんな敗北を喫するとは…また、やつらを捕まえるチャンスを逃してしまった。
これは警察署にとって大きな痛手であった。
「なんで…なんで…」
もう、警察にくってかかるのも疲れ果ててしまった、信士の母、久美子は泣きながら、しゃがみこんでしまっている。
Crowはどこに逃げたか分からない。
もう、あの少年は諦めるしかない。誰もがそう思ったとき、
警察署にあの人物が現れた。
「あ、あなたは……」
なんだ…?ここは…。
連れてこられたのは薄暗い倉庫。周りには多くの男達。
あぁ…ここで、ぼくは死ぬんだ…。
まだ、なんにも成し遂げてないのにな…。
「おい」
大勢の中の1人に声をかけられた。
怯えながらも視線を返す信士。
「お前は、記憶を失ってるんだってな。じゃあ、あの日のことは覚えてないんだな?」
小さく頷く信士。
この人物が成宮…?
そんなことを思いながらも必死にその日のことを思いだそうとする。
その瞬間、目の前に銃が向けられた。
終わる…。
しかし、銃はすぐに下げられ、
「なんてな、安心しろ。殺しはしねぇよ」
「!?」
「ただし、記憶を取り戻すまでは、こっちで拉致させてもらう」
助かった…?でも、なんで?思い出されるのはこの人達にとってまずいはず。
「お前を殺すのは惜しいからなぁ」
「なんたってお前は、Crowの元幹部なんだからな!」
「!」
嘘…だろ。まさか…そんなわけは…。
“お前は成宮さんに逆らった”
逆らったって、まさか…。
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
そんなの…。
「嘘だ…嘘だ…」
いきなり様子が急変した信士。よほど、ショックな様子。
「本当だ」
冷たく言い放たれた瞬間、信士はあまりのショックにより気を失っていた…。
「あ、あなたは、伊達さん!!」
1人の警官が言った先にはCrowについて追っていたはずの信士の実の父、伊達正信がいた。
「もう、やつらの足取りは掴んであります。急いで準備お願いします」
「今度こそ、Crowを捉える準備を…」