第52話-後悔と悔しさ-
信士…俊哉…!
2人は必死に声を出して、応援してくれている。
オレは…
カッコ悪ぃ。
みんな、ここまで頑張ってきたってのに。
バカ野郎。
後ろの選手が今にも抜かそうと迫っている。
嫌だ。
抜かされたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
浩太はなんとか力を振り絞り、集団の1番前を保っている。
『抜かされたくない』
この思いだけが、力となり、足を前に運んでいる。
「浩太頑張れー!!」
「そろそろ、竜太見えるよー!!」
もうちょっとだ…。
ついに五区、竜太が見え、最後の直線になった時。
そんな…。
他の選手達が一斉にラストスパートをかけた。
当然と言えば当然だが、浩太にはもはや、そんなは残ってはいない。
「ごめん…」
「お疲れさまです!」
5位。
浩太は順位のキープに失敗してしまったのだ。
バタッ
浩太は力尽き、地面に倒れ込む。
信士と柊が慌てて、浩太に駆け寄る。
「ごめん、みんな頑張ったのに…オレは…」
「そんなことないって!浩太は頑張ったよ!」
2人は励ますが、浩太は自分を責め続ける。
「ちきしょう…ちきしょう…うぅぅ……」
「浩太…」
悔し涙を流す、浩太。
2人にとって、こんな浩太の姿を見たのは初めてだった。
まだだ。
まだ、終わってはいない。
五区を走る、竜太は5位をなんとかキープしながら走っている。
栄二の為にも、絶対に勝たないと。
竜太は必死に走る。
走るが、周りの選手達にはなかなかついていけず、離されそうになる。
苦しい。
他の選手達がどんどん離れていく。
ごめん…栄二……。
結局、竜太が走り終わった時点で、9位。
六区、智も、順位を4つ落とし、鷹谷中の記録は13位に終わったのだった…。
「ノエル、どうだ?日本人の走りは」
「まぁまぁダネ」
「水時ってやつも、もう少しオモシロイやつだと思ってたんダケド」
「膝をケガするようなバカじゃ、ボクには勝てないネ」
「タダ…1人、オモシロそうなのを見つけたヨ…」
そう言い、ニヤリと外国人のノエル・アンソニーは不敵な笑みを浮かべた。