第51話-焦り-
オレが…オレが…
浩太は焦り、いきなり、スピードを上げてしまっている。
まだまだ、登り道は続く。
が、とにかく集団から離れたい浩太はそんなことも気にせず坂を駆け上がる。
自分の体力の消耗にも気づかずに。
「あっ、柊君!」
体力も回復し丁度、浩太を応援に行こうとしていたところに声をかけられた。
あ、信士君…!
さっきは、呼び捨てで呼んでくれたけどやっぱり、たまたまだったんだ…。
柊はなんだか少し、寂しい感じがしたが、気にせずに明るく振る舞う。
「信士君、どうだった!?」
「あぁ…、一応2位で渡せたよ」
「やったぁ!」
普通なら喜ぶはずなのになんとなく信士は浮かない顔をしている。
どうしたんだろう…?
柊は疑問に思ったがそこには触れない。
「ねぇ、浩太君の応援に行こう」
「うん、そうだね」
そう、淡白な会話を交わし、四区の後半地点へ急いだ。
「……!?」
2人は着いた瞬間、焦った。
浩太はフラフラになり、スピードが落ちているのだ。
後ろから来る集団が浩太に迫っている。
状況を見ると、おそらく浩太は前半で飛ばし過ぎてこの後半でバテてしまっている。そんなところだろうと信士は思った。
「浩太ー!頑張れー!!」
「もうちょっとだよー!!」
2人は必死に叫び、浩太を応援する。
しかし、浩太は懸命に前へ進もうとするが、なかなかいつものスピードが出ない。
後ろの集団がついに、浩太のすぐ後ろまで迫る。
2人はただ、応援を送り続けるしかなかった。
ちくしょう…。
なんだって、こんなときにオレってやつは。
浩太は重たい体を引きずるように走っている。
前半を飛ばした分、差はそれなりにあるが、こんなスピードじゃ先が思いやられる。
ヤバい。
後ろの奴らが見えてきた。
負けたくない。
勝ちたい。
1位を取りたい。
それなのに。
ちくしょう…。
だんだん、集団が迫ってくる。
浩太が覚悟した、その時。
「浩太ー!頑張れー!!」
「もうちょっとだよー!!」
聞こえた、仲間の声。