第46話-区別の役目-
翌日
九条先生に駅伝部の7人が呼ばれた。
信士はメンバーの発表だろうと身構えている。
「それじゃあ、メンバーの発表をする」
「一区、柊。ニ区、信士。三区、市原。四区、浩太。五区、竜太。六区、智。これでいくぞ」
名前を呼ばれなかった栄二は分かっていたとは言え、悔しそうにしている。
「栄二、悪いがお前はマネージャー的な仕事に回ってもらうぞ」
「はい…」
それから、聞いた話ではこの区にした理由は、
まず一区の柊は、一発目で前の方にいたいという狙いかららしい。
それからニ区の信士、四区の浩太はこの2区は特にキツく、他の中学校でもここに一番速い人をもってくるかららしい。
三区の哲は、三区は一番短く、ダッシュする力が必要なので、元は400メートルの選手である哲にはちょうどいい区ということ。
五区、竜太と六区、智は前半で勝負しようという九条先生の狙いからだそうだ。
「それから、他の中学校では三年生も出るからな、目標は20位以内!」
20位以内…確かに他は三年生も出るのだと考えれば、妥当な目標ではあるのだろうけど。
北星中はもっと上をいくはず。
「まぁ、来年もあるからな、今年はやれるとこまでやってみろ」
最後は二年生達に言ったらしい。
それでもメンバー全員が「やってやる」そう思った。
それからの練習はひたすら長い距離を道路の上で走ることが多くなり、駅伝本番のときに走る道でもたまに九条先生の車に乗せてもらって行き、走るようになった。
「二区、四区はほぼ同じ道か…」
二区、四区はさすが強者が集まる区で、坂道が急なうえに、3.2kmもあるコース。
基本、信士と浩太は一緒に走っていたが、いつも競争するため良く記録が伸びてきていた。
そして―。
ついに、本番の朝が来た。
みんな、場所へ向かう車の中からもう既に緊張の面もちである。
特に柊君はよっぽど緊張しているようで、さっきからなんだか暗い。
浩太は…なんにも感じていないようだけど。
集合場所からのアップからなにまですべて人混みの中。
「くっそ~混んでんな」
浩太が少しイライラした様子で言う。
「50校ぐらい出てるからな」
哲が答える。
そんなに出るのか…と信士は思い直す。
確かに、20位以内は妥当な目標なのかもしれない。
そのまま、緊張して過ごしていたが、時間は待ってくれない。
早速、一区の柊が集合に呼ばれたのだ。
緊張をした顔のまま、歩き出す柊に、
「先輩!目標を大きく、一位でいきましょう!!」
栄二が言った。
目標を大きく…か。
忘れそうになっていた、この前自分がそのようなことを言っていたのに。
高い目標は恥ずかしいものじゃない。
「そうだ、一位目指してこう!北星中に勝つんだ!!」
「チーム」全体の目標がやっと定まった瞬間だった。