第65話-許さない-
「…Go to hell!(くたばれ!)」
えっ?
凄い速さで伸びてきたノエルの足。走ることに必死だった信士は前に倒れる。
「コウカイすんナヨ」こうゆう意味だったのか。体が地面に吸い込まれていく。
あれ…。
この感じ、どこかで…。
“お前は成宮さんに逆らった。死ね”
なんだこれ…。
記憶……?成宮って誰だ?
バタッ
そのまま、信士は気を失ってしまった…。
あいつがノエルか…。
観客席。松葉杖をついてグラウンドを見ているのは水時。
準決勝。ノエルが信士と走る今回はノエルの本気が見れると思ったからだ。
しかし、スタートして2周半。水時はノエルの走りに違和感を覚えた。
なにかおかしい…。
確かに本気といえば本気。だか、なにかが。
なにかを狙ってるような…。
そして、3組目が過ぎたとき、信士は急に倒れた。
信士は倒れたまま立ち上がらない。周りは「どうしたのあの人」「急にに倒れたよ」など騒然としている。
しかし、周りは気づいてないが、水時は気づいていた。
あの野郎、信士を転ばせやがったんだ。
許せねぇ…。
「ちょっと、下行ってくる…」
いっしょに見ていた、東條に断りをいれ降りていく。
「あ、あぁ…」
どうやら、東條は信士のもとに行くと思っているらしい。
でも、本当の行き先は…。
「おい」
多くの人がすれ違う中、立ち止まったのはノエル。
「てめぇ、信士はめやがっただろ」
「サァ、なんのコトかな?」
「お前だけは絶対に許さねぇ」
するとノエルは笑いながら歩き出し、
「楽シミにしとクヨ、Mr.ミズトキ…」
それだけを言い残し去っていった。
……………………………………………………………………………う、うぅ……。
視界がぼやける。なんだか、見たことのある天井。
ここは……。そうか。ぼくは病院に運ばれたんだ。
首を横に向けてみるとそこには、前と同じ様に詩織の姿があった。
でも、前と違うのは詩織が寝ていること。
軽く詩織の肩を叩いてみる。そういえば、詩織はいつでもぼくの心配をしてくれてる。
感謝しなくちゃ。
ガバッ!
詩織は飛び起きた。そして、信士をみるなり、
「信士、記憶は!?」