第57話-当たり前-
お久しぶりです
これから、
また、よろしく
お願いします
状況はまるで変わってしまった。
3人はそれぞれに「負けたくない」その思いでひたすらに走り続けている。
でも、更に変わってしまったことは、なんと言っても、3人が部活に来なくなったことだろう。
来なくなったと言っても、サボりでとかではなく、それぞれに自分のメニューをするため。
それを知らない部員達の間では
『先生から、無理なことを言われからボイコットしている』
など、いろいろな噂が立ち初めていた。
「宮嶋」
「なに?」
いつもどおりの練習を終え、帰ろうとしたとき、詩織は哲に呼び止められた。
「お前、長距離の3人がどうして来てないのか知ってるか?」
詩織は迷った。確かに信士から理由は聞いていたが言うべきか。
いくら部長とは言え、なんとなく言ってはいけないことのようで。
「……うううん、なんにも聞いてないよ」
「…そうか、ありがとう。気をつけて帰れよ」
そう言い、哲は歩いて行く。
短い間とはいえ、3人と関わった者として、心配なんだろうなぁ。
詩織はそう思った。
…あと一週間かぁ。
1人は1500から外されてしまう。
それも、信士は1位じゃなきゃいけない。
3人とも頑張ってほしいけど…。
信士…。信士には残ってほしい。
『約束』叶えてもらわなきゃいけないんだから。
もう、秋となった空は赤く、広がっていた。
―1週間後―
久しぶりに部活にでた3人は気合いの入った表情を浮かべている。
「陸上部、練習ストップだ!」
3人以外の部員達が全員、トラックから外に出される。
「おい、位置につけ」
呼ばれたが、3人とも動こうとしない。
…位置に着いたら、始まってしまう。
『仲間』である3人にとって、1人を蹴落とすのはとてつもなく辛いこと。
それは、3人とも、同じ気持ちだった。
「信士君、浩太君…あのさ…」
そんな中、柊がふと、口を開いた。
「どんな結果になっても…僕たち『仲間』だよね…」
「「!」」
一番、聴きたかった言葉。そして、一番、確かめたかったこと。
3人は顔を見合わせ、
「…当たり前だろ!」
友情を確かめ合い、意を決した3人は、スタートラインに立ち、スタートの合図を待った。